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No.195 中国山東省2003―40.中国考07 中国とアニメ

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●中国のアニメ

 アニメというともはや日本のことは避けて通れなくなっている。世界中のク
リエーターに影響を与え、日本のアニメに影響を受けた映画が日本で受ける。
そういう時代になってきた。
 今は、世界に影響を与える日本文化、そして日本の経済を支える産業となっ
たアニメに対して、もっとも冷淡で冷遇しているのが当の日本人というのが、
なんとも情けない状態だ。
 このように世界に認められている日本のアニメは、もちろん中国にも進出し
ている。
 その進出自体は意外と古く、30代の中国人でも、子供のころに「一休さん」
を見ていたと言うので、1980年代には入っていたようだ。
 この「一休さん」は、今でも中国の映像ソフトの一般的な規格であるVCDで売
られている。それだけ人気があると言うことだ。

●クレヨンしんちゃん

 ぼくがこの中国の旅の最中に映像ソフト売り場でよく見た日本のアニメは、
「一休さん(一休哥)」「ちびまるこちゃん(*櫻桃小丸子)」「クレヨンしん
ちゃん(*蝋*筆小新)」だ。
 それ以外にも、古いものでは「花の子ルンルン」、新しいものでは「名探偵
コナン(名偵探柯南)」などがある。
 一休さんは、30代の人でも20台の人でも主題歌を歌えるほど浸透している。
しんちゃんは、アニメのマンガ本入りのお菓子が売られているくらいだから子
供には人気のようだ。
 あと、中国ではおちんちん丸出しの男のこの人形が売られているので、しん
ちゃんの「ぞ〜さん」はいいのかもしれない。
 ただし、最近日本ではしんちゃんは「ぞ〜さん」をしなくなったので、日本
ではなにかの団体がクレームつけたのだろう。
 ところで、日本ではしんちゃんは両親を「みさえ」「ひろし」と名前で呼ぶ
が、中国版では「*媽媽(マァマ/おかあさん)」「*[パ][パ](パァパ/お父
さん)」とよぶ。
 だから両親もしんちゃんを「しんのすけ」ではなく、「小新(シャォシン/
しんちゃん)」と呼ぶようだ。このあたりは、日本と中国の親子関係の違いを
表しているようだ。
 もっとも、数十年前の日本なら、子供が親の名前を呼び捨てにするアニメは
放映されなかっただろうが。

*櫻: *蝋: *筆: *媽: *[パ]:
今昔文字鏡

●日本の名前

 クレヨンしんちゃんのほかの登場人物の名前は、ぼーちゃんが「阿呆同学
(アダイ トンシュェ)」となっている。
 「同学」は「同級生」だが、「阿呆」はひどいなあと思っていたら、中国語
では「ぼーっとしている」という意味らしい。それなら、一応は「ぼーちゃん」
ということでいいだろう。
 ネネちゃんは、「*[口尼][口尼](ネネ)」になっているほかは、「正男(ジ
ェンナン)」「*風*間(フェンジェン)」と日本語漢字の中国語読みとなって
いる。
 もちろん、日本のアニメは日本の物語として中国の人々は見ているようだ。
たしかに、「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」を見て、中国が舞
台とは思わないだろう。
 以前は、昔の日本がそうであったようにアニメの登場人物の名前が変えられ
ていたようだが、今ではアニメもマンガも基本的には日本語の漢字を中国読み
するのが基本のようだ。
 日本人の登場人物の名前がみんなカタカナだった某アニメも、無理やり日本
語の漢字に変換して、中国読みをしていた。

*[口尼]: *風: *間:
今昔文字鏡

●海賊版

 ある日、ビデオショップで映画版「犬夜叉」のVCDを見かけた。値段は15元
(約200円)。
 しかし、パッケージやCD本体にはアニメを製作しているSUNRISEや読売テレ
ビ、原作マンガを連載している雑誌出版社の小学館、そして原作者の高橋留美
子のクレジットがなく、画像も不鮮明で音声とずれがある。どう考えても海賊
版。
 注意してみてみると、多くの日本のアニメVCDにはクレジットがない。しかし、
ちゃんとクレジットのついているものもある。それは、ディズニーのアニメだ。
さすが、ディズニーだ。
 しかし、これほど海賊版(と思えるもの)ばかりだと、日本はほっといてい
いのだろうか? と思う。
 いまや日本のアニメは外貨を獲得する立派な産業のひとつだ。というと、ま
ゆをひそめる人もいるだろうが、それが事実だ。
 何十年も前から各社のアニメが世界中に売られていて結構な金額が動いてい
る。現在でも、世界中で、最新の作品から、30年前の作品まで放映されている。
それが海賊版として中国という巨大な市場に流れているとなれば、これは大き
な損失だろう。
 とはいえ、世界に進出している日本のアニメだが、利益が上がっているのは
商社や玩具メーカーであって、アニメ製作会社は一向に儲かっていないのも事
実だ。
 昔、アニメ製作の現場の人から「アニメーターは親が金持ちでなければでき
ない仕事」と言われたが、それは今でもそれほど変っていないようだ。

●オリジナル

 このように日本のアニメが氾濫している中国では、中国産のアニメはまだま
だ少ないようだが、いくつかはつくられているようだ。
 実写のドラマでも人気がある「西遊記」は当然だが、「封神演義」ブーム以
来日本でも人気がある那咤(ナヅァ)のアニメも作られている。
 しかし、若い中国人は中国製のアニメはだめだというが、確かにテレビアニ
メのレベルではまだまだと言う感じだ。日本のアニメの下請けとして発展して
きた韓国にもまだまだ及ばないだろう。
 ただ、街中でアニメ絵や同人誌絵をよく見かけるし、大きな書店にはマンガ
の描き方の本が並んでいる。ただし、日本で出版されてものの翻訳版だが。
 ともかく、下地はできているようなので、あとは日本よりもひどい社会的な
認知だけのように感じる。

●中国のテレビで見たアニメ「飛天少女警」

 量としては圧倒的に日本製が多いテレビ放映されているアニメだが、アメリ
カのアニメも放映されている。
 その中で、日本でも人気があるアニメ、「パワーパフ ガールズ(THE 
POWERPUFF GIRLS)」を偶然見た。タイトルは「*飛天少女警(フェイティェン
 シャオニュゥ チン)」。
 これは、日本のアニメや特撮番組好きのアメリカ人が作ったアニメで、科学
者が偶然作り出した超能力を持つ幼稚園児の少女3人が自分たちがすんでいる
町を守ると言うアニメだ。
 幼稚園児の女の子3人と言うと、いかにもロリコン向けと思われるかもしれ
ないが、子供向け番組の規制の厳しいアメリカにおいて、信じられないような
暴力シーン満載と言う、ある意味とんでもないアニメだ。もちろん、子供向け
の単純な絵で、見た目のグロテスクさは感じられないようになっているが。
 それが、ある意味アメリカ以上に規制の厳しい中国において、放映されてい
るので、驚いた。
 日本では編集されているオープニングもエンディングもオリジナルのようで、
そういう点では、日本よりも進んでいるかもしれない。

*飛:
今昔文字鏡パワーパフ ガールズ

●ウルトラマンと仮面ライダー

 アニメだけでなく、日本の特撮のVCDソフトもよく見かける。30年近く前の
「宇宙鉄人キョーダイン」のような古いものから、数年前の「カブタック」ま
でいろいろあるが、アニメほど新しいものは少ないようだ。
 そのような日本製特撮の中で目立つのは「奥特曼(アォトマン)」。これは
「ウルトラマン」とそのシリーズだ。
 中国にかぎらず、いろいろな国で人気があるようで、過去にはタイで映画が
つくられた。この映画では、ウルトラマンは巨大化した猿の神であるハヌマー
ンと一緒に怪獣と戦った。ちょうど、巨大化して正義のゴジラとともに悪いメ
カゴジラと戦った沖縄の守り神のシーサーと同じようなものだろう。
 説明するまでもないが、ウルトラマンと言うのは、日本の歴史的な人気のあ
る特撮シリーズだ。
 歴史的な人気のある特撮シリーズと言うと、もう一つ思い出す人もいるだろ
う。そう、「仮面ライダー」。
 しかし、あれだけ多くのシリーズがありながら、ウルトラマンとちがい一つ
も見かけることはなかった。仮面ライダーの中には、何か中国では受け入れる
ことができない要素があるのだろうか。

※中国の通貨「元」の日本円への換算は、旅行中の私の両替率の平均から概算
しています。                      1元=約13.3円

●つづく●
                   Copyright(C), Fieldnotes. 2004
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