言わずと知れた、内国産の4歳馬のチャンピオンを決定するレース。競馬関係者にとっても、ファンにとっても、1年で最大のお祭りと言っても過言ではないだろう。全てのホースマンは、このレースで勝利を収めることを目標に日々研鑚に努めているのである。
本場イギリスを模範に各国で行われているダービーが日本で初めて行われたのは、1932年4月24日のこと。芝、2,400mという条件は、第1回から不変。このときの優勝馬はワカタカ(騎手:函館孫作)。2着オオツカヤマに4馬身差をつけての圧勝だった。3着は牝馬のアサハギ。
第2回の優勝馬は、福島で開催される重賞レースにその名を残すカブトヤマ(騎手:大久保房松)。この第2回までは目黒競馬場で行われていたが、第3回から現在の東京競馬場で開催されるようになり、今日に至っている。この第3回の優勝馬はフレーモア(騎手:大久保亀治)。以降、開催場、条件は一切変更されていない。
歴代勝馬のなかで、牝馬は2頭。1937年のヒサトモ(騎手:中島時一)と、43年のクリフジ(騎手:前田長吉)。これ以降、47年にトキツカゼ、49年にシラオキが2着に入ったのを最後に、牝馬の連対はない。
ここ10年の勝馬で、皐月賞と連覇し2冠を達成したのは4頭。91年トウカイテイオー(騎手:安田隆行)、92年ミホノブルボン(騎手:小島貞博)、94年ナリタブライアン(騎手:南井克巳)、97年サニーブライアン(騎手:大西直宏)。このうち、トウカイテイオー、サニーブライアンはレース後に骨折が判明して菊花賞に出走できず、ミホノブルボンはライスシャワーの2着に敗れ3冠はならなかった。しかし、ナリタブライアンは、7馬身差の圧勝で菊花賞も制し、史上5頭目の3冠馬となっている。
1番人気で勝利を収めたのは6頭。91年トウカイテイオー、92年ミホノブルボン、93年ウイニングチケット(騎手:柴田政人)、94年ナリタブライアン、95年タヤスツヨシ(騎手:小島貞博)、98年スペシャルウィーク(騎手:武豊)。その他、2着も2例あり、1番人気馬は10頭中8連対と信頼度は高い。
現役騎手でダービーを制しているのは、岡部幸雄(84年シンボリルドルフ)、加藤和宏(85年シリウスシンボリ)、小島貞博(92年ミホノブルボン、95年タヤスツヨシ)、藤田伸二(96年フサイチコンコルド)、大西直宏(97年サニーブライアン)、武豊(98年スペシャルウィーク)の6人。小島貞博のみ、現役騎手でただ1人2回の優勝を経験している。ちなみに、2年連続で制している騎手はこれまで0。武豊が前人未到の金字塔を達成することができるかどうか…。
年度 | 優 勝 馬 | 性別・ 年齢 |
重量 | 騎 手 | 人気 | タイム | 馬場 状態 |
1994 | ナリタブライアン | 牡4 | 57 | 南井克巳 | 1 | 2.25.7 | 良 |
1995 | タヤスツヨシ | 牡4 | 57 | 小島貞博 | 1 | 2.27.3 | 良 |
1996 | フサイチコンコルド | 牡4 | 57 | 藤田伸二 | 7 | 2.26.1 | 良 |
1997 | サニーブライアン | 牡4 | 57 | 大西直宏 | 6 | 2.25.9 | 良 |
1998 | スペシャルウィーク | 牡4 | 57 | 武豊 | 1 | 2.25.8 | 稍重 |
◎ 14.テイエムオペラオー
○ 11.ナリタトップロード
▲ 2.アドマイヤベガ
△ 9.オースミブライト
△ 12.チョウカイリョウガ
さて、年に1回の祭典「日本ダービー」です。私個人の1番の思い出は、なんといっても97年、サニーブライアンから入って40,000円勝ちという私の馬券キャリア最高の収益をゲットしたことです。負け続きだし、「夢よもう1度」といきたいものです。
今年のダービー、私の本命馬は二転、三転しました。皐月賞直後から最近までは「それでもやっぱりアドマイヤベガ◎」でいくつもりでした。しかし、1週前になって「ナリタトップロード◎」に変更。そして、今朝(6日)になって急遽「テイエムオペラオー◎」と再変更。これだけコロコロ気持ちが揺らぐっていうのも、今年の4歳牡馬クラシック戦線が混戦だということの証明なのでしょうか。
で、なんで土壇場でテイエムを抜擢したのかというと…笑わないでくださいよ、ユメ、見たんですよ。今日のレースの。「1着テイエムオペラオー−2着ナリタトップロード」という結果でした。これだけ混戦模様で、自分が上位に抜擢しようとした3頭の順位づけが難しいのなら…いっそのことユメに乗っかってしまおうか、と。テイエムはなんとなく「強いとは思うけど…2冠馬っていう器かなあ」という疑問符もつかなくはないんですけど、それを言っちゃー「じゃ、サニーブライアンは?」と思うし。あのときはなぜか「2冠で絶対!」って確信あったんだけど、今回はどうやろ。ただ、あの末脚は「タダモノではない」とは思いますけど。
そして、差のない○はナリタトップロード。きさらぎ賞の頃からいいとは思ってたけど、ここにきて一層の充実を見せていると思います。馬場がよくて速い時計での決着になりそうなのも、差し脚質のこの馬には有利かもしれません。不安なのは、人馬ともに入れ込まないかということ。とくに鞍上。
▲もほとんど差はなし。アドマイヤベガ。なんといっても、馬体が戻ったのが強みでしょう。まともならこの馬こそ上位争いの筆頭に立ってしかるべき馬です。また内枠なのはちょっと不安だけど、軽視は禁物です。この上位3頭にほとんど差はないと思います。そうなると、ヤネで勝負がつく可能性だってあるはずです。2年連続のダービー制覇…そんな空前絶後に思えることも、武豊なら可能なんて気もしてしまいます。ゆえに、複で押さえるのはこちら。
押さえとしては、まずオースミブライト。状態は最高みたいです。もともとの力は皐月賞2着で証明済なところに加えて、上積みが大きいとあっては、ほっとけません。
あとはトライアル組からってことになるんでしょうが…人気のペインテドブラック、ブラックタキシードはそろって消しとします。血統的にはともかく、「トライアルに勝った人気馬」は不安要素も大きいので。だったら、プリンシパルステークス2着のチョウカイリョウガを抜擢します。キャリアは少ないけど、折り合いもつくのが強みです。前記2頭が使い詰めなのに対して、こちらが復帰2戦目なのもいいでしょう。同じサンデーサイレンスなら、こっちの方がいいでしょう。ただ、馬体重−8kgと2走ボケだけが心配です。
(複勝)
2.アドマイヤベガ 1,000円
(馬連)
11−14 1,200円
2−14 1,200円
2−11 1,200円
9−14 1,000円
9−11 1,000円
2−9 1,000円
12−14 700円
11−12 700円
2−12 700円
9−12 700円
(合計) 10,400円
天候:晴 馬場状態:良
順位 | 枠番 | 馬番 | 馬名 | 性別・ 年齢 |
重量 | 騎手 | 人気 | タイム・ 着差 |
1 | 1 | 2 | アドマイヤベガ | 牡4 | 57 | 武豊 | 2 | 2.25.3 |
2 | 6 | 11 | ナリタトップロード | 牡4 | 57 | 渡辺薫彦 | 1 | クビ |
3 | 7 | 14 | テイエムオペラオー | 牡4 | 57 | 和田竜二 | 3 | 1 1/4 |
4 | 5 | 9 | オースミブライト | 牡4 | 57 | 蛯名正義 | 4 | 2 1/2 |
5 | 1 | 1 | ブラックタキシード | 牡4 | 57 | 的場均 | 6 | 1 3/4 |
6 | 5 | 10 | ロサード | 牡4 | 57 | 高橋亮 | 15 | 3/4 |
7 | 4 | 7 | ペインテドブラック | 牡4 | 57 | 加藤和宏 | 5 | ハナ |
8 | 7 | 15 | マイネルシアター | 牡4 | 57 | 横山典弘 | 8 | 1 3/4 |
9 | 4 | 8 | ワンダーファング | 牡4 | 57 | 幸英明 | 13 | 1/2 |
10 | 3 | 5 | ヤマニンアクロ | 牡4 | 57 | 勝浦正樹 | 12 | 1 1/4 |
11 | 2 | 3 | ニシノセイリュウ | 牡4 | 57 | 河内洋 | 9 | 1 1/2 |
12 | 8 | 17 | マルブツオペラ | 牡4 | 57 | 武幸四郎 | 14 | 3/4 |
13 | 6 | 12 | チョウカイリョウガ | 牡4 | 57 | 柴田善臣 | 7 | 1 1/2 |
14 | 3 | 6 | ブルーコマンダー | 牡4 | 57 | 吉田豊 | 10 | 1 3/4 |
15 | 8 | 18 | マルシゲファイター | 牡4 | 57 | 菅谷正巳 | 18 | 3/4 |
16 | 2 | 4 | マイネルタンゴ | 牡4 | 57 | 岡部幸雄 | 11 | 2 1/2 |
17 | 7 | 13 | タイクラッシャー | 牡4 | 57 | 松永幹夫 | 16 | クビ |
18 | 8 | 16 | ノーザンカピタン | 牡4 | 57 | 後藤浩輝 | 17 | 大差 |
(単勝)2.390円
(複勝)2.140円 11.130円 14.140円
(枠連)1−6 610円
(馬連)2−11 820円
いや、いいレースでした、今年のダービー。それぞれが持てる力を最大限出し切った、って感じ。「実にさわやかですねえ」といったところでしょうか。
アドマイヤベガ、やっぱり大したウマです。桜花賞・オークスの2冠に輝いた名牝の初仔がいきなりダービー馬なんて、できすぎといえばできすぎなんですけどね。親子2代のクラシック制覇は、ダイナカール(83年オークス)−エアグルーヴ(96年オークス)以来のことになりますか。
それ以上に恐れ入ったのが…武豊。やっぱりタダモノではないといったところでしょうか。今回の上位3頭はほぼ差がなかったはずなのですが、だとしたら、事前に言った通り、勝敗の明暗を分けたのは「鞍上」ということなのでしょう。いや、渡辺騎手も和田騎手も精一杯頑張ったとは思うんですけど、それ以上に「ユタカ・マジック」が冴えていたのでしょう。このような「稀代の名騎手」の騎乗をリアルタイムで目の当たりにできることは、僕たちにとっては幸せこのうえないことなのではないかと思います。
さて、ナリタトップロード、本当に頑張ったと思います。強いウマだと思います。クビ差ですしね。秋に期待です。でも、それ以上に褒め称えたいのは、渡辺騎手。初めてのダービーで、1番人気に押されて、プレッシャーもすごかっただろうに、100%の力をウマに出し切らせたのは見事の一言です。最後はユタカに屈したものの、立派だったと思います。レース後に見せた涙は、悔しさというよりは「やるだけのことはやった」という満足感だったのではないでしょうか。1頭のウマとの出会いがジョッキーを育てていくという事例は枚挙に暇がありません。同期の吉田豊がメジロドーベルとともに一流ジョッキーに成長していったように。これをきっかけに、やや水を開けられたような印象だった吉田騎手に追いついてくれればと楽しみです。このダービーで、僕の胸の中では渡辺騎手は「これから応援していきたいジョッキー」になっていきました。
テイエムオペラオー、多くの人が指摘しているように、若干仕掛けが早かったかもしれません。でも、それで誰が和田騎手を責められるでしょうか? 初めてのダービー、しかも2冠の期待がかかっている、そんな状況。渡辺騎手とはまた違ったプレッシャーを感じていたはずです。失敗したとはいえ、いい経験になったのではないでしょうか。まあ、ミスなく乗ってくれれば上位2頭とはもっと接戦になっていたとは思いますが(ヘタしたら勝ってたかも)、僕的には十分満足です。ともすれば福永祐一ばかりに脚光が集まる「花の12期生」ですが、今年の牡馬クラシック戦線では十分に自分をアピールできたのではないでしょうか。
そして、何より嬉しいのは、渡辺騎手にしても、和田騎手にしても、調教師が自厩舎のウマにキチンと所属ジョッキーを乗せ続けてくれて、しかもそれで騎手が結果を出してくれたということ。昨年のファレノプシスやセイウンスカイのように「本番ではトップジョッキーに乗り替わり」というやり方も勝負である以上は否定はできないのですが、今年のように「調教師が弟子を信じ、弟子はそれに結果で応える」という結末の方が心に響きます。とにかく、本当に感動させられた、そんなダービーでした。