2002年8月はこの5公演

 


PLUSTIC PLASTICS
「世界は笑いでつつまれている」

パンプルムス 8/2〜8/4
8/3(土)観劇。座席 自由(8列目中央:招待) 

作・演出 大島怜也

 池谷のぶえ(演劇弁当 猫ニャー)の開演前のアナウンスとそれにまつわる映像で始まるが、内容との関連性はまったくない。池谷のぶえの協力を得たので前説の映像を作ってみましたって感じ。

 舞台は2002年の現在から始まる。ナカニワ(佐藤真義)が教師を辞め、素人お笑いコンテストに行く途中タイムスリップしてしまう事故を防ぐ為に、2094年の未来からやって来たタイムパトロール準隊員のハリーポッター(長谷川有希子)。しかし彼の努力も虚しく“歴史”は狂いを生じないように自己回避を繰り返していた。そんな様子をうかがっていたストーカーの傷頭(小田嶋陽子)はハリーポッターに詰め寄る。詳細を話した上で記憶を消さばいいと思ったハリーポッターは、事細かに事実を話してしまう。そして記憶を消そうとしたが、記憶除去装置がバッテリー切れか調子が悪いのか作動しない。驚いたハリーポッターは傷頭自体を消し去ろうと拳銃を向けるが、それすらうまくいかない。結局タイムパトロールとして登録し、一緒に活動する羽目になってしまう・・・。2014年に飛ばされたナカニワを追ってタイムスリップした二人。タイムスリップした事に気がつかないナカニワはその時代の素人お笑いコンテストに出場する為に会場にやってきていた。会場にはホームレスの土比類巻サチコ(土肥サチコ)と失語症気味の弟(井澤崇行)など、一風変わった人々が集まっていた。しかし、未来の人間にはナカニワの姿は見えない。そんな事も含めて本人に気づかれない様に過去に連れ戻そうとするタイムパトロールの二人。そんな話を軸に、「こんな時代に馬鹿なことを」とお笑いを生業とする人々が軽蔑視されている、いや、それどころか“お笑い”そのものが罪悪視されている2014年の姿を描いたタイムスリップ演劇。

 脚本に面白さは感じるが、役者の未熟さで芝居としてはまだまだ未完成であった。旗揚げ公演なので多少の未熟さはしょうがないと思うが、お金を取って見せるのであれば、もう少し完成度を上げて欲しい。大島怜也本人のコメントもあったが、ナイロン100℃の『ナイス・エイジ』に類似している点もマイナスだと思う。タイムスリップものではあるが、矛盾点も多い。まぁそういう細かい事を指摘する芝居じゃないけど。演出力の未熟さなのか演じている役者が未熟なのか、他の役者がセリフをしゃべっている間、ぼぉ〜と立っているだけというシーンが多く見受けられた。青年団の様に会話が同時に起こる必然性はないが、セリフをしゃべっていない役者にリアリティがない。そんな些細な事が芝居の空気を壊す。そんなところまで心がけて演じて欲しい。次回公演も決まっているようなので、次回は今回を越える何かを見せて欲しいと願う。ありきたりな芝居を打つ劇団が動員を伸ばし、演劇シーンをつっ走れるほど観客の目は甘くない。次も見たいと思わせる何かを期待する。

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マルヒケン「マリオな夏」

タイニイアリス 8/9〜8/12
8/10(土)ソワレ観劇。座席 自由(4列目右端:招待) 

作・演出 石河修

 自分の借金から逃げつつ占有屋(居住する権利がないのにもかかわらず、立ち退き料を求めて競売物件に居座るという違法家業)を続ける丸尾秀一郎(石河修)は、ボディーガードのサダオ(高橋雄一)と共に、とあるマンションに居座っていた。サラ金から借りた金がチャラになる、残り6週間となり(知らなかったけど、5年間逃げきれれば無効になるらしい)、丸尾秀一郎(あだ名はマリオ)は精神的にぴりぴりしていた。見兼ねたサダオは気分転換にと、ルームシェア(room share ? 部屋を分割して貸し出して、共有するのをそういうのか?)を月3万9千円で募ってきた。一人目はエリ(大多月乃)というキャバクラ嬢。二人目は演歌修行中の北吉川ひさし(吉田マコト)であった。そこに、エリの彼氏(と言ってもおなべ)のスギゾウ(結柴依子)、マンションを購入した奈良橋丸夫(金田陽介)(実は丸尾秀一郎の幼なじみであだ名は同じくマリオ、二人合わせてマリオブラザースと呼ばれていたらしい・・・)が加わり、奇妙な6人の共同生活が始まった・・・。
 ヤクザの息子とトラブルを起こし、富士山の樹海に捨てられたてしまうエリの話やら、コロッケに弟子入りが認められた北吉川ひさしの話などを挿みつつ、丸尾秀一郎の借金帳消しの日が刻々と近づいてくる。残り2週間ってところで丸尾秀一郎は胃潰瘍で緊急入院してしまう。果たしてサラ金の目を逃れて借金を踏み倒せるのか・・・。
 って感じなのだが、最後は何も起こらず、無事借金踏み倒しに成功しましたって話。そして、堅気になるならマリオリサイクルで働かないかと持ちかける奈良橋丸夫。そんなちょっとハートフルな結末で終わる物語。

 ワンシチュエーションものとしてはなかなか面白い設定であった。劇場が新宿二丁目ってのも地の利を生かした設定だと思う。でも、おなべは区役所通りの方か・・・ちょっと守備範囲じゃないのでわからんや。それはさておき、登場人物達も各々個性があり、芝居に生かされていたと思う。ただ、残り4週あたりの物語がちょっと間延びしてしまい、スピード感・緊張感が失速してしまった感じであった。初めはエアコンの穴まで埋めてしまうほど、怯えていたはずなのに、同居人に翻弄されている内にその緊張感が非常に薄れてしまったのは残念でならない。人とのふれあいで緊張感がほぐれてくるのはいいのだが、借金取りから逃げているという、生きるか死ぬかくらいの緊張感は最後まで残して欲しかった。救急車を呼ぶのもそうだし、ましてや入院して何事もなく退院してしまうのってあり?当初の脅えはどこ?って感じであった。もっと悪い状況が転がっていくような緊張感を維持しつつ、最後にちょっとハートフルみたいな感じだと良かったと思う。

 話は飛ぶが、テレビに出ているアイドル・大多月乃はやはり綺麗であった。さすが芸能人って感じ。演技はお世辞にもうまいとは言えないが、舞台に華を添えていたのは確か。役柄的にもドンピシャリ。他の役者もみんな味があって非常に良いと思った。舞台の空気を和ます吉田マコトのハチキレ方も良いし、高橋雄一の怖い顔で腰が低い所もチンピラっぽくて良い。初めて観たが、なかなか面白い劇団であった。

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MONO「きゅうりの花」

ザ・スズナリ 8/14〜8/21
8/17(土)観劇。

作・演出 土田英生

申し訳ありません。まだ書けていません。

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「アテルイ」

新橋演舞場 8/5〜8/28
8/21(水)観劇。座席 1等席11列23番

作 中島かずき
演出 いのうえひでのり

 平安の初期、奥州の蝦夷(エミシ。胆沢地方<岩手県南部>)の族長として征討軍に最も強力に抵抗したアテルイ(阿弖流為。大墓公(だいぼのきみ)阿弖流為とも呼ばれる)。征夷大将軍・坂上田村麻呂に圧倒的な武力の差(『日本後記』によると10万の大軍だったという)で蝦夷を制圧されたに及んで、延暦21年(802年)4月に盤具公母礼(いわぐのきみもれ)とともに同族500人を率いて降伏した。そして、同年8月河内国(かわちのくに)杜山で処刑された。田村麻呂はアテルイの助命を主張したが、叶わなかった。田村麻呂伝説に出てくる賊主の悪路王(あくろおう)とは、阿弖流為のこととされているが事実は不明。そんな正史にはわずかにしか登場しないこの蝦夷(えみし)の王を主人公に展開する伝奇ロマン。
 神のしもべを殺した罪で故郷の蝦夷を追放されたアテルイ(市川染五郎)は、蝦夷の民を名乗る盗賊団“立烏帽子(たてえぼし)党”の探索を通じて、田村麻呂(堤真一)と出会う。武人同士、二人は親近感を抱くが、いずれ戦うであろう宿命をも感じ、その場は別れる。そんな宿命の渦にのまれるが如く、アテルイは帝の軍勢に対抗する切り札として故郷へ戻り、蝦夷の王として征討軍に戦いを臨む。そして、田村麻呂は征夷大将軍となり北伐の責任者に任命される。北の狼・アテルイと都の虎・田村麻呂の宿命の戦いが火花を散らす事となる・・・。

 金かかってるなぁ〜というのが第一印象。これだけ金かけて豪華にいにしえの世界を作り上げてくれれば、高いチケット代も納得できるっちゅ〜もんです。で、今回みたいに芝居の中味も満足だったりすると本当に「いい芝居観たなぁ〜」と感激してしまう。まったくゲンキンなものです。

 それはさて置き、今回の芝居は、誰に感情移入するかで、芝居の見方が違ってくると思う。アテルイの立場で見れば、征夷大将軍は“悪”となり、坂上田村麻呂の立場で見れば、アテルイは国家統一に謀反を起こす悪党という事になる。自分はどちらに感情移入してしまったかと言うと、逆らえない自分の立場・状況に笑顔で抵抗する田村麻呂に感情移入をしてしまい、その姿に“感動”と共に“希望”を見てしまった次第である。芝居が何かを比喩している訳ではないと思うが、民族闘争や組織の中での上下関係は、今の時代を映し出しているようにも思えた。ならば、「坂上田村麻呂よ、民の声を聞こうとしない今の日本も壊そうよ。」と言いたい。・・・おっといけない、ちょっと個人的な感情で芝居から離れてしまったぃ。

 今回の芝居は中島・いのうえコンビとしては、珍しく、男の生き様を描いた作品だったと思う。自分を取り巻く環境で敵対せずにはいられなかった男の戦いを描いており、単純に“善と悪”という今までの構図とも違う。友情があるのに戦わねばならない現状。そんな敵対する二人の男を主人公に据えた事で、おもしろさが加速した。田村麻呂と恋愛関係にある鈴鹿は、前半で人柱となってしまう。後半登場するのは、鈴鹿の化身である釼明丸(じんみょうまる)。田村麻呂を影ながら守る男とも女とも言えない役であり、うわついた恋愛なんてかけらもない。あるのは献身的な愛のみ。ちゃらちゃとした恋愛を挟まなかった事により、物語に厚みが出来きたように感じるのは、恋愛ものが嫌いな自分だからだろうか。

 役者に目を向けると、軍勢の圧倒的差で、まったく勝ち目のない泥沼の戦いに死力を尽くす、悲運の貴公子・アテルイを、市川染五郎が見事に演じていたのが印象的である。前回、新感線と組んだ『阿修羅城の瞳』と比べると男の色気(力強さの中にも静かな色気があるみたいな)は薄れたが、野性的な魅力を醸し出していた。さすが。そして、征夷大将軍の命を受け、不本意ながらも蝦夷征討に北上する坂上田村麻呂を、見事に演じていたのが堤真一。アテルイが感情的な火ならば、田村麿呂は沈着冷静な水。対照的なキャラが、休憩を挟んで約三時間、絶え間なく立ち回りを続ける。いつもだと、わーと出てきてはちゃんばら、又ちゃんばら、と滑稽とも言えるちゃんばら活劇になってしまう“いのうえ歌舞伎”だが(中にはいいものもあるんだけど、往々にその傾向が・・・)、今回は、この二人が演じる事によって素晴しいものになっていた。圧倒的な存在感で作品全体を引き締め、ちゃんばら活劇を立派な芝居へと導いていた。加えて、いつものいのうえ演出だと、前半は人物紹介的な展開で退屈なのだが、今回は前半からまったく退屈しない。役者の魅力もあるが、中島かずきの脚本が洗練されていたのだと思う。そして、いのうえひでのりが得意(?)とする必然性のない歌と踊りを排し、ストレートに物語を見せた演出にも拍手を送りたい。まぁ、いつものベタなギャグは大目に見るとしてだけど・・・。

 主役の二人もいいが脇を固める役者も素晴しい。一番目を引いたのが、立烏帽子を演じた西牟田恵。西牟田恵を初めて見たのは、確か93年に上演された『DUMMY』だったと記憶する。その時の素晴しさと観劇後のメンテナンス(プリントゴッコで作った手作りの葉書を不定期で送ってくれたりしていた)で、出演する舞台を見続けていたが、ここんとこ役にも恵まれず、あまり良くなかった。しかし、今回は、汚名挽回って言ってもいい素晴しさ。動きも抜群。田村麻呂を慕う鈴鹿役の水野美紀より目立つ活躍ぶり。そのうまさに流石と言いたい。水野美紀は、おちゃらけた場面は魅力を発揮していたのだが、立ち回りは想像以下のできだった。もっと動きの良さを期待したのだが・・・。他の人の動きが10だとすると、水野だけ8くらいのスピード。その一瞬の違和感が意外と気になったが、初舞台にしては良い出来だったと思う。アテイルの幼なじみ・蛮甲役(長い物には巻かれろ的男・・・って新感線には欠かせない存在。だけど、ネタの使いまわしとも言える・・・)の渡辺いっけいも持ち味を発揮していた。公家・紀布留部(きのふるべ)の植本潤の奇怪な演技は、生き生きとして素晴しいの一言。佐渡馬黒縄(さどまのくろなわ)を演じた橋本じゅんの切れた演技(ちょっと千葉真一が入ってる?)もいい。毒を食っても死なない不死身のおやじ・大獄(おおたけ)を演じた逆木圭一郎のキャラを生かした配役もグッド。随鏡(ずいきょう)を演じた右近健一も気持ち悪さが加速していて最高。アケトを演じた村木よし子の相変わらずの崩れキャラも楽しめた。両花道を使った演出も前回より、気負いがなくなったのか、遊び心も見えた気がする。歌と踊りがないのに新感線テイストが満載でむちゃくちゃ楽しめたのは、意外と言うよりはこれが正道なのかも。加えて、古田新太が悪人として舞台をしめなくても充分楽しめたのには驚いた。特定の役者に頼らない、新しい新感線の形が見えてきたのかもしれない、って言っても主役が良かったからそう言えるのかもしれない。

 ※新感線の公演の中に数えてもいいのかもしれないが、特に「劇団☆新感線」の名前を謳ってなかったので単独の企画公演としました。

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劇団 阿佐ヶ谷南南京小僧
「善哉の耐えられない甘さ」

阿佐ヶ谷アルシェ 8/30〜9/3
8/30(金)観劇。座席 自由(4列目中央:招待) 

作・演出 飯野邦彦

 三楽亭一超(飯野邦彦)の弟子・円超(中山恒輔)は、全く笑えない落語家であり、あまりのつまらなさが話題になり、行列が出来る程の有様である。しかし客が集まったからと言って出世するわけでなく、いつまでたっても前座のままであった。しまいにゃ入門して1年半の貴超(竹内剛史)に二つ目昇進を先越される始末。そんなある日、寄席かんこ亭の席亭(ヨネクラカオリ)から、初代一超が使ったという幸運の座布団をもらう。その効果か、師匠一超の愛娘・一海(前田綾香)が川で溺れているところを助けあげ、代わりに目障りだった妻が溺れ死んでしまう。加えて、妻がたたり出て円超の妾・琴美(勝目知里)をも始末してくれ、晴れて円超は、一海とつきあい始める事となる。娘かわいやと一超は、円超を二つ目に昇進。と、事はとんとん拍子に行くはずだったのだが、妻と妾の怨念に惑わされ右往左往。ついには、誤って一海を殺してしまうのであった・・・。

 怪談と落語を題材とした物語。落語の場面とかは未熟さが目立ってしまったが(特に師匠には弟子との格差が見えるくらいのうまさを期待したんだけど・・・)、話の展開(特に怪談話)はまずまず面白かった。芝居を包む空気も独特なものがあり好感が持てる。感情面では妻の感情が非常にうまく表現されており、愛情からくる怨念の深さ・恐さが心に染みた。チラシや劇団の雰囲気から言っても、そんな怨念話や怪談話、摩訶不思議な妖怪話に力を置いて芝居を作っていくと面白いんじゃないかと感じた。

 チラシの話になったので美術(ヨネクラカオリ)に触れたい。チラシの絵と文字の独特な雰囲気に期待は高かったのだが、その期待を裏切らない舞台美術であった。ほぼ全てがダンボールで作られた舞台は非常に味があり驚きであった。ダンボール美術と言えば日比野克彦が即座に頭に浮かぶのだが、日比野の作品から都会的なポップさを抜き、田舎的な叙情さと言うかノスタルジックさを加えたような雰囲気を醸し出す舞台美術であった。想像しにくい抽象的な表現で申し訳ないが、チラシの雰囲気をそのまま舞台美術にしたような感じなので、機会があったら劇団のチラシを参考に想像してもらいたい。その美術をフルに使った障子のシーン(亡霊や弟子達から逃げるまわるシーン)は最高の出来だったと思う。そのシーンだけでも観る価値はあったと思う。

 余談になるが、受付とか案内の女性が全て浴衣だったのは、納涼おばけ大会って感じで非常に良かったと思う。残暑が厳しかったが、瞬時に涼しくなれた。気がした。

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毛皮族「高麗人参毛具毛具」

下北沢駅前劇場 8/28〜9/1
8/31(土)ソワレ観劇。座席 自由(7列目下手:招待)

作・演出 江本純子

 毛皮族名物(?)恐怖の初日じゃなかったので安心していたのだが、『純子の素敵な残酷官能歌謡年史U』が押したため、30分遅れで開演。その歌謡年史の予告編、江本純子の前説に続き“キャッツ”のオープニングテーマが流れ、本編の開始。

 物語の舞台は爆裂巴里都市(バーストパリシティ)。ウサギの床屋とトラの床屋が熾烈な縄張り争いを広げてる。この日も片乳出した(でも胸のトップは花札のシールが貼ってある)ウサギの床屋・ラビットバーバーで、ウサギの床屋の主人(町田マリー)・見習い理容師ディスコ(柿丸美智恵)、同じく見習いのオイディプス(飯野美穂子)が、トラの床屋の店長トラ吉(和倉義樹)率いる一団と銃撃戦を繰り返していた。その縄張り争いには、ウサギの床屋の地下にある“黒猫の阿片窟”から取り出した阿片の山が関係していた。そんな闘争に横須賀のアテネ団(江本純子・町田マリー・飯野美穂子・羽鳥名美子・上原美幸・田中恵一)とジプシー団(柿丸美智恵・セロトニン瘍子)も加わり、物語は混沌としていく。さらに、ロシアの錬金術師モロゾフ(田中恵一)、斧の小町(米山由希子)、巴里の仕立て屋ピエール(和倉義樹)、柿丸VS江本(ミチエグラフィティの映像は逸品)、電飾紳士(江本純子)など本編のストーリーとは関係ないようで関係している人達がフンダンに盛り込まれ、ぐしゃぐしゃに展開していく。そんな宝塚歌劇風無軌道エンターテイメント。誰にも止められない江本純子の暴走もあるでよ。

 中央に花道。エンディングで背景に取り付ける電飾(ちょっと斜めに傾く板)は宝塚の階段を意識して作られたものだとか。さすが裏宝塚芝居と言われる所以だわ。今回もパワー全快で心地よい。毛皮族は、今一番観たいと思う劇団の一つである。そのパワーが物語のストーリーなんてどうでもよくなるくらい観客を魅了する。って言うか単純なストーリーなのに自分が良く理解できなかっただけなんだけど・・・。まぁ細かなストーリーはどうでもいいと思える素晴らしさはこの劇団の魅力だと思う、って方向を変えてみたりして。ただ、毎回思うのだが、欲を言えば骨太のストーリーが芯にあった上で暴走シーンを付加させて欲しいかなぁと。今回は、特にストーリーが弱く感じてしまった。加えて1部より2部がパワーダウンしてしまい、作りが荒く感じてしまったのも残念である。そのせいか上演時間が長く感じてしまった。って実際長い(2時間半?)んだけど。1部では、映像あり、踊りあり、加えて爆破もある(2部でもあるにはあるんだけど)、おもしろさテンコ盛り状態。柿丸美知恵が暴れまくるのも1部だし。

 それにしても、毛皮族は、江本を筆頭に柿丸・町田・和倉・飯野(今回はバニーガール姿が超かわいい!)と個性のあるいい役者が揃っている。皆、自然な演技という点では不合格点かもしれないが、魅力においては満点、いやそれ以上。そして忘れてならないのが、ゲストのセロトニン瘍子。だんだん演技もよくなっているし、かわいくもなっている。これからが楽しみである。でも、欲を言えばもっともっと暴れて欲しかったかなぁ。ゴキブリコンビナートで演じるくらいに。

 自分の勝手な思い込みだが、観ている最中テレビドラマ“傷だらけの天使”が脳裏をかすめた。そんなシーンはないし、思わせる登場人物もいない。でも舞台のライティングや空気がそう感じせたのだと思う。帰りの電車の中で思ったのだが“毛皮族版・傷だらけの天使”って観てみたい。コンビーフ(だったと思ったけど記憶があやふや)を食い、牛乳を飲むタイトルシーンを江本純子が演じたら似合うだろうなぁと。探偵エモジュンが60年〜70年代の新宿あたりを舞台に暴れ回る。しかし、いつしか現実と幻覚が入り乱れて迷宮に入って行く・・・みたいな感じの物語。どうでしょう?


“毛皮族”自分が観た公演ベスト
1.エロを乞う人
2.高麗人参毛具毛具
3.ハンバーガーマシーンガーンホテールボヨーン
4.踊り狂いて死にゆかん

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