2002年3月はこの10公演

 


回転OZORA「Silent Snow Song」

ザムザ阿佐谷 2/28〜3/3
3/2(土)観劇。座席 自由(3列目左端:招待)

作・演出 村上秀樹

 散乱する紙くず、中央に横たわる女性。その女性に窓の影が映っている。あるアパートの一室で突如起こった密室殺人事件。外は雪。「誰が」「いったい」「なんのために」・・・動機をめぐり、謎は深まっていくばかり。刑事課長・桃園(今藤洋子)・新米刑事・矢野(武井周一)・私立探偵・亨(片桐喜芳)。それぞれがそれぞれの立場で、この事件を検証していく。三人がたどり着いた事件の結末は・・・
 漫画家胡桃沢(今藤)の部屋。編集者篠塚(武井)、胡桃沢の弟裕一(片桐)を交えて、胡桃沢の書いている殺人事件ものの漫画を演じながら、実証している・・・
 誰と誰の会話なのか、刑事と漫画家の世界が混沌とし、二転、三転、四転と転がっていく。一体何が真実なのか・・・。で、結果を言ってしまうと(ネタバレごめんなさい)漫画家が死んでいるという編集者の誤報を、実際の殺人事件として成立させようと試みる刑事達の様子を描こうと構想を練っている漫画家の話。

 つまらなくはなかったが、物語としてはもっと捻って欲しかった。物語を入れ子状態で見せるのも新鮮さがなかったし、結末もちょっとお粗末。ただ、しっかりと作られていたので好感が持てる。この劇団を観るのは初めてだったが(10回も公演しているのに、劇団名も知りませんでした。ははははは・・・知識不足を実感)、もっと評判が上がってもいいと思った。役者も下手じゃないし。あっ、客席は埋まっていたので、知らないのは自分だけなのかも。こんな事書くと恥の上塗りかもしれない・・・。

 役者では、今藤洋子が特に良かった。驚くくらいに。独特の空気を持っていて、いい女優であった。コント的な芝居に出たら生きるだろうなぁと思うのだがどうだろう。アンケートを書いてこなかったので、今後の活動はわからないのだが、楽しみな女優である。

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ゴキブリコンビナートVS超歌劇団「暗黒生徒会」

スフィアメックス 3/9〜3/10
3/9(土)マチネ観劇。座席 自由(中央2列目)

作・演出 うるけん一郎太
制作総指揮 Dr.エクアドル

 会場中央に舞台、囲む様に客席、その頭上の壁を一周するように渡り廊下が組まれている。そして、舞台中央に4人が入れる(いや、4人しか入れない狭さの)絶対不安席。そんな舞台装置の中で繰り広げられる学園青春物語・・・?
 校長に自爆の暗示をかけ、その座を奪った新校長ではあったが、学校の真の支配者は、大文字あやお(うるけん一郎太)率いる生徒会であった。大文字あやおは、その音色を聞くと妄想を生むバイオリンを武器に人々を操り、学園を支配していた。そして彼は、一校の生徒会長では収まらず、全国の学生を裏で統制する暗黒生徒会の会長としても君臨していた。そんな大文字を倒そうとするアサノ先生。廃部に追い込まれたバレー部・野球部の部員(と言ってもそれぞれ一人づつしか在籍員がいない弱小クラブ)も打倒生徒会を誓い、猛特訓を行っていた。彼等は暗黒生徒会を倒し、平和な学園生活を取り戻せるのか?アサノ先生の真の正体は何者なのか?・・・そんな物語をゴキブリコンビナート色を加えて、超歌劇団的にまとめた作品。

 率直なところ、両劇団の特徴がくっきりと分離したままの状態であったと思う。そして、全体的に超歌劇団色が強く、少々物足りなさを感じてしまった。まぁ、一瞬だけの為に作った大道具(初めっから丸見え)の嬉しいくらいに馬鹿馬鹿しい、超歌劇団らしいへなちょこさ(もちろん褒めてます)は味わえて良かったのだが、ゴキブリコンビナートっぽさは危険な空気だけで、人間のドロドロとした惨めさみたいなものが全然表現されておらず、とても希薄であった。脚本のベースは超歌劇団なのでしょうがないのかも。部分的に、例えば、暗黒部活動が♪僕らの名前を〜覚えてほ〜しい〜♪と歌いながら自分達の部活動の素晴しさをアピールするんだけど、それが、全然素晴しくない。そんな情けないシーンはゴキコンテイスト満載で非常に良かったと思う。内容に物足りなさはあったが、企画としては絶対交わりそうにない両劇団の合同公演ってことで、それなりに満足感を味わえた。
 そして、今回の超目玉“絶対不安席”の驚愕な不安感は見ているだけで、もぉ〜充分って程に伝わってきた・・・。最初から最後まで舞台中央に埋め込まれたままで観劇。加えて絶対不安席チャンピオンは神輿状態に担がれて、終演後も外で担がれ続けるというオマケ付き。噂によると品川駅までその状態だったとか・・・まさに生地獄。素晴らし過ぎ。でも、自分は絶対味わいたくない光景だわ。

 それはそうと、芝居より臭いに参りました。超歌劇団は汚れるのはいいが、臭いのは嫌だって言ってたくせに、生のマグロの頭登場・・・その生臭さには正直参った。その場面は鼻をつまみながらの観劇。超歌劇団には生臭さは“臭い”うちに入らないのかも・・・港町・静岡出身の劇団だってことを忘れてた・・・。

 役者では、ゴキブリコンビナートのセロトニン瘍子のかわいらしさに心ときめく。だんだんかわいくなってるんじゃないか?いや、疑問符はいらない。確実にかわいくなっている。一心にキムチを食べる姿に胸キュン。目からハートがこぼれっぱなしである。『ちょっぴりスパイシー』での衝撃はさておき、今回のおとなしめの演出に、不満じゃなくて安心感を抱いたりしているのって、もしかして恋心?なんて思ったりして。8月の終わりには、毛皮族に再び客演するらしいが、今からときめいている自分がいる。やっぱ恋?

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シベリア少女鉄道「耳をすませば」

王子小劇場 3/7〜3/12
3/9(土)ソワレ観劇。座席 自由(6列目中央) 

作・演出 土屋亮一

 とある部屋、その部屋では八木(吉田友則)と杏奈(三谷由香)が同棲していた。その部屋に突然、杏奈に告白する為にやってきた同じバイト先の存在の薄い山倉(山下翼)。そんな3人が織り成す恋愛っぽい物語。
 シーンは変わり(舞台上は同じ部屋)夜中こっそりHビデオを見ようとしていたお兄ちゃん(横溝茂雄)。そこに突然登場する妹・芽依(染谷景子)。Hビデオをめぐって兄妹の攻防が繰り返される。
 シーンは変わり(又舞台上は同じ部屋・・・これが意味があったりする)学校を休んで心霊的な世界に没頭している二階堂(斎藤はるな)の部屋。そこに学校の共同レポートをやりにやってきた野牧(藤原幹雄)と対馬(逢澤純世)の物語。
 そんな3つの物語が何の関連もなく演じられる。そしてこの3つの話が同じ部屋で混線し、リピートされる。やがて別々に演じらている物語の言葉が重なり一つの言葉となって行く・・・それは絵描き歌となり、そしてスクリーンに現われるアニメ「アルプスの少女ハイジ」。耳をすまして聞いていると芝居の台詞がそのまま「アルプスの少女ハイジ」のアフレコになっている・・・。オチまで書いて説明しても面白さは全然伝わらないと思う。これこそ観てみないとわからないトリックのような作品。でも観終ってパズルが完成した時のような達成感が込み上げてくる。もちろん笑いと共に。そして私は感無量の思いに包まれたのであった。

 前作もやられたーって感じだったが、今回は前作以上の衝撃を受けた。素晴らしいの一言。土屋亮一は、アイデアの天才である。たまたま二人おいた隣にブルースカイがいたのだが、彼の作品を観た時も「こいつは天才だぁ〜」と思ったが、それに匹敵する衝撃を受けた。それに加えて、このアイデアに基づいて演じた役者も凄いと思った。前作を観た時は下手だなぁと思ったが(好きな下手さではあったが)、どうしてうまくなってた。前回はあまり個性を感じなかった役者達も個性が発揮されており、なんか素晴しく成長していたのが嬉しい。それにしても、この衝撃のオチ(って言ってもしょーもないオチだとも言えるが)のために費やされた膨大な労力は、計り知れないのではないか。その緻密に計算された演出には驚かされる。でも、あのオチの為なら価値はあったなぁ〜と思える。簡単に表現してしまえばラストにおいて「演劇」自体を消し去っていた。それは、演劇表現を無意味にするとかの思想的な消却ではなく、単純に芝居とはかけ離れたものに転換してしまった消却である。ブルースカイが観客を置き去って行くのとは違う、又新しい演劇の表現であろう。まぁこの芝居を演劇ではないと言っている人もいるみたいだが、そんな境界引かなくたっていいじゃん、意味ないじゃんって私は思う。開演前に流されている“上演に先立ちましての諸注意映画『ミサトとバーチャル☆デート』”もなかなか面白い企画であった。あの飛び抜けた発想は、まさにアイデアのデパートと呼びたい。って書いて、ありきたりな表現に我ながら恥ずかしいと思った・・・。一応鈴木宗男を指して「疑惑のデパート」と呼んだ事にひっかけたんだけど、あまりにも貧困でした・・・。

 余談になるが、先行購入特典としてプレゼントされたCD-Rに収録されている『ちょっぴりハッピー☆LOVE』もなかなか良かった。“趣味の世界”とは言えこんな才能もあるのね。


“シベリア少女鉄道”自分が観た公演ベスト
1.耳をすませば
2.栄冠は君に輝く

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「天保十二年のシェイクスピア」

赤坂ACTシアター 3/5〜3/24
3/14(木)観劇。座席 12-45

作 井上ひさし
企画監修 鴻上尚史
演出 いのうえひでのり

 時は天保、所は下総の国、清滝村という宿場町。この宿場町を仕切っているのが、鰤の十兵衛(小林勝也)だが、そろそろ引退の潮時と三人の娘に縄張りを譲り渡し、楽隠居を決め込むつもりでいた。心の中では末娘のお光(沢口靖子)に譲り渡したいと思っていた十兵衛であったが、建て前上「三人のうち誰が大事にしてくれるか、その心がけで縄張りを分け与えよう」と、心にもない事を口走ってしまう。その言葉に、大ぶろしきを引き、嘘八百を並び立てる長女・お文(村木よし子)と次女・お里(西牟田恵)。しかし、バカ正直のお光は白々しいホラを吹けぬまま普通の事しか言えずじまいであった。そのじれったさにカツを入れるつもりで十兵衛は「でて行け」と怒鳴ってしまう。親の心子知らずとはまさにこの事。お光は、父の言葉に従い家を出て行ってしまう。残ったお文とお里は、いずれ劣らぬ邪悪な姉妹。二人で協力してなんて事は端っから考えず、父の縄張りをぶんどり、亭主を親分に据え『紋太一家』『花平一家』と名乗り、隙あらば、相手一家を潰そうと、尾瀬の幕兵衛(古田新太)、蝮の九郎治(池田成志)を寄宿させ策略を巡らせていた。そんな一触即発の状態の清滝村に一人のせむし男が現われた。男の名は佐渡の三世次(上川隆也)。二組のヤクザが睨み合うその隙に割り込んで漁夫の利を狙っていた。・・・様々な手を使い清滝村を手に入れた三世次。次に狙ったのが、大官・土井茂平太(山本亨)の妻・おさち(沢口靖子)。おさちは、お光の双子の姉妹であった。三世次は以前、森の奥で出会った老婆(熊谷真実)に「一人で二人、二人で一人の女に気をつけろ」と忠告されていたが、聞く耳など持っていなかった。力で権力と女を手に入れた三世次であったが、その先には予言通りの悲劇が待ち構えていた・・・。きじるしの王次(阿部サダヲ)とお光の両家の垣根を越えた恋も交えつつ、シェイクスピアの作品を織り込んだ、前代未聞の時代劇。

 「リア王」「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「マクベス」「リチャード三世」とシェイクスピアずくしの凝りに凝った井上ひさし初期の脚本はむちゃくちゃ面白かった。しかし、それを壊してしまっていたのが歌と踊り。今回の企画を“劇団☆新感線”のレールに乗せてしまったのが、間違いも元だったのではないだろうか。エンターティンメントとしてこの作品を脚色し演出するのは面白いと思ったが、セリフを歌にしてしまった為、本来、脚本が持っている面白さが全然伝わらず、台無しになっていた。歌唱力がむちゃくちゃあれば、心に響くかもしれないが、そーでもない人が歌ってるもんだから、歌より音の方が勝ってしまい、何を言ってるのかさっぱりわからない。歌詞カードはあったが、いちいち見ないし。加えて、いのうえひでのりの悪さが際立ってしまったのが、前半部分の人物紹介的展開の散漫さ。本当に退屈。眠さを堪えるので必死であった。豪華絢爛なキャストに見せ場を作るのはいいが、全体の流れの中で自然に入って来るような演出が欲しいもんだ。こーゆー処が本当にヘタクソだと思う。そんな訳で前半はいいとこなしで終ってしまった。と言うか主人公である三世次が少ししか登場せず、サイドストーリーばっか。後半は三世次を中心とした1本の物語になっていたので、幾分か退屈せずに観れた。上川隆也の良さも作品に華を添えてたし。

 結果的には後半の約2時間だけで充分であった。そんな芝居。休憩をはさみ4時間近いのにはホトホト嫌気がさしてしまった。時間を短く(もちろん短かけりゃぁいいってもんじゃないけど)、面白い作品を舞台に上げるのも才能のひとつだと思うのだが、その点において、いのうえひでのりの才能のなさにはちょっと失望である。松竹とかホリプロだとかと組んで大々的な公演を打って力を発揮しているとは思うが、観る側の事も考えて欲しい。このままじゃ見捨てられるぞ!まぁそれよりも、提携公演というシガラミから足を洗って新感線らしい芝居をして欲しい。最近、新感線らしさが消えてしまっているように感じるのは私だけなのだろうか・・・。このままじゃ芝居本来を楽しむのではなくて、役者で楽しむ、芝居を観にきたのではなく役者を観にきたという感じになってしまう。そして、しょぼい演出が身についてしまい、肝心な本公演でつまらないものしか作れない・・・。そんな危機的状況も想像してしまう。今後もジャニーズを使った芝居とかが続くみたいだが、声を大にして言いたい。このままでいいのか!いのうえひでのり!目指した芝居はこんなものなのか!!

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少年社中「ドロップ」

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ 3/12〜3/17
3/16(土)マチネ観劇。座席 自由(9列目中央)

作・演出 毛利亘宏

 5人の男が突然迷宮のほうり込まれた。男達はオービット(井俣太良)、スフィア(堀池直毅)、ボウル(田辺幸太郎)、ビーズ(廿浦裕介)、リング(森大)と名づけられた。彼等はそれぞれ罪を犯していた。静まり返った闇の中、彼等の前に現れた異形な姿をしたBadmanと名乗る男(佐藤春平)は、朗々とその声を迷宮に響かせた。「ようこそ、諸君。マヤの神々が創りし、古の地下迷宮『シバルバ』へ。ここに出口は存在しない。その上、5日後には水で満たされてしまう。もし君たちが迷宮を出ようと欲するなら、君達がそれぞれ大切に握り締めている“卵”を5つ集めなくてはならない・・・。」この迷宮は女王が作ったらしいが、詳細は語られない。しかし、卵を全部集めて女王に会うことができた者は、生まれ変わり、その迷宮を脱出することができるらしい。その話を信じた5人の男達は迷宮の中で卵を奪い合う・・・。
 場所は変わり、部屋の中にマンホールの穴があるゴーストライター(加藤妙子)の部屋。彼女は部屋に引きこもり作品を記述していた。編集者(大竹えり)がやってきては作品の続きを聞き、出版物として世に出していた。その作品は「DROP」というタイトルが付けられていた。そんなある日突然マンホールから三人の女性が現れた・・・。
 そんな二つの話が交差し進行していく。迷宮『シバルバ』はゴーストライターが書いている架空の話なのだろうか・・・物語は、現実と虚構が入り乱れ混沌としていく・・・。

 とても眠い。全然理解できなかった。映画『キューブ』や『ヘルレイザー』からのパクリっぽいところもあり、感心しない。オリジナル性が薄く、映画2本を繋いで1本にした感じである。大竹えりも全然良くなかった。前回注目した近野聡子もしかり。荒削りだけど熱さを感じた初期の作品の方が何倍もいい。今回は劇団の良さを全て消し去り、陰湿で閉鎖的な作品になっていた。これじゃ楽しめない。前回に続いていい所が見れなくて、とても残念である。次回はついに一般劇場に進出するらしいが(一度出たらアトリエ公演には戻ってこれないと言う話を聞いたがどうなんだろう)、その時に持ち味を発揮できなければ、一般の客には受け入れてもらえないのではないだろうか。そんな懸念が頭をよぎる。まぁ取り越し苦労ならいいのだが・・・。


“少年社中”自分が観た公演ベスト
1.光之帝國
2.アトランティス
3.アルケミスト
4.ファンタスマゴリア
5.ハイレゾ
6.ELEPHANT〜エレファント〜
7.slow
8.ゴーストジャック
9.ライフ・イズ・ハード
10.ドロップ

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阿佐ヶ谷スパイダース「十字架」

東京グローブ座 3/13〜3/17
3/16(土)ソワレ観劇。座席D-2

作・演出 長塚圭史

 キリスト教に心頭し、心の隙間を埋めようとする加藤礼子(千葉雅子)。彼女は薬局でパートをして生計を支えていた。しかし、それだけでは家計を支えられず、店の品を万引きしては娘・真澄(真木よう子)に売らせて小銭を稼いでいた。薬局の店主・石川典彦(村上航)は礼子に惚れている弱味で、万引きは見て見ぬふりって言うか率先して商品を持って行かせていた。その行為には、一緒に商品を家まで運ぶ手伝いをして関係を進展しようという下心があった・・・。礼子の夫・加藤諭吉(中山祐一郎)は自分の性的不能から自殺願望が強く、仕事もせずに自殺未遂を繰り返していた。そんな諭吉が飛び降り自殺をしようと、とあるビルの屋上にいたところへ、盗撮しようと覗きにやってきたヤクザの宇野一高(三上市朗)、宇野の彼女・久世沼妹子(村岡希美)、弟分の野々村マコヤ(富岡晃一郎)とばったりと出会う。そこでヤクザから買った麻薬入りのドりンクを飲み、薬物中毒となっていく。諭吉は、そのドリンクの影響で自分の腹の中からカブトムシが出ているという幻覚を見始める・・・。真澄はいじめられている所を助けてくれた島村俊(当日パンフには駿だったけどどっちが正解?)介(伊達暁)とつきあい始める。しかし、悪人の俊介の口車に乗り、真澄はソープで働くまで身を落としていく・・・。麻薬ドリンクの密売人パク・チョン(加藤啓)、ソープのオーナー小松日出男(政岡泰志)宇野の命を狙う久世沼あきら(市川しんぺー)、殺し屋・犬井淳(長塚圭史)などが入り乱れて崩壊へと暴走しはじめる・・・。

 いい役者を揃えての黒い暴走はなかなか面白かった。ただ内容的には深みがなく、だから何?って言いたくなるくらいに作品から訴えるものは見つからなかった。某誌のインタビューで「ある状況に置かれた人間の感情や、説明し難いような人間関係に興味がある。物語はそれを表現するための手段。」と語っていたが、折角人間の暗部を見せつけているのに、心に訴えるものがないのは残念でならない。母と娘が仲を取り戻すっていい話の裏で、全てにおいて救いがない。その暗い結末をシュールな笑いに包む。そんな結末は大好きなのだが、ズシンと重くもなく、かと言って軽いわけでもない、中途半端な重さなのである。どうせ救われないのならば、もっと徹底的に追い込んで暴走させて欲しい。

 それにしても役者が素晴らし過ぎる。これだけいい役者を揃えたら面白い作品も出来るっちゅーもんです。まぁ生かしきれない演出家も中にはいるので(誰とは言えないけど)、役者の良さを引き出しているのは長塚の演出力の成せる技だと思う。ただ、役者の新しい面を引き出してはおらず、今までの既成イメージを引き継いだだけなのが残念ではあるが・・・。でも演出力は認める。後は脚本がもう少し良かったら素晴らしい作品が出来るのに残念だ。しかし、これからどんどん伸びてきて、演劇シーンを先導する存在になっていく予感は確かにある。親の七光りじゃなく実力で。


“阿佐ヶ谷スパイダース”自分が観た公演ベスト
1.十字架
2.スキャンティ・クラシッコ
3.イヌの日

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毛皮族「踊り狂いて死にゆかん」

麻布die pratze 3/19〜3/20
3/19(火)観劇。座席 自由(2列目中央)

脚本/構成/演出 江本純子

 毛皮族のレビューショー“DEEP KEGAWAZOKU”の第2弾。
 前説は、「毛皮のツィゴイネルワイゼン」というレビューのチケット売り場のシーン。もぎりに座る柿丸美智恵。チケットを買って観客(出演者)が入っていく・・・って感じで始まり始まり。けだるさたっぷりの柿丸美智恵が最高。

【第1部】
●オープニング『我ら天国まで行かん』&パワーマイムショー『ワンワンパニックJohon&Betty』
・・・見えない犬(声:江本純子)を巡る2家族の物語。
●『私は風 第2章〜毛皮ハレンチ学園の巻〜』
・・・毛皮大和という名の高校のバレーボール部の物語。変態顧問役で土屋亮一(シベリア少女鉄道)客演
●『原宿純愛物語wihtCCBれびゅ〜』
・・・CCBの曲で原宿物語。
【第2部】
●『踊り狂いて死にゆかん』
・・・偶然の出会いで家族になった4人を巡る物語。
●グランドフィナーレ
という感じ。

 面白かったかと聞かれたら、そうでもないって言ってしまうかもしれない。本公演ではなくレビューという事もあり、歌って踊ってが中心の作品群なので、一般的な芝居を期待して観てしまうと、そんな感想が口から出てしまう。でも、それは心にもない偽りの感想。自分としては大好きなのである。大満足とまでは行かなかったが、バカすぎるゴージャスさと、どことなく漂うチープさの入り交じった匂い、それに独特の美意識とエロとサイケがゲップの出る程詰め込まれている。もーこれでもかってくらいに。そんなダークな流れが、きらびやかな宝塚のミュージカル風にブレンドされる。言うなれば不良同士が、お互いのいい所を知りつつも葛藤し、本気で対決してしまうが、喧嘩の後は和解してしまうみたいな(わー抽象的)融合を見せる。よくわかんないそんなパワーが大好きなのである。作品としては『原宿純愛物語wihtCCBれびゅ〜』が一番面白かったが、自分のやりたい事を盛り込んだ、いや盛り込み過ぎた公演。

 芝居も良かったのだが、今回の一番の収穫は、町田マリーの素晴しさを再確認できた事。綺麗なのに尋常じゃない演技。色っぽく艶めく姿にメロメロである。噂によると『私は風 第2章〜毛皮ハレンチ学園の巻〜』の中で、一瞬生乳首を出したとか。う〜ん、見逃した・・・ってエロおやじ度200%。

 あえて苦言をたれてしまうが、今回の公演の減点要因はスタッフワークの悪さ。開場40分押し、開演40分押しで終演11時ってのはひどい。ひど過ぎ。まぁスタッフも必死にやっているのであまり文句は言いたくないが、もう少しどうにかして欲しかった。でも、過ぎてしまえば思い出話。これが、毛皮族“恐怖の初日”伝説の始まりでもあったわけで、立ち合えた事をいい経験と思い、後々まで語り続けよう・・・。って大げさに書いてみました。


“毛皮族”自分が観た公演ベスト
1.ハンバーガーマシーンガーンホテールボヨーン
2.踊り狂いて死にゆかん

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故林広志prd.
「親族代表ライブ『人間力学ショー#3“heavy claims”』」

下北沢OFF・OFFシアター 3/19〜3/24
3/21(木)観劇。座席 自由(最後列:招待)

作 故林広志
演出 故林広志+親族代表

■駅からの風景
 街頭で待ち合わせをしている別々の男3人(親族代表)。携帯電話で待ち合わせ場所の連絡を取っているらしい。漏れ聞こえる3人の会話・・・で、第三者が聞いていると、その会話の混線具合が妙にシンクロして、可笑しいほど辻褄が合っていたりして・・・。
■ホテル・グランドール
 とあるホテル。大人数の予約を入れてしまったアルバイト(野間口)を叱る社員(竹井)。別館に入れれば済む事だとアルバイトは対処方法を説明するが、理解力のない社員は理不尽に叱るばかり、って言うか聞いてもいない。支配人(嶋村)もやってくるが輪をかけて理解力なし。そんな状況を打破すべく新支配人(犬飼)がやってくる。理解力ばつぐんの彼のおかげで、誰にも話していない、アルバイトの知られたくない苦労話までをも、みんなが理解してしまい・・・野間口の突っ込みが見ものな一遍。
■波止場でYES!
 波止場町。誰にでもYESという主体性のないマイトガイ(嶋村)が、人々のトラブルを余計に混乱させていく話。
■お通夜
 お通夜にやってきた訳ありの女(松永)。しかし彼女が誰なのか誰もしらない。聞きだそうと右往左往する親戚一同の混乱。
■墜ちぎわ
 適地上空の戦闘機、そのパイロット達(親族代表)。敵機との交戦で墜落の危機に。落下間際、最後の言葉を隊長にかけるのだが・・・。人生最後と思うと心に止めておかなくちゃいけない事まで話してしまうってのが心情なんでしょう。でも、聞きたくもない話までされて、キャプテンは、へこみっぱなし。
■真昼のお客様
 エッセイスト(野間口)の半生を取り上げるテレビ番組の収録。しかし、エッセイストの人生より、男性アナ(嶋村)の人生の方がとんでもなく波瀾万丈。その上、女子アナ(松永)とも不倫関係だったりして、スタジオ内は大混乱。一番地味な人生を送っているのは、実はエッセイストだったりする話。
■もちぐされ
 倒産間際の会社。悩んでいる社員(竹井、野間口)を他所に、地味にワープロを打っている社員(嶋村)がいる。実は彼は、スパークマーンというヒーローなのだった。でも、その力は、会社存亡の危機には何の役にも立たない・・・。宝のもちぐされの話。
■キャスターマン
 ニュース・キャスターの話しなんだけど、『真昼のお客様』と記憶がダブってしまい思い出せない・・・(ごめんなさい)
■フルサト
 ちょっとおとぎ話って言うか、トワイライト・ゾーン的な作品。それもダークな。伊藤美穂のおばあさん役が絶妙。
■ごめんね、いずみさん
 テレビ番組。その番組はドキュメンタリー番組のはずなのに、すべてでっちあげ、そんな番組に文句をつける進行役の金原いずみ(松永)。でもその金原いずみさえも実は偽者だったりして・・・。
■ヘビー・クライム
 デパートの苦情電話窓口。クレーム処理の男達(竹井と野間口)が対応に追われている。しかし、平謝りは口先だけ。電話をおいた途端、踵を返したように高飛車に出る。そんな男達。そこに謝ることに自信がない新人(嶋村)がやってくる。先輩に感化されクレーム処理をこなしていくのだが・・・。

 故林広志prd.の公演の中で一番好きな『親族代表(嶋村太一・竹井亮介・野間口徹)』の3回目の公演である。ゲストにナイロン100℃の松永玲子、動物電気の伊藤美穂、ガバメント・オブ・ドッグスの犬飼若浩を招いての下北沢初進出記念公演。って別に記念公演なんて名打ってないけど、自分的にはやっと下北沢で公演を打ってくれたかぁ〜と嬉しい限りの公演であった。内容も故林テイスト満載で全体的に安心して楽しめる。前作より面白さもアップ。ただ、ゲストの持ち味に助けられたという感じも無きにしも非ず。特に松永玲子の存在はでかかった。
 平均点はクリアしている、いや、それ以上の公演だったが、もっと何かが欲しい。野球に例えるなら、スローカーブじゃなくて、ストンと落ちるフォークボールのようなキレの良さが欲しい。いや胸元をえぐるようなビンボールすれすれの球でもいい。打者を三振させるには緩急ある球種で攻めないと。ってなんか抽象的にまとめてしまいました。


“故林広志prd.『親族代表』”自分が観た公演ベスト
1.人間力学ショー#3“heavy claims”
2.人間力学ショー#2〜荒野のまとめ役〜
3.人間力学ショー
4.真顔のわたしたち〜親族代表/漢字シティ・プレゼンライブ〜
 

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MONO「橋を渡ったら泣け」

シアターサンモール 3/21〜3/24
3/23(土)マチネ観劇。

作・演出 土田英生

申し訳ありません。まだ書けていません。

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「You Are The Top−今宵の君」

世田谷パブリックシアター 3/1〜3/31
3/23(土)ソワレ観劇。座席 H-11

作・演出 三谷幸喜

 舞台はとある音楽スタジオ。笹目にしき(戸田恵子)の七回忌の追悼コンサートのために曲を作ろうと、作詞家の杉田吾郎(市村正親)は作曲家の前野仁(浅野和之)をスタジオに呼んだ。以前は二人で笹目にしきに曲を作り、ヒットを連発していたが、彼女の交通事故死をきっかけに疎遠になっていた。そんな二人が久しぶりに再会し、曲を作る事になった。しかし、杉田の都合で期限はたったの一晩。果たして曲は完成するのだろうか。そんな状況の中、にしきの本当の死因は、事故なのだろうか自殺なのだろうか、という疑問を口にした杉田。そんな会話から過去を振り返っていく二人。過ぎ去った過去は美化するもの。序々に話が膨らんでいき、お互い負けじと、記憶に脚色をし始める。そして明らかになっていく三人の恋愛関係・・・。死んだ女を巡る二人の男のちょぴり切ないロマンチック・コメディ。

 鹿賀丈史が、初日直前に盲腸で入院降板してしまった問題の舞台。三谷作品では『巌流島』で、脚本の遅れから陣内孝則が降板した事件があったが、今回は盲腸で入院という不測の出来事。直前の降板だったので、キャラクターを作り直す時間もなかっただろうと思うが、代役の浅野和之が大健闘していた。鹿賀丈史より、役のイメージにあっていたと思うのは自分だけだろうか。ただ、鹿賀丈史が演じたなら、役柄とのギャップを楽しめたのではないだろうか、と勝手に想像してしまう。役のイメージでは浅野和之にピッタリだと思うが、イメージと違う行動の方が、いかにもって人が起こすより、何倍もおかしいに違いない。そんな点が何箇所も見てとれて、降板が残念でならなかった。

 で、一番残念だったのが、ラストで作り上げた曲「You Are The Top(作曲・井上陽水)」を二人で歌うシーン。やはり鹿賀丈史の美声が聞きたかったと思うのは、無いものねだりなのだろうか・・・。でも、決して浅野和之が悪かったのではないので、誤解なき様に。急な代役を見事に自分のものにした凄さは、さすがプロ。終演後の拍手が一番大きかったのもうなずけると言うもんだ。他の役者も負けじと素晴らしく、市村正親は、膨大なセリフを軽々とこなし、明るいお調子者ぶりを発揮する。その駄目男ぶりがいい。戸田恵子は二人に出会った若かりし頃から、死の直前までを十数回着替える忙しさで、変貌をみせる。演じている年齢に見えてしまうから凄い。

 物語的には、ちょっといい話っぽいところが三谷幸喜には似合わない、と言うか下手糞。特に恋愛感情の描き方が駄目。やっぱ三谷幸喜の書く恋愛物語は、どうも面白く感じない。昔テレビドラマで恋愛ものを書いていたが、それも全然面白くなかった。って言うか途中で見なくなった。恋愛ものでも、三谷幸喜ならではの、転がる雪玉がだんだん大きくなる様な、も〜手に負えないってシチュエーションが見られれば面白かったと思うのだが、あまりにも普通の展開で拍子抜け。でも、今回の作品は、そんなドタバタ劇じゃなく、しっとりとした大人のドラマなので、自分の期待が間違っていたのだとは思う。笹目にしきが死んでいない状況で、三人があたふたすれば、そんな展開になっていたかもしれないが、恋物語を軸に、実は男二人の友情を描いていたのだから、これでいいのであろう。でも、これが鹿賀丈史だったら・・・と、しつこいが思ってしまう。仮に浅野和之だったとしても当初からの配役だったら、あてがきの天才・三谷幸喜のこと、もっとうまく演出していたに違いない。本当に残念な公演であった。いつの日か市村、鹿賀コンビで再演を観られたらいいのにと思う。それか、ちゃんと浅野が演じる前提でのキャラクター設定で観てみたい。

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珍しいキノコ舞踏団
「フリル(ミニ)ワイルドin the Hara Museum Garden」

原美術館 3/26〜3/31
3/30(土)ソワレ観劇。座席 8列目中央

振付・構成・演出 伊藤千枝

 物語性をあえて書くなら、一人の少女(伊藤千枝)が寝静まった後、その家の庭に現れた妖精たち(山下三味子・井出雅子・山田郷美・佐藤昌代・飯田佳代子)が、無邪気に遊んでいる・・・って感じなのだろうか。まぁ、あえて物語を追う意味はないのだけど・・・。でも、妖精と言うより単なる「オンナノコ」って感じかな。生きている人間ではない、かと言って亡霊ではない、じゃぁ何?で、妖精って考えてみたが、そんな具体的な存在でもない。そこで、頭に浮かんだのが「オンナノコ」。女の子と書くと生っぽい。そんな生っぽい存在ではない。いや、「存在」すら希薄なイメージなので「オンナノコ」。抽象的だが、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。おもちゃ箱に眠っているいろんなおもちゃをひっくり返して、ケラケラ笑いあう「オンナノコの遊び場」をコンテンポラリーダンスでみごとに表現した傑作。

 前回(って言ってもすごい昔、1997年に観た『もうお陽さまなんか出なくてもかまわない〜ジュリロミREMIX』が前回・・・)観た時はそれほど面白く感じなかった。しかし、今回観て終始ニコニコしている自分がいた。なんか感動してジンッと目頭が熱くなった。すごくいい。何がと具体的に言えないが、心が和やかになって帰路に着いた。観て良かったと心底思った。場所も仕掛けもダンスも最高品。終演後、小道具や美術を眺めに、中庭をぶらり出来たのも面白さに拍車をかける。心に響くって言うか、心に暖かいものが湧いてくるような、そんな公演であった。


“珍しいキノコ舞踏団”自分が観た公演ベスト
1.フリル(ミニ)ワイルドin the Hara Museum Garden
2.もうお陽さまなんかでなくてもかまわない。〜ジュリロミMIX〜
 

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