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関西フィルハーモニー管弦楽団
第148回定期公演

日時
2001年11月16日(金)午後7:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
関西フィルハーモニー管弦楽団
独奏
梁美沙(Vn)
指揮
飯守泰次郎
曲目
1.ブルッフ…ヴァイオリン協奏曲第1番
2.ブルックナー…交響曲第7番 ホ長調
座席
1階O列14番

Shall We OTAKEBI?

 仕事がきつくてイヤになることがありませんか? 休みが全然取れなくて「やってられねーよっ!」と雄叫びを上げたくなることがありませんか?
 今、私がそうです。
「やってられねーよっ!!」
 と言うわけで、途中で残業をふけてシンフォニーホールへと駆けつけました。今晩はブルックナーでしたのでどうしてもガマンが出来ませんでした。

ブルッフ…ヴァイオリン協奏曲第1番

 開演ギリギリに会場に飛び込みましたので、前プロがどんなものかさえ確認してなかったのですが、登場したソリストを見てビックリ。それはまだ幼さが残る女の子でした。慌ててプログラムを確認すると、梁美沙(ヤン・ミサ)という中学3年生。ほー。いわゆる天才少女ですか。
 取り敢えず、新しい才能に期待して音楽に身を浸すこととしました。
 まず音色自体は年に似合わない整ったものを聞かせてくれます。またテクニックもとてもしっかりとしていて安定感があります。しかし金を払って聞く立場から言わせてもらうと、全体の構成に甘さを感じ、何より音色自体に感性のひらめきが乏しく演奏に魅力を感じることはありませんでした。
 ……え? 中学生にそれはないだろう? 確かにその意見はごもっともです。私もこれがなんらかの発表会ならこんなことを書きはしないです。しかしこれはプロオケの定期公演なんです。そんな舞台に上がれば80才だろうが、15才だろうがまったく同等に扱わなければいけないと思います。
 飯守さんのサポートは非常にしっかりとしていて、どっしりとした音色は大変好感を得ました。

ブルックナー…交響曲第7番

 休憩時間が終わり、客席に戻るとお客がかなり減っていることに目が付きました。特に前プロで熱狂的な拍手を送っていた1階席最前列が全員いなくなっていることには思わず笑ってしまいました。今頃は身内で打ち上げでもやっているのでしょう。

 飯守さんの音は初めて聞くのですが、中音域から低音域までがどっしりとしていて、少々のねちっこさを持つそれはボッテリとした質量を感じさせるものでした。ワーグナー振りの売り文句に恥じない好感を覚える音色でした。
 しかしブルックナーをするのにはどうかなと思わなくはなかったです。確かにブルックナーはワーグナーの管弦楽法を多大に参考してますが、実際にはもっと透明感が必要だと思います。(ワーグナーでも『パルジファル』はそれが必要)
 プログラムに飯守さん自身の言葉で、この曲はホ長調という『愛の調性』を使った曲、とのコメントがあったように、『トリスタンとイゾルデ』みたいなねちっこい音楽が展開されていきます。
 今日の演奏にはノヴァーク版に指揮者独自の変更を加えたものだそうですが、聞いた限りほとんど解りませんでした。アダージョの頂点で打ち鳴らされるシンバルがいつもは派手派手しく思うだけでしたが、今回はとても鮮烈に心に響き、ノヴァーク版を見直す一瞬となりました。
 また東京シティフィルとのCDとも解釈上はほとんど同じでしたが、オーケストラの音色に重量感が増し、終楽章で飛び跳ねる音型を非常に強調して、至福感を浮き立たせていたことがCDを上回っていると感じました。
 曲が終わると同時に「ブラボー!」の声も飛び、大きな拍手の中、演奏会の幕も閉じました。

おわりに

 それにしても同じブルックナーでも朝比奈御大のものとはまったく違うものでした。今回のように、スケールが小さくてこじんまりとしているけど中身が詰まっててねちっこい、と言うのもアリでしょうが、私が求めているブルックナーとは確実に違ってました。
 冒頭のトレモロひとつから、どうしてあれだけ違うのでしょうか? 不思議でしょうがありません。朝比奈御大が放つ、あの空間的な広がりを生む秘密。だれか知りませんか?(絶対テクニック的に秘訣があるはずだ)

 総じて、これもひとつのブルックナー像だと言われればそうなんだけど……、と思った演奏会でした。

 なんか今日は毒舌が多いね。
 さて次回は、……まったくの不透明ですが、たぶん佐渡さんの第9になるかと……。
 けど高関健の「ワルシャワの生き残り」ももの凄く聞きたいのですが……。(結局ダメでした、グスン)
 その点も含めてお楽しみに。


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