プロスタサイクリンは、原発性肺高血圧症(PPH)の治療法として米国食品医薬局(FDA)が唯一特別に許可した薬物です。プロスタサイクリンは本来生体内で作られる物質です。即効性の血管拡張薬として、あるいは、血小板凝集抑制剤として大変強力な薬剤です。プロスタサイクリンの点滴療法はPPH患者を対象にして研究されてきました。100人以上におよぶPPH患者さん達を対象にして調べたところ、プロスタサイクリンは肺の血行動態を向上させ、また安全に投与することができました。さらに研究を続けた結果、プロスタサイクリンを12週間使った後には運動能力が著しく向上していることがわかりました。現時点では、プロスタサイクリンは静脈内投与しかできません。1日24時間にわたって持続的に点滴をしなければなりません。薬の投与量を徐々に増やしていく必要があり、突然に中止したりすることはできません。プロスタサイクリンは持続点滴によってしか投与できないと考えられているので、中心静脈カテーテルを胸の中心静脈に留置しなければなりません。プロスタサイクリンを使用する患者さんは、カテーテルを入れるために病院に入院する必要があります。いったんカテーテルが挿入されたら、患者はベッドサイドのモニターシステムに監視された状態でプロスタサイクリンの投与が開始されます。薬は効果の認められる投与量の最少量から開始します。プロスタサイクリンは投与がやっかいな薬物です。薬の調合の際には本人と関係者、あるいは調合のパートナーに極めて慎重であることが要求され、病院に入院中に患者とパートナー(患者の家族など)は薬の準備と本治療に用いられる注入用ポンプの使用法について学ぶことになります。
カテーテルの留置経路のイラストです。挿入後はカテーテルの出口を毎日消毒する必要があります。
イラストには載っていませんが、カテーテル出口からルートを延長させ、(約60センチほど)携帯用のポンプに繋ぎます。
(イラストは国立循環器病センター刊のプロスタサイクリン在宅治療法の手引きより抜粋)
ポンプを持った全体像です。右の肩からぶら下げてるのがポンプを入れてあるキャリングケースで、中にはポンプが入っています。
こうやってみると、かなり大がかりに見えますが(実際大きいのだが)点滴をしながら自由に歩き回ることができます。先生の許可さえ得られれば外出することも可能です。
写真撮影のため、あえてポンプを露出していますが、普段はTシャツの内側に隠すようにしています。写真を撮った季節は夏場なので、ポンプを目立たないようにするのは一苦労ですが、冬場などは服を着込むため、パッと見ただけだと、誰にも分かりません。
ちなみに、さえないモデルは作者です(^^;) プライベートではこのようにラフな格好をしていますが、毎日スーツを着て、電車に揺られ会社に通っています。
これは携帯用のポンプです。参考に隣に置いてある携帯電話はNTTDoCoMoのN206です。こうやってみるとかなり大きいポンプですね
(^^;)
黒色のカセットの中に薬液を注入し、使用します。
カセットの両脇に挟み込むように冷却用のアイスバッグを携帯用のキャリングケース(上の写真にある黒い袋)に入れ、使用します。そのとき重量は約800グラムぐらいになります。
カセットは使い捨てで、一日一回、交換します。適切な措置をすることによりシャワーも浴びることもできます。(入浴は望ましくありません)