「SF特撮映画セレクトin名古屋 vol.5」という上映イベントが行われると知ったのは、旧知の宮本拓監督のX(旧Twitter)のつぶやきからでした。 しかも 今回このイベントでは 懐かしき『ヴィジュアル・バンディッツ NEWS REEL III〜ホシノフルサト』が上映されるということ。 想い出深いこの作品が 大きなスクリーンで上映される。 しかも 宮本監督もいらっしゃるかもしれない。となれば参加するしかない。 定員は事前予約で15名である。 会場も未踏の地ゆえ、躊躇したが なんとかその15人に滑り込み予約を完了。 11月26日−当日。 12:30の開場に合わせ 11時過ぎには自宅を出発したのだった。 会場のシアターカフェに着いたのは開場から 既に10分ぐらいは経っていた頃だったろうか。 ストリートビューなどで事前に調べていたが、本当に見た目は小綺麗な一軒家。あるいはカフェ。 映画館には全く見えない。 戸惑いながらも引き戸を開ける。 入り口で靴箱に靴を預けるというスタイルも 一般的な映画館ではありえないことだった。 受付で予約名を名乗り、入場料を支払った。 上映会場は2階ということで、目新しい木の階段を上る。 本当に誰かの家に来た感じである。 いよいよ上映会場となった開け放たれた部屋に入ると、其処には形状の異なった様々な椅子、ソファが前後2列で置かれていた。 あえて統一感を出さないというコンセプトだったようで、既に大半が埋まっていた。 出遅れ感は否めなかったが、空いていた1列目の席に座る。 これから17時すぎまでの長丁場。 しっかりとした背もたれのないこの席で 大丈夫なのか?と不安も脳裏をかすめたが仕方がない。 13:00となり、室内は暗転。 中央のスクリーンに一本目の映像が映し出されたのだった。 外世界X FILE:01『レイズ・オブ・ザ・サイボーグ』 (原題“Raze of the Cyborg”/2020年/25分/台湾) 製作/監督/脚本/VFXスーパーバイザー/主演:ヤン・ハイデン・リー 舞台は近未来のアジア(らしい)。 恋人を犯罪組織に誘拐された主人公は、自ら進んで片腕を機械化、サイボーグとなり救出に向かう。 製作・監督・脚本・VFX、主演もこなすヤン・ハイデン・リー氏の作品ということでしたが、これが凄い。 内容は単純でしたが、VFX、アクションのクオリティーがすば抜けていた。 これがセミプロ(?)の作品だというのだから もう驚きしかない。 中華由来の派手なワイヤーアクションも功を奏していた(やや やりすぎな感じだが、懐かしさもあった)。 外世界X FILE:02『ムッティ』 (原題“Mutti”/2018年/8分/ドイツ) 監督:ゼイビア・バイヤンス 8分の短編。宇宙生物(?)が人間に寄生するという物語で「寄生獣」「ブロブ/宇宙からの不明物体」「遊星からの物体X」などを思い起こさせる。 ドイツ映画というのが意外かもしれない。 結婚式を明日に控えた男が、女に誘惑されて家に行ってみたら...というお話。 ラストはなんでしょうか。色々と想像させます。 外世界X FILE:03『ハッシュタグ』 (原題“HUSH TUG”/15分/2019年/アメリカ) 監督:ベン・アルピ 近未来のサイバーパンク的なSF物。−というかのSNSが高度に発達し尽くした世界での悲劇という物語だが、直後の舞台挨拶での解説によるとAIによる実体化したアバターとかも裏テーマにあるとかで なるほどと頷いた次第。 単純に昨今のSNS文化への皮肉ではなかったということです。 伊達にクラウドファンディングで初期費用600万円を集めた訳ではなかったということの証左でしょう。 舞台挨拶 近藤勇一監督 / 下向拓生監督 MC:職業怪人カメレオール / TYB 海外自主製作SF映画の上映企画を行っている近藤勇一監督と シネマスコーレで上映が始まった「INTERFACE 知能機械犯罪公訴部 -ペルソナ-」の下向拓生監督が登壇。 近藤監督から『レイズ・オブ・ザ・サイボーグ』『ムッティ』『ハッシュタグ』の解説をされ、MCの職業怪人カメレオールさん、TYBさんと鼎談する形でトークされた。 この3本の中でもやはり『レイズ・オブ・ザ・サイボーグ』が絶賛されていたのが印象深い。 TYBさんは『ムッティ』が好き。と仰っていました。 『ポイズンの夜』(2015年/4分) 監督:飯塚貴士 飯塚貴士という名前は何処かで見たような覚えもあったが、全編、人形劇だったことは驚いたし、笑ってしまった。 タイトル通り「ポイズン」(反町隆史)と「15の夜」(尾崎豊)をモチーフに、無理やり「バットマン」を登場させてみましたな感じが面白かった。 『はじめて』(2022年/9分) 監督:水野博章 「世にも奇妙な物語」っぽいと感じたがどうなんだろう。 先輩からのパワハラ、ひき逃げ、サイコパス... なんか痛々しい話でラストはああ やっぱり〜な結末。 やや首をひねる箇所もあったけれど 一番、印象に残った作品だったかもしれない。 主演の今川宇宙さん。調べると 西郷輝彦さんの娘さんと判って吃驚している。 休憩 MC:職業怪人カメレオール / TYB 『ヴィジュアル・バンディッツ NEWS REEL III〜ホシノフルサト』(2000年/56分) 監督:宮本拓 脚本:川崎ヒロユキ 大きなスクリーンでこの作品を見るのは 2000年の完成披露イベント以来、実に23年ぶりであった。 DVDも発売されて 即購入し大事に保存しているので、映像は見ようと思えばいつでも見れるのだが 長い間見ることはなかった。 それで上映に先立ち、昨夜 ほんの少し見てみたが、非常に懐かしかった。 おそらく20年ぶりぐらいだったのではないかと思う。 大林宣彦監督の新尾道三部作の3作目「あの夏の日 とんでろじいちゃん」(1999)に出演した佐野奈波さんが この作品のヒロインとして出演されるということで、2000年当時注目し、宮本拓監督以下スタッフの方々と交流を持つようになった。 「ヴィジュアル・バンディッツ」シリーズでは第三作目(最終作)ということもあって、マクベ(正岡邦夫さん)以下、ニュースハンターのチームワークは出来上がっているし世界観も確立されてバッチリ。 其処に戦時中の古いフィルムに映った神楽の美少女(佐野奈波さん)が現れる...。 彼女を狙う不穏な黒ずくめの男たち。メン・イン・ブラック。 やがて明かされる驚愕の真実。 モチーフはやはり「竹取物語」なのでしょうか。 個人的には好きだった「グリーン・レクイエム」(新井素子)を思い出しました。 本編の後、DVDにも収録されていたメイキングが流れましたが、奈波さんが古風な衣装を着ながらも現代っ子ぷりを表したり、回転撮影(?)に撮影陣が四苦八苦したりと興味深いシーンが見られました。 そして−やっぱり佐野奈波さんは綺麗な女性だったなあと改めて思ったのでした。 舞台挨拶 宮本拓監督 MC:職業怪人カメレオール / TYB 休憩の前に MCのTYBさんが「宮本監督はまだ来ていません。来るかどうかは判りません」みたいなことを言われたので 無理かなと思っていたら、職業怪人カメレオールさんから宮本監督が来館したことが伝えられ、呼び込まれた。 23年ぶりの遭遇となった。 X(旧Twitter)でフォローして貰っているものの、生の姿を拝見するのは本当に久しぶりだった。 Xでは最近、体調を崩されていたらしくトークも当初は声が出しづらい感じであったが、職業怪人カメレオールさんと TYBさんに乗せられて 話も興に乗ってきた。 「ヴィジュアル・バンディッツ」撮影時の懐かしい話、現在、製作中の新作の話など盛りだくさんであった。 それから最も驚いたのは 宮本監督から「ヴィジュアル・バンディッツ」シリーズのプロデューサーHさんが 客席にいらっしゃると紹介されたこと。 思わず「ええええっ!!」と心の中で叫んでしまったぐらいだった。 Hさんとも「ウルトラセブン「EVOLUTION」発売記念イベント」以来、21年ぶりなのです。 もう吃驚でした。 『好夏2 ミントプロトコル』(2003年/39分/株式会社アトリー) 監督/脚本/編集:近藤勇一 出演:寺門仁美、高畠華澄、坂田知美、高橋梓、宮内彩花、水木一郎(声の出演) 上映前に紹介があったが、主演の寺門仁美さんも会場入りして一緒に映像を見るという特別な回となった。 全く内容を知らずに見たのだが、美少女たちがいっぱい出てきて、その彼女たちがセーラー服や水着までになってイメージビデオっぽいな、または美少女映画なのかなと思ったら、どうやらジュニア・アイドルによるSFファンタジーらしい。 「櫻の園」(1990)や「1999年の夏休み」(1988)をなんとなく思い出させるような作品と言ってもいいかもしれない。 DVDのために創られた作品であったためか 映像はとても鮮明であった。 ただ寺門さんも仰っていたように水着シーンは 見ているこちらからしても 鮮明ゆえに なにか気恥ずかしく「見てはいけないものを見ている」感覚になったのは確かであった。 しかも、すぐ側に御本人がいるという特殊な環境下においてであるのだ(苦笑)。 物語は 強力なコンピュータ・ウイルス?がシステムだけでなく、人体にも影響を及ぼし人類滅亡が近づいている未来。 そのウイルスがまだ脆弱である現代にタイムリープして根絶しようと未来から舞い降りた少女とそのウイルスに接近できる力を持つ主人公(寺門仁美さん)の友情物語。という感じなのでしょうが、擬人化したウイルスの美少年(女性の男装)との同性愛的な描写もあって ここでも「見てはいけないもの」という感覚に襲われたのだった。 ラストにはメイキングも流れたのだが声の出演をした水木一郎さんが登場し元気にコメントしており、昨年 亡くなってしまったことが信じられないくらいであった。 舞台挨拶 寺門仁美、近藤勇一監督 MC:職業怪人カメレオール / TYB あらためて 寺門仁美さんと 監督・脚本・編集を担当された近藤勇一監督が再び、登壇。 撮影時の秘話を明かす、お二人であったが寺門さんは 例の水着シーンを「見ていられない」と仰っしゃり「見てはいけないものを見ているという感じ」と続けた時は、大きく共感すると共に頷き笑ってしまった。 またメイキングシーンの思い出として、リアルに素を出していた寺門さんを近藤監督が追っかけて撮っていたという興味深い話も聞けました。 舞台挨拶中盤には 製作の株式会社アトリーのプロデューサー氏も登壇し話に加わり、会社の倉庫に残っていたという『好夏2 ミントプロトコル』のサイン入りジャケットを寺門さんから手渡しで頂いたのだった。 こうして「SF特撮映画セレクトin名古屋 vol.5 〜どうするSF〜」DAY2のイベントは無事終了した。 参加者全員(希望者のみ)で記念写真を撮影した後、寺門仁美さんのサイン会となった。 それぞれが入場時に頂いた『好夏2 ミントプロトコル』のポスターを持って列に並び、サインを頂いた。 多くの人がそうしたように 私も寺門さんだけでなく 近藤監督とプロデューサー氏にもサインを頂いたのだった。 その後、私は話をしようと会場の片隅に佇む宮本監督のもとへ向かった。 宮本監督は 観客の知り合いの方とお話中だったので 少し待った。 そして「大変ご無沙汰しておりました ○○です」と緊張しながら挨拶。緊張ゆえ上手く口が回らなかった(苦笑)。 X(旧Twitter)をフォローして最近の動向も判ってはいましたが、なにせ23年ぶりの再会。緊張するのは致し方ないと.....。 しかし、すぐに打ち解けて しばらく立ち話をしたのだった。 持参した『ヴィジュアル・バンディッツ NEWS REEL III〜ホシノフルサト』のDVDのジャケットにサインも頂き、階下に降りた後(上映会場は2階だった)ここでも少し話をし、私はシアターカフェを後にした。 シアターカフェから最寄りの駅(名古屋城駅)まで 歩きでは結構の距離であったが、とにかく なつかしくて なつかしくて フワフワとした気持ちで歩いたのだった。 参加して本当に良かった。正解だったと思うのだった。 @Happy Monstersさんより記念写真 |