97年10月はこの9公演

 


惑星ピスタチオ「WORLD」

シアターアプル 10/8〜10/14  
10/11(土)観劇。座席 6-9

毎回無料配布されるパンフレット。毎回楽しみにしているのだが、今回は何か変。その不安な気持ちで開いてみると、中身はポスター。ラッキー! なはずはない。壁に穴があいてしまったとか、余程の事がない限り貼らないでしょう。センスも悪いし。
パンフでこけたので、不安いっぱいだったが、その心配はみごとに的中。新しい試みをする心意気は買いますが、あれはないでしょう。説明的なせりふ、文学的なせりふの多用によって、いつもの心地よい疾走感は微塵も感じず、ピスタチオの持ち味を完全に失っていたと思う。正直言って前半数分間は眠ってしまった。エンタティメント演劇こそピスタチオのいいところであって、それを生かさない芝居は失敗だと思う。それに映画にこだわり過ぎたのも失敗であったと思う。「映画的表現を芝居でしてみました」的な所から脱却もそろそろ必要なのではないか。
不満ばかり書いているが、いいところもありましたよ。ワンダフルワールドが流れる中、各々の話しが交差し、終結していくラストだけは、良かったと思う。個々の話しがもっと面白く興味がわくものなら、もっともっと良かったと思うが、どれもこれもつまらない物語なので、感動はしませんでしたが。


“惑星ピスタチオ”自分が観た公演ベスト
1.破壊ランナー
2.小林少年とピストル
3.Believe
4.熱闘!!飛龍小学校パワード
5.ファントム
6.満月の都
7.ロボ・ロボ
8.ナイフ
9.WORLD
 

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演劇企画集団66
「スパイものがたり〜へのへのもへじの謎〜」

青山円形劇場 10/8〜10/14  
10/11(土)観劇。座席 H-3

『これは、幕間小景と映像によるエピローグのある四場のミュージカルであり、同時に、舞台空間に於ける天文学である』(チラシより引用)
これを読んでも、どんなものかわからないように、本編もわからないずくし。これほど不条理な劇も久々で、ちょっと嬉しかったりもします。何が嬉しいのか具体的には表現できないが、なんかよかったです。おーまかなストーリーとしては、ある町に落ちてきたスパイとオジョウサンの淡い恋物語なのですが、他の正体不明(郵便屋とか近所のおばさんとかおまわりとか“何か”という事はわかるのだが、みんなうさん臭い)の人物や、公園でバケツに向かって釣糸を垂らすスパイや、そのスパイを釣ろうとする巨大なみみずの付いた釣針。最後には「思い出の地球」を買ったスパイがその地球を食べてしまったり、へのへのもへじの赤ちゃんの登場や映像などで、頭の中はパニック状態。でも、なんかおもしろいと言う、観劇する方も不条理な一品でした。あっ、へのへのもへじの謎の映像は27年前の初演時に使用したものだそうです。
で、今回はなんと言っても小室等の楽団六文銭による生演奏がよかった。それが充分過ぎる効果を出していたと思う。中でも『雨が空から降れば』には大感激。この曲もそうだが、全部の曲がみんな変。そこで、放送協会の許可なしですが、歌詩の一部を記載。作詞はもちろん別役実。

雨が空から降れば オモイデは地面にしみこむ
雨がシトシト降れば オモイデはシトシトにじむ
黒いコーモリ傘をさして 街を歩けば
あの街は雨の中 この街も雨の中
電信柱もポストもフルサトも雨の中
しょうがない 雨の日はしょうがない
公園のベンチでひとり おさかなをつれば
おさかなもまた 雨の中


“演劇企画集団66”自分が観た公演ベスト
1.スパイものがたり〜へのへのもへじの謎〜
2.木に花の咲く
 

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村松利史プロデュース
「きちゃった―なんだかわからない場所を目指して」

駅前劇場 10/7〜10/14  
10/13(月)観劇。座席 B-3

よくわからない物語をオムニバス形式で構成。勝手に題名を付けるなら「自分の座席が舞台上にある男」「筒を見る男」「スパイ物語」「矢印を持つ男」と言った感じ。まぁ“なんだかわからない場所を目指して”という副題には合った内容ではあった。
が、がががが、が、その不条理の世界がつまらない、つまらない。も一つおまけに、つまらない。村松ということで、なんて言うか偏見ではあるが、生理的に嫌悪感を持つ笑いとか、目を背けるような嫌なものなのに、見いってしまう、みたいな事を期待していたのだが、期待は大きく崩れ去った。これと言って感想もなし。

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スプラッシュアクターズ「ファントム」

ブディストホール 10/14〜10/19  
10/18(土)マチネ観劇。座席 自由

作 富田隆(TVによくでている心理学者)
演出 郷田ほづみ(怪物ランドって解散したんだっけ?)
大まかな内容としては、アンドロイドと人間の共存の話と輪廻転生の話がプラスされたようなもの。うーん、どこにでもある内容でないかい、と言いたい。アンドロイドと人間の共存と闘争なんてのは、その昔、第三エロチカが公演した『ニッポンウォーズ』『ボディウォーズ』の足元にも及ばない。脚本書いているのが素人同然じゃぁしゃーないか、と思わざるを得ない。感情移入が全然感じられない役者の演技も単調で退屈。客をバカにしてるのか!と言いたいメーキャップ。前回公演のように意味のないダンスがなかったのが良かった、と言いたいところだが、ない事によって劇団としてのオリジナル性が失われてしまったようにも感じる。まっ、今回は私の体調が最低の状態だったので、それも付加されてしまったワースト1。


“スプラッシュアクターズ”自分が観た公演ベスト
1.地球物語
2.ファントム
 

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劇団☆新感線「髑髏城の七人」

サンシャイン劇場 10/8〜10/21  
10/18(土)観劇。座席 14-24

織田信長が本能寺にて死んだ後、豊臣秀吉の天下統一を目の前にして、天下を我が物にしようと企てる男がいた。その男は信長の影武者の一人であり、髑髏城主である“天魔王(古田新太)”。その野望を阻止しようとするもう一人の影武者“玉ころがしの捨之介(古田2役)”。この二人の対決を中心に描く、いのうえ歌舞伎。

大音響とライティングはいつもの通り。歌あり、踊りあり、ギャグもありと盛りだくさんなのだが、公演時間が長すぎ、テンポが悪い。客演である芳本美代子の魅力も半分も出ていない。前半の人物紹介的展開は退屈。後半になり、影武者2人の関係、徳川家康、本能寺で死んだはずの森蘭丸の存在により、やっと面白くなった感じ。初演はどうだったんだろうと記憶を辿るもあまり覚えていない。そんな程度の劇だったんだと実感。善対悪の対決を同じ信長の影武者二人が行うという設定にはおもしろみを感じるが、一人二役ではその面白さが出し切れていないと感じた。そりゃ古田新太の力量で面白さはありましたよ。もちろん。でも、そっくりではないにしろ、おなじ髪形とかで違う人間が演じた方が面白かったのでないかとも思う。総合的に見ると初演より見せ方が断然よくなっているのは歴然としていた。ラストは感動もの。だが、私はやっぱり、パロディ満載の公演こそ新感線という偏見を持っているので、ちょっと物足りなかったというのが正直なところ。


“劇団☆新感線”自分が観た公演ベスト
1.花の紅天狗
2.仮名絵本西遊記 2
3.ゴローにおまかせ 3
4.宇宙防衛軍ヒデマロ 5
5.スサノオ〜武流転生
6.星の忍者(再演)
7.髑髏城の七人(再演)
8.仮名絵本西遊記 1
9.宇宙防衛軍ヒデマロ 3
10.ゴローにおまかせ 2
11.ゴローにおまかせ 1
12.髑髏城の七人(初演)
13.アトミック番外地 
14.野獣郎見参!
 

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地球ゴージャス
「紙のドレスを燃やす夜―香港大夜総会―」

シアターコクーン 9/26〜10/29  
10/21(火)観劇。座席 E-2

脚本 一色伸幸  演出 岸谷五郎・寺脇康文
映画『香港大夜総会ータッチ&マギー』のサイドストーリー的作品。
ストーリーは簡単に書けないので省略。まぁB級映画みたいなストーリーだと思って頂けばいいのでは。よくわかんないけど。でも、いろいろ詰め込んでしまったので、何が本題なのかわからないのは確か。その為か、主役的人物が多く、ストーリーをぼやかしてしまっていた。出演者が小泉今日子・岸谷五郎・寺脇康文・袴田吉彦とあっては、しかたがない事か。でも、こんな娯楽演劇もたまにはいい。オープニングやエンディングに映画の場面を使用するのは、なかなか面白かったが、ちょっと使い過ぎ。あっ、特に映画を見ていなくても充分楽しめる。題名の「紙のドレスを燃やす夜」の意味は、香港では死者へのはなむけに、その人の遺品を形どって紙で作ったものを燃やすという風習があるのだが、そこからきている。炎に包まれる紙のドレスはとても綺麗。
全体を包む話として「ゲイ」があるのだが、なんか中途半端な感じは否めない。自分は同性愛者ではないので、「ここがいけない」とかはわからないけど、同性愛を取り上げるならもっと真剣に取り組んで欲しかったと感じてしまった。勘違いならごめんなさい。
なにはともあれ、私はキョンキョンふぁんなので、ストーリーを追うより、キョンキョンを追ってしまったというのが正直なところ。たまには一ファンとして演劇を観るのもいいではないか。と、身勝手な発言。特筆すべきは袴田。いい味を出してました。今作品の最大の収穫。あっ、キョンキョンの次だけど。最初普通の格好をしている時はなんでもないのだが、中盤からの女装をしてからは水を得た魚。生き生きしてました。ただ、八代アキ似はちょっと好みじゃないけど。

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「弥々」「JAJA」
日本版・リトアニア版二本立て

東京芸術劇場小ホール2 10/22〜10/26  
10/24(金)観劇。座席 C-14

まずは毬谷友子の日本版の上演。去年に続き観るのは二回目だが、何度観てもいい。16歳の少女から72歳の老婆までを演じる毬谷友子は「弥々」が取り憑いてしまったというほどの熱演を見せる。幸薄い人生を送った弥々が、最後にやっと本当の自分の心を見つけ、勘違いにしろ栄蔵(良寛)の愛情をつかみ大泣きする姿に、それまでの人生が浮かび上がり、目頭が熱くなる。これからも毎年公演して欲しい舞台である。
休憩25分を挟み後半はリトアニア版。主演:エグレ・ミクリョニーテ。弥々はオロシャ人と日本人の混血という事でこれもありかなと思え、違和感なし。背を向けた良寛が舞台にいる。その前で弥々の娘が弥々の人生を演じる。うっすら香る線香が心地よい。同じ原作なのにこうも違うものができるのかと感心するばかり。ただ、どの場面かはわかるのだが、言葉の壁は大きく、細かな感情の起伏が多い舞台で何を言っているのかがわからないのは、痛手であった。とても悔しい。

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「マクベス」

紀伊國屋ホール 10/8〜10/25  
10/25(土)観劇。座席 C-4

原作は言わずと知れたウイリアム・シェイクスピア。己の野望に翻弄され自己を崩壊させていくマクベス(段田安則)と、悩むマクベスを叱咤し野望に導くマクベス夫人(南果歩)を描く。

今回の見所はやはり南果歩。マクベスに殺人を犯させる時の目の輝きは最高にぞくぞくした。背筋が凍るという表現が一番近いかも。本当に近くで見れた事を感謝したい。あの劇場の広さではそれを味わえるのは、ごく一部だと思うので、劇場選びは失敗と言える。ただあれだけの役者を揃えて小さい劇場とはいかないんだろうけど。あと今作品は演出(アレキサンドル・ダリエ)の良さも特筆したい。極端に少ない舞台装置。それをライティングでいろいろな場面に変化させる。3人の魔女の不気味さも最高。日本人には発想できないキャスティングではないだろうか。マクベスの服も平常心の赤から黒への変化でさりげなく視覚にも訴える。死後のマクベスの服が再び赤になり、マクベスの心情を描いているのもいい。ただ、不満だったのは、舞台に水をひいているのに、あまり効果的ではなかったこと。前半はいい使い方をしていたのだが、後半は全然使われず。全体的に静的なマクベスだったので、クライマックスくらいは水しぶきがあがるくらいにマクベスとマクダフが派手に戦う、というのも面白かったのではないだろうか。

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唐組「ジャガーの眼」

雑司が谷・鬼子母神 10/24〜11/1  
10/28(火)観劇。座席 自由

初めて唐組の公演を観る。
神社の中に、不気味にたたずむ紅テント。規律のとれた案内人の声に導かれるように劇場に入る。遠近感を出したが故に歪んでしまっている路地裏の景色。音楽と共にサンダル探偵社の三輪車に乗る探偵・田口(唐十郎)の登場で幕があがる。それまで埃っぽく嫌だなぁという気持ちは、埃の中に唐十郎の毒気がたっぷり注入されていたのか、器官に入ってしまった途端その気持ちが吹き飛んでしまい、一気に非日常的な幻想の世界に引き込まれてしまう。

物語は白内症の青年しんいち(鳥山昌克)が、肉体市場で購入した角膜が、“ジャガーの眼”と呼ばれ、人から人へ移植され、生き返るものだった事に始まる。そのジャガーの眼を追うくるみ(飯塚澄子)、ジャガーの眼を自分のものにしようと企てる扉(金井良信)、かつての持ち主田口らが絡み合い進行していく。
初めて観たので、何故田口の助手はマネキン人形であり、田口の眼の中だけで動くのか、何故サンダル探偵社なのか、などわからない事ばかりであった。が、しかーし、ぐいぐいぐいぐい引き込まれてしまい、身動きが取れない程に見いってしまう。こんなに自分の肌にあった芝居に出会うのは久しぶりである。テーマが臓器移植という事もあってか、忘れられない作品になってしまったのは確かである。劇中の「体の一部を追う者はいない、追われようとする一部はない」というセリフで背筋に衝撃が走る。これは逆説的なセリフであり、そこには自分から離れてしまった肉体も自分であるという気持ちがこもっているように感じた。しかし移植された者は他人の肉体を移植されても克服せよという気持ちもあると思う。裏腹な二つの気持ちがぶつかり合いジレンマとして襲う。とてもいい。唐版臓器序説をヒシと感じた。

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