玄 関 口 【小説の部屋】 【交響曲の部屋】 【CD菜園s】 【コンサート道中膝栗毛】 【朝比奈一本勝負】

金聖響/新世紀浪漫派!
シューベルト

日時
2003年4月13日(日)午後3:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪センチュリー交響楽団
指揮
金聖響
曲目
シューベルト
1.交響曲第7番「未完成」
2.交響曲第8番「グレート」
座席
1階N列22番

はじめに

 一昨年まで朝比奈隆が行っていたシンフォニーホールでのシリーズ演奏会ですが、今年からは金聖響と大阪センチュリーのコンビで行うこととなりました。で、その曲目も「未完成」と「グレート」という小手先の技術だけじゃどうしようもないものを最初に並べてきました。
 私は朝比奈&大フィルの神々しいまでの「グレート」を忘れることが出来ません。この若々しいコンビはいったいどんなシューベルトを聴かせてくれるのでしょうか。

 会場内にはマイクとテレビカメラがセットされていました。金さん自身は以前にテレビ収録を経験していますが、この演奏会にかける周囲の期待がいかに大きいかが伝わって来るようでした。

交響曲第7番「未完成」
交響曲第8番「グレート」

 まず「未完成」ですが、第1印象は「こんなにまとまっていないアンサンブルをするセンチュリーは初めて」でした。なんだか各楽器がそれぞれ別に鳴っていて全体としての凝縮に欠けていました。ちょっと先行きに不安が募ります。
 全体としてはいたずらにドラマチックに依らず、古典派的なアプローチをしていましたが、どうもいまいちパッとしませんでした。

 しかし「グレート」の方は活気のある演奏となっていて、第1楽章などノリの良いものでした。ですが、楽章全体を支配するリズムモチーフの刻みが甘かったり、コーダで序奏部が回帰する際のテンポ設定が、しっかり落とすのか、インテンポで進めるのかどっちつかずだったり、きちんと煮詰めていない感じを受けました。
 ただ終楽章は良くできていて、所々楽想の接続がギクシャクした箇所があったもの、しっかりとクライマックスに向かって行くもので、コーダではかなり集中度の高い、熱い演奏となっていました。

げげっ

 曲が終わると、“待ってました”とばかりに甲高い声で「ブラボー!!」の大絶叫が、なんと真横から! ……絶句。まさかこんな至近距離でやられるとは……ぐはっ(吐血)
 初老の男性が子供みたいな目で手を叩いているのを見てると、なんだかなーと思ってしまいました。この男性の前に座っていたご婦人はビックリしてして身を伏せてしまった位で、正直私もこの「ブラボー」でスーッと熱が冷めて、もうどうでも良いような気分になりました。自分だけが良ければ周りの人はどうでもいいんでしょうかねえー。
 ここは通し券の席だから、あと3回もこれを聞かなきゃならないのか……、勘弁してくれ……。

 やがて拍手を制すると、金さんが指揮台の手摺りに寄りかかりながらこう言いました。
「来年の7月に……、あ今年か。メンデルスゾーンをやりますので、その宣伝を兼ねて『真夏の夜の夢』から」
メンデルスゾーン…劇音楽「真夏の夜の夢」よりスケルツォ
 これも大きな拍手が起こると、演奏会の幕が降ろされました。

おわりに

 今日の演奏には古楽器奏法のアプローチを取り入れているそうなんですが、弦がちょっと弾きにくそうにしている瞬間が垣間見れただけでよく判りませんでした。何にせよ感動できなければどんな方法を取ろうと一切意味がないので、ぜひとも頑張って欲しいものです。
 また金さんが「おっ、暴れているな」と感じる所が「グレート」の最後の部分だけだったのが少し物足りなく思いました。

 総じて、聖響は暴れろ、客は暴れるな、と思った演奏会でした。
(3ヶ月後の自分に業務連絡。バカが横で大声出すから耳ふさぐ用意をしておくこと)

 さて次回は、いっても同時にアップしてますが、ジャン・フルネを聴きに東京まで行って来ました
 色々と不安になるような噂がありますが、実際はどうだったのか? よろしければこちらもどうぞ。


コンサート道中膝栗毛の目次に戻る