98年7月はこの4公演

 


遊気舎「タッチャブルズ」

ザ・スズナリ 6/24〜7/5
7/4(土)観劇。座席 自由

作・演出 後藤ひろひと
成沢優子(楠見薫)はカポネと呼ばれる大悪党。その担当になった根守(ネス、西田政彦)も、これ又金で動く汚職刑事であった。根守はカポネから金をたんまりせしめて引退しようと計画をたてる。相棒として栗(マローン、谷省吾)、針俣(マタハリ、岡田美子)、山守(山本忠)を引きつれ計画を実行に移したのだが…。そんな、買収してほしくてたまらない“タッチャブルズ”を描いた作品。

ハイパーギャグコメディと名打った公演にしては、つまらなかったと言うのが本音。ストーリーにひねりもなく、後藤ひろひとの作品にしては薄っぺらという印象が残る。久々に名(迷?)キャラクターが大挙して登場していたのはファンにとっては嬉しいのだが、それに頼ってしまった感じもなきにしもあらず。そんな中でむちゃくちゃ可笑しかったのが、根守の相棒(刑事としての相棒)役として登場した羽曳野の伊藤(久保田浩)。ストーリーにしっかり絡みながらも、キャラを生かし、ボケまくる。本当に最高のキャラクターであると絶賛したい。でも、話を壊す名人でもあるんだけど。
今回は定番の“昆虫くんショー”がなかったのが残念だったが、テレホンゲストで登場した後藤ひろひと・三上市朗が多いに笑わせてくれたので、差引ゼロ。


“遊気舎”自分が観た公演ベスト
1.びろ〜ん(Belong)
2.源八橋西詰
3.じゃばら
4.ダブリンの鐘突きカビ人間
5.人間風車
6.イカつり海賊船
7.タッチャブルズ
8.PARTNER
 

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HIGHLEG JESUS「男がいて、そして女がいて…」

ウエストエンドスタジオ 7/9〜7/13  
7/9(木)観劇。座席 自由

構成・演出 河原雅彦
『HIGHLEG JESUS』という劇団は、嫌悪感を抱きつつも観てしまうという不思議な魅力を持った劇団である。怖いもの見たさという点ではホラー映画同様であるが、ある意味ホラー以上に鳥肌が立つ恐怖を味わえるかもしれない。今回の公演のサブタイトルにはHIGHLEG JESUS「愛」の公演などと書かれていたのだが、どこが“愛?”と疑問を投げかけたくなる程いつも通りの公演だった。公演パンフにも「『愛』とは無縁のものになってしまいました。」とは書かれていたが、その通りであった。まっ、愛関係の作品がなかったわけではないですが…。
今回は男優陣を月組、女優陣を星組に別けた公演方法をとっている。それじゃ星組のインパクトが弱いんじゃないか、と思っていたが、ところがどっこい加藤直美を客演に招き、パワーアップを謀っていた。って加藤直美が客演するってんで観に行ったんだけど。

とりあえずプログラムを列挙。
1.オープニング〜不倫の果てに
2.「男がいて、そして女がいて…」オープニング・フィルム
3.H・J 版ゆるゆるネルトン紅鯨団<月組>
4.これでご満足?<星組>
5.全日本なめプロレスリング
6.直美が仕切る。女を仕切る。<星組>
7.夏体験物語(監獄編)<星・月組合同公演>
8.女優・新井友香、中野に散る…<星組>
9.ワールドカップINジュラ紀<月組>
10.越権行為[演出家VS女優陣]<星組>
11.キシジュンの作文コーナー<月組>
12.SEIRI-SOULでYEAH!<星組>
13.より男らしいキノコ武闘団<月組>
14.ENDING〜愛の旅路

これらのタイトルを見ても、いつも通りの公演というのがわかるというもの。
しかし、今まで観た公演の中では今回が一番おもしろかった。映像のセンスもアップされていたし(初日と言うことで中盤の映像の音がでなかったのは残念だったが)、構成のセンスも良くなっている。面白い事をやっているのに笑えなかった昔と比べると雲泥の違いである。ただ、自分がハイレグに慣れてきたということも事実ではある。昔は警戒しながら観ていたが、今では裸で乱入されても、笑顔でいられるほどに堕落(成長?)してしまった。で、今回の作品も客席乱入が多い。まずオープニングで乱入。(それも遅れて来たお客の為にリプレイされる)続いてネルトンでも乱入。そして男らしいキノコで乱入と乱入づくし。ちんちんを目の前でぶらぶらさせられるのは困りもんであるが、中坪由起子の胸に手を無理やり押し付けられたのは、ちょっとラッキーだったと言えるかもしれない。
それはさておき、今回は女優のキレ方が良かったのが印象深い。加藤直美が導火線になったのか、ヨゴレ役が非常にいい。男優陣に引けをとらないインパクトであった。で、肝心の加藤直美であるが、色っぽくていい。見に行った甲斐があったちゅーもんです。って今回は褒めっぱなし。でも、人に勧められる劇団ではないということには、変わりなし。


“HIGHLEG JESUS”自分が観た公演ベスト
1.男がいて、そして女がいて…
2.隷族08
3.桃色慢遊
4.若くして死ぬしかない

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少年社中「El Alquimista〜アルケミスト〜」

大隈講堂裏劇妍アトリエ 7/16〜7/22
7/17(金)観劇。座席 自由

作・演出 毛利亘宏
“無実の罪で少年はとらえられた。死刑執行の前夜、一人の男が夢の中にあらわれる。彼は言った「まだ何も始まってはいない」と。次の朝、少年はその前兆に導かれるまま、自分の運命を知る旅に出る。”(チラシから引用)
って書いてもよくわからないですが、簡単に書くと、草原で石(エメラルドタブレットと呼ばれるものらしい)を拾ってから、宝物を探す夢ばかり見る羊飼の少年サンチャゴ(木村慎一)が錬金術師(アルケミスト)になるまでの、冒険やら恋などを描いた作品。あっ、錬金術と言っても金を作る職人ではなく、どちらかと言うと自然の力を利用できる魔法使いって感じ。

早稲田劇研の新アンサンブルとして旗揚げ、第一回目の公演である。第一回公演と言っても試演会が好評だったのか客席は満席。劇研のアトリエで観劇するのは久しぶりだが、ここで観た『ブレイメン』という作品が、自分の演劇熱を発病させるきっかけになっただけに、この場所で観る事自体ワクワクする。そのワクワクを裏切る事なく、芝居は自分の肌にあう面白いものだった。脚本自体は新鮮味がなく(いや古くさいとまで言えるかもしれない)今だに愛だの恋だのを語っているが、何か魅力がある。役者も個性があり(特に猿顔の役者がいい。が、名前忘れた…井俣大良ってのがそうかなぁ?)、演技力もある。演出の仕方が第三舞台的であったり惑星ピスタチオ的であったり、まだコピーぽくはあるが、ライティングのうまさに助けられ面白さを引き出していた。今後新しい自分達だけのオリジナリティが生まれた時、大いなる飛躍が期待できるのではないだろうか。そんな可能性が見える劇団なので、今後が大いに楽しみである。

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R.U.Pプロデュース<月影十番勝負 第四番>
「唇からナイフ」

紀伊國屋ホール 7/16〜7/24
7/22(水)観劇。座席 H-8

作 中島かずき
演出 鈴木裕美
科学者の水ヶ瀬亀吉(六角精児)は、羊のクローンを研究中に誤って人間のクローン(メイ、高田聖子)を作ってしまう。所長の金城景虎(加納幸和)に見つかったら処分されてしまうと思った水ヶ瀬は、自宅の冷蔵庫に隠すのだが、友人の木本竜也(久松信美)に発見され、おまけに宅配ピサ屋の土橋キミ夫(大倉孝二)にまで見られてしまう。所長に発見されない為の隠蔽工作だったが、実は人間クローンは所長が作らせたものだった…。こんな前提を元に心理学者・火野鳥羽子(長野里美)も交え、クローン人間メイの短い一生と、メイを取り巻く人々の葛藤を描いた作品。

“月影十番勝負”は劇団☆新感線の高田聖子と座付作家の中島かずきが「役者で見せる芝居」を作ろうと発足させたプロデュース公演。その趣旨通り今回もすごい役者を揃えた。みんなうまい。が、今ひとつ絡みが弱く感じた。なんか真実味が伝わってこないというか、お互いの関係性が、文章で書かれただけのものでしかないみたいな、希薄な感じを受けてしまった。どこまで練込んだ舞台なのかは知る術はないが、本の読み込みはしても、実際の練習ができてないみたいな印象が強い。そんな感じなので舞台に引き込まれる事なく、幕が降りてしまった。退屈ではないが面白くはないと言った、なんとも中途半端な気持ちだ。
加えて人物描写が弱い。ラストでクローンの遺伝子が金城のものだと告白され、その遺伝子も父の遺伝子を抜き母の遺伝子だけのものに自分の記憶遺伝子が付加された完璧な遺伝子だと言うのだが、何故そこまで父を憎んだのかが描ききれていず、気持ちが伝わってこない。金城は完璧な自分に殺されるのが本望だ(これが、チラシに書かれた“殺して殺してってあの人が言うの…”の意味だったわけだ)と言うのだが、その気持ちも尚更伝わってこない。このテーマなら、笑いを排除して、恐怖を増長させた方がおもしろかったのではないだろうか。
最後になるが、大倉孝二がいい味出していたと特筆したい。

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