書名:陰謀の日本中世史
著者:呉座 勇一
発行所:KADOKAWA
発行年月日:2018/3/10
ページ:343頁
定価:880+税
ベストセラー『応仁の乱』の著者呉座勇一の構想三年の書き下ろし!二匹目のドジョウを狙った本か?史上有名な事件になると直ぐに陰謀説が出てくる。これはまともな学者からは出てこない。歴史学会では完全に無視されている。そんな陰謀説に真面目に取り組んで、陰謀なんてないということを証明しようとしている本です。
結構堅い本田から読んでいてなかなか中に入り込めない。読みづらい本です。本能寺の変に黒幕あり?関ヶ原は家康の陰謀?義経は陰謀の犠牲者?足利尊氏=陰謀家説は疑わしい?後醍醐天皇は黒幕ではなく被害者だった!?富子はスケープゴートにされた、騙されやすかった信長、「三成が家康の伏見屋敷に逃げ込んだ」は俗説、「小山評定」は架空の会議などなど史実とフィクションは明瞭に違う!ということを説明している。
太平洋戦争のルーズベルトの陰謀など後からくっつけた屁理屈があたかも本当のようにまかり通っていることがあるが、事実はそう理屈通りいくものではない。或る黒幕が何かをして歴史を動かすということは映画、物語の世界では実現できても、人はそう理論的に行動するわけではない。理詰めで完璧な行動なんて出来ていない。そのときの気分で動いてしまう。それを後から理屈を付けているだけ。信長にしても天下統一なんて頭にあったか?その日その日の敵にどう当たるか?ばかり考えていたのでは、晩年の秀吉だって、秀頼の事ばかり、でも思い通りにはならなかった。こんな当たり前のことを当たり前に書いてある本です。小説、物語としては面白いことと事実、史実は違うということを気付かさせてくれる本です。
本書もくじより
-----------------------
まえがき
第一章 貴族の陰謀に武力が加わり中世が生まれた
第一節 保元の乱
崇徳と頼長に謀反の意思はなかったetc
第二節 平治の乱
平清盛の熊野参詣に裏はない/後白河黒幕説は成り立たないetc.
第二章 陰謀を軸に『平家物語』を読みなおす
第一節 平氏一門と反平氏勢力の抗争
清盛が陰謀をでっちあげた/以仁王の失敗は必然だったetc
第二節 源義経は陰謀の犠牲者か
後白河は頼朝の怒りを予想していなかった/源義経の権力は砂上の楼閣だったetc
第三章 鎌倉幕府の歴史は陰謀の連続だった
第一節 源氏将軍家断絶
源頼家暴君説は疑問/策士・時政が策に溺れた「牧氏事件」etc
第二節 北条得宗家と陰謀
時頼黒幕説は穿ちすぎ/霜月騒動は正規戦だったetc
第四章 足利尊氏は陰謀家か
第一節 打倒鎌倉幕府の陰謀
後醍醐の倒幕計画は二回ではなく一回/尊氏は後醍醐の下で満足していたetc
第二節 観応の擾乱
尊氏がつくった北朝は尊氏の手で葬られた/足利尊氏=陰謀家説は疑わしいetc
第五章 日野富子は悪女か
第一節 応仁の乱と日野富子
日野富子は足利義視に接近していた/足利義政は後継者問題を解決していたetc
第二節 『応仁記』が生んだ富子悪女説
史実は『応仁記』と正反対/富子悪女説が浸透した三つの理由etc
第六章 本能寺の変に黒幕はいたか
第一節 単独犯行説の紹介
ドラマで好まれる光秀勤王家説と光秀幕臣説etc
第二節 黒幕説の紹介
一九九〇年代に登場した朝廷黒幕説/「足利義昭黒幕説」は衝撃を与えた/荒唐無稽すぎるイエズス会黒幕説etc
第三節 黒幕説は陰謀論
黒幕説の特徴/近年主流化しつつある四国政策転換説/空論etc
第七章 徳川家康は石田三成を嵌めたのか
第一節 秀次事件
豊臣秀次は冤罪だった/新説「秀吉は秀次の命を奪う気はなかった」etc
第二節 七将襲撃事件
「三成が家康の伏見屋敷に逃げ込んだ」は俗説etc
第三節 関ヶ原への道
「内府ちがいの条々」で家康は窮地に陥った/「小山評定」は架空の会議/転換点は岐阜城攻略戦etc
終章 陰謀論はなぜ人気があるのか?
第一節 陰謀論の特徴
因果関係の単純すぎる説明/論理の飛躍/結果から逆行して原因を引き出す/挙証責任の転嫁
第二節 人はなぜ陰謀論を信じるのか
インテリ、高学歴者ほど騙されやすい/疑似科学との類似性/専門家の問題点etc
あとがき
主要参考文献