□□□□▲旅のフィールド〈メモ〉▼モバイル▲□□□□□□□□□□□□□ No.163 中国山東省2003−19.臨[シ畄]09 田斉王陵へ ◇◇◇◇▼旅のフィールド〈メモ〉▲モバイル▼◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ ―――――//―――――――――――――――――――――――//――――― ●王陵へ 昼食後は田*斉王陵(ティェンチィ ワンリン)だ。資料によると、戦国時代 の斉の六王の陵墓を含んだ中国の重要文化保護財、とある。 なんでも4代威王(ウェィワン)、5代宣王(シュワンワン)、6代*[ビン] 王、7代襄王(シャンワン)の墓は、それぞれの高さが3Oメートル、34メート ル、22メートル、23メートルと、全長60Oメートル以上続くその威容は、「東洋 のピラミッド」と称されているらしい。「東洋のピラミッド」。ぜひ見てみた い。 しかし、どのようにいけばいいのか皆目検討がつかない。先日、古*車博物*館 (グゥチャァ ポーウーグァン)に行ったとき、太公湖(タイゴン フゥ)を 渡ったときに西の方にそれらしいものを見た。 というわけで、73路(チーシーサン ルゥ)を調べてみると、途中に王陵と いうバス停がある。きっとそこにちがいない。というわけで、王陵へ向かった。 王陵は、橋を渡って料金所を過ぎたところ、ちょうど、管仲墓(クヮンチョ ン ムゥ)の近くだ。思った通り。しかし、ここからは王陵は見えないし、ど の程度の距離にあるのかもわからない。さあどうしよう。 当てにならない地図を頼りに、大体の見当とつけ、それらしい方向に伸びて いる道を歩き始めた。 道は広いが舗装がはがれ、トラックがひっきりなしに通るので砂埃がひどい。 できれば歩きたくは無いが、ピラミッドを見るためだ。 と、歩き始めてしばらくすると、家が途切れたところから右手に三角の山が 見えた。不自然な三角形の山だから、それに違いない。しかし、どのようにし てそちらまで歩いていこうか。 と思っているうちに、鉄道の線路が見えてきた。土を盛り上げ、高くなって いる。思い切って上に上がってみると、見えた。 *斉: *[ビン]: ○田斉王陵 ●田斉王陵 きれいな三角形をした山が、4つ並んでいる。しかし、ピラミッドというに は、少々小さいようだ。うまい具合に道もそっちに向かっている。さあ、歩い てみよう。 その道は、荷台を引っ張ったトラクターやトラックが何台も通る道だ。しか し、トラックがすれ違えないほど狭く、未舗装なのでこのあたり特有の粉のよ うな砂が舞い上がる。行きたくは無いが、ピラミッドのためだ。 そして、手前にあり気がつかなかった小さな墓を過ぎ、一つ目の大きな墓の 前にやってきた。すると、上に人がいた。古代の王の墓なのに。 人がいるのだからと上がってみると、そこは畑になっていた。刈り取りのす んだトウモロコシと、芽が出たばかりの麦だ。古代の王の墓なのに。 ついでに、上まで上がれるそうな道がついている。それだけ人が上がってい るのだ。 ●古代の王の墓なのに ぼくが来た方を見ると、そこにもひとつ王陵らしきものがあり、頂上に人が 立っている。それも、王陵だろう。 このあたりは小さいながらも山が連なるところで、周囲一望が見渡せるとい うわけではないが、眺望はなかなかいい。たしかに、古代の王の墓だが登って みたくはなる。 隣の王陵を見てみると、そこにはここよりももっと広い畑がある。その向こ うに連なる2つの王陵は見えないが、きっと同じように畑になっているだろう。 たとえ王の墓だろうと、平坦なところがあれば、畑にしてしまうのだ。実際、 ここへ来る途中の車窓でも、ある程度平らなところは、みんな畑になっていた。 それを見ていると、古代の王の墓だからといって、遠慮していない人たちの たくましさがわかる。 たしかに、古代の王の墓だからといっても、そのままあるだけでは邪魔にこ そなれ、何も人々にはもたらさないだろう。 しかし、こうして畑にすれば、食べ物はもたらしてくれる。無用の長物にな らず、古代の王の墓が役に立つのだ。 ●日本語のおじいさん 王陵から帰る途中、ふたたび線路脇に行った。すると、おじいさんが歩いて きて、話しかけてきた。 中国語はわからないが、雰囲気から注意をするのではなく、単に話に来たよ うだ。 「听不*[小彎(ティンプトン/何を言っているのかわかりません)」 そういっても中国語で話しかけてくるので、日本人だといった。 すると、表情が変わりさらにいろいろと話しかけてきた。もちろん、怒って いるのではない。ものすごく興味が引かれるようだ。 すると、日本語の単語をいくつか話してきた。教わったという。おじいさん の年齢からすると、もしかすると日本が中国を占領していたときに、教育され たものかもしれない。少々大変な相手にぶつかったのだろうか。 しかし、おじさんは一方的に日本を批判するわけでなく楽しそうに話してく る。もちろん、ぼくが日本人だとわかると、筆談も加えてくる。おじいさんの 字は、簡体字ではなく、の本の旧字とよく似ているきれいな字だった。 その後、日本が中国で悪いことをしたことを覚えているかと聞かれ、小泉首 相の靖国神社参拝をどう思うかと聞かれた。 中国人は日本人とちがい議論をいとわない。それどころか、自分の考えを明 確に持たない人はバカにされる。ぼくもも、下手にお世辞は言いたくない。 だから、つたない中国語と筆談で、こう言った。 日本人は神社に行く習慣がある。靖国神社は神社である。小泉首相は 日本人である。だから、神社である靖国神社へ行くことはあたりまえの ことだ。 しかし、中国人は靖国神社をよく思っていない。それを知っているの に、日本の代表する小泉首相が行くことはよくない。 どこまで伝わったのかわからないが、おじいさんはわかったわかったといっ てくれて握手をしてくれた。 やはり、変に中国の同情するわけでなく、自国の首相をけなすわけでなく、 論理的にはっきりと答えたことがよかったのだろうか。 *[小彎: 『文字鏡研究会』 ●つづく● Copyright(C), Taki 2003 □□□□▲旅のフィールド〈メモ〉▼□□□□□□□□□□□□□□□□□□ |