しゃべる車載パソコン

カーステレオメーカーのクラリオンがアメリカで、オートPC(AutoPC)という名前の車載パソコンを売りだしました。日本でも、将来売る予定らしいですが、これがパソコンと言うよりカーステレオ感覚で、ちょっと面白いのです。

この製品の情報は、クラリオンのアメリカ法人の作ったホームページで見ることができます。日本語ではないので、そこは我慢ですが、テストドライブというプレゼンを見るだけでも、雰囲気は分かります。それにしても、これは、まったくカーステレオですよね。違うといえば、PC-CARDを差すらしいスロットがあるのと、このフロントパネルをかぱっと開くと、CD-ROMのドライブが内蔵されていることでしょうか。一応、ハードの仕様を見てみると、CPUは日立のSH-3でDRAMが16MB、ROMが8MBついています。こうくれば、当然の様にOSはWindows CEですね。ディスプレイは256x84ドットの8色液晶になっています。なんだ、これではたいした表示はできないじゃないかと思いますが、そもそも、このディスプレイでGUIを表示する気は無いのですね。なんせ、このパソコンは、ディスプレイを見ずに使うのが基本ですから。

車で使うパソコンというと、以前にここで書いた、ホームページの表示できる車載端末みたいなものを思い浮かべますが、クラリオンの発想は、基本的に目は道路を見ているのでパソコンには大きなディスプレイはいらないというものらしいです。つまり、運転しながら使うことを前提にしているのです。では、どうやってパソコンとやり取りするかというと、音声なんですね。この、パソコンは200の言葉を聞き取ることができ、合成した音声で応答することができるのです。ただ、デモを見ているかぎりでは、アメリカでこれの付いたレンタカーを借りても、ちょっと日本人は使いこなせないかも。なんせ、最初にAutoPCと呼びかけてから指示するのですが、この最初の言葉が通じるかどうか。先走って、直輸入しようなんて考えずに、日本語版がでるのを待ったほうがよいかも。「おーとぴーしー」「...」「あーとぴーしー」「...」「おーとぴぃしぃ」「...」「おーいこたえてくれー」これをやってたら、事故に会いそう(^o^)。

このパソコンは、もちろんカーステレオでもあるわけで、それも音声で操作できます。自分の命令を登録しておけば、「文化放送」と言うだけでチャンネルを合わせてくれるかも。音楽CDのトラックも、「つぎ」とかいうと、先送りしてくれる。これって便利かも。すると、カーナビはどうなんだろうと思いますよね。もちろん、GPSのインタフェースもついています。でも、我々が使っているカーナビとはちょっと違って、地図は使わずに、その場で順番に音声だけでガイドします。「500メートル先を国道246に左折してください」とか「目的地まで200メートルです」とか、ガイドするようです。ホームページのデモでは、英語版のガイドは発音がよすぎるのか、合成音声だからか、ちと聞き取れなかったぞ。アメリカのレンタカーにこれが付いていても、多分、私は目的地に着けないであろうな。でも、これの日本語版ができて、「この先、左急カーブ」とかガイドしてくれると、これは、ラリーファンにはこたえられなかったりして(^_^)。

インターネットアクセスはどうでしょうか。少なくとも、ホームページを見るのは難しいようですね。でも、そもそも、運転しながらホームページを見ようなんて不心得なことはしてはいけないのです。ドライバーはまっすぐ前を見ていないとね。とは言っても、電子メールの機能はあります。これも、もちろん読み上げてくれる。ホームページのデモでも「今何時かな」「12時58分です」「ふーむ、電子メールをチェックするかな」「4件来ています。ミッチェル様より、プレゼンの予定は...」とかやってましたね。ただ、私のように、ごみメールがごまんと来たりすると困るかも。「オートPC、メッセージ」「115件来ています。メールサーバーさまより、不正なアドレスによる..」「スキップ」「メールサーバさまより、不正なアドレスによる..」「スキップ」これも、事故のもとだったりして(^_^;。それはともかく、電子メールばかりでなく、ポケットベルや、交通渋滞の情報も音声で呼び出せるようですね。

パソコンへのインタフェースとして、このシステムはUSBポートを持っていて、これに携帯電話を接続することができるということです。どうやるのか分かりませんが、USBにつながった充電器みたいなところに携帯電話を差すと、パソコンから電話をかけて、ハンズフリーで通話ができたりするようです。また、Vetronix CarPortという車のエレクトロニクスとのインタフェース規格に対応していて、ここから、スピードやら回転数なんかをモニターできます。これで、車の調子を調べるというんですが、いきなりパソコンが、「排気ガス浄化装置の温度が上昇しました。すぐに停止してください」とかしゃべりだしたら、ちょっと怖いかもね。でも、日本だと、すぐにサードパーティーの会社が、レーダー受信機とUSBをつなげた機械を売りだすんだろうなぁ(^_^;。このパソコンには、赤外線通信ポートもついているので、パソコンから電話帳を転送するときなんかに使えそうですね。

それにしても、ホームページを表示できるカーナビから、車用のパソコンというのが普及するかと思ったら、オートPCのように、運転しながら使うんだから、大きなディスプレイはいらないというパソコンも出てくる。こうした展開は、とっても面白いですね。とはいっても、日本人はテレビが好きだから、オプションでテレビもつけて売るのではないかと想像してしまいますけど。そうそう、あの、デモを見ていて思ったのですが、こういう音声認識を使ったパソコンは、視覚が不自由な人のためのインターネット端末に使えるのではないでしょうか。電子メールを読むのも簡単でしょう。声の指示でラジオがなったり、電子メールをチェックしたり。こういう使い方は、どうでしょうね。

1999.01.14
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