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No.221 中国山東省2003―53.烟台10 烟台大学で日本を語る

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●烟台大学

 貿易都市の烟台、その名を冠した烟台大学は、もちろん烟台一の大学だろう。
とはいえ、大学の正門前には広場のような空き地が広がり、そこから広がるメ
インストリートも学生街のようなであるものの、どことなく場末の雰囲気が漂
う。
 中に入っても古ぼけた校舎や、教職員や学生の寮がならんでいる。聞くとこ
ろでは、実際の築年数は見た目よりも新しい。
 と思っていると、敷地の中央あたりにある大きな池のそのまた奥、最も奥ま
ったところにできたての校舎が並んでいる。
 白色と抑えた感じの緑青に彩られた校舎は、近代的な雰囲気がある。中は4
階まで吹き抜けの中庭が作られている。屋根があるので屋内の庭だ。
 そこに木が植えられているのだが、「これが中国人のデザイン?」と思える
ほどのいいセンスだ。もっとも、今年完成したばかりで、形が整うの前にはあ
と5年から10年で完成するような感じの庭だが。
 それが3棟続いていているのだが、建物は同じようなデザインなのだが、中
庭はそれぞれ違う趣だ。

●モダン

 つい最近までは、中国の建物というと、どうもデザインが今ひとつ垢抜けて
いないと思っていた。
 今回の山東省の旅で、建物関係ですごいと思ったのは、やはり烟台大学の新
校舎だ。白を基調とし、アクセントに緑青をつかった4階建てで、中央に庭が
ありそれを囲むように回廊状に教室などがある。まさか、烟台のような町でそ
ういうモダンな建物を見かけるとは思わなかった。
 中に入ってみると、吹き抜けの中庭を囲むように教室などがあるが、4階だ
けは片側にしかなく天井はガラス、南側から自然光が入ってくるようになって
いる。
 さらに中庭は、外から完全に遮断され、大小の気が植えられ、その間にタイ
ルの道があり、それらが絶妙に配置され、デザインの細部にまで気がつかわれ
ている。
 わりと大雑把なイメージがあった現代中国で、これだけ細部にまで気を配っ
たデザインの建物が、中国の中でもそれほどモダンな街とはいえない烟台にあ
るのか、と思った。
 さらに、それが4棟続いているのだが、中庭はそれぞれ違うコンセプトでつ
くられている。
 そして、それらは今年完成したばかりで、植えられた木がまだ小さく、恐ら
くは、完成するため、つまり植物が適度な大きさに成長するためには数年はか
かるだろう。
 このようなデザインは、日本でもそうめったにお目にかかれるものではない
だろう。

●烟台大学で日本を語る

 ぼくが烟台で滞在していたのは烟台大学の近く。烟台大学で日本語を教えて
いる中国人の友達がいるからだ。
 その友達から、学生に日本語で何か話してほしいと言われた。生の日本人と
話す機会を持ちたいらしい。断る理由などまったくないぼくは、二つ返事でO
Kした。
 友達と話をして、授業の抱いたの骨子を決めた。1時間半あまりのコマすべ
てぼくが使っていいということになった。
 日本人と会うのは初めてだろう学生を前にして、前半はぼくが日本のことに
ついて話をして、後半は日本に関する質問を受け付けようということになった。
 さあ、そこで問題なのは、いったい、日本の何について話をしたらいいだろ
うか、ということだ。
 中国人があまり知らない日本のことで、細かい説明をしなくても大体のこと
を理解してくれること。
 今までの中国人と話をしたときなどの経験や知識から、お風呂と温泉のこと
について話そうということに決めた。
 話をするのは、実は翌日。あまり時間はないし、もちろん資料もない。とり
あえず、メモに話すことをまとめていった。

●中級クラス

 翌日、いよいよ日本のことについて話すことになった。もちろん、日本語で
話をするので、中級クラス。簡単な日本語なら理解できることになっている。
 教室は小さく、人数も20人いない。ちょうどいい。まずは、下手な中国語で
挨拶と自己紹介をしてから、日本語で話し始めることにした。
 最初は、こちらも不慣れで学生から早口で聞き取れないというに指摘があっ
た。こういう意思表示ははっきりとするのが中国人のいいところだ。日本人な
ら、うじうじと黙っているはずだ。
 そこで、ゆっくりと話せるように、なるべく長文は使わず、短い文を積み重
ねるようにしていった。話しにくいが、話すことに注意を向けるおかげでゆっ
くりと話すことができた。

●日本人と温泉

 まずは、今回話そうと思っているお風呂と日本人についての関係を話した。
日本人自身が思っている日本人のイメージの一つに「お風呂好き」がある。
 そこから、温泉が好きなところへ話を持っていく。ここで、気になった。彼
らは「温泉」という日本語を知っているだろうか。
 と言うことで、簡単に日本の「温泉」というものを説明した。さらに、日本
人がいかに「温泉」に惹かれるかも。
 次は、温泉の種類。といっても、これからの話をしやすくなるようにぼくが
勝手に考えた分類だ。それはこんな感じ。
 1.日本の普通のお風呂と変らないもの
 2.庭をつくったり大きな石を置いたりして温泉のイメージを作ったもの
 3.自然のままで服を脱ぐところもないもの

●混浴

 次に日本人が好きな温泉の条件をちょっと話してみた。日本人が温泉に求め
るものは露天と混浴。ただし、混浴については、男性のみと言うことも強調し
ておいた。
 しかし、ここで一つ説明しておかなければならないことがあった。それは、
混浴についての説明だ。
 もちろん、男女が裸でお風呂に入るという、ある意味インモラルにも思える
状況での入浴だ。それについて、歴史を踏まえて話しておかなければ大きな誤
解を招くだろう。
 それは、江戸時代の銭湯の話だ。当時は混浴が当たり前だったが、あまりに
もインモラルであるということで、お上から禁止のお達しが出て、今日に至る。
混浴の温泉は、その名残ではないだろうか。最後はぼくの推測だ。
 ともあれ、そのように日本人はお風呂にこだわる。このように日本人はお風
呂がすきなのだ。そうしめくくった。

●日本語を勉強する学生

 その後は、今の話について、そしてそれ以外の日本についての質問を受ける
ことになった。
 学生は様々だ。そういった中でぼくが感じたことは、日本にいろいろと興味
を持っているが、あまり経済や物が豊富なことについての質問はなかった。
 むしろ日常的なことや、旅の内容についての質問が多かった。あと、中国に
関する感想をよく聞かれた。中国の好きな食べ物や中国へ来ておどろいたこと
や中国旅行の感想など。
 中国人というと、みな物質的な日本にあこがれているというイメージがあっ
たが、ここで日本語を勉強している学生は、それほど日本への憧れを持ってい
るようには見えなかった。
 まだまだ、一般庶民にとって経済的には日本には及ばない中国だが、日本に
あこがれている中国というのは、おわりつつあるのかもしれない。

●つづく●
                   Copyright(C), Fieldnotes. 2004
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