書名:相場道 小説本間宗久
著者:西野 武彦
発行所:日本経済新聞出版社
発行年月日:2010/9/21
ページ:222頁
定価:1,600+税
『酒田照る照る、堂島曇る、江戸の蔵米雨が降る。』『本間さまには及びもないが、せめてなりたや殿様に』という唄などはなんとなく聞いて覚えているが、酒田の本間家の事については殆ど知らなかった。この本は本間宗久という希代の相場師、そして本間宗久の相場師を嫌って追い出した甥の本間光丘の2人の生き方について書いてある。本間光丘が修行に出ている間に、叔父の宗久が本間家の財産を10倍以上殖やした。それも米相場で。本間宗久は米相場にも精通しているし、研究、情報収集にも余念がない。
しかし修業先から戻ってきた本間光丘は相場のような安定しないものは極度に警戒して堅実な商人の道を目指した。小作人からの年貢、小作人への貸し付け、大名貸、資金を土地と農業、そして東北の貧乏藩の支援などを行った。大正時代本間家の土地は3,000町歩あったと言われている。年貢は他に比べて高いが飢饉の時などは支援をして小作人達を餓死させなかった。
一方、本間宗久は酒田の米相場、大阪の米相場、そして江戸で米相場で儲けに儲けた。現在のお金に換算すると一生の間に1兆円は儲けたと言われている。また本間宗久も地元庄内藩ばかりではなく、上杉鷹山の米沢藩など東北の各藩へも支援を惜しまなかった。その2人を中心に商人とは?商売とは?そして相場で儲けるためのノウハウ、格言、参考文献などを紹介している。本間光丘が本間宗久を追い出しなのは本間宗久は天才相場師、いくらノウハウなど実際に教えて貰っても継続して儲けることは出来ない。次世代を育てることが出来ない。商売は継続が一番。そんな経営哲学があった。
一方本間宗久も相場を武士道のように考えて、精進、努力で「底値で買って、高値で売る」そのタイミング(いかに待てるか)、上下する相場に一喜一憂せずにどこまで落ち着いていられるか?、また相場は時には休む必要がある。なけなしの金は使わない。余裕の或る資金だけで勝負する。借金では相場投入しない。など現在に通じる教訓、格言がちりばめられている。今でも十分通用する「酒田罫線法」が江戸時代本間宗久によって作られ活用されていた。
本間家が領主の酒井家(譜代大名)15万石より広く事業を広げ、大きな規模で商売が継続できたのは地元への還元と大名家の援助、経営コンサルタントだったのでは?そしてその礎は本間光丘が始まり。宗久では2,3代で終わっていたかもしれない。なかなか面白い本です。
江戸時代の相場に関する書物
「本間宗久相場三昧伝」「宗久翁秘録」「酒田罫線法」
相場道 小説・本間宗久 - 西野武彦
http://www.nikkeibook.com/book_detail/16756/
国立国会図書館デジタルコレクション - 通俗経済文庫. 巻1 売買出世車
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/953486/102
国立国会図書館デジタルコレクション - 八木三猿金泉秘録 : 校正
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/803979
国立国会図書館デジタルコレクション - 八木虎之巻
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2539889
国立国会図書館デジタルコレクション - 商家秘録
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/803063
国立国会図書館デジタルコレクション - 検索結果 八木豹之巻 八木龍之巻
http://ur0.link/IZBJ
米道大意
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/81008520.pdf
徳川時代経済秘録全集
http://www.jsri.or.jp/publish/research/pdf/83/83_07.pdf
国立国会図書館デジタルコレクション - 米株秘録
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/956314