無料サービスは使うが勝ち?

私は、eXodusというソフトを何年も使っています。このソフトはネットワークでGUIを共有するxwindowという機能をパソコンで使うためのものです。例えば、UNIXのサーバーにインストールしてあるソフトを、パソコンの画面でそのマシンの前にいるかのように使うことができます。最初に出たころのバージョンは、パソコンの性能も悪かったので私には遅すぎて使えたものではなかった。とはいえ、テキストだけのTelnetが主流の頃、他の部屋にあるUNIXワークステーションのGUI環境を自分の席で使えるのは、便利ではありました。そのeXodusを売っていたのが、ホワイトパイン・ソフトウェアというアメリカの会社だったのですが、なんと、この会社は、自分の名前を「シーユー・シーミー・ネットワークス」に変え、売れ筋のCU-SeeMe(シーユー・シーミー)を中心とした、ソフト販売とユーザー向けポータル、それにビジネス向けホスティングサービスに主力を移してしまいました[cnet]。すると、eXodusはどうなったかというと、POWERLAN[powerlan]という会社に売却され、今後はこちらが売ることになります。この話をニュースサイトで読んで、今のネットワークビジネスのトレンドの一部をかいま見たような気がしました。これからは、高価なネットワークツールなんかを売っているよりも、もっと安いソフトを売って、それを利用するホスティングサービスで儲ける時代なんですかねぇ。

ホスティングというのは、ネットワーク的な場所貸し屋ですかね。例えば、小規模な会社がネットワークにホームページを開設するとき、ワークステーションを買って、ソフトをインストールしてなどとやっていたら大変です。それを、ホスティング会社に依頼すると、そこの会社のサーバーを使えるうえに、ドメイン名まで取ってくれたりするのです。参考までに、私がたまたま見かけたホスティング会社の説明がここ[cybergroove]にあります。別に、ここの宣伝をしているわけではありませんのであしからず(^_^;。基本的に、プロバイダーに個人ホームページを作るのに似ていますが、大きな違いは、自分のドメイン名で公開できる点でしょうか。個人でも手が届く料金ですな。それはともかく、こうしたホスティングは、別な形で私たちエンドユーザーも使うようになっています。話を戻せば、上のシーユー・シーミー・ネットワークスのホスティングとは、ビデオ系のWebサービスを肩代わりするもののようです。一方、ユーザー向けポータルとしては、cuseemeworld.com[cuseemeworld]というサイトを開いて、ユーザーがここのサーバーを使ってビデオチャットするサービスを始めています。ここには、無料でユーザー登録するだけで、自分のビデオチャットルームをポータルサイト上に開くことも可能です。まだ、多くないみたいですけど。CU-SeeMeというソフトは、複数の利用者でチャットするためには、インターネット上にリフレクタというサーバーが必要なので、それをエンドユーザーに無料でホスティングしているという見方もできます。

こういう、消費者向けホスティング(本来の意味ではないかな?)はネットワーク上で増えつつあるようで、しかも無料というのが一般的です。その典型的なのが、マッキントッシュユーザー向けにアップルが提供しているiTools[apple]というサービスです。これは、KidSafe, Email, iDisk, HomePageという4つの機能を提供しています。残念ながら、いまのところ英語しかサポートしていないので、ときどき不便なこともあります。KidSafeというのは、子供のインターネットアクセスを制限する機能ですが、日本のサイトも制限するのかは分かりません。Emailは電子メールアドレスを提供します。アドレスなんか持ってるという人もいるでしょうが、これをつかうと、name@mac.comという、めちゃくちゃ短いアドレスがとれるのです。短いからどうなんだと、昔ここに書いといてなんですが、私もakabei@mac.comを登録してしまった。ははは。でも、これには、転送機能ついているので、自分が使っているプロバイダのアドレスに転送しておいて、他の人にはmac.comを教えておくっていう手は使えますね。もっとも、日本からだといちいちメールが日米間を往復するということになりますが。あと、伝言を自動返信する機能もありますが、なぜか漢字をいれたら化けちゃった。iDiskは、この業界ではトレンドな、ネットワークディスク提供サービスです。これを使うと、アップルのサイトに20MBまでのファイルを置くことができます。デスクトップにアップルシェアサーバーのようにマウントするのですが、セレクタを使うのではなく、Web上で「私のiDiskを開ける」ボタンをクリックすると、ちょっと間が合って、デスクトップにアイコンが表示されます。あとは、20MBのディスクと同様に使えます。ただ、動作は遅いです。あくまでディスクはネットワークの向こうにあるのですから、1MBのファイルをドラッグするまえに、1MBのファイルをダウンロードするのに何分かかるかを想像する必要があります。このディスクには、パブリックフォルダーもあって、ここに入れたものは、自分のIDを知っている他の人からアクセスができます。ちょっとした、ファイルの受け渡しに使えます。最後のHomePageはすぐれ物で、iDiskの中にあるサイトというフォルダーにhtmlファイルを入れるだけで、http://homepage.mac.com/name/file.htmlとうURLでインターネットから開けるようになるのです。私のだと、http://homepage.mac.com/akabei/となります。無料で20MB分のホームページが開けるという意味では、すごくお得なサービスです。ただし、もともと、初心者向けなので、iToolsのリンクからたどると、お決まりのページしかつくれない仕組みになっています。上級者は、お決まりの方法でダミーのhtmlファイルを作っておき、それを自分で書いたものに置き換えることになります。

ディスクスペースを無料で提供するサービスは、Windows用にもあります。例えば、My Docs Online![mydocsonline]というサービスでは、Windowsに標準でついているWebfolderという機能を使って、特別なソフトをインストールすることなしに、これまた20MBまで無料でファイルを置くことができるものです。でも、この場合、ホームページを開けるわけでもないですね。本来の意味は、出先から自分のディレクトリにファイルを転送しておくとか、他の人にファイルをダウンロードしてもらうことにあるようです。このサービスでは、ファイルをあげたい人にアクセスするURLを送ると、その人はWebブラウザを使ってファイルをダウンロードできる仕組みになっています。それにしても、無料というのは大丈夫なんでしょうか。多分、個人のファイルをサービス提供者が覗くことは避けられないと思います。なぜなら、彼らには、自分たちのサービスが違法に使われていないかチェックする義務があるからです。先程の、アップルのiDiskでも、登録時にA4にして10ページくらいの利用許諾書を読まされます。読む人はあまりいないでしょうが(^_^;。この中には、子供のポルノを入れてはいけないとかいう項目もあります。つまり、アップルはこれが守られているかをチェックする必要があります。ですから、ここに、仕事のマル秘文書などを入れるのは止めたほうがよいでしょうね。WindowsのIE5ユーザー向けには、他にもjavaベースのオフィスツール(ワープロやスケジューラー)を無料で提供するmyWebOS[mywebos]というサービスもあります。このサービスが一番よいと紹介しているcnetの紹介記事[cnet]のタイトルは、「あなたのおかあさんは、ただで食える昼飯はないと教えたでしょう。私たちは、その反対の話をしようとしています」というもの(^_^)。なんで、無料で20MB使えるのですかね。そりゃ、いつデータがなくなっても保証しないと、利用規約には書いてありますが、それは、自分のパソコンだって同じ話だもんね。

無料のネットワーク関連サービスは、この先、もっと多様になると思います。アメリカでは、このほかにも、ファックスや電話の伝言音声を電子メールで転送するというサービス[yahoo]まで出ています。このサービスは、登録すると自分専用の電話番号をもらえます。この番号に電話したりfaxすると、その音声や画像が添付された電子メールがユーザーに転送される仕組みです。これも無料です。わざわざ国際電話をする人はいないから、日本から使う意味はほとんどありませんけどね。多分、こうしたサービスは、ユーザーが使うかどうか分からないものを無料で提供して、マーケティングしているのではないかと思います。将来、ほんとうにニーズがでてブレイクしたら、グレードアップして有料化するのではないでしょうか。そうなるまでは、こうした無料サービスを使わない手はないように思います。もっとも、サインアップする前に、そのサービスの評判くらいはチェックしたほうがよいとは思いますが。

2000.5.12
ひとつ戻る HOME つぎに進む