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No.189 中国山東省2003―37.中国考05 変な日本文字
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●変な日本語
外国で見る変な日本語というはと、やはりTシャツだ。しかし、中国では意
外と少ない。やはり、本場は東南アジアのようだ。
とはいえ、中国ではひらがなの「の」が注目されているらしく、中国語の
「的」に意味が似ていることからこの「的」の代わりに使われている。
と聞いていたのだが、化粧品で一つ見ただけで、そういうものは見ていない。
やはり、中国での変な日本語というと、商品のコピーだ。
日本製品はいいもの、というイメージを利用した変な日本語が書かれている
ことが多いのがおかしのパッケージだ。
もちろん、日本語というと日本のメーカーということになるが、意外と日本
のメーカーのものには日本語はあまり目立たないような気がする。
いまでは韓国系のイメージもあるロッテは、ほかのメーカーに比べて日本語
を多用しているようだが、もちろん、ここの日本語はしっかりしている。
やはり、日本語、いや意味がわからないのも少なくないから日本文字の方が
適していると思うが、それが書かれているのは圧倒的に中国のメーカーだ。
もちろん、並んでいるのは中国の店頭。商品を買う中国人のほとんどは日本
語が読めないから、これでもかまわないのだろう。
●変な日本語お菓子
今回コレクションした「変な日本語お菓子」の一つを紹介しよう。
「NUOYA」というケーキがある。ケーキといっても、洋菓子店の店頭で
売られているクリームでデコレーションされているケーキではなく、袋に入っ
て長期保存のきく焼き洋菓子のケーキだ。
大きな袋に4種類のケーキが入っていて、それぞれのパッケージに日本語が
書かれている。というか、日本の文字が書かれている。
それぞれのケーキに書かれている文字を、中国語、英語、日本文字の順で並
べてみよう。
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┃中国語 │英語 │日本文字 │食べた感じ ┃
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┃草苺派 │Strawberry cake │いちごパイ │イチゴクリーム ┃
┃蛋黄派 │Egg cake │カスタード │カスタードクリーム┃
┃鮮*[女乃]派 │Fresh milk cake │クソムーケーキ│クリーム ┃
┃香橙派 │Aurantium cake │オしンジパイ │オレンジクリーム ┃
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●解説しよう
では、解説に挑戦してみよう。
◎「草苺派」
まずは「草苺派」。「草苺(ツァォメィ)」はイチゴのこと。これに問題は
見当たらないようだが、そうではない。英語では「cake」となっているが、日
本文字では「パイ」。
「パイ」とは、日本では小麦粉にバターを加えたものをこねて薄くのばして
重ね層状にして、中に果物などを入れて焼いた洋菓子のことだ。ぼくが食べた
ものは、スポンジ状の焼き菓子、つまりケーキだ。
なぜ、これがパイと呼ばれるかわからないが、日本に「パイ」と名前がつく
ケーキ菓子があるが、それと同じものが中国にもあるので、それの影響だろう
か。
○草苺派
◎「蛋黄派」
次は「蛋黄派」。「蛋黄(ダンファン)」は卵黄のことで、カスタードクリ
ームが玉子の黄身でつくられることからこの名前がついたのだろう。
これの問題は、英語にあるのではないだろうか。「Egg cake」ではなく、
「custard cake」が正しいと思う。中には、玉子そのものは入っていないのだ
から。
○蛋黄派
◎「鮮[女乃]派」
そして「鮮[女乃]派」。「鮮*[女乃](シャンナィ)」は新鮮な牛乳のことだ
から、クリームでもおかしくはない。しかし、一応はクリームには「[女乃]油
(ナィヨゥ)」という中国語があるのだが。このあたりは、商品のイメージを
伝える中国語のコピーと考えられる。
これも英語は「Fresh milk cake」ではなく、「cream cake」ではないだろう
か。しかし、最もおかしいのが日本語だろう。
「クソムーケーキ」。よく見てほしい。「ク“ソ”ムー」だ。「クリーム」
ではない。「クソ」+「ムー」。食べ物なのに「クソ」。
しかし、このカタカナの「ソ」と「リ」の取違は、中国の変な日本語界では
定番のパターンだ。
○鮮[女乃]派
*[女乃]:
◎「香橙派」
最後は「香橙派」。「香橙(シャンチェン)」と言うものは中国には無いよ
うだが、おそらくは香のいい柑橘系の果物という意味だろう。
ということは、オレンジということでもとりあえずはいいかもしれない。し
かし、英語の「Aurantium」の意味がよくわからない。
ところが、これのもっともおかしいのが日本文字だ。「オしンジパイ」。も
ちろん、ケーキであってパイでないのは、イチゴと同じだが、「オレンジ」で
はなく、「オしンジ」。「オ“し”ンジ」だ。
このカタカナの「レ」とひらがなの「し」の取り違いもよくあることだ。
○香橙派
●意味不明
これらは基本的に日本固有の文字であるかな文字を取り違えたことに原因が
あると思うが、これ以外にも意味不明の“日本語”がよくある。中には、ある
程度想像できるものもあるが、まったく予想もつかないものもある。
このケーキの袋に書かれていたコピーは前者の方だろう。ところが、さらに
“日本語”が書かれている。
4種類すべての袋の上にこう書いてある。「日本風味」。やはり、日本を強
調することによって品質がいいことをアピールしているのだろう。
そして、その下にはこういう日本文字が。「質量の等級ゾテかく」。これも
「質」は現代中国の正字である簡体字だ。→*質
恐らく、こう書こうとしたのだろう。「質量の等級ドでかく」。しかし、こ
れでも「質量の等級」の意味がつかみにくいが、もうこれ以上は勝手に想像す
るしかない。
しかし、これで驚いてはいけない。ぼくが確認した中で、もっともすごかっ
たのがビスケットのコピーだ。
それは、「独自の*風格さしすせむさせねのぅぇか」。「独自の風格」はとも
かく、そのあとの「さしすせむさせねのぅぇか」はまったく意味不明。
ほかにも、ウエハースのパッケージに大きく「ビスケット」と書いているも
のもある。おそるべし、中国の日本語。
○「質量の等級ゾテかく」
○「独自の風格さしすせむさせねのぅぇか」
○「ビスケット」と書かれているウエハース
*質: *風:
●つづく●
Copyright(C), Fieldnotes. 2004
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