ミニノートサイズのWindows CEマシンの乱入で、小型ノートパソコン市場は混乱の一途である。 「ちょっとおにぃさん、ボーナスでノートパソコン買うなら、これに決まりっ」聞いたことのある声に振り向くと、あの時の怪しげなおじさんが曖昧な笑いを浮かべて立っているではないか。おや、今日はミニノートを持っているぞ。「なんたって、OSがROMに入ってるから、蓋を開ければすぐに使えるし..」えっ、ROMにOSが入っているのはWindows CEの話では..。あれっ、ミニノートでWindows CEが走ってる。「来年はミニノートなんてすぐにすたれちゃうね、これからはミニノートサイズのWindow CEマシンの時代だからね。」おいおい、先々週と言ってることが..。「ペンでもって、くりっとやれば..」おじさんは、キーボードの下からペンを抜くとディスプレイをつっ突いた。「あっと言う間にワープロが起動。キーボードもばっちりだから..」おじさんは耳にペンを鋏んで、指でキーボードかちゃかちゃ押した。「ねっ、今までのWindows CEと比べて格段に使いやすいでしょ。」それはいいけど、フロッピーもつながらないもんにデータ入れても、デスクトップに持っていくのが面倒じゃ..、あっ、おっさん..。またまた雑踏に消えていくおじさんの耳に、まだペンが鋏まれているのが見えた。 常にトホホと運命を共にしているモバイル系のユーザーにとって、小型ノートパソコンのトレンドについていくのは至難の技である。なぜなら、ひと月も経たないうちにトレンドが変わるからだ。Windows CEのバージョンが上がって、早く日本でも出ないかなと思ったら、ミニノートの新製品がどっとでてきた。東芝のLibretto以外にも選択肢が増えたし、やっぱりWindows 95が使えるミニノートが正解かな..と思ったら、アメリカではミニノートと同じ大きさのWindows CEマシンが出そうだと報道されている。これまでは、手のひらに載るハンディPC (H/PC)がWindows CEマシンの代名詞だったのに、大きさや重さではミニノートとWindows CEマシンの区別がつかなくなってしまう。一体、これからモバイル系パソコンの本命はなんになるのだろうか...。多分、それは、使う人が何時間電源無しで使うかで、判断が分かれるのかもしれない。 News.comの記事にあるように、確かにミニノートはニーズがあって現れた製品ではなく、ニーズを探している製品だ。なんてったって、モバイルするには仕様が中途半端。完全にデスクトップと同じことが出きるにも関わらず、それを外出先で使うと3時間でバッテリーが切れる。もし、オフィスの仕事を、そのまま電源のない外出先でやろうとしているなら、これは無理である。でも、移動の合間や一時間程度の打ち合わせの間に、散発的な使い方をすれば、これはこれで便利かもしれない。何と言っても、デスクトップとの間には全く垣根がない。これに対して、Windows CEはバッテリー駆動時間については電子手帳並に長い。公園のベンチで一日中仕事をすることだって出来る。でも、これだけで閉じた使い方をするならよいが、デスクトップパソコンと同様に使おうとすると、どこか垣根を感じてしまう。WordやExcelも入っているがWindows 95のものとは同じではない。ディスクに似た記憶スペースはあるが、ハードディスク程には大きくない。つまり、一日中公園のベンチで仕事ができたとしても、デスクトップパソコンと同じ仕事をするのは難しいということだ。 仕事がデスクトップパソコンから始まっているかぎり、究極の小型ノートパソコンに求められるのは、デスクトップパソコンと同じ性能ということになる。Windows 95マシンをそのまま小さくしたミニノートは、互換性とバッテリー動作時間のトレードオフを互換性に向けた。これに対してWindows CEマシンは、長時間バッテリー動作の方にアーキテクチャーごとチューンした。そして今、Windows CEマシンはワープロの出きる電子手帳から、長時間バッテリー動作の特長をそのままに、本気で公園のベンチで仕事が出きるかもしれない小型ノートパソコンへと形を変え始めた。どうする、悩めるモバイル系ユーザー...、とは言うものの、値段で比較すると明らかに半値のWindows CEマシンの方に、ころりと決まってしまう可能性は大きい。
|
1997.11.14 |
|