プロト・シアター 12/6 M/S
12/6(土)M 観劇。座席 自由
初めて観る劇団。男のエゴに振り回されている女の話でもあるし、単にエゴだらけの男の話でもある。正直言ってテーマはよくわからない。そんな男二人と女二人の物語に、夢をかなえる風船がからんで話は進む。
つまらなくはないけど特におもしろくもない。ストーリー展開も時間の流れがわからなくチンプンカンプン。主人公達のセリフもエゴだらけでムカつく。そんな中で一人だけ面白かったのは、やくざな金貸しの田中という男。「こんな男に金を借りたのがいけなかった」という主人公に対し、薄ら笑いを浮かべ「貸した俺が悪いんじゃなく、借りたお前が悪いんだろう」と言う。(セリフはちょっと違うかもしれないけど、そんな意味あい)まったくその通りである。その男だけは良かったんだけど、あとはスカ。でも最後にはこの男も、夢がかなう風船に10億円と願い、10億円分の1円玉の洪水の中で消息不明で終わるというガッカリなオチ。これが題名の意味する“銀色の山”なのかなぁ。なんかつまんねえの。
羽曳野の伊藤の前説から始まる今作品は、乳毛房江は登場するものの、いつものキャラクターを排した異色作。
物語は、売れない童話作家が、公園で自分が作った奇妙奇天烈な童話を子供達に聞かせている。それを物影から聞いていた青年(ちょっと頭が弱い)は、聞いた童話の主人公になりきってしまう。そんな事は特に気にせず順風満帆に日々を暮らしていた童話作家だが、ある日突然歯車が狂い出す。友人の裏切りや親しくなりかけた女性にも去られ、失意のどん底。そんな時、目の前にその青年が現われ「話をしろ」とせがむ。怒りの頂点にいた作家は、自分の周りにいる人々を殺していく不死身の殺人鬼の話をする。(この作家の作品名がプロレスに因んだ名前というのから察すると、この殺人鬼の話の題名が「人間風車」ということになるんかな)話を聞いた青年は不死身の殺人鬼に変貌する・・・前半はいつものおかしさ。加山雄三パブとか大田王の公演を観てないとそのおかしさがわからないものなどあるけど、おかしい。後半は「遊気舎史上、最も戦慄する空間が姿を現した・・・」と言っている通り、恐怖劇になっている。この落差と言うかギャップがいつもと違った面白さを出していた。「今回はストーリーで見せるでぇ」ちゅー感じですか。自分的にはおかしい遊気舎が大好きなのでちょっと物足りなさはあったけど、笑いは大田王でやったからまっいいか。でも、恐怖劇と言っても恐怖度に関してはまだまだ足らない。ラストはもっともっと、いやーな終わり方にして欲しかったと思うし、出来たと思う。劇空間だとしても、もっと恐怖に工夫は欲しかったと感じる。あの程度のラストでは恐怖が持続せず納得できない。
余談になるけど、羽曳野の伊藤の登場が前説だけで寂しかったので「ピーボン音頭」のCDを予約してしまいました。ははは。でも知人のKさんは大阪で「ピーポン音頭」のデモテープを買ったにもかかわらず予約してました。さすがだ。
“遊気舎”自分が観た公演ベスト
1.びろ〜ん(Belong) 2.じゃばら 3.ダブリンの鐘突きカビ人間 4.人間風車 5.イカつり海賊船 6.PARTNER
舞台は大学の学祭の控え室。プロデュース研究会の学生、浅井(六角慎司)は爆裂兄弟(人気上昇中の2人組のコメディアン)の前説で呼んだミックジャガース(木下明水・長谷川朝晴)とマネージャー(石倉力)を迎え入れる。別室で行われる講演会で講演を行う大倉(坂田聰)も到着。しかし、メインである爆裂兄弟は現れず、来たのは弟子のおじさん木暮(マギー)であった。小暮の話によると爆裂兄弟は収録が押してしまい学祭に来る時間がないとの事。一悶着あったが、結局ミックジャガースが2時間舞台を持つことに落ち着く。が、開演までは1時間と少ししかない。ネタもない。そんな公演までのドタバタをリアルタイムで描くシチュエーションコメディ。ジョビジョバを観るのは初めてだが、なかなか面白い。噂では「ぬるい笑いだ」という事だったので、つまんないかと思っていたら、なかなかナンセンスで好きだったりする。そこそこ面白いってとこが、ぬるいという表現につながったのかもしれない。まっ、今回はいつもと違って『芝居』をしているとの事だったので、いつもはどんな事しているのか知らないので、一概に評価できないけど、観続けてみようと思える劇団だ。役者もみんな個性があっていい。最後のあいさつで「起承転結じゃなくて、起承転メガネ」と言っていたが、まさにその通りの結末。ちょっとそのメガネがしつこかったのが珠に傷だったけど。
メアリ・シェリー作「フランケンシュタイン」を元にいろいろな要素を取り込みナイロン風に仕上げたホラー・コメディ。飛び散る血飛沫、回転舞台などの大がかりな舞台装置、怪物のメイキャップなどその点においても2度と再演しないかもしれないので、必見作。って今ここで書いても遅いけど。オープニングは、怪物を作ったあとの話をいきなり描いたかと思うと、長々夢を描いているだけだったりして、こりゃぁ公演時間が3時間になるわなという感じでスタート。でも、全体的にみても3時間は長い。もっとそぎ落として凝縮して欲しかったと思う。
原作を読んでいないので、どこまで原作に近いかわからないけど、ケネス・ブラナー作のフランケンシュタインが原作に近いとすると、いろんな点で新しい要素を付加していたと思う。(それらが原作通りだったりしたら自分の知識不足ということで・・・)怪物にされた男の過去を描いたり、連続殺人を絡ませていたり、怪物作成の話を中心にしなかったのも目新しかった。怪物が勝手に生き返ってしまったなんてのもナンセンスでいい。でも、殺人鬼マンドレイク・モロダー(みのすけ)を登場させたのはちょっと疑問。殺人鬼の殺人が怪物が犯した殺人と勘違いされるという事での登場ではあると思うけど、殺人鬼が出てくる事によってあえて物語がフランケンシュタインでなくともよかったような感じになってしまった気がする。切り裂きジャックでもよかったんじゃないかと。そんな事はあるけど、大倉孝二の怪物は最高。頭の弱い怪物をよく表現していた。こんなコメディタッチの怪物もいいけど、ちょっと本格的な怪物役もやって欲しい風貌であった。あと犬山犬子演じるせむし男アイゴールもいい。「ヤングフランケンシュタイン」のせむし男を彷彿させるボケぶりでいい。助手のインガ(峯村リエ)のボケもなかなか。そうみていくと役者で3時間もったという感じがしないでもない。あっ、内容も面白かったんですよ。ナンセンスな会話も良かったし。でも、あえてフランケンシュタインにする意味が薄いナンセンスさではあったけど。
フランケンシュタイン博士も人造人間だったとするラストはちょっとやられたという面白さを感じる。でもどうせならフランケンシュタインを元としながらすっかり別の物語にしてしまった「ロッキー・ホラー・ショー」みたいにおもいっきりはじけた内容にして欲しかったとも思う。
パンフレットのケラの言葉には、パロディにはしたくないと書かれてあった。なるほどと思える。恐怖より不安や混乱、未完成、矛盾に魅かれ、幻想怪奇文学とナンセンスの中間をいけたら面白いともあったので、その点では意図通りの作品にはなっていたと思う
“ナイロン100℃”自分が観た公演ベスト
1.カラフルメリイでオハヨ'97 2.フランケンシュタイン 3.下北沢ビートニクス
テーマは『死』。でもそれは、生きるべきか死すべきかなどと深刻に悩むものではなく、パンフレットにも書かれているように「死んだらどうなるか」という中学生レベルの「死」。なもんだから、今作品は大人が中学生を演じるという気持ち悪いことになってしまったらしい。でもそれが奇妙でいいんだけど。で、その奇妙な中で、一条の光が伊勢志摩。伊勢の少年役を久しぶりに見たが、いい。パンフレットの女学生は見たくもないという感じだけど学ラン姿は最高。中性的な魅力大爆発と言う感じ。まっ、内容にはあんまり関係ないけど。物語はTHE END OF THE WORLDと書かれた世界の終わりなのだろう未来(京王戦争勃発中との事)と、中学生のぬるい世界(幻想上の世界でもあり死後の世界にもなっていたりする)が交差し、つながりをもって進行する。ラストでは、中学の世界では自殺、未来の世界では絞首刑、その二つの世界の死を伊勢志摩を宙ずりにして舞台を回転させ見せている。しかし、イマイチ「死」の何を伝えたいのかわからなかったというのが本音。「ファンキー」で見せた鋭い視点は今回見る事ができなかった。死んだ人間を蘇生させる蘇生装置デルタライフ。それを付けている人間の事をIS(生きているし死んでるしの意味だと思う)と呼び、その人間の人権とか触れたところは良かったんだけど話は深く展開はしなかった。だからなんか中途半端なB級SFになってしまった所もなきにしもあらず。過度の期待もいけなかったんだと思うけど。
“大人計画”自分が観た公演ベスト
1.冬の皮 2.ファンキー 3.愛の罰(初演) 4.カウントダウン 5.ちょん切りたい 6.ずぶぬれの女(ウーマン・リブ) 7.ドライブイン・カリフォルニア(日本総合悲劇協会) 8.生きてるし死んでるし 9.インスタントジャパニーズ 10.紅い給食(大人計画・俺隊) 11.イツワ夫人(部分公演) 12.猿ヲ放ツ 13.愛の罰(再演) 14.SEX KINGDOM 15.ゲームの達人 16.熊沢パンキース(部分公演)
今回の公演で15回目だというのに、元劇団員の菊池未帆嬢と知り合いだというのに、今回が初見(過去の公演のビデオは見ているけど)。
いやぁーくだらなくて最高。世界一の喜劇と言い切るだけのことはあります。まぁ世界一は言い過ぎだけど、くっだらないのが大好きな私には、もってこいの劇団みっけという感じ。人をkgで表現したかと思うとcmだわ、ワットだわで表現したり、暖房を入れた途端エアロビクスのダンスが始まって「ちょっと温まったかな」などと言ったり、くっだらねぇーと笑みがこぼれまくり。それらくだらない事が微妙なつながりをもって進行する。ショートコント集という感じだが、その暗転に見せる映像もおかしい。テンポもいい。役者も個性があっていい。女性だけの劇団だが、おやじのハゲズラが似合う女性が多いのにも笑わされる。女性として登場する時は綺麗だったりするから、余計におかしい。今回は「げんこつ喜劇の道しるべ」と言う事で昼げんこつと夜げんこつの2部構成。どっちもくだらない。夜の方がダークさが多いという感じ。自分的には昼の方が脱力感があって笑えた。
日曜のマチネで行ったのだが、客入りは客席の半分の50人程度。もっともっと客を呼べる劇団だと思った。劇団の方針は知らないがもったいない。私が口出しする事じゃないけどさ。
前川麻子と美加理の二人芝居。
舞台はアパートの一室。部屋の中にはゴミ袋やら、ぬいぐるみ、新聞広告、食べた後の残骸などが散乱している。その中に埋もれるように生きている二人。生きていると言っても失禁してさえ動くのがおっくうな気力のかけらも残っていない二人。そんな二人が何故そこにいて、何故そんな状態になったのか物語の終盤まで語られない。「少しづつゆっくりと自分でも気がつかないうちに腐っていく」という台詞が心に重く響く。その緊張した空気がいい。その空間は昼なのか夜なのかすらわからない。そして終盤、父親が残したサラ金の借金返済から逃げる為に部屋に閉じ込もっていると言う事や部屋にいる二人が姉妹である事などが判明していく。徐々に判明していく展開は面白い。判明した途端、その状態になる前の葛藤が見たくなった。そう思わせる演出に前川の凄さを感じた。ラストはぐったりとした姉に向かって「上見てごらん、綺麗だね」という台詞で終わる。その言葉の意味は「死」なのか「狂気」なのか「救い」なのか、見ているものの判断にまかされるラストになっている。借金程度で何故そこまでという疑問がないことはないが、狭い空間をうまく生かし現代のダークな一面を描いていた。
姉を演じた美加理は本番前まで食中毒で入院していたという。その表情が痛々しく感じた。ごくろうさまと言いたい。
この公演で今年の観劇納め。来年もいい劇と出会えるといいなぁと思う。
1.ソウル・オブ・クリアー 2.ソウル・オブ・コーヒー |