天皇賞は、春・秋共通で考えると、1937年12月3日東京競馬場で行われた「帝室御賞典競走」が第1回。優勝馬はハッピーマイト(騎手:新井朋次郎)。当時4歳の牡馬で、その後4歳馬が天皇賞を勝つまでには実に59年の歳月を待たなければならなかったのである(まあ、「5歳上」の時期が長かったんだけど)。
秋の天皇賞は、これまでほぼ一貫して東京競馬場で行われている(記憶が確かなら、1回だけ改修工事の関係で中山で行われたことがあったような…)。その天皇賞・秋が大改革を迎えたのが、グレード制導入元年の1984年のこと。それまで春同様に3,200mで行われていた天皇賞・秋は、この年から2,000mで行われることになったのである。この初めての2,000mでの天皇賞・秋(第90回)で勝利を収めたのが、史上3頭目の3冠馬ミスターシービー(騎手:吉永正人)。
その後、87年からは4歳馬の参戦も可能となり、翌88年に4歳ながら2着に入ったのは、あのオグリキャップ。96年には、バブルガムフェローが59年ぶりに4歳馬として制覇。後に3強と言われたサクラローレル、マヤノトップガン、マーベラスサンデーを抑えてのことだった。そして、昨年は、牝馬としては80年のプリティキャスト以来17年ぶりにエアグルーヴが勝利。もちろん、2,000mになってから牝馬が勝つのは初めてである。
レース自体は、「東京芝2,000m」という、前週の「京都芝内回り2,000m」に匹敵する難コースで行われる。勝負は、何といっても、「急に狭くなるよう」と各騎手が口にする1コーナー〜2コーナー。あとは東京名物の長ーい直線。ちなみに、1番人気馬がことごとく敗れ去るレースとして知られ、現在1番人気馬は10連敗中(最後に勝ったのは87年のニッポーテイオー)。シンボリルドルフはギャロップダイナに出し抜けを食らい2着に甘んじ(85年)、メジロマックイーンは1着入線するも進路妨害で18着降着となり(91年)、ビワハヤヒデは競走中に故障を発症し5着と敗れた(94年)。今年のサイレンススズカはどうなるのだろうか?
年度 | 優 勝 馬 | 性別・ 年齢 |
重量 | 騎 手 | 人気 | タイム | 馬場 状態 |
1993 | ヤマニンゼファー | 牡6 | 58 | 柴田善臣 | 5 | 1.58.9 | 良 |
1994 | ネーハイシーザー | 牡5 | 58 | 塩村克己 | 3 | 1.58.6 | 良 |
1995 | サクラチトセオー | 牡6 | 58 | 小島太 | 2 | 1.58.8 | 良 |
1996 | バブルガムフェロー | 牡4 | 56 | 蛯名正義 | 3 | 1.58.7 | 良 |
1997 | エアグルーヴ | 牝5 | 56 | 武豊 | 2 | 1.59.0 | 良 |
◎ 1.サイレンススズカ
○ 10.ステイゴールド
▲ 9.シルクジャスティス
△ 8.サンライズフラッグ
△ 2.メジロブライト
△ 4.ローゼンカバリー
はっきり言います。サイレンススズカが負けるときは故障したときだけです。もう誰もこのウマは止められないのではないでしょうか。吉田豊のサイレントハンターが「状況によっては2番手に控える」と言っているのも好材料。競りかけられたらサイレンススズカはかかってしまう危険性もあったんだけどね。まあ、でも気性的にはどんなもんだろ。まだ去年の弥生賞のこと(ゲートくぐって外枠発走の末に8着)忘れられなくて(笑)。
そうなると、2着探しは「府中の長ーい直線を生かした末足を長く使えるウマを」ってことになります。でも、本来1番手に挙げるべきシルクジャスティスは、どうもムラっ気強くて信頼できない。ということで▲まで。そうなると、テン乗り(初騎乗)蛯名正義のステイゴールドには未知の魅力を感じてしまう。主戦の熊沢重文が騎乗停止中のためにおハチが回ってきたエビショーだけど、関東リーディングの先頭を走り、今ノれてるジョッキー。叩き2戦目ってのも大きいよね。天皇賞・春2着のときも、宝塚記念2着のときも、前走はもう1つだったし(天皇賞・春…日経賞4着、宝塚記念…目黒記念3着)。「シルバー・コレクター」の名にかけて、ぜひここでも2着してくれ(笑)。
ま、次はジャスティスでいいでしょう。同じく追い込み馬のサンライズフラッグも押さえる。メジロブライトは距離が短いんじゃないかな。最低でもあと1ハロンは欲しいような…。だから押さえるだけ。そして、おいしそうなのは、ローゼンカバリー。なんか、状態よさげなのよ。複勝は当然としても(爆笑)、総ながしかけてもよさそうな雰囲気だよね。サイレンススズカ以外は全部万馬券になるみたいだし。ノリ騎手には京都の敵を府中で打ってもらいましょうか。
(複勝)
10.ステイゴールド 1,000円
(馬連)
1−10 1,000円
1−9 800円
1−8 800円
1−2 700円
1−4 700円
(合計) 5,000円
天候:晴 馬場状態:良
順位 | 枠番 | 馬番 | 馬名 | 性別・ 年齢 |
重量 | 騎手 | 人気 | タイム・ 着差 |
1 | 5 | 6 | オフサイドトラップ | 牡8 | 58 | 柴田善臣 | 6 | 1.59.3 |
2 | 7 | 10 | ステイゴールド | 牡5 | 58 | 蛯名正義 | 4 | 1 1/4 |
3 | 6 | 8 | サンライズフラッグ | 牡5 | 58 | 安田康彦 | 5 | 3 |
4 | 6 | 7 | サイレントハンター | 牡6 | 58 | 吉田豊 | 8 | アタマ |
5 | 2 | 2 | メジロブライト | 牡5 | 58 | 河内洋 | 2 | 1/2 |
6 | 5 | 5 | ゴーイングスズカ | 牡6 | 58 | 南井克巳 | 10 | 1 1/2 |
7 | 8 | 11 | ランニングゲイル | 牡5 | 58 | 四位洋文 | 11 | 1/2 |
8 | 7 | 9 | シルクジャスティス | 牡5 | 58 | 藤田伸二 | 3 | クビ |
9 | 3 | 3 | テイエムオオアラシ | 牡6 | 58 | 福永祐一 | 12 | 3 |
10 | 4 | 4 | ローゼンカバリー | 牡6 | 58 | 横山典弘 | 9 | クビ |
11 | 8 | 12 | グルメフロンティア | 牡7 | 58 | 岡部幸雄 | 7 | 8 |
1 | 1 | サイレンススズカ | 牡5 | 58 | 武豊 | 1 | (中止) |
★ 1.サイレンススズカは4角で故障(左前脚手根骨粉砕骨折)を発症したため競走中止。
(単勝)6.4,240円
(複勝)6.580円 10.300円 6.450円
(枠連)5−7 3,680円
(馬連)6−10 12,210円
府中の4角に悪魔が潜んでいた。前半1,000mを57秒台という驚異的なハイペースでとばしていたサイレンススズカのスピードが突然ガクンと落ちる。脚をバタつかせるサイレンススズカ。今年に入って1頭たりとも他の馬に影を踏ませなかった彼の横を、次々と後続馬がすり抜けていく。悪夢の週末。最悪の事態となった。左前脚手根骨粉砕骨折。これではどうもしてやれない。なしえる結論はたった1つだけだった。予後不良。全てが終わった。
「サイレンススズカが負けるときは故障したときだけ」僕の戦前のコメントが、こんな悲劇的な形で的中してしまうなんて…。路面のくぼみにでも足を取られたのであろうか。あるいはハイスピードが過重な負担になったのだろうか。ここでとやかく言ってもせんなきことではあるが、気の毒でならない。
京都の3角の坂の下りで散ったライスシャワー、異国の地ドバイで文字通り「織姫星」になってしまったホクトベガetc.…。競走中の事故がもとで命を絶たれた馬は枚挙に暇がない。それこそ、未勝利クラスの馬まで含めれば、1開催につき必ず何頭かは予後不良になっている。競馬にこういう事故はつきものである。それは事実だから仕方がない。でも、失われた命は2度と帰っては来ない。だからこそ、我々は、サラブレッドは常に危険と隣り合わせで駆けているのだという事実を常に心の片隅にとめておくべきではないのだろうか。それが、散っていった馬たちへのせめてもの供養となるのであろう。
馬たちだって生き物である。感情だってあるし、ケガをすれば痛いはずである。僕は、競馬を単なるギャンブルとしてとらえたくはない。確かに馬券はずれるよりは当たるに越したことはない。でも、馬券がはずれても、全馬が無事に周回を終える方がはるかに嬉しいのである。少なくとも僕は。
今年の4月、名にし負う障害重賞「中山大障害・春」を生で見に行ったことがある。そのとき、パドックで全部の馬の写真を撮ってやった。「みんな無事に帰ってこいよ」と祈りながら。それが最後の写真になるんじゃ悲しすぎると思った。1番人気のアワパラゴンが落馬、競走中止となったときは本当にゾッとした。しばらくして、カラ馬となって無事に走っているアワパラゴンを見たとき、心底ホッとした。すると、隣で馬券オヤジが、他の馬に「落ちろ!」とか野次っていた。本当にブン殴ろうかと思った。騎手のケガは、よほどのことでもない限りいつかは治る。でも、馬のケガは、ちょっとしたことでも生命にかかわるものになってしまうのである。自分の「馬券」というエゴのために生き物の命を紙切れ程度にしか考えていない連中に、腹が立って仕方がなかった。
なんか、天皇賞と全く関係ない話になってしまいました。許してください。
今はサイレンススズカの魂が安らかなることを祈らずにはいられません。
最後に、簡単に他の馬について。オフサイドトラップは立派の一言。8歳での初GT。確かにしぶとい末脚を長く使っていた。この勝利がなかったらノーザンホースパーク辺りで乗馬としてファンと触れ合う程度の余生を過ごすはずだったのが、これで一気に種牡馬入りのメも出てきた。まあ、なった後にどれぐらいの交配相手があるかまでは分かんないけど。でも、八大競走(クラシック5レース+春秋天皇賞+有馬記念)の勝ち馬だし、万が一種牡馬がダメでも老後(?)の生活だけは保証されたわけだし(八大競走の勝ち馬には「種牡馬失格」になっても余生を過ごすことでできる施設が用意されてるらしい)。
ステイゴールドは狙い通り3着以内に来てくれた。「買うなら、120円のサイレンススズカの単よりは、ステイゴールドの複」というもくろみがズバっと的中した形になった。まあ、あんな事故あったから、嬉しくもないけど。でも、このウマには何が足りないんだろう。もう1戦だけ見定めてみたい。目指すはジャパンカップの2着。カミノクレッセを超えてやって(笑)。
ブライトとジャスティスは期待はずれ。特に、多少なりとも不利を受けたブライトはともかくとして、シルクジャスティスは全く走る気なさげだった。舌出して、ハミもとらずに。もう買えませんな(でも、こういうムラ馬に限って忘れた頃に来るんだろうなあ)。ローゼンカバリーは…さすがにもう「終わった」って印象だね。