書名:剣難女難
著者:吉川 英治
発行所:講談社
頁数:540ページ
発売日:1990年09月04日
定価:99円 Kindle版
大正14年に創刊された国民雑誌「キング」に発表されたこの作品で、従来の幾つかの筆名に別れを告げ、新たに吉川英治が誕生した。――美男で剣を見るのさえ身体がふるえる春日新九郎が、兄の仇、富田三家随一の名人、鐘巻自斎を相手に戦うまでの数々の辛苦と、剣難女難。――この1作が呼んだ反響、つづいて生れた幾多の名作。本書は、吉川文学の輝かしい原点といえよう。
幼い頃、母と外出先で占って貰った春日新九郎は「剣難女難」の相があると言われそれがトラウマになって、剣を見るのも剣術をみるのも自然に体が震えておびえてしまう。兄は名だたる剣豪で剣道場主、この物語の舞台は、丹後の宮津藩、福知山藩から始まる。大藩の宮津藩(7万石)福知山藩(3万2000石)の小藩、何かにつけて宮津藩の横暴が目立った。兄の重蔵が宮津藩との交流試合において、大怪我を負ってしまう。京都でも北部のマイナーな地方が出てくる。江戸に出てくる途中では園部、亀岡などの剣豪とも試合をして技を磨きながら、兄の仇である鐘巻自斎を倒すため、新九郎の修行の旅が始まった。
春日新九郎の修行の旅そこには剣難女難が待ち受けている。気弱で軟弱な青年の成長物語、展開のリズムが良いので、ついつい読み進めてしまう。吉川英治の語り部にどんどん載せられてしまう。物語の展開はさすが、それも早い展開で飽きさせない。(現代でも十分通用するのではないねんかな)それも中身のない速さではなく、十分楽しめる物語展開です。鐘巻自斎というのは他の人の物語でも出てくる人物ですが、戦国時代の有名な剣豪、福知山藩が3万2000石になったのは1669年、ちょっと合わないような気もするがここでは突っ込まないでおこう。
大正時代の作品とは思えない新鮮さがある作品です。大作家の片鱗がうかがえる。話を作るのがうまい。99円で楽しめます。