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金聖響/新世紀浪漫派!
シューマン

日時
2003年10月13日(月・祝)午後3:00開演
場所
ザ・シンフォニーホール
演奏
大阪センチュリー交響楽団
独奏
及川浩治(Pf)
指揮
金聖響
曲目
シューマン
1.交響曲第4番
2.ピアノ協奏曲 イ短調
3.交響曲第2番
座席
1階N列22番

はじめに

 さて、今日で3回目となるこのシリーズですが、今日はオールシューマンプロです。ドイツ・オーストリア系の重要なシンフォニストであるシューマンの傑作3曲(ひとつはコンチェルトですが)がまとめて聴けるとあって、今日の演奏会は非常に心待ちにしていました。
 今日も舞台上にはテレビカメラが並び、収録がされるようでした。またインターネットでも中継がされて、演奏会が終わってもアーカイブとしていつでも閲覧出来ようです。気になる方はNTT西日本の「フレッツ・スクウェア」公式サイトをご覧下さい。

交響曲第4番

 さて拍手のなか入場してきた金さんの頭にビックリ。マッキンキンに色を抜いていました(むしろ白髪に近いくらい)。今風で良いんですが、この人には黒髪の方が似合ってると思います。また今日も詰め襟の服装です。
 演奏の方は速いテンポで非常に歯切れが良く、若々しい生気に溢れた演奏でした。遅いテンポでじっくりと渋く進めるアプローチのあるのですが、今回はシューマンの持つ浪漫(ロマンよりこっちの方ですね)性にスポットを当てたものと言えるでしょう。
 繰り返しはすべて実行しており、オーケストレーションもいじっていないように見受けられる非常に正攻法の演奏で、集中力の高い中身の凝縮した演奏でした。また全体の流れがスムーズでクライマックスに向かって自然な盛り上がりを見せる素晴らしい演奏でした。
 ただ終楽章の最後にディミヌエンドをかけてふわっと終わらせたのにはビックリしました。当然楽譜には書いてないはずなので、金さんの解釈となるのですが、おかげで音が消えるまで拍手が起こりませんでした。(それにしてもこんな締めくくり方、他にした人がいたのかな)
 これとは別に、オケは良く鳴ってましたが、聞こえて欲しい内声のメロディが聞こえにくかった所があって、各楽器のバランスにややツッコミ所がありました。

ピアノ協奏曲

 4番が終わると、休憩時間と思っていたのか、何人ものひとが扉の外へと急いでいきました。またピアノをセットするまでに遅刻してきたお客を入れ、場内が少し騒がしくなります。
 やがてオケのメンバーが再登場し、チューニングが済まされるとソリストである及川さんが登場し、少し遅れて金さんの登場となりました。

 まず独奏ピアノの及川さんですが、汗をびっしょりとかいた熱演でした。第1楽章が終わったとき、蝶ネクタイが歪んでいることを金さんにこっそりと教えてもらって、それを直そうとしましたが、どうも上手く行かないようで、シャッとネクタイを取ってしまってポケットにねじ込んでしまったシーンがありました。
 それで演奏内容ですが、情熱溢れる、と言えば聞こえが良いのでしょうが自身の情熱に身を任せたかなり荒っぽいものでした。即興的に入れられる間の変化や、スムーズに流れない運指、そして少しだけ歪な和声感覚がどうも馴染めませんでした。もう好きにしてくれ状態でした。
 ただ音の立ち上がりがキリとしていて、高音に押し出し感が強く、何より独自の世界を持っているようなので、私が普段から言っているソリストに必要とされる毒を彼は持っていると言えます。将来が楽しみと言えるピアニストでしょう。(私は10年ぐらい聴きたくないけど)

 一方、金さんは及川さんのピアノにちゃんとついて行ってたのが感心しました。しかしオケの方はまったく精彩を欠いた演奏で、終楽章では怪しいくらいのアンサンブルでした。
 センチュリーはこの曲を練習したのでしょうか? かなり疑わしい演奏でした。

交響曲第2番

 休憩のあと始められた2番ですが、こちらも4番と同様速めのテンポで歯切れ良く進みます。4番の出来が非常に良かったので、この曲も期待したのですが、やや空回りしている感がありました。
 4番は浪漫的に比較的長い旋律線を持っていますが、この2番では古典的(もっと言えばベートーベンの後期スタイル≒バッハ的)で断片的な旋律を積み上げるスタイルなので、各楽章の構造をきちんと把握してそれを解りやすく聴かせないとこの曲を魅力的にすることは出来ません。(和声構造だけ追っかけていてはダメです) その辺りの突っ込み加減が甘いと感じました。
 また聞こえて欲しい旋律が埋もれてしまう所があり、楽器間のバランスも練り込み不足だったとあえて言います。
 なにより痛恨だったのが、終楽章のコーダでクライマックスに突入するタイミングが少し遅れてしまったことです。あとからググッと音量が持ち上がりましたが、それまで結構細かい指示を出していたのに、このキューだけ反応しなかったようでした。

ブラボー殺し

 コーダで歯切れ良く和音を刻み、最後力強く締めくくるのかと思ったら、ここでもディミヌエンドをかけて音量を絞り、ふわっと終わりました。
 真横にいた例のオヤジが終わった瞬間にブラボーをかまそうと、大きく身構え口に手を持っていきましたが、ゆっくりと消えていく音の前にタイミングを完全に見失いました。
 ザマアミロ!
 金さん良くやった!! もうこれだけでも大絶賛したいくらいです(笑)。やがて充分に音が消えた後、3階席からブラボーの声が掛かりましたが、タイミングが良く非常に心地よく聞こえました。ぜひ次回のブラームスでもディミヌエンドをかけて最悪のフライングブラボー殺しをやってくれ。

 冗談はさておき、今回のディミヌエンドは別にフラブラ殺しのためではなく、シューマンの交響曲は第1楽章と終楽章のすべてがいわゆる「ジャ〜ン!」で終わるため、変化を付けたかったのではないかと邪推していますが、今日のこれは少々小手先の解決方法ではないかと思います。もっと内容で勝負して欲しいものです。(しかし何もしないよりはずっと好感を持ちました)
 それにしてもあのブラボーがないだけで、こんなに気持ちよく演奏会を終われるとは思いもしなかったです。終演後にする拍手の気持ち良いこと。
 ちなみに5時を10分ほど過ぎていたため、今日はアンコールなしで幕となりました。

おわりに

 前回のメンデルスゾーンが良かったので、今回は期待が少し大きすぎたようです。かなり辛口の批評となってしまいました。
 しかし最初の4番はなかなか良く、この日の白眉と言えるでしょう。(ピアノコンチェルトでつまづいたのかな?)
 それにしても最後のディミヌエンドにはビックリしたわ。

 総じて、今日は目一杯暴れたな、と感じた演奏会でした。

 さて次回は待望のベルティーニのマーラーを聴きに京都まで行きます。やっと彼の演奏を生で聴けるということで、今から大変楽しみにしています。


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