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#9700 
バラージ 2014/11/13 23:06
追悼・本島等

 本島氏の訃報にはある種の感慨があったのですが、映画関係者以外についてはついつい書きそびれてしまいます。あの銃撃事件は衝撃でしたね。僕はちょうど大学受験の年でした。ご冥福をお祈りします。
 昭和天皇死去後の数日はすべてのテレビ局が天皇報道一色になり、テレビがつまらなくて参っちゃったことを覚えてます。TBSの筑紫哲也氏の番組あたりは、「昭和という時代を振り返る」というテーマの番組だったんで興味深く見たんですが、ほとんどは「昭和天皇の歩まれた道」とかで、さすがに24時間すべての局でそれをやられちゃ……。その数日はレンタルビデオの回転率がものすごいことになってたらしいですね。

 そういえば、先日の毎日新聞で村上春樹氏の単独インタビューが載ってたんですが、その中で村上氏は日本人の抱える共通問題として「自己責任の回避」を指摘していました。1945年の終戦にも2011年の原発事故にも誰も本当の意味で責任を取っていないと思う、と。

>インディアン映画
 アメリカ先住民(インディアン)に同情的な視点からの映画だと、1950年の『折れた矢』という作品もあるようです。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』公開時に同じようなテーマの映画として紹介されてました。僕は未見。

>かっこいい歴史用語ランキング
 先日、ニュース23でgooアンケートで「かっこいい歴史用語ランキング」というのを紹介していました。これはおそらく20個ぐらいの選択肢から1個選ぶという方式のアンケートだと思うんですが、1位は「神聖ローマ帝国」、以下2位が「カノッサの屈辱」、3位が「薔薇十字団」、4位が「ロゼッタ・ストーン」、5位が「薔薇戦争」という結果でした。薔薇十字団という用語は初耳だったんで調べてみたら、中世ヨーロッパに存在した秘密結社の都市伝説のようですね。

>歴史映像名画作品候補を追加紹介したんで、戦後〜現代の再整理。
 『帝銀事件・死刑囚』『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』『松川事件』『トットチャンネル』『トキワ荘の青春』『ALWAYS 三丁目の夕日』『太平洋ひとりぼっち』『初恋』『Aサインデイズ』『光の雨』



#9699 
黒駒 2014/11/13 00:07
司馬遼太郎夫人死去

ちょうどNHKで坂の上の雲放送している最中の訃報でしたね。ツイッターで司馬が長らく映像化を拒否していたけど、夫人が自分の目の黒いうちにと自分が監修することで制作を許可したという話を紹介したら、けっこう知らない人もいたみたいです。

司馬夫人の意思としては、もちろん特定の政治的立場に利用されてほしくないというのもあったでしょうけど、それよりも司馬が40代くらいにいちばん力を入れて作り上げた小説であることを身近にいて知ってる人ですから、世の中の人に誤解してほしくないという意思が強かったのだろうなぁと思います。

今後も司馬作品の映像化ってあると思いますけど、財団の管理者が変わることでトーンが違ってくるかもしれませんね。



#9698 
徹夜城(このところ西部劇づいてるような気がする管理人) 2014/11/10 13:50
アパッチ

 ちょいと伝言板への登場が遅れました。本日午前に「史点」をアップしたので、その報告ついでに書き込んでます。

 まずタイトルの話ですが、1954年のアメリカ映画「アパッチ」を先日見終えまして。インディアンのうち激しい抵抗で知られたアパッチ族を主人公にした作品で、演じるのがなぜかバート=ランカスターで青い目のインディアンという妙なことになってるのですけど、さすがに興行上の理由もあるんでしょうねぇ。それでもこの年代でインディアン側の立場で映画が製作されていたというのはちょっと驚き。
 映画はアパッチ族の族長ジェロニモが白人に降伏するところから始まり、主人公マサイはフロリダに送られる途中列車から脱走して故郷へ帰ります。その途中で白人文明を目の当たりにし、さらに抵抗をやめて白人文化をとりこみ農業を営んで共存を図っているチェロキー族とも触れ合い、故郷に帰ってから山にこもって武装抵抗もするけど農業にも手を出して…ってな展開になります。うーん、結局は共存方向にもっていくわけですか。
 NHKのBSシネマのラインナップをみると近々「ジェロニモ」も放送するらしいので、比較してみたいものです。
 そうそう、前に話題に出たインド映画「秘剣ウルミ・バスコ・ダ・ガマに挑んだ男」も録画してありまして、ようやく最初の方だけ見ました。お約束のダンスシーンもあり、インド娯楽時代劇の典型的な天界という気がします。

以下、ちと遅れましたがレスを。

>ひでさん
むかし、いしいひさいちの漫画で、「これはドイツんだ、オランダ、そんなことアルメニア」なんてのが東ドイツのスパイ養成学校のシーンでチラッとありました(笑)。
遺跡発掘の状況がネットを通じて刻々と発表されるというのも面白い時代になったもんだと思いますね。今回の史点でもエジプトの件に触れてますが、まぁいろいろ有名人がらみの遺跡や遺物が出て来ることはあるもんだな、と。

>NFさん
お久しぶりです。そう言われてみれば、熊本は江戸時代に細川家の藩でしたし、義昭擁立には早くから細川幽斉が絡んでましたから、その線はありそうな気がします。もちろんまったく無関係な人が持ってた、というケースも少なくないようですが。

>バラージさん
足利将軍の代数、ご指摘の通り訂正しておきました。室町も後ろの方にいくと僕もよく分かってなかったりしまして。
「鳴梁」の日本公開はないんじゃなかろうか、って話は東京新聞のコラムでも書かれてましたね。僕もぜひ見てみたいんですが、別に日本で公開しちゃまずいようなネタでもない気がします。あとは興行的にどうか、ということはあるかもしれませんけど。

>黒駒さん
そんなわけで僕も戦国期の室町将軍については詳しくないのですけど、最近ずばりそれを取り上げた書籍があった気がしますし、一昔前までの弱小イメージよりは結構高い権威力を持っていたんじゃないの、という見方が強くなって来てるんじゃないかなあ、と漏れ聞く限りでは思います。



#9697 
黒駒 2014/11/03 23:18
戦国時代の足利将軍

義昭をはじめ戦国期の足利将軍は、近年再評価がなされていますね。武田・上杉間の川中島合戦なんかも、昔はただの地方の局地戦と理解する向きもあったようですが、近年は上杉謙信は将軍義輝に近く、信玄により追放された前信濃守護・小笠原氏の帰国支援を命じられていたことなどが指摘されますね。

対して信玄は新将軍義昭を奉じた信長に接近しており、義輝が暗殺され義栄を経て義昭が新将軍になったことにより、いわば中央政界で政権交代が起こったことをチャンスに、信玄は以降の外交を優位に展開しようとした意図があったのだろうと、個人的には思っています。上杉との川中島合戦は沈静化しますし、駿河今川領への侵攻も、信長の敵であった今川領への侵攻は義昭の内意を得ていたことが指摘されていますし。

このように、戦国は昔から人気があって研究もされている分野なのですが、従来は地方地方の郷土史的研究にとどまっていたのが、近年になって史料集や自治体史などが刊行されて研究状況が整ってきたことで、列島規模のダイナミックな動向が把握できてきた分野だと思います。なんだかんだで、戦国は面白いですね。



#9696 
バラージ 2014/11/02 23:42
史点いろいろちょこっと

 今回の史点の最後のほうで、14代将軍足利義輝という記述がありますが、義輝は13代将軍で、14代将軍は義輝・義昭兄弟の従兄弟の足利義栄です。単純ミスかと思いますが、個人的ににちょっと関心のある人物なんで説明させていただいちゃうと、義輝を討った三好三人衆と松永久秀が義輝の後釜にしようとしたのが義栄。
 戦国時代の室町将軍位をめぐる争いは、細川政元が10代将軍義稙(義視の子)にクーデターを起こし、その従兄弟の義澄(堀越公方政知の子)を11代将軍に担ぎ出した明応の政変に始まります。下剋上の象徴として戦国時代の始まりともされる事件で、政元が暗殺されると義稙が逆襲に転じ、将軍に復活。この争いは義稙の養子義維(実父は義澄)と12代将軍義晴という実は兄弟対決を経て、義晴の子の義輝・義昭兄弟と義維の子の義栄の代まで延々と続いてきたんですねえ。
 将軍になれると阿波から摂津までやってきた義栄ですが、彼を呼び寄せた三人衆と松永が仲間割れを始めてしまい、摂津で足止め。紆余曲折の末になんとか摂津で将軍に就任するものの(室町幕府史上、京で任官しなかった唯一の将軍です)、信長に担がれた義昭が上洛してきてしまい、1度も京に入れないまま病死しました。影が薄すぎるせいか、有名な大物と絡まないためか、大河ドラマにも1度も登場していません。1回ぐらい出してやってもいいんではなかろうか(笑)。

 そういえば、1回前の史点にあった韓国映画『鳴梁』、日本で公開されませんかねえ。題材的に難しいかなあ。同じ監督の『神弓 KAMIYUMI』は面白かったんで、ぜひ観てみたいんですが。韓国版『赤壁(レッドクリフ)』みたいなもんですし。

 イスラム国に参加しようとした大学生のニュースを見聞きしていて個人的に連想したのは、オウム真理教に惹かれていった若者たちです。この2つには底流に共通したものを感じます。



#9695 
NF 2014/11/02 23:01
御無沙汰しています。

御無沙汰しています。「史点」更新につられ、出てまいりました。
このところ、本当に気分の重くなるニュースが多いですねえ。天災方面でも人災方面でも盛りだくさんで。
 まあ、我が国の政治事情が色々とアレなのは事実ですが、少なくとも「自由に選挙ができる民主主義国家」の形式が何だかんだで今のところ守られてるのは良かったとは思うべきなんだろなあ、とも。
 信長と義昭関係の書状が熊本にあったのは、ひょっとすると細川氏の領地だったからでしょうか?下交渉に細川幽斎あたりが絡んでたとかそんなので(実際どうだったかは不勉強で存じ上げませんが)。

http://www.geocities.jp/trushbasket/


#9694 
ひで 2014/11/02 09:46
勝ってもマケドニア

寝起きの状態ではろくなことを思いつかないと言うことで、タイトルは適当にスルーしてください(笑)

史点にでてきたアンフィポリスの墳墓、かなり大きな墓なので、相当な有力者の墓ではないかなあとは思っています。当初はアレクサンドロス大王説も出ていましたが、それはちょっと無理があるんじゃないかとおもって見ていました。やはり大王はアレクサンドリアに埋葬されたんじゃないかなあ、、、、、。この遺跡発掘に関してはフェースブックの頁もあり、そこでどんな物が出てきているのか等々、結構細かく報告が上がっています。第2室まで発掘したので、次は第3室、はたしてそこになにがあるのか。

なお、アレクサンドロス大王の遺体については、ヴェネツィアのサンマルコ聖堂にあるという珍説もあります。ヴェネツィアがアレクサンドリアから持ち出した聖マルコの遺体が大王の遺体ではないかと見ているようですが、さすがにそれは無理があるだろうと。

その他、ロクサネ説、オリュンピアス説などが出ているようですが、これもわからないですね。オリュンピアスの場合はカッサンドロスに敗れ、裁判の結果死刑となり殺された後、遺体は埋葬されずに放置されていたという話もありますし、そこに到る経緯を考えると墓をつくってくれそうな人もいないような気がします。

ロクサネの場合は、前310年に幽閉先のアンフィポリスで死んでいることをかんがえると可能性は高そうですが、彼女は息子のアレクサンドロス4世と一緒に幽閉され、殺されています。アンフィポリスから結構離れたヴェルギナ王墓で見つかった10代少年の遺骨が実際にアレクサンドロス4世とすると、ロクサネとアレクサンドロス4世を別々に埋葬することになった理由をどう説明をつけるのかが課題になりそうです。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9693 
徹夜城(明日には史点を上げておきたい管理人) 2014/10/30 00:10
天国の門

 BSで放送していたのは6月くらいだったかな、マイケル=チミノ監督の問題作「天国の門」を初めて全編見終えました。3時間40分、長かった…
 実は西部劇の名作「シェーン」と同じ元ネタ、というのは最近になって知ったこと。南北戦争後、ホームステッド法により貧しい東欧系移民が西部のワイオミング州に大挙移住してきて、もともといた富裕な畜産業者たちと激しい対立を引き起こす。畜産業者たちは東欧系移民たちを「牛泥棒」とみなし、ガンマンたちをやとって殺害リストを作成、暗殺を実行してゆく。東欧系移民たちも対抗し…といったような話が、メインになる3〜4人の人物を中心に描かれて行きます。
 こう書くと確かに面白そうな社会派作品という気もするんですが、監督の大乗り気がかえって災いし、膨大な費用をかけて完成した作品はなんと5時間以上の超大作。会社側はカットを命じ、どうにか公開にこぎつけたのがこの3時間39分版。それでも僕にすら「無意味に長い」としか思えないシーンがいっぱいあって、かなりよそ見をしながら鑑賞しちゃってました。全米公開ではさらに2時間20分バージョンに編集されたことで話がさっぱり分からなくなり、興行的にも大惨敗。結果的に製作会社ユナイテッド・アーティスツが身売りに追い込まれるという事態になったことでも有名です。

 まぁ「絵」は綺麗なんですよ、ホント。各場面場面が「絵」としては実に丁寧に撮られていて、1シーン1シーンの完成度は高いんですね。ただそれが映画としてはどうなのかというと…オリジナルからカットしてるせいもあるんでしょうが、登場人物たちが何をしたいのか良く分からない。手間暇かけたモブシーンの長回しも多いんですが、そのシーンがどれだけの意味を持つのかも良く分からない。「戦争と人間」とか「人間の条件」とか長い社会派映画はいくつか見てますが、そっちは全然ダレを感じませんでしたから、やっぱりこれは問題があるんだろうと。終盤ようやく盛り上がってきた気がしたら、直後に唐突に話は終わっちゃうし、良く分かんないエピローグにも困りました。

 興行的な失敗の原因は重いテーマにもあったろうとは思うんですね。そのテーマ自体は悪くないんでしょうけど、調べてみるとモデルとなった史実(登場人物の一部は実在のモデルがいるみたい)のいじり方も面白くする方向ではなく、ただの三角関係だし。また終盤に壮絶な戦闘が行われてますが、それも史実ではなく衝突寸前で軍隊が止めたらしいんですね(映画では軍隊が止めには来るけど、すでに戦闘になっちゃってる)。
 手間をかけた映像の美しさやテーマなどから再評価の機運も高まってはいるそうですが、どうせなら最初の5時間以上バージョンを出してみたらどうなんでしょうかねぇ。もっともあんまり印象が変わらない予感を持ってますが。

 当時「天国から地獄へ」と揶揄されたそうですが、そういや「地獄門」という日本映画があります(笑)。こちらは国際的にも高く評価され大映社長を天国気分にさせたようですが。
 実際に映画会社をつぶしちゃった超大作、ということで「映画災害」の筆頭にあげられる「天国の門」ですが、統一教会が製作した「インチョン!」だの、「シベ超」を産むきかけを作った日活の「落陽」だのといった例と比較すりゃ、映画としてはまぎれもなくずっとまとも(笑)。エリザベス・テーラーの「クレオパトラ」も一時20世紀フォックスをつぶしかけるところまでいったそうですし、「七人の侍」だって東宝が製作中止を一時は決定しかけたことがあります。「タイタニック」も一時中止が検討されたそうですしね、映画製作、ことに歴史映画っちゅうのは一歩間違えるとホントに大災害です。



#9692 
バラージ 2014/10/29 23:57
if映画っちゃあif映画ですが……

 今度公開される『ドラキュラZERO』という映画は、吸血鬼ドラキュラのモデルとなったワラキア公ブラド・ドラキュラが、オスマン帝国と戦うために本当に吸血鬼になっちゃうヒーロー映画なんだそうです。まぁこれもif歴史映画と言えばif歴史映画かなぁ?

 『ロスト・メモリーズ』や『ファーザーランド』(どっちも僕は未見)は確かに歴史if映画とも言えますが、どっちかっていうとパラレルワールドを扱ったSF映画という側面が強いような。
 架空戦記ものは僕はあんまり興味がないんです。読んだのは本宮ひろ志のマンガ『夢幻のごとく』ぐらい。なぜか本能寺の外に(テレポート的に)飛ばされて助かった織田信長が最終的に世界征服しちゃうという本宮らしい破天荒な物語です。一般的に架空戦記は戦いに勝った負けたという展開に重きが置かれて(しかも著者や読者に都合がいい展開になる傾向が強い)、広い意味でのストーリー性が弱いように思います。そういう意味で映画やテレビドラマにするにはファン層が狭すぎるんじゃないでしょうか。歴史好きの中でもさらに限られた層しか観ないような気がします。じゃあなんで架空戦記本があんなにたくさん出てるんだって話ですが、多分本は映像作品より予算が少なくてすむからファン層が狭くても商売として成り立つって理由なんじゃないかなぁと。



#9691 
つね 2014/10/28 01:20
架空戦記は繁盛したのに

レスありがとうございます。
やっぱりあまりIF歴史映像はなさそうですね。
「信長が本能寺で脱出したら」「関ヶ原で西軍が勝っていたら」「ナポレオンがワーテルローで・・・」など、題材は古今東西豊富で一時期、架空戦記物が乱造されていた気がするだけに意外な気もします。最近は落ち着いたのでしょうか。

>「Romanitas」
イギリスということもあり、ジョージ・オーウェルの「1984年」を思い出しました。これは映像化されてますね。IF物というのは厳しいかな。実在の人物は一人も出てきませんし。歴史改変が主人公の仕事という恐ろしい物語でした。



#9690 
徹夜城(先週は軽く風邪をひいていた管理人) 2014/10/28 00:40
「イフ歴史」映画

>つねさん
 「IF歴史」ということになると、本来の歴史とは違った展開になった世界を描くため、かえってやり方が難しいのかもしれませんね。映画では余り心当たりがない気もします。
 ご指摘の韓国映画「ロストメモリーズ」は、歴史改変ものにはなるでしょうね。安重根による伊東博文暗殺が失敗、第二次世界大戦にも勝利してしまって完全に日本領であり続ける近未来の朝鮮半島というのが描かれまして、主人公の坂本(チャン=ドンゴン)が思いっきり訛った日本語でしゃべり、「キムチが食えない」という設定が象徴的に描かれてました。
 仮想戦記ものということなら、アニメの「紺碧の艦隊」シリーズなんかもありますが…これ、アニメは見てないんですけどPC−FXというドマイナーなゲーム機でシミュレーションゲームが出てたんで設定自体は知ってるんですよね。

 映像化された気配はないんですが、イギリスの仮想歴史小説に「Romanitas」というのがあるそうで、ローマ帝国が現代までずっと存続し、進歩・拡大を続けている設定だそうで。そしてそれに対抗して出て来るのが日本とおぼしき「Nihonia」で、なんとゴダイゴの建武政権が「大日本帝国」みたいな状態になっちゃうんだそうです。



#9689 
バラージ 2014/10/27 21:41
慰安婦の映画

 『週刊金曜日』最新号の特集「表現者たちが描いてきた「慰安婦」」に、四方田犬彦氏による慰安婦を扱った映画についての「黒澤明、増村保造、鈴木清順――「慰安婦」問題に怒り、真剣に向き合った日本の映画人たち」という記事がありました。その中で以前ここでも紹介した日本映画『暁の脱走』『春婦伝』『赤い天使』『従軍慰安婦』などが取り上げられてるんですが、その記事によると1974年の映画『従軍慰安婦』は既にフィルムが現存しないんだそうです。そんなに昔の映画ではありませんが、それでもフィルムが既に失われた(どこに行ったかわからなくなった?)映画があるんですねえ。残念です。
 慰安婦を描いた映画では、1993年の韓国映画『従軍慰安婦』も昔ビデオで観ましたが、もろに低予算B級映画でちょっとエログロっぽい志の低そうな作品でした。ほぼ同時期に香港映画『従軍慰安婦2』(勝手な邦題で韓国作品とは関係なし)、フィリピン映画『戦場のアンジェリータ 従軍慰安婦の叫び』などというのもビデオ化されてましたがいずれも未見。この手の映画をビデオ化するのは大抵マクザムかアルバトロスなんですが、たまに掘り出し物があって重宝します。

>if映画
 う〜ん、確かに思い浮かびませんねえ。単に史実と異なる展開をする映画なら『柳生一族の陰謀』とか『魔界転生』なんかが思い浮かびますが、どっちもif映画とは違うもんなあ。



#9688 
つね 2014/10/26 23:23
IF物

タイムスリップというか、IF物というのはあまりないのでしょうか。
私が今、思いつくのは「ファーザーランド」で、ナチスが第二次世界大戦に勝っていたら(正確には独ソ戦は継続中)というものです。
「歴史にIFはない」というのは映像でもあてはまるのかなあ。
見てはないけど、歴史映像名画座で紹介されている「ロスト・メモリーズ」もタイムスリップ&IF物ですかね。



#9687 
バラージ 2014/10/26 22:08
名画座作品候補追加紹介

・戦後〜現代
『ALWAYS 三丁目の夕日』……西岸良平のマンガを原作とした全くのフィクションですが、東京タワー建設のエピソードが出てくる映像作品は珍しいんで。僕はテレビ放送でちょこっと観ただけ。
『太平洋ひとりぼっち』……未見。堀江謙一の世界初の太平洋単独横断の手記を石原裕次郎主演で映画化。
『Aサインデイズ』……ベトナム戦争期の沖縄を舞台に、女性ロック歌手喜屋武マリーの半生をモデルとして描いた青春映画。返還前の沖縄の風俗と雰囲気が印象的な、なかなかの佳作。

・タイムスリップ
『スローターハウス5』……鬼才カート・ヴォネガットのSF小説を鬼才ジョージ・ロイ・ヒル監督が映画化。自らの意思とは無関係に自分の過去・現在・未来を移動してしまう男が主人公。現在の彼が過去や未来に行くのではなく、彼自身が若いころに戻ったり老人となってる未来に進んだりする。若き日のドレスデン爆撃がクライマックス。



#9686 
徹夜城(ようやく長丁場の韓国史ドラマを見終えた管理人) 2014/10/25 00:27
韓国の「武士時代」ドラマ2本

 まだ「歴史映像名画座」には入れてませんが、ようやく今日になって韓国の歴史大河ドラマ「武人時代」と「武神」の2本を見終えました(いずれもBS放送の録画)。前者は全156話、後者は全52話という長丁場でありまして、「武人時代」なんて1年半くらいかけて見終えたような…

 この二つ、製作時期も製作局もまったく異なり、前者がNHK大河で後者が民放時代劇というくらいの違いがあるんですが、ちょうどうまい具合に話が続いているのですよね。
 「武人時代」は高麗王朝の終盤、それまで文臣たちの下に置かれてこき使われていた武臣たちがクーデターを起こして政権を握り、国王の地位までも左右するようになりますが、お約束のパターンで武臣たちの間で凄まじい権力闘争が展開、権力者が次から次へと交代して行き、最終的に国王とは別に崔一族が武臣政権の首長の地位を世襲してゆく「崔氏政権体制」が固まる、そこまでの話が延々156話で描かれます。さすがに最後の方はダレた感じでしたが、とくに前半、なかなか見ごたえはありましたよ。
 「武神」はちょうど「武人時代」の続きになっていて、崔氏政権がモンゴル帝国の進攻に直面、江華島に都を移して抵抗する時代が描かれ、主人公はその崔氏の奴婢出身で最終的に崔氏から政権を奪取するキム=ジュン。こちらはちと主役の活躍の場が少なくて、フィクションで埋めつつ作っているのがよくわかりまして、主人公不在気味な話でした。それでもモンゴル勃興期からフビライ時代までの高麗の状況を描いた点で実に興味深いものがありました。最終話辺りでは元の日本遠征の話も入ってきますし。「三別抄」をやってくれないかなぁ、と思ったのですが、その前に主人公が死んじゃうためセリフでちょこっと出てきただけだったのが残念。

 以前から言われていることですが、この高麗の武臣政権時代というのはちょうど日本で平氏政権〜源平合戦〜鎌倉幕府成立の流れと時期的にも内容的にも重なるところがあり、その点を比較してみるのも面白い。王位を簒奪するのではなく、その下で世襲による軍事政権を作ったという点は確かにソックリで、結局モンゴルに征服されたかされないかで展開が分かれたようにも思えてきます(征服と言っても30年以上抗戦した末に一応独立は維持してますけどね)。



#9685 
黒駒 2014/10/22 16:55
『描かれた倭寇』も出版されましたが・・

『日本歴史』に河野通盛に関する論文が掲載されているみたいですね。近いうちに読んでみたいです。最近の日本中世史業界では信長の見直し論が熱いですけど、南北朝もコツコツと研究を積み重ねて、知らないうちに時代像がこんなにガラリと変わっていた!みたいなことになるといいのですが。岩波文庫の『太平記』も二巻が出るようですね。



#9684 
バラージ 2014/10/16 22:10
時をかける映画

 なんか僕の意図とはちょっと違う方向で盛り上がっちゃってますが、僕はタイムスリップという部分に焦点を当てたわけではなく、あくまで「あの月9で歴史ものが!!」ということを言いたかっただけなんですよね(笑)。別にタイムスリップものであろうとなかろうと(つまり普通の歴史ものであろうと)どっちでもよかったわけでして。

 それはさておき、せっかくなんで僕も歴史タイムスリップものについて一言。まず『信長協奏曲』についてですが、「どっかで聞いたような企画」というのも月9なんだから当然というか、もともと歴史好きに向けて作られてる枠じゃないわけですから、歴史部分についてはなるべく定番でいいんだと思います。まぁ僕も月9にはあんまり興味を感じず、それほど観てはこなかった人間なんですが、どういう層に向けられたどういう性質のドラマかはわかってるつもりでして、史実的にどうこう、SF的にどうこうというようなことを細かく言うのはちょっと野暮なんじゃないかなあと。まあ見てないんでこのドラマがどういうタイプのものだったかは何とも言えないんですが、第1話の視聴率はまあまあだったようですね。ただ視聴率って2話以降が重要なんだよなあ。
 歴史タイムスリップ(タイムトラベルとかタイムリープとかも言いますが)作品全般に関しては、僕は基本的に普通の歴史作品に比べてタイムスリップというジャンルが入っている分、娯楽作品寄りだと考えています。もちろん僕もタイムパラドックスが気になることは多々あるんですが、それは歴史ものではない、近い時代へのタイムスリップものの場合が多いですね。

 歴史映像名画座に収録されてるタイムスリップ作品では、『ファイナル・カウントダウン』だけテレビ放送されてるのをちらっと見たような記憶がありますがほとんど覚えていません。
 僕が観たタイムスリップ歴史作品では、まずテレビドラマ『信長のシェフ』。現代からタイムスリップした若いシェフが信長の料理人となって活躍するという話でして、パート2まで作られましたが、原作マンガもまだ連載中らしく「つづく」みたいな終わり方でした。原作がそうなのか要所要所の史実が意外ときちんと押さえられている上に、定番を外して新説を取り入れてる部分もあったりしてなかなか面白かったです。
 次にテレビドラマ『JIN 仁』。これも原作はマンガで、『六三四の剣』で有名な村上もとか。幕末にタイムスリップした現代の医者が主人公で、彼が幕末の市井の人々や坂本龍馬・勝海舟などの有名人たちと出会い、ペニシリンの開発など歴史を変える行為を行いながらも人々のために尽くしていくというお話。主人公がタイムパラドックスに悩む描写も丹念に描かれるなど、非常に質の高いドラマでした。第一部が中途半端なところで終わり、TBSが続編の予定もないと言ってたんですが、結局完結編が作られました。韓国でもリメイクされています。
 最後に映画『ミッドナイト・イン・パリ』。憧れのパリにやってきた小説家を目指すハリウッドの脚本家が、真夜中になると1920年代のパリにタイムスリップ。フィッツジェラルド夫妻、ヘミングウェイ、ピカソ、ダリなどといった憧れの芸術家に出会うというウッディ・アレン映画。ウッディ・アレンらしいノスタルジックで軽妙なコメディで、歴史上の芸術家たちが続々登場。憧れの1920年代パリに来てみるとその時代の人は19世紀のベルエポックに憧れ、さらに19世紀にタイムスリップしちゃうとその時代の人はルネサンス期に憧れてる……といった具合で、お話の展開が秀逸でした。とても面白かったです。さすがはウッディ・アレンという感じの映画。
 この三作はいずれもお勧めです。

 最後にヨーロッパ史の紹介作品も整理を。
・古代ローマ史『ポンペイ最後の日』
・ロシア史『オルド 黄金の国の魔術師』『アンドレイ・ルブリョフ』『太陽に灼かれて』『映写技師は見ていた』
・カザフスタン史『ダイダロス 希望の大地』『レッド・ウォリアー』
・ポーランド史『コルチャック先生』
・チェコ・スロバキア史『存在の耐えられない軽さ』
・ブルガリア史『略奪の大地』
・ギリシャ史『旅芸人の記録』『Z』
・ドイツ・オーストリア史『神聖ローマ、運命の日 オスマン帝国の進撃』『敬愛なるベートーヴェン』『ローザ・ルクセンブルク』『独裁者』『ジュリア』『シンドラーのリスト』『さよなら、アドルフ』『ハンナ・アーレント』『トンネル』
・フランス史『女優マルキーズ』『炎の人ゴッホ』『カミーユ・クローデル』『さよなら子供たち』『サバイビング・ピカソ』
・イギリス史『ロブ・ロイ ロマンを生きた男』『炎のランナー』『ウォリスとエドワード 王冠をかけた恋』『バック・ビート』
・イタリア史『バルバロッサ 帝国の野望』『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』『ライフ・イズ・ビューティフル』『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』
・スペイン・ポルトガル史『炎のアンダルシア』『サルバドールの朝』
・ヨーロッパ史その他『南極のスコット』
……映画として特にお勧めの映画『旅芸人の記録』『ローザ・ルクセンブルク』『ハンナ・アーレント』『炎のランナー』



#9683 
徹夜城(最近のタイムスリップものはあまり見てない管理人) 2014/10/16 00:07
タイムスリップもの

 ちとタイミングを外したかもしれませんが、タイムスリップものも一応「歴史映像名画座」の範疇内にしている僕もこの件についてちょこっと首を突っ込みます。

「信長協奏曲」は僕も原作読んでないしドラマも見る気はあまりないんですけど、企画として「どっかで聞いたような」感があり過ぎるんですよね。そっちも見ていないんだけど、「信長のシェフ」があったばかりだし。それにしても信長時代に良くタイムスリップが起こりますねぇ(笑)。
 まぁこの手の「有名、人気のある歴史人物のいる時代へのタイムスリップ」は歴史好きの願望と言っていいですし、洋の東西似たような企画は多いです。信長とか戦国に行くか、龍馬のいる幕末に行くか、という二つにだいたい絞られちゃうのですよねぇ。そういや先日予告編だけは見たんですが「幕末高校生」なんて映画もやっておりました。

 フジテレビ、ときどき時代劇のスペシャルドラマを作ったりするので、製作の意欲はあるんでしょう。ただ正統派的やり方はしないのかできないのか、「女信長」みたいな奇策で来たものもありました。時代劇を作ろうという意欲は買いたいんですけど(それもあえて戦国系)、「若者を引っ張りこむなら現代の若者がタイムスリップ!」という安易な手に走ってしまったようにも見えます。
 先の大戦ネタですらこれが結構ありまして、現代人をタイムスリップで送り込まないと現代人にはアピールできないと思ってるのかなぁ?と思うばかりで。そして実のところ、タイムスリップ先でのジェネレーションギャップどころか時代ギャップの描き方がイマイチなのが多い。それこそ徹底的に考証してみるべきだと思うんですけどねぇ。

 有名人が出て来なかったタイムスリップものとしては、マイケル・クライトンが原作書いた「タイムライン」なんてのがありましたが、映画は冒頭からタイムスリップもののネタばれ全開で(伏線が全部丸分かり)、最初の10分で筋がわかってしまう代物でした(笑)。
 ただ、これはマイケル・クライトンだけにタイムスリップの仕掛けについては量子論まで持ちこんで「リアル」に見える設定にはしてたのが目を引きました。他のはタイムスリップについては深く考えてないようなのが多くて…

 日本ではやはり「戦国自衛隊」が原作も映画もそれぞれに代表作と言っていいでしょう。原作はよりSF設定が生きてるのですけど、映画は映画で自衛隊VS戦国軍団の「絵」を面白く見せてくれたところが良かった。あとタイムスリップした自衛隊員たちがそれぞれに違った方向に行動して行くのもリアル。この点、リメイク版二つはピントがズレてるというか、考えすぎちゃったというか…

「ファイナル・カウントダウン」は期待してみると拍子抜けな映画なんですが(期待しないで見ると割と当たり)、現代の原子力空母が真珠湾攻撃直前にタイムスリップした際、「やはりアメリカ海軍の船としては防戦にかけつけるべき」という判断が出るところが面白かったです。そんなことしたら大変な…というところで拍子抜けな展開になるんですけど、見てみたかった気はします。



#9682 
黒駒 2014/10/14 14:17
信長協奏曲

私は原作・ドラマともに未見ですが、以前漫画評論家の夏目房之介さんが原作を評して、別に批判しているわけでもないと思うのですが「現代の高校生が戦国時代にタイムスリップして、いきなり馬に乗れちゃう世界」と指摘してましたね。

現代人が戦国時代にタイムスリップしたら、馬にももちろん乗れませんし言葉も通じない、価値観のギャップにも驚くなどいろいろ想定されますけど、そういうのをちゃんと描くのがサイエンス・フィクションの世界ですよね。

タイムスリップ歴史ものって時代考証など歴史面でのツボを押さえないといけないし、SF的な考証も必要と、二重に難しいジャンルのように思えますけど、安易なタイムスリップものが多いようにも思えます。



#9681 
バラージ 2014/10/12 23:24
追記

 1つ前の投稿で書き忘れましたが、東南アジア史〜アフリカ史の紹介作品で映画として特にお勧めなのは『SAWADA』『地雷を踏んだらサヨウナラ』『遠い雷鳴』『ラスト・ハーレム』です。



#9680 
バラージ 2014/10/12 16:35
ついに月9が……

 朝日の誤報につけこんだ慰安婦否定の動きとか、イスラム国に入ろうとした大学生とか、いやなニュースが多い昨今ですが、そんな中なんと今度のフジテレビ月曜9時のドラマが『信長協奏曲』というタイムスリップ歴史ドラマになりました。なんかネタ的には『信長のシェフ』とかなりかぶってるような気がするし(マンガ原作というところも同じ)、僕は多分見ないとは思うんですが、まさか月9が歴史ものをやる日が来ようとは……。そういや思い出したんですが、月9じゃないけど三谷幸喜脚本の『竜馬におまかせ』っていうコメディ・ドラマもありましたね。これも観てなかったけど。

 東南アジア史〜アフリカ史の紹介作品も整理を。
・ベトナム史『The Partner 愛しき百年の友へ』『インドシナ』『コウノトリの歌』『天と地』『SAWADA 青森からベトナムへ ピュリッツァー賞カメラマン沢田教一の生と死』
・カンボジア史『地雷を踏んだらサヨウナラ』
・タイ史『ムアンとリット』
・インドネシア史『チュッ・ニャ・ディン』『アクト・オブ・キリング』
・インド史『秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男』『チェスをする人』『遠い雷鳴』
・オリエント・聖書関係史『プリンセス・オブ・ペルシャ エステル勇戦記』『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』『マリア』『ゴルゴダの丘』『偉大な生涯の物語』『ジーザス・クライスト・スーパースター』『最後の誘惑』『パッション』
・古代エジプト史『太陽の王子ファラオ』
・イスラム圏史『ラスト・ハーレム』『キプールの記憶』
・アフリカ史『愛と野望のナイル』『おじいさんと草原の小学校』



#9679 
ひで 2014/10/05 19:17
「マッサン」

ニッカウヰスキー創業者竹鶴
政孝とその妻リタをモデルにした朝ドラが始まりました。見る余裕が無く、雨で引きこもっていたため今日になってからまとめて鑑賞。第1週に関しては、結婚を認めようとしない政春の母親がなかなか黒いな(笑)というところでしょうか。もっとも、今でも外国人の配偶者を迎えようとするとこれほど露骨ではないにせよ何かしらあるでしょうし、難しい問題ですよね。迎える側も、送り出す側も、色々と悩んだり苦労したりすることはあるでしょうし。

それはさておき、スコットランド独立が話題になった年に、スコットランドが何か関係するようなドラマが放送されるというのはなかなかタイミングとしては良いようなきもします。ついでに、スコットランドのビールとか、ウイスキーを飲む人も増えてくれると良いんだけど。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9678 
バラージ 2014/10/05 15:40
歴史映画ばかり観てはいられない

 僕も歴史関連映画ばっかり観てると実はなんかストレスがたまってきちゃって、他のジャンルの映画を観たくなるんですよね。僕は映画に関しては歴史映画に偏った映画ファンではないんで。ジャンルに関してはわりと幅広く観るんですが、1番好きなのはやっぱり青春映画ですかねえ。
 そういや前にここで紹介した韓国ドラマ『奇皇后』もNHK-BSで始まりましたね。僕は観てないんですが(歴史ドラマは何といっても長すぎて……)。このドラマも史実そっちのけ娯楽優先で歴史学者からは苦言を呈された作品のようです。
 映画『NO』は僕の地方には来ないようです。来たとしても個人的には観るか観ないかボーダーラインの映画かなあ。

 そういや来年の大河ドラマ『花燃ゆ』の追加キャストが続々発表されてますが、なんとナレーションが池田秀一。シャア・アズナブル(クワトロ・バジーナ)です。ぜひ次回予告の最後に、「君は、刻の涙を見る……」と言っていただきたい(笑)。
 そういや『Gのレコンギスタ』も始まったなあ。録画したまままだ観てないけど。

 日本史と東アジア史(前回紹介した中国史除く)の紹介作品も整理を。なお、『妖僧』『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』は既にご覧になられたってことなので除外してます。
・神話〜平安『かぐや姫の物語』『大江山酒天童子』
・鎌倉〜室町『富士に立つ若武者』『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』『曽我兄弟 富士の夜襲』『修禅寺物語』『親鸞 白い道』『里見八犬伝(TBSドラマ)』
・戦国『鶴姫伝奇 興亡瀬戸内水軍(日テレドラマ)』『鉄砲伝来記』『伊賀忍法帖』
・安土桃山『豪姫』
・江戸前期『あずみ』『あずみ2 Death or Love』『天草四郎時貞』『水戸黄門海を渡る』
・江戸後期『栄花物語(フジテレビドラマ)』『北斎漫画』『天狗党』『ええじゃないか』『カムイの剣』
・明治〜戦中『竜馬の妻とその夫と愛人』『丘を越えて』『海と毒薬』『三たびの海峡』
・戦後〜現代『松川事件』『帝銀事件・死刑囚』『トットチャンネル』『トキワ荘の青春』『初恋』『光の雨』
……日本史全体で映画として特にお勧めなのは『丘を越えて』『トキワ荘の青春』
・朝鮮・韓国史『於宇同』『ファン・ジニ』『神弓 KAMIYUMI』『美人図』『炎のように蝶のように』『GABI 国境の愛』『道 白磁の人』『愛の黙示録』『太白山脈』『ユゴ 大統領有故』……映画として特にお勧めなのは『神弓 KAMIYUMI』『ユゴ 大統領有故』
・東アジア史その他『戯夢人生』『悲情城市』『好男好女』……いずれも映画としては特にお勧め

>江戸しぐさの正体
 地方新聞の書評欄でも紹介されてましたが、僕は「江戸しぐさ」っていうのを初めて聞きました。そんな話題があったんですねえ。



#9677 
徹夜城(今のところややヒマな管理人) 2014/10/03 11:08
こんな日中から書いてますが

 …それだけ暇な職業、ってことなんだよなぁ(笑)。シーズン的に今が暇な谷間。それを利用してためこんでた映画・ドラマ・書籍・ゲームを怒涛の勢いで消化しているわけですが。

 最近読んだ本では原田実さんの「江戸しぐさの正体」(星海社新書)が面白かったですね。十年ほど前でしたか、公共広告機構のCMでも使われてしまった「江戸しぐさ」、最近ではなぜか保守系の方々にウケてしまったらしく道徳教材に紛れこむなど既成事実のように広がってしまってますが、実際にはまったく歴史的根拠のない「創作物」「偽史」であることを一般向けに分かりやすく紹介した本。「江戸しぐさ」の問題点についてはトンデモ本関係に首を突っ込んでるのでそこそこ耳にしていましたが、この本ではその「産みの親」がなぜそんなものを創作したのか、またその後それが当初の思惑を越えてどのように「受容」「利用」「拡大」をしていったかにポイントが置かれていて、なかなか読ませてくれました。
 この件に限らず、世間的には歴史的・科学的に根拠の怪しいものを「いい話」として信奉してるケースは多いんですよねぇ。かえって根拠の怪しいオカルトなものほど人をひきつけてしまうものらしい。

 最近、過去のNHK大河ドラマをちゃんと全編見る、ということもやっておりまして、「風と雲と虹と」「黄金の日日」を先日見終えました。どちらも70年代放送の作品で、僕は全く見てなかったもので。
 「風と雲と虹と」は平将門が主人公で、僕の地元ネタなんですね。正直言うと実際に見るまでは「一年分よく放送できたな」と思っていたんですが、見てみると中身が濃い、濃い。各キャラの設定も分かりやすく作られていて、特にライバルの平貞盛のキャラが「ヤな奴」的でもあるけどそれなりに世渡りもうまいし魅力のある人物になっていて、生真面目一辺倒の将門と好対照で面白かった。小学館版「学習漫画・日本の歴史」で思いっきり悪人風に描かれていたのが刷り込まれてましたが、調べてみると結構「将門記」の記述にちゃんと基づいてのキャラ設定で、よくできてるな、と感心したもんです。

 「黄金の日日」はほぼ架空キャラと言っていい呂宋助佐衛門が主人公で、彼と堺の町を中心に信長・秀吉・家康の時代を描くもの。今年の官兵衛みたいに時代の脇役的立場から「三傑」時代を描いた一例と言えましょう。また、前半では「いい人」だった秀吉が後半思いっきり悪の権化ボスみたいになっていくあたりも共通ですね。以前秀吉を主役で演じた俳優がそれをやってる、というのも共通していて、たぶん今年のスタッフは「黄金」を意識してるんだと思います。
 話の途中で助佐衛門が死んだと思っていた父親と再会するも、記憶喪失の海賊の親分(ま、つまり倭寇ですな)になっていたという展開がありましたが、演じてるのが主役の本物の父親(笑)。楽屋オチ的な場面でありました。
 フィリピン現地ロケが行われたことでも特筆されるドラマで、フィリピン人俳優も多数登場するのですが、終盤で日比ハーフの人物が「我々は日本人でもスペイン人でもない、フィリピン人だ!」といったセリフを吐いていて、「フィリピン、ってのはスペイン国王の名前に由来するんじゃなかったっけ?」とツッコんでしまいまして…
 この作品は特に僕の専門分野に近く、前から人に見ろ見ろと言われてはいたんですよね。ようやく今ごろになって全編見たわけですが、架空主人公がやたらと歴史の名場面にからむ無理な点とかひっかかりもあって、のめりこむほどではなかったけど、専門分野的にいろいろと楽しめたのは確か。フィリピンがらみだと林鳳と日本人副将を主人公にした「鳳」がずっとほったらかしだなぁ、と何とかしなくちゃと改めて思うのでした(そういうコーナーがサイト全体で多すぎるんだよな)。

 映画もためこみを消化中でして、春ごろに放送していた気がする「終着駅・トルストイ最後の旅」も昨日になって見ました。ロシアの話のくせに全編英語。トルストイ夫妻を演じるのもクリストファー=プラマーとヘレン=ミレン。ロシア人としてはこういう映画はどう思うのかな。一応スタッフにコンチャロスキー監督がプロデュースとしては言ってましたけど。


>案山子さん
結局そういう上から目線が嫌われるんだと思うんですけどね。実際には独立派なんて少数派ですし、そういう人たちも決して親中国的というわけでもありません。
あと、国勢調査のデータなんか見てみると別に沖縄で中国人在住者が特に目立って増えてる様子もなく(むしろ地方の他の県の方が目立つ)、単なる噂レベルをもとに危機煽りに乗っちゃってるようにしか見えませんが。



#9676 
案山子 2014/10/03 02:09
なるほど

その地域が自国領土であることが自明のものであると思わない方が良いと。
だったらなおさらに反日的な主張を持つ者が多いことは認識しておいた方が良いのではありませんかね?
私が危惧して書いたのは、要は支那の軍隊の進駐の件であります。
あの地域が戦勝国であるアメリカの軍事戦略上で重要地点なのは間違いないことで、アメリカで政権が変わろうと、彼らの対外的な戦略が変わらない限り、手放すことはありませんよ。てことは、前述したような事態に発展した場合、米中の軍事衝突が起こりうるてことです。
その辺りの危機意識が、我が国には欠如し過ぎていまあか? と言うのが私の趣旨です。




#9675 
徹夜城(このところPCエンジンにまた熱を入れつつある管理人) 2014/10/02 16:42
いろいろニュースが続きますね

 次の「史点」ネタ候補も多いなぁ、と思う昨今。ドカベン香川や土井たか子の訃報もそれぞれいろいろ感慨深いものがありましたし、下手すると「天安門」になりかねない香港民主化デモだとか、はたまた国内では御嶽山の噴火であんなに犠牲者が出てしまうなど、気になるニュースが次から次へと。


>ひでさん
 だいぶレスが遅れてしまいましたが、「史点」で書いちゃったから、というのもあります。スコットランドの次はスペインのカタルーニャが焦点になってきましたが、こちらはスペイン政府が憲法違反として認めない方針。といって、これもこじれるとかなりこじれてしまいそうな気がする…スペインの独立ネタというと「バスク」ばかりが頭に浮かんだものですが、カタルーニャは日本で言うと関西圏(それも経済的には優位の)の独立みたいなもんですからねぇ。

>バラージさん
このところ中国・韓国の歴史ドラマ追っかけは一時小休止(汗)。集中的にやってると疲れちゃいまして(笑)。韓国の「武人時代」「武神」の二本があと一息で見終わるんですが、足踏み状態やってます。そうこうしてるうちに、BSフジで「項羽と劉邦KingsWar」の後番組に「龍の涙」(朝鮮王朝建国期の話)が始まってしまい、ついついこっちは録画を始めてしまいました。ああ、またたまっていく…

 そういや先日、「NO」を見て来たんですよ。ピノチェト政権末期に行われたピノチェトへの信任をめぐる国民投票で、「NO」派のCMを作ったCMディレクターを主人公にしたドキュメント風ドラマ映画。全編がわざとドキュメンタリー撮影を思わせるブレ気味の古めな映像で撮影されていて、当時の実写映像と混合して独特の世界を作ってます。
 といって、やはり事実そのものというわけでもないので、当時の民主化活動家の側からは批判もされてるらしいですね。「そんなCMで決まったわけじゃない!」って。ただ映画自体は割とフラットというのかな、主人公のCMディレクターも政治的主張がそれほど強いようでもなく、「ピノチェト独裁をやめさせれば世の中バラ色」的な、「コーラのCMか」と劇中でも揶揄されるようなイメージCMを作るんですよね。チリ国民には周知のことなのかもしれませんが、劇中で出てきたCMが実際に当時放送されたものなのかどうか、ちと気になるところで。


>黒駒さん
 アカデミズム分野でいうと、南北朝はそれこそ謎だらけになっちゃうんじゃないでしょうか。まず網野善彦がそう定義したように「日本民族史上の大転換期」とするなら、その要因や結果はどういうものだったのか、鎌倉幕府はなぜあっけなく滅びたのか、建武政権の意味は何なのか、南北朝動乱の実態や室町幕府という政権のあり方の分析などなど、実のところ「謎だらけ」とも言えるのではないかと。
 最近出た「戦争の日本中世史」という本は、若手中世史研究者によるなかなか刺激的な内容でありましたが、「鎌倉幕府があっけなく滅亡した理由」については「分からない」とあっさり書いてました。そこで引き合いにしているのが昨今の日本によくある「○○は崩壊する」系の本で、「崩壊するすると言われながら実際にはなかなか崩壊しないものだ」と書いていたのが面白い。急激な鎌倉幕府滅亡の原因はあれこれとあげられてますけど、それだけでは説明がつかないものがある、という話でしたね。

>案山子さん
全体的な趣旨についてはそう異論はないんですけど、「反日」っていう言葉の使い方は僕には嫌悪感がありますね。そういう姿勢だとなおさら「独立論」を刺激するんじゃないかと。スコットランドもそうですが、沖縄だって歴史的経緯を踏まえてはおきませんと。
どこの国でも多かれ少なかれあることですけど、その地域が「自国領」だということが自明のものだと思わない方がいいでしょうね。



#9674 
案山子 2014/10/02 14:52
スコットランド…

はた迷惑な…と思いながらテレビを見ていました。独立が可決されると、その種の独立論が盛んなローカルエリアに影響することでしょうから。
バスクやケベックや新疆やチベットはどうでも良いのですが、我が国には沖縄という相当する地域がありますから。
本州人をヤマトンチューと呼ぶくらいで、住民に日本民族たる意識は稀薄ですし、歴史的な経緯から日本の中央政府に悪感情を持っていますでしょ。基地の存在から日米同盟も敵視している。
これだけ揃えば、住民投票がいつか実施される可能性はあると思うのです。
てだでさえ沖縄タイムスとかの現地のマスコミは反日的でありますし、県庁のエリートも、その母体たる琉球大学の秀才たちにしてから、中央政府にアヤをつけて予算ぶんどるのが仕事と心得ている。
日本政府に好意的な土地柄ではないてす。
このような地で、スコットランドのような独立論が沸騰し、投票が行われるとします。その場合、懸念せねばならない要素が、この10年くらい増えていることてす。沖縄への中国系の人の移住が増えていること。さらにどうやっているかは?ですが、彼らによる土地収得が進んでいるらしいことです。
投票によって騒然となつた時に、自国民の保護を名目として、人民解放軍が強引に進駐してきたら?
有り得ない?
そうでしょうか?
ヒトラーも大日本帝国も大英帝国もアメリカ合衆国も、この100年くらいで1度は使っている常套手段でないですか?
ましてや住民も地方自治体も本土に反日的な土地柄てす。独立を求める側が、中共政府に出動を要請したら、不可能ではなくなりますね。
かように考えると、中国がチベットや新疆に影響するのを懸念する気持ちが解るきがいたします。



#9673 
黒駒 2014/09/28 23:57
戦国の謎・南北朝の謎

>バラージさん
私も前述したと思うのですけど、学術的な研究史の中でテーマとなってる「謎」と、一般の関心の「謎」って違うと思うのですよね。後者は確かに本能寺の変の真相とか竜馬暗殺のような、具体的なものになると思います。

戦国・織豊期研究は実はいま面白いところに来ていて、戦国大名研究者が、戦国大名論の手法で織田政権を検討し、織豊期研究者が従来言うような革新性はなく、本質的には戦国大名と同じなんじゃないかって提言がなされています。これに対する織豊期研究者の反論を待っている状況らしいのですが、学術的な戦国時代研究最大の命題といえば「戦国大名とは何か」になるでありましょうし、また最近の戦国大名研究者の織田政権論の提示で、「戦国大名と織田世間力の違いは何か」という命題が掲げられてきた格好ですね。

これとは別に、一般の関心による「最大の謎」であろう本能寺の変では最近、石谷家文書という新出史料が出てきて、関心を読んでいるところですね。

などと考えると、南北朝期にも管理人様が紹介してくれたような、具体的な「謎」はいくつかあろうと思うのですが、学術的な南北朝研究って、研究史的にずっと通底するテーマは何だろうと、不勉強ながらよくわからないのですよね。



#9672 
バラージ 2014/09/28 22:12
『曹操暗殺 三国志外伝』

 DVDがレンタル開始されたんで、映画『曹操暗殺 三国志外伝』をようやく観ました。
 曹操晩年の暗殺計画やクーデター未遂が題材となっているんですが、史実とも三国志演義とも違うオリジナル・ストーリーで、なにしろ元ネタがマイナーな話なんでかなり自由に脚色されちゃってます。まあ、映画として面白ければ別にいいんですが、登場人物たちの心の動きが映画のキモになってるわりには、肝心のそこの描写が全体的に曖昧でどうにもわかりにくい。特に玉木宏演じる穆順の終盤における心変りがあまりに唐突です。
 玉木宏の中国人の演技は特に違和感もなく見れる……というか髪形(かつら)と衣装のせいでそもそも玉木宏に見えない。台詞も吹き替えなんでますます玉木宏に見えないんですが、だったら玉木がやる意味もあまりないような……。曹丕と献帝も見分けがつきづらくて最初ちょっと混乱します。ちょっと期待外れの出来でしたね〜。まあまあって程度です。

 そういや、連続テレビドラマ『曹操』は半分ほど見たところで放り出したままです。正史寄りのドラマということで新鮮ではあったんですが、ドラマとしてはやや退屈なことも否めませんで……。主人公である曹操のキャラクターが英雄なんだか姦雄なんだか今一つはっきりしないのもマイナスだし、主演俳優もなんかいまいち地味。比べちゃいけないのはわかってはいますが、映画のチャン・フォンイー、チアン・ウェン、チョウ・ユンファの堂々とした貫禄と比べちゃうとね〜。まあ、史実的には地味なほうが正解かもしれませんが、やっぱりドラマですしね。

 それから、どうしようかな〜と迷っていた映画『楊家将 烈士七兄弟の伝説』のDVDも観ました。古典文学『楊家将演義』の最初のほうを元ネタにしたアクション映画です。『楊家将演義』はあまりくわしくないんですが、この映画はとにかく最初から最後までずっと合戦と剣戟みたいな映画です。雰囲気は抜群でアクションの質も高いんですが、ストーリーが説明不足でいまいちわかりにくく展開も平板。そしてこれまた七兄弟が誰が誰やら見分けがつかない。これまた、まあまあって程度の作品でした。

歴史映像名画座候補作追加紹介
・中国前近代史(1)
『異聞 始皇帝謀殺』……ビデオ化のみ。未見。『始皇帝暗殺』がビデオ化された頃に便乗的に(?)ビデオ化された中国映画。始皇帝と高漸離の物語で、始皇帝がチアン・ウェン、高漸離がグォ・ヨウという今考えるとかなりの豪華キャスト。#9239
・中国前近代史(2)
『木蘭従軍』……ソフト化なし。未見。木蘭(ムーラン)の伝説の映画化。日本軍占領下の上海で中国人の手によって作られた映画で、異民族の姿に日本軍を暗に象徴させているとのこと。
『大剣客 無敵の七剣』……未見。南宋の時代、無実の罪で処刑されることになった名将岳飛を救うため七人の剣士が戦う、ショー・ブラザーズの武侠アクション映画。歴史映画ではないんですが、南宋を舞台としたものがないので……。
『カンフー東方見聞録』……未見。元にやってきたマルコ・ポーロがフビライ暗殺の陰謀に巻き込まれ、暗殺団と皇帝軍が戦うというショー・ブラザーズのカンフー映画。これも歴史映画ではないけど、元を舞台としたものがないので……。しかしショー・ブラザーズは変な映画をよく作ってるなあ。

 なんか何度も訂正や追加を入れてごちゃごちゃしちゃったんで、中国史紹介作品の整理を。
・中国前近代史(1)『運命の子』『孔子の教え』『異聞 始皇帝謀殺』『項羽と劉邦 White Vengeance』『項羽と劉邦 鴻門の会』『三国志英傑伝 関羽』『曹操暗殺 三国志外伝』……映画として特にお勧めなのは『項羽と劉邦 鴻門の会』『三国志英傑伝 関羽』
・中国前近代史(2)『木蘭従軍』『ムーラン』『少林寺』『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』『英雄十三傑』『楊家将 烈士七兄弟の伝説』『女ドラゴンと怒りの未亡人軍団』『大剣客 無敵の七剣』『カンフー東方見聞録』『デブゴンの太閤記』『清朝皇帝』
・中国近代史『ドラゴン怒りの鉄拳』『さらば復讐の狼たちよ』『パープル・バタフライ』『ロアン・リンユィ 阮玲玉』『南京!南京!』『チルドレン・オブ・ホァンシー 遥かなる希望の道』『さよなら李香蘭』『李香蘭』『セブン・イヤーズ・イン・チベット』『戦場のレクイエム』『活きる』……映画として特にお勧めなのは『ドラゴン怒りの鉄拳』『さらば復讐の狼たちよ』『パープル・バタフライ』『ロアン・リンユィ 阮玲玉』『南京!南京!』

>スコットランドのマリー
 スコットランド独立は否決されましたが、前回取り上げた男子テニスのマレー(マリーとする表記もあり)選手。投票前の土壇場で独立支持のツイートをしました。それまで政治的な立場は明確にしていなかったんですが、反対派のネガティブ・キャンペーンを見て決断したんだとか。それで批判もずいぶん受けたようですが、後悔はしていないとのこと。その一方で政治的な問題にかかわるつもりもないそうです。ちなみに彼はロンドン在住。

>謎とif
 謎とifはまた別の話だと思うのですが、戦国(安土桃山)で最も話題になる謎といえば、やはり本能寺の変ではないでしょうか。幕末なら龍馬暗殺ですね。それらに比べると確かに南北朝の謎ってパッと思いつくものがありません。むしろ南北朝ではなく室町ですが、世阿弥流罪の謎のほうがまだ話題に取り上げられるような気がします。



#9671 
ひで 2014/09/19 21:32
思ったより差がつきました

スコットランド独立を問う投票の結果ですが、意外と差がついたかなという気がします。賛成派の主張が正直なところ楽観的すぎるというか根拠に乏しいというか、これじゃ独立してもやっていけないだろうと考えた人がそれなりにいたのでしょう。あてにしている北海油田も産出量はどんどん減っているし、他にこれといった産業があるわけでない

ただ、「史点」でも見返りの話が出ているように、これで独立はないとしても、自治権拡大などを認めるという展開にはなりそうですね。かなりの数の人間が独立を求めている、現在の状況に不満を持っていると言うことがこれだけはっきり示されたのですから。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9670 
バラージ 2014/09/18 21:43
どうする? どうなる? スコットランド

 いやぁ、史点でも取り上げられてますが、大変なことになってますね、スコットランド。どうなっちゃうんでしょうか?

 前回の錦織くんに関連するテニスネタですが、現在の男子テニス界でビッグ4と呼ばれる4強の1人、アンディ・マレーがスコットランドの選手なんですよね。去年のウィンブルドンで初優勝して、イギリス人男子77年ぶりの優勝として話題になったんですが(一昨年のロンドン五輪でも金メダルを取ってる)、もしスコットランドが独立しちゃったら来年からはウィンブルドンも地元じゃなくなっちゃうし、イギリス人選手の優勝じゃなくなっちゃいます。国別対抗戦デビスカップも多分イギリス代表から離脱して新たにスコットランド代表が編成されることに……。元からスコットランド(とイングランドとウェールズと北アイルランド)代表になっているラグビーやサッカーはあまり影響がないでしょうが、イギリス代表としてチーム編成されているスポーツは影響が大きそう。ついちょっと前まではスコットランド独立なんて現実的な話じゃなかったため、テニス関係のニュースで取り上げられることはほとんどなかったんですが、どうなっちゃうのかなぁ? ちなみに当のマレーは「自分はスコットランド人であり、イギリス人である」という考えらしい。

 東北人としては、東北・北海道とスコットランドを同列に考えるのはやっぱりちょっと違うよなぁと。蝦夷(えみし)はせいぜい10世紀あたりで消滅してしまいますし、蝦夷の血が流れるという安倍氏・清原氏・平泉藤原氏も11〜12世紀に滅亡しています。今の東北人で自らを蝦夷の末裔と意識してる人はまずいませんし、アイヌ民族に同族意識を持ってる人もほぼ皆無でしょう。
 これについては僕も以前に考えたことがあるのですが、スコットランドや北アイルランドに相当するのが琉球やアイヌで、蝦夷は1番早く併合されて国家として成立しなかったウェールズみたいなもんなんじゃないかと。北海道にしても、今では当然ながら全体がアイヌではなく、圧倒的大多数が和人(日本人)ですし、北海道って実は訛り(方言)が他の地域より少ないんですよね。

 そういえば歴史映像名画座のイギリス史も、スコットランドが独立しちゃったらスコットランド史に分離されるんでしょうか? まぁ、『ブレイブハート』と『スコットランドのメアリー』しかないですけど、あんまり国別に細かく分け出すときりがないし、かえってわかりにくくなっちゃうような気もするんですが。厳密に言うと琉球史(『琉球の風』『テンペスト』)も日本史から分けなきゃなりませんし、こういうのは国家史というより地域史で考えたほうがいいんじゃないかと。そういう意味ではイギリス史からアイルランド史を分けたのも、そこまでしなくてもいいような気もしたんですが……。



#9669 
黒駒 2014/09/16 13:13
昨日は敬老の日でしたが・・

「南北朝最大の謎」の返答、ありがとうございます。やっぱり、具体的な謎ってあるのですね。

李香蘭は私もよく知りませんが、思えば史点では張学良やら宋家の三姉妹やら、中国近現代史上の著名人の訃報も、いくつも扱ってきましたね。次回「史点」も楽しみにしております。

昨日は敬老の日でしたけど、私はここ近年、敬老の日にはちょうど100歳になる著名人(生きていれば、の人を含む)をwikipediaなんかで調べるのを習慣にしてます。



#9668 
バラージ 2014/09/14 22:26
追悼 「李香蘭」こと山口淑子

 「李香蘭」こと山口淑子さんが亡くなられましたね。僕が彼女を知ったのは日本テレビのスペシャルドラマ『さよなら李香蘭』(主演は沢口靖子)を観てだったと思うんですが、テレビの本放送だったのかレンタルビデオ店のビデオだったのかは今一つ思い出せません。それで彼女の人生に興味を持ち、自伝『李香蘭 私の半生』なども読みました。ご冥福をお祈りします。
 ちなみに『さよなら李香蘭』はビデオ化はされましたがDVD化はされていないんですが、某有名動画サイトに全編アップされてるのを最近発見しまして、そのうち久しぶりに見てみようかなあと思っております。テレビ東京のスペシャルドラマ『李香蘭』(主演は上戸彩)はDVD化されてて、こちらは見たのは以前どこかに書いたはず。ただ、ドラマとしては『さよなら李香蘭』のほうが出来が良かったように思います。

>歴史とあんまり関係ないけれど……
 某有名動画サイトでは、これまたビデオ化のみでDVD化されていない米国の女子テニス選手モーリン・コノリーの伝記テレビ映画『リトル・モー』も発見(どうやらNHKで放送されたもののようです)。
 テニスといえば、錦織君が全米オープンで決勝に進出! テニスファンとしてうれしかったですね〜。日本人選手がグランドスラムの決勝に進出するのを目にする日が来るとは……。まさに歴史的快挙です。



#9667 
徹夜城(いきなり飛び込んできた訃報にちょっと慌てた管理人) 2014/09/14 17:41
史点アップ間際に…

 さて「史点」をアップするかと思った時に、「李香蘭=山口淑子死去」のニュースを見て、「なんちゅうタイミングの悪い」と思ってしまいました、すいません(汗)。この人も「まだ生きてるよな?」と思ってしまう歴史的人物の一人でありました。
 戦前の満州映画の大スターであり、誰もが本物の中国人と思い込んでいた人でありますし、彼女を主役にしたドラマや舞台、さらには名前だけ拝借した各種作品があるために実在人物であると知らない人も多そうで…ましてつい先日まで存命だったなんて、と驚いた人も多いんじゃないかと。次回「史点」でぜひ取り上げたいものですが、早く書かないといかんなぁ。


>バラージさん
 「アクト・オブ・キリング」、話には聞いていたんですが、なかなか見に行く機会がなくって。ドキュメンタリーだけにちとキツいものがありそうな気もしますが、チェックしておきたい作品ですね。
 ドキュメンタリー映画の「歴史映像名画座」における扱いは迷いがあるんですよね…「戒厳令下チリ潜入」は、たまたま自主上映会で見たことがあり、南米ものが少ないので加えておいたんですね。そういや今公開中の「NO」という劇映画はピノチェト政権下のチリを舞台にしているそうで、これはなんとか見に行きたいと思ってます。
 ドキュメンタリー映画では「東京オリンピック」を「歴史映像名画座」に入れてましたね。実は「ゆきゆきて、神軍」なんかもどうしようかな〜と迷った経緯があります。また同様に迷ったものとしてドキュメント番組の中で歴史場面がドラマで再現されたケースで、ドイツで作った「ドイツ統一の舞台裏」なんかもその一例でした。

>黒駒さん
「南北朝最大の謎」ですか…僕なんかは「楠木正成はなぜ湊川で死んだのか」を挙げますね。「太平記」に語られているように戦死を覚悟で行ったとすると、美談になるようではありますけど「らしくない」感があるのも確かで。
 あと、やや細かいネタとして、北畠顕家が青野原の戦いで勝ちながら、なぜ伊勢方面へと転進してしまったのか、というのが昔からあります。当時北陸方面で頑張っていた新田義貞と合流すれば京都は攻め落とせたのに、というやつで。「太平記」でもすでに議論されていた覚えがありますし、大河ドラマでは顕家が結局武士を信用してなかった、と描かれました。顕家軍に北条時行が参加していたため仇の義貞と一緒になるのをいやがった、なんて説もあるにはありますが、あまり現実的ではありません。結局のところそのまま京へ突入する余力がなく、態勢を立て直すために北畠勢力圏の伊勢に行ったんだろう、というのが通説ですが。
 他になにか思いついたら、その時にでも。


 南北朝と言えば、伊東潤「野望の憑依者」読み終えました。高師直を主役にしたまずまずの長編。師直というと人生の後半に向かってピカレスクになってくようなイメージでしたが、この小説ではむしろもともとピカレスクな男だったのに、だんだん「情」が出て来るようにも読めました。
 読者への配慮ということなんでしょうが、南北朝の史実展開をいちいち解説するようなト書き状態の部分が目につきますね。僕なんかはそのために物語に入りこめなかった。まぁそういう人は飛ばして読んでくれ、ってことなんでしょうけど。その展開解説部分で読者の興味をひくためなのかもしれませんけど、これは○○の先祖、だの、後年の××と関わる、といった雑学脱線めいたものも多い。
 それでも師直中心の話としてはいろいろ工夫も多いですね。「忠臣蔵」の元ネタにされたことで名高い塩冶高貞の妻への横恋慕エピソード、思いのほか純愛(?)な展開のアレンジになっています。あと、師直主役だけに直義がかなりワルに見えてきます(笑)。

 直義といえば、角川ソフィア文庫で「夢中問答」の入門書が出ました。NHKで放送したものをベースにしてるらしいですね。
 「夢中問答」は直義と夢窓疎石の問答集で、直義が次々と核心を突く仏教への疑問を提示し、それに夢窓が答えることで禅宗の真髄を知らしめる、という内容。広く人々に読んでもらうためにわざわざ出版までされたという本です(出版したのが猛将として知られる大高重成というのが面白い)。さすがに難解な内容なので、特に重要な部分を抜き出して分かりやすく解説してくれる本になってます。まだ最初の方しか読んでないですけど、直義という人物の理屈っぽさと頭の良さがよく分かります。




#9666 
黒駒 2014/09/12 23:39
南北朝最大の謎・・?

思いつきの話題で恐縮なのですが、太平記の時代、南北朝最大の謎といえば、なんでしょうか?

歴史のどの地域・時代でも専門研究と一般の関心の乖離はあるもので、戦国時代だったら専門研究では戦国大名の定義であるとか、権力構造、支配の実態を解明することを命題としていて、一方で一般的な歴史に関心を持つ層は、ちょっとそういう専門的な論点とはずれた、信長が生きていたらとか、あのときああだったら、こうだったらどうなってたと、ifの想像を巡らすわけですよね。

南北朝は中世のどまんなかですから、私は研究史をまったく理解していないのでわからないのですが、何か南北朝期には昔から研究史において通底している命題があって、学術的には「最大の謎」と言えるテーマがあるのでしょうかね。

一方、一般のファンもそもそも南北朝期に関心を持つ人はけして多くは無いでしょうし、私も普段から見渡してるわけでもないので、もし尊氏やら正成がああだったら、こうだったらとIF話をすることがあるのでしょうか?

などと考えていると、南北朝最大の謎はいったい何だろう?と思うのですが。。



#9665 
バラージ 2014/09/04 23:40
『アクト・オブ・キリング』

 先日、ドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』を観てきました。インドネシアで1965年に起きたクーデター未遂事件である9・30事件をきっかけとして全土で起こった大虐殺の加害者たちを取材した異色のドキュメンタリーで、賛否両論の話題となっている作品です。100万〜200万ともいわれる人々が“共産主義者”(日本の戦前・戦中の“アカ”みたいなもんですかね)のレッテルを貼られて虐殺されたと言われています。ところがインドネシアでは虐殺を行った者たちが今でも英雄のように扱われており、映画の中でも主人公たちは自らの殺人を得々と詳細に語っていくのです。その光景が何とも異様。映画では彼らにかつての殺人を再現する映画を作ってもらい、その過程で生じる変化がカメラにとらえられていきます。そちらのほうがこの映画のキモだと思うのですが、個人的にはそれよりもインドネシア社会の異様さのほうが印象に残りましたね。なにしろ、もとはチンピラやくざで右翼民兵団隊の一員でもある主人公の古くからの仲間として出てくるのが北スマトラ州知事とか地元の右派系新聞社の社長とか民兵団体出身でもある副大臣で、しまいには副大統領がその団体の集会で支持演説をぶつ有様。主人公の仲間のチンピラ達もショバ代の徴収だの収賄の公言だの、普通ならおおっぴらにはしたがらないんじゃないかというようなことをカメラの前で堂々と言ったりやったりしています。なかなかのカルチャーショックでした。

 ところで歴史映像名画座には、中南米史に1本だけ『戒厳令下チリ潜入』というドキュメンタリー映画が含まれていますが、ドキュメンタリー映画もありなんでしょうか? もしそうなら、ちょうど9・30事件はもちろんインドネシア史の作品も1本もないので『アクト・オブ・キリング』もできれば加えていただきたいところです。
 他にも歴史関係のドキュメンタリー映画をいくつか紹介したいと思います。

・ベトナム史
『SAWADA 青森からベトナムへ ピュリッツァー賞カメラマン沢田教一の生と死』……ベトナム戦争を取材してピュリッツァー賞を受賞し、後にカンボジアで戦死した戦場カメラマン沢田教一の生涯を追ったドキュメンタリー映画。NHK-BSで放送されたのを観たんですが、胸に迫ってくるもののある、とてもいい映画でした。
・アメリカ合衆国史
『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国国防長官の告白』……ケネディ〜ジョンソン大統領期に米国の国防長官を務めたロバート・マクナマラが自らを語ったドキュメンタリー映画。戦争と米国の光と影を描いた、きわめて示唆に富んだ映画でした。
『ドアーズ/まぼろしの世界』……ドアーズを題材としたドキュメンタリー映画。新たな撮影やインタビューは一切行わず、当時のオリジナル映像とナレーションのみで構成された作品です。やはり映画館で聴くサラウンドは違いますね。すごく良かった。

 そして普通の映画の歴史映像名画座候補作の追加もご紹介。

・神話〜平安
『大江山酒天童子』……未見。鬼として有名な酒天童子を、藤原道長に妻を奪われ山賊となった人物として描いた時代劇映画。酒天童子が長谷川一夫、源頼光が市川雷蔵、渡辺綱が勝新太郎の大映作品。
・江戸後期
『栄花物語』……ソフト化なし。未見。田沼意次を悲劇の改革者として描いた山本周五郎の小説を、森繁久彌芸能生活50周年特別企画として単発ドラマ化。
・戦後〜現代
『トットチャンネル』……黒柳徹子の自伝的エッセイを大森一樹監督が映画化。1953年のNHK開局時というテレビ草創期の青春群像を描いた青春映画で、ふんわりとした雰囲気が心地よい佳作。
『トキワ荘の青春』……寺田ヒロオを主人公に、後の有名マンガ家が若手時代に集ったことで有名なアパート・トキワ荘を舞台とした市川準監督の青春群像劇。売れていく者、売れずに苦しむ者、挫折する者、時代に取り残されていく者、それぞれに注がれる温かい視線が優しい、市川監督中期の傑作。
・中国近現代史
『ドラゴン怒りの鉄拳』……1908年の上海を舞台に、日本帝国主義に立ち向かう青年を主人公としたブルース・リーの代表作。実在の武術家・霍元甲の死を題材に、その仇を討つ弟子の陳真をブルースが演じている。ちなみに霍が日本人に暗殺されたという噂は死後すぐからあったらしいんですが、実際には病死で、陳真は架空の人物です。個人的にはブルースの最高傑作だと思う。
『ロアン・リンユィ 阮玲玉』……1935年に25歳の若さで自殺した女優・阮玲玉(ロアン・リンユィ)を描いた伝記映画。役者たちが演じるドラマ部分の合間に、現存する阮玲玉の出演映画、阮玲玉を知る人々へのインタビュー、演じる人物についての役者たちのディスカッションが挟まれる構成です。「実在の人物についてのフィクション作品を創作する」ということについての示唆に富んだ作品で、とても面白かったですね。

 なお、以前「明治〜戦中」で紹介した『さよなら李香蘭』『李香蘭』は、舞台がほぼ全編中国(一部日本もありますが)なので「中国近代史」のほうが適切と思いなおしました。また、「戦後〜現代」で紹介した『地雷を踏んだらサヨウナラ』も、舞台はほぼ全編カンボジア(とベトナム)なので「カンボジア史」のほうが適切ですね。



#9664 
徹夜城(今日からやっと平常スケジュールに戻る管理人) 2014/09/01 14:31
倭寇図巻がねぇ

>黒駒さん
 情報ありがとうございます。調べてみるとお値段も手ごろな程度ですが、「倭寇図巻」とその別本?の論考も絡めて面白そうだな、と思いました。倭寇図巻全編をオールカラー実物大で出したりしたら大変な値段になっちゃうんでしょうが…
 「史点」で以前書いてますが、国立博物館で東大史料編纂所の蔵出し展示会で「倭寇図巻」の実物が展示されてえらく感激し、あまり見ることのない全体の展開も販売していた図録に載っていて、ちゃんと「絵巻物」になってるんだと驚かされたことがあります。特に冒頭、海の彼方からやってくる船がだんだんと大きくなっていく「アニメ的演出」にも驚いたもんです。

 夏休みも終わりまして、やっと「史点」だけ更新できました。他にもいろいろ更新したい企画はあるんだけど、多すぎて手が回らなくなってるような…(汗)。



#9663 
黒駒 2014/08/27 19:55
倭寇関係の新刊

吉川弘文館より9月に『描かれた倭寇』(副題:「倭寇図巻」と「抗倭図巻」)という本が刊行されるようです。2010年に中国で発見され、こちらでも話題になって史点ネタにもなった「抗倭図巻」に関する論集のようですね。とりあえず、ご報告しておきます。



#9662 
五葉 2014/08/19 21:39
但馬道仙のこと、詳しく教えて頂きまして

ありがとうございます。あと、書き込みの削除の件もお手数おかけしました。
お話聞いた限りだと但馬道仙に関しては、『慈善救済史料』がいちばん詳しそうですね。読みたいと思って検索かけてみたのですが、わが県では家から離れた某大学図書館に一冊しかないという状況で…近代デジタルライブラリーの方も当たってみます。(私事ながら本当ならとうに知っていないといけない史料なんですけどね…以前、福祉史の話をしておきながらこの体たらくは実にお恥ずかしい)
道仙が商人出身ではないかと推測したのは、建設資金の集め方がいかにも商人っぽい思い付きだと思ったこと、ただそれだけで(汗)。確かに医術に限らず、日本では技術や芸事というのは親から子、師から弟子へと伝えられ、誰でもオープンに学べるものではなかったので、そうかもしれません。師と血が繋がらなくても、優秀な人なら養子として師の一族に迎えることもあったかもしれませんが、道仙の場合は何とも言えませんね。
 
丹波一族の存在も驚きでした。西洋風に「○○科」と分けて人を診る考え方のない時代(大体、漢方医学ではそういう考え方はしません)に、歯科医が、しかも一族でいたことも、考えてみると凄い事ですね。人間の体の部位の中で、どうして歯だけはそれ専門の医師が診る、という発想が早くからあったのかそれも不思議です。
それにしても、但馬といい、丹波といい、なんで京都・兵庫の辺りばっかし?



#9661 
徹夜城(今日はアメリカ産ゴジラを見て来た管理人) 2014/08/14 22:32
但馬道仙

>五葉さん
「南北朝列伝」をお読み頂きありがとうございます。
但馬道仙の病院建設については、僕も正直なところあれを書いてて初めて知ったという程度のものなんです。「室町太平記」でチラッと出したから今回「列伝」入りしてるんですけど、「室町太平記」の時も佐々木道誉に薬を出している事実、南朝の講和使者が彼の屋敷に泊まっている(道誉が交渉役だった)など道誉とのつながりがあることを人物叢書「佐々木導誉」で知ったから、というだけのことで。
 道仙が病院建設のために幕府にはたらきかけて貿易船の建造費の徴収を行った、という話もその「佐々木導誉」に載ってました。「師守記」に載ってるらしいとは分かったのですけど原文史料まで調べるのは大変だなぁ、と思いつつググってみましたら、なぜか韓国の図書情報サイトで但馬道仙と病院建設の話がひっかかり、それが辻善之助の「慈善救済史料」という本に載ってるんだと分かりました。こりゃ戦前の本だからもしかすると、と思い、国会図書館の「近代デジタルライブラリー」で探してみたらビンゴ!でその本を発見しました。おかげでそこに引用されていた「師守記」の道仙関連の原文にあたることができたわけです。いやはや、いい時代になったもんだと改めて思いましたねー。

 その辻善之助の本に紹介されてるぐらいなので、日本の歴史上における「慈善救済活動」の中世における事例としてその筋では以前から有名だったみたいです。ただその本でも但馬道仙当人については原文以上のことは紹介されてませんでした。僕も知りたかったのですが実際に病院建設ができたのかどうか、その本でも言及はありませんでした。

 但馬道仙の素性は専門家だと分かるのかもなぁ。今回「列伝」に入れました医師の丹波一族も平安時代から家業として医者をやってましたから、但馬一族もそんなもんだったんじゃないかと(丹波と但馬…というのも何か似たものを感じます)。商人出身ということはなさそうに感じますが、貿易船を仕立てるために幕府首脳を動かすぐらいの政治力はあったわけです。「師守記」でも、そういう徴収をやると利権がぶつかる比叡山が強訴するかもしれないからと公家にも根回しをしていたことが書かれてまして、なかなかの「政治家」でもあるな、と。

 商人関係では今回「列伝」に入れた陳宗寿、天竺聖、それからすでに入れてる魏天ら外国人たちが目につきますね。彼らがどういう活動をしていたか具体的には分からないのですが、貿易に携わってかなりの財産を築いた、とされています。そういうこともあるから義満に明への朝貢を勧めた博多商人・肥富ってのも実は外国人なんじゃないか…などと僕は疑ってるんですけどね。

 話を道仙に戻しまして、「ほか」の件について。
 これは「但馬道仙」でググりまくってるうちに日本史上の人物の臨終模様の例を集めているブログにぶつかりまして、そこにやはり「後愚昧記」の記事からとった道仙が公家の診察をしていた事例が紹介されていたんですね。そこだけちょこっと参考にさせていただいたので「ほか」扱いとさせていただきました(ネット上情報で参考程度が軽いものについては今のところそうしてます)。



#9660 
五葉 2014/08/14 00:01
南北朝のお医者さん

下記の、タイトルだけのものは誤作動ですので、お手数ですが、消して頂けますか?すみません。

さて、『南北朝列伝』拝読しました。但馬道仙って凄いですねぇ…。けがや病気の人を診る専門の場所を作るという発想は、光明皇后や忍性の事例があるので、南北朝の時代でもないことはないと思うのですが、その建設費用を貿易による収入で作ろうとしたという発想があの時代にあったことに驚きです。多分、他の人が(主にお坊さん)同じことをしようとしたら、勧進という手段になると思うので。一体、どこからそういう発想が出てきたのか?但馬道仙の出生はよく判らないようですが、商人出身という可能性も十分考えられるかなぁ、と思いながら読んでいました。(江戸時代なら、実家が商家だけど体が弱くて跡を継げないので医者になる、という進路パターンが結構ありますけど、南北朝ではどうなんでしょうね)
この病院建設は、その後どうなったのでしょう?判らないのがとても(そこがいちばん)、残念でなりません。どういう事情で、どんな患者さんを対象にして計画されたのかもよく判らないし。

あと、よろしければ参考資料で「ほか」と書かれているものについてもお教えいただけませんか?一次史料になるんですかね?




#9658 
黒駒 2014/08/10 14:14
列伝待ってました

前回更新分と合わせて、暇を見てじっくり拝読させていただきます。個人的には甲斐南北朝期の武田政義、信武などが入って欲しかったのですけど(笑)。



#9657 
徹夜城(やっと盆休みに入った管理人) 2014/08/10 12:46
「列伝」更新しました。

 ようやくホントの夏休みに入れまして、さっそくと言うことでかねて作業を進めていた「南北朝列伝」の更新分をアップしました。
 今回は「た」行の人物が中心で、千葉氏や土岐氏の武将たちが多く追加されています。またやってて面白かったのですが「た行」には「室町太平記」で出した外国人やその関係者が多く含まれる傾向がありまして、今川了俊に焼酎を飲ませた鄭夢周、「ういろう」のルーツになった陳外郎、義満のそばにいた謎の外国人「天竺聖」などなど、個人的に好みのキャラが多く扱われてます。あと、なぜか医者も何人か入ってまして、花園天皇の歯を抜いた人とか、病院建設のために遣元船を仕立てた医者など、調べてみて初めて知った話も入れてあります。

>映画やドラマの話ばかり
 そりゃまぁ、管理人の趣味ですから(笑)。発足以来そんな調子です。
 今年に入って「ノア」や「ポンペイ」など、過去の歴史(聖書)映画のリメイク企画みたいなのが続くなぁ、と思っていたら、今度はリドリー=スコット監督で「エクソダス」なるモーセの出エジプトの映画が来年公開だそうで。それって実質「十戒」のリメイクになるわけですけど(まぁ「十戒」だってリメイクですけど)、聖書に沿った宗教話でやる気なのか、リアル系を目指すのか…



#9656 
2014/08/10 04:01
何でドラマや映画の話ばかりなのですか?





#9655 
徹夜城(今日は講習の合間のささやかな休みだった管理人) 2014/08/04 00:36
買った、来た、見た

 先日こちらでバラージさんから教えていただいた市川雷蔵主演の映画「妖僧」、アマゾンで探してみたらDVDがあったんでクリックして買っちゃいました。それで見てみたんですけどね。
 まぁ主役が雷蔵ですから、道鏡は「妖僧」というほどでもなく単に「いいひと」です(笑)。人格者としても政治家としても理想的に過ぎるくらい。そういう人なので女帝(劇中あくまで「にょてい」としか呼ばれてない)もゾッコンになっちゃうわけですが。結局のところ純愛ラブストーリーに仕立てちゃってましたね。
 冒頭では修行を終えた道鏡が通りかかったネズミを一にらみで骨だけにしちゃったり(オキシジェン・デストロイヤー!?)死人を蘇らせたりととんでもない超能力を発揮するんですけど、女帝と出会ってからは「ただの男」になっちゃうという展開。最初のうちはもっと荒唐無稽な展開になるかと思ったから拍子抜けな感もありました。ちと作り手も扱いに苦慮したのではないかなぁ。途中から話の姿勢がチグハグしてます。
 特に史実にはこだわらずに作ってまして、配慮もあってか登場人物の名前も実在のものと微妙に違う。藤原仲麻呂が「藤原良勝」になってたり(城健三朗=若山富三郎が演じてる)、他にも阿倍君麻呂ってキャラがいたけど和気清麻呂がモデルっぽい(役回りがかなり違うけど姉が女帝の側近だったりする)。仲麻呂の乱なんて映画的には見せ場だろうにえらくアッサリと終わってしまうし…
 ま、これで奈良時代ものの歴史映像ネタが一つ増えるわけですな。


>阿祥さん
 その参勤交代番組は見逃してまして…見た弟から聞いた話ではそれこそ映画のネタになりそうな面白い話がいろいろとあったようですね。
 映画「超高速!」についてもその後調べてみたら主人公の殿さまも藩も一応実在のものなんですね。もちろんストーリーは完全なフィクションでしょうが。
 映画中で大名行列チェックの時だけ近在の人(武士のようなそうでないような人たち)を動員して行列を作る場面がありますが、あれも実際にそういう例は少なくなかったらしいんですね。そういや「子連れ狼」でもそんな仕事を渡り歩いてるヤクザ的武士たちが出てきたことがあります。

>黒駒さん
 戦国ものの統一的な軍記物となると、さすがにスケールがデカすぎ、登場人物が各方面で活動するためどうしても統一感がないから敬遠された、ってことではないでしょうか。信長・秀吉・家康と続く統一過程ではいろいろと作られているわけですし。
 なお、一昨年にネット上で見つけていたのですが、中国では戦国マニア向けに「日本戦国物語」なる、応仁の乱から大坂夏の陣までをぶっつづけで描いた歴史小説が書かれ、発売もされてました。途中までのをネット上でちょこっと読んだんですが、ダイジェスト戦国史としてはなかなかいいまとめ方かな、と。あちらも最近はゲームから入る人が多いらしく、そこから日本の歴史ドラマをチェックしたり、情報調査を細かくやったりするファンが見られます。日本南北朝にはそこから遡及してたどりつくらしく、以前当サイトの「太平記大全」がいつの間にやら全部中国語訳されたりしておりました(爆)。

 さて「平家物語」は「祇園精舎の鐘の音」から始まる無常観が統一的テーマとして流れているとは言えるんですが、「太平記」についてはどうでしょう。一応冒頭文では勧善懲悪的史観(?)といいますか、徳のない政治を行ったものは倒されるのだ、という儒教的革命史観のようなものが出されてはいますけど、鎌倉幕府の滅亡まではそれで破綻はしないものの建武政権の崩壊、観応の擾乱と展開していくともう何が何やらという状態で作者も園混乱に巻き込まれてウロウロしている感じです(笑)。おかげで物語としては破綻しちゃってるんですが、「太平記」後半のカオスぶりが好み、と言ってる歴史学者は少なからずいるようです。

>バラージさん
 「項羽と劉邦」ネタもそれこそ信長・秀吉・家康ネタなみにいっぱい作ってますよねぇ。こちらは人形劇の「項羽と劉邦」までチェックするのが現在精一杯。
 中国史ネタでは最近「東周列国」シリーズを見続けてまして、やっと春秋時代が終わって戦国に入りました。もっとも中国ではこの「春秋」と「戦国」は製作時期も態勢も異なり、別番組と言っていいほどにずいぶん雰囲気が変わりました。



#9654 
バラージ 2014/08/03 23:51
項羽と劉邦と韓信と項羽と劉邦

 『項羽と劉邦 鴻門の会』『項羽と劉邦 White Vengeance』と、項羽と劉邦映画を(録画とDVDで)相次いで観ました。

 『項羽と劉邦 鴻門の会』は、監督が『南京!南京!』のルー・チュアンということで期待してたんですが、その期待にたがわぬ出来でした。面白かった! 原題が《王的盛宴》、英語題が《The Last Supper》で、邦題と違って項羽は主人公ではなく、鴻門の会も(重要エピソードの1つではあるものの)物語の中心ではありません。劉邦とその周囲の人々(韓信・呂雉・項羽・張良・蕭何・項伯・子嬰など)の人生の有為転変と運命の流転を描いた群像心理劇とでもいうべき内容で、死期の近づいた劉邦が自らの人生を回想する形で描かれます。回想部分ではない現在のパートは韓信の粛清が題材で、回想パートもそれに関連したエピソードが多いため、どちらかというと「劉邦と韓信」といった感じ。時代が前後に行ったり来たりする(現在パートの中だけでも時間が前後に行ったり来たりしている)ので、この時代をある程度知ってないとややわかりにくいかもしれませんが、そのおかげで時系列順よりも彼らの人生の有為転変をよりはっきり意識させる仕組みになっています。劉邦役は中国のリウ・イエ、韓信役は台湾のチャン・チェン、項羽役は香港のダニエル・ウーと、中華圏のイケメン演技派が揃い踏み。特にリウ・イエは素晴らしい演技でした。また、知らない女優でしたが呂雉役のチン・ランも好演で思わぬ拾い物(僕は知らなかったんですが、連続ドラマ『項羽と劉邦 King's war』でも同じ呂雉役を演じてるんですね。公式サイトを見るとそちらでは正統派美人設定で、老け役にまで挑んでる本作とはえらい違いだ・笑)。現在パートも回想パートと同じ役者が老けメイクで演じているんですが、全く不自然さを感じさせないメイクにも技術の進歩を感じましたね。全編に渡って暗く陰鬱な作風で、細かいことを言えば史実と違う部分もあるんですが、映画としての質は非常に高く、やはりルー・チュアンは並みの監督ではありません。彼の他の監督作『ココシリ』や『ミッシング・ガン』も観てみようかな。

 一方の『項羽と劉邦 White Vengeance』(映画サイトによってはただの『項羽と劉邦』になってるところもあり)は、アンディ・ラウ主演映画『三国志』のダニエル・リー監督ということでちょっと不安だったんですが、その不安はやはり的中。原題は《鴻門宴伝奇》、英語題は《White Vengeance》ですが、やっぱり鴻門の会が物語の中心というわけではありません(White Vengeance(白い復讐)ってのもいまいちよくわからない)。『アンディ三国志』同様に大筋では歴史に沿いながらも大幅にオリジナルな展開で、それはまあいいとしてもその展開や人物のキャラや演出が笑っちゃうくらいコテコテの香港映画ノリ。張良と范増の策略合戦が(大幅にフィクションを加えて)裏テーマとして描かれるんですが、范増役のアンソニー・ウォンの演技があまりにも大げさでちょっと笑ってしまいます。韓信もアクション俳優のアンディ・オンが演じてるからか、軍隊を率いてるのに個人の格闘チャンバラばっかりで、アクション・シーンもなんだかカンフー映画っぽい。「項羽と劉邦」というよりまるで『水滸伝』か『楊家将』。『アンディ三国志』と同じような映画でした。



#9653 
黒駒 2014/08/03 23:43
戦国物語

あまり南北朝に関係なく戦国の話題なのですが、今日ふと、戦国時代って源平合戦や南北朝動乱に匹敵する列島規模の戦乱の時代なのに、どうして同時代から近世にかけて、『平家物語』や『太平記』のような、列島規模の軍記文学を生まなかったのだろうかと思い至りました。

細かく見ていけばそういうものもあるのかもしれませんが、『平家』や『太平記』に並ぶような代表的な軍記文学って無いと思いますし、『甲陽軍鑑』のような家別か、あるいは地域別の軍記文学が乱立している状態と言っていいように思えます。

『平家』や『太平記』には通底している思想があるわけですが、戦国は、乱世から統一政権に至る過程を、思想史的に上手く位置づけられなかったのかと愚考するのですが、どうでしょうか?

あと、戦国史研究では、戦国大名領国をひとつの「地域国家」とみなし、戦国は地域国家が乱立した時代と見る説がありますが、そうした観点に立てば、戦国期や続く近世初期くらいには、日本列島全体を統一した国と見なし、列島規模の物語を作るという発想が無かった希薄だったのかなと思います。

逆に言えば、『平家』や『太平記』の時代は、日本列島をひとつの「国」として見る意識が残っていた時代と言えるのでしょうか。



#9652 
阿祥 2014/08/02 10:51
ヒストリアの参勤交代

先月NHKの歴史秘話ヒストリアで参勤交代を取り扱っていました。加賀のお殿様が延々と江戸にたどり着くまでの苦労を紹介してました。こちらは本物の難所があったようで、暴れ川を渡るのに巨大な橋を準備したり、人垣を波よけにして海を渡ったりと難儀な様子でした。
面白かったのは、同時期のニュースに北陸新幹線の話があったことです。日本海沿岸を上越市あたりまで東に動き、そこから長野市の方へ南下、そこから碓氷峠を通って江戸に入るというルートは、その参勤交代のルートとほぼ同じような感じです。江戸時代でも、現代でも同じルートが選ばれるというのは、人間の営みが昔も今も同じようなものなのかなと感じました。そもそも現代の都市も江戸時代から発展してきているのだから、駅をつくると同じような場所になるという事かもしれませんが。



#9651 
バラージ 2014/07/26 00:20
『妖僧』は……

 『水戸黄門海を渡る』の放送後にやってた予告編で知りました。時代劇専門チャンネルでは長期に渡って「市川雷蔵 時代劇全仕事」という特集をやってまして、『水戸黄門海を渡る』も『妖僧』もそのラインナップに入っていたのです。放送は見逃しちゃいましたが、時代劇専門チャンネルは何度か再放送をするため、来月も放送があるようなので観てみようかなあ。
 そういえば勝新は『水戸黄門海を渡る』でも正統な二枚目路線でした。まあ、格さんだから当然なんですけど。

 『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』は直接観れなかった上に裏番組のほうを録画したんで観ていません。下山事件の映画にはもう1本、俳優の山村聰監督・主演の『黒い潮』という映画があるようです。国鉄三大事件の他の事件では、松川事件の映画は山本薩夫監督が『松川事件』『にっぽん泥棒物語』となぜか2本も作っていますが、三鷹事件だけは1本も映画化されていません。



#9650 
徹夜城(地元ネタの「歴史映画」を見て来た管理人) 2014/07/24 23:58
茨城南部は秘境らしい(笑)

 今日、「超高速!参勤交代」を見てきました。この手の(?)映画としては珍しくそこそこヒットしてるらしいと聞いています。見てみると思いのほか地味なんですけどね。
 設定は確かに面白いんですよ。現在のいわき市にある小藩が、幕府首脳の陰謀により「五日以内に江戸に参勤せよ」と命じられる。費用もなく、時間もなく、おまけに隠密の妨害もあるなか、難関を次々とくぐりぬけて…といったお話。
 で、いわきから江戸へ行くわけですから、参勤交代ルートは現在の常磐線沿いということになります(いわゆる陸前浜街道、水戸街道ってことでしょうけど)。途中の高萩と取手の宿場で大名行列チェック(人数等を確認)があるのでそこはちゃんと行列を作っていくけどそれ以外は山道を突破してショートカットをはかる、という作戦になるんですね。
 さて、牛久から藤代、取手といった茨城南部、すなわち僕の地元が映画の見せ場になっているわけで地元住民としては嬉しいのですけど…藤代と取手の間がえらい険しい山岳地帯で、おまけに「インディ・ジョーンズ」に出てきたような「オンボロ釣り橋」までかかっている!マジメにツッコんでもしょうがないんでしょうが、地元住民としては「おいおいおい」と(笑)。

>バラージさん
「妖僧」は知らなかったなぁ…あったんですねぇ、道鏡の映画って。

 「歴史映像名画座」ネタとしては、先日BSイレブンで「日本の熱い日々・謀殺下山事件」なんて珍しい映画をやってまして、初めて見ました。熊井啓監督のドキュメントタッチの政治サスペンス映画。タイトルそのままに謀殺説(それを主張した朝日記者が主人公のモデルになってる)にのっとってますが、肝心の証人が微妙に違う証言をしちゃうので若干ボカしたオチにもなっています。
 下山事件の「謀略説」には懐疑的になってる僕ですが(起こった事件が政治的に利用されることはありえると思いますが)、この映画、それを軸にしつつ混沌とした占領期、朝鮮戦争、講和条約、60年安保、そしてラストに東京オリンピックと、戦後史を眺める映画にもなってるんですよね。その意味では紛れもなく「歴史映画」になっています。



#9649 
五葉 2014/07/23 21:15
「あなたはいま、どこにいます?」

サヤ・オリノ様、はじめまして。(「敵?敵とは…」は味方に撃たれた貴族軍の軍人の言葉ですね。しかも自分が逃げるのに邪魔だったからという理由で撃たれたという)管理人様、ご無沙汰です。
『銀英』の名台詞と言われて私が思い浮かべるのは、タイトルにした上記の言葉です。昨今の情勢を思うと、私もニュースを見るのが嫌になっています。7月1日のことも、国民の反対の声がそれほど大きくなかったことも、後世には非難の対象となるのかもしれないと思うとますますうんざりしてしまいます。この言葉を本当に、安倍氏や、賛成・容認した人に突き付けたい。
でも、仕事柄子どもを目の前にすることが多いので、万が一のことを考えると、そうならないように、自分でもできることをしないといけないな、とも思うのです。でないと、今子どもである世代にいちばん迷惑を掛けてしまいますから。タイトルの言葉は、自分自身にも突き付けるべき、重い重い言葉です。





#9648 
バラージ 2014/07/19 00:38
名画座候補作品追加紹介

・神話〜平安時代
『妖僧』……未見。奈良時代の道鏡を主人公とした市川雷蔵主演映画。
『曼荼羅 若き日の弘法大師・空海』……ビデオ化のみ。未見。空海の唐留学を描いた日中合作映画。
・江戸後期
『天狗党』……ソフト化なし。未見。幕末の天狗党を題材とした山本薩夫監督映画。
・インド史
『秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男』……ソフト化なし。NHK-BSで放送された映画。インド映画で最も一般的なヒンディー語映画ではなく南部のマラヤーラム語映画というもので、本来160分ぐらいの映画が40分あまりカットされたらしい。歴史映画かと思いきやアクション時代劇で、ガマを侵略者として描くというのは新鮮ですが、主人公は徹底的に(いささかナルシスティックなほどに)かっこよく、悪者たちはいかにもわかりやすい悪者というコテコテの娯楽映画で、ヒロインその他の人物描写もこれまたベタ。お話の展開もあまりに見え見えなんで、観てて途中でちょっと疲れちゃいます。インド映画らしく歌と踊りもちょっとあり。
・アフリカ史
『愛と野望のナイル』……ビデオ化のみ。未見。ナイル川の源流を探るイギリスの探検家リチャード・バートンとジョン・スピークを描く。どこに入れるか迷いますが一応ここに。
・フランス史
『女優マルキーズ』……未見。17世紀の舞台女優マルキーズ・デュ・パルクの生涯を描いた伝記映画。
・イギリス史
『ロブ・ロイ ロマンを生きた男(DVD題:レジェンド・オブ・ヒーロー ロブ・ロイ)』……未見。18世紀のスコットランドの義賊ロバート・ロイ・マクレガーを描いた映画。
『ウォリスとエドワード 王冠をかけた恋』……未見。ウォリス・シンプソンとエドワード8世の恋を、ウォリスに自分を重ね合わせる現代女性の話と並行して描いたマドンナ監督映画。



#9647 
徹夜城(夏期講習突入前のつかの間の休み中の管理人) 2014/07/18 23:57
南北朝列伝を更新

 気が付いたら一年以上更新してませんでした(汗)。チビチビと作業をしてたんですけどね、やってるうちにいろいろ欲が出て来て扱う人が多くなっちゃって。結局「さ行」が一段落したところで更新ということにしました。
 「さ行」以外では「足利千寿王」(義詮の子)とか「聞渓円宣」(明に派遣された使僧)なんかも関連で追加しました。勢いに乗ってるうちに近日中にもうちょっと追加しておきたいですね。


>サヤ・オリノさん
どうもすいません、二週間以上もたってからのレスになります。
「銀英伝」は名文句の宝庫ですよねぇ。前にも書いた気がしますが「人間の思想には二つの潮流がある。人命よりも価値のものがあるとする考えと、人命にまさるものはないという考えだ。戦争を始める時は前者が、戦争をやめる時は後者が理由にされる」(やや意訳的)なんてのも含蓄があります。
 集団的自衛権関係は前の「史点」で書いちゃってることではありますが…こちらも正直なところ関連ニュースを見るのもヤという状態でした。ここ数日でもウクライナでの飛行機撃墜やらガザ進攻やら、いろいろとキナくさい話が続いてますし。
 ここでひとつ、「仁義なき戦い」からの名文句を。「戦いが始まるとき、まず失われるのは若者の命である。そしてその死が報われた試しはない」(ヤクザの抗争でこのナレーションなんですよね)。


>バラージさん
 おお、「海を渡る水戸黄門」、それは見てみたいですねぇ。シャクシャインだけでも見る価値がありますよ。
 「水戸黄門」トリオが長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎という組み合わせも凄いですが、ちょうど先日、この三人がそろって出ている大映版の「忠臣蔵」前後編を見たんですよ。長谷川=大石、雷蔵=浅野、勝=赤垣源蔵という組み合わせ。このころの勝はその後のダークさ、アンチヒーローっぽさは発揮されてなかったので、今見るとかえって新鮮です。
 あとこの忠臣蔵、吉良が滝沢修なんですよね。大河ドラマ2作目「赤穂浪士」と同じ組み合わせなのでした。


>歴史とは直結しないけどどうしても書いておきたい
 昨日、早稲田大学の小保方博士論文の調査報告には呆れました。なぁなぁにするのでは、という予想はある程度あったんですが、ここまで支離滅裂だとは。
「論文に不正はいっぱいあった。本来なら博士論文に値しない。でも審査がいい加減だったから学位をあげちゃった。早稲田の学位は重いので剥奪するわけにもいかない」…って、えええええええ?
 草稿を提出しちゃった、ってありえないような言い訳を「事実」と認定しちゃったのもビックリ。実際にそうだったとしても、「本物」は今年五月に出してそれでOK、しかも三年前に書いた物と同じとどうして判断できたのか。おまけに不正の核心と言ってもいいネット上画像の使い回しに言及がない。「不正」と認定したものはどれ一つでも即却下ではないかと思われるレベルなのですが…
 これは最初から「学位取り消しはしない」という方針で、無理やり理屈をひねりだしたとしか思えない。本人が「再現実験」に参加したのも正直驚きなのですが、どうもこのところ情勢がおかしな方向に進んでる気配があって、僕自身歴史畑とジャンルは違うながらもアカデミズムへの「愚弄」ではないかとさえ思ってます。ある意味最悪の結果ともいえまして、先日の丸山議員(文教族)の状況を何にもわかってないとしか思えない小保方シンパ発言からも、どうも文科省や政治家から「少なくとも再現実験のあいだはそっとしておけ」といった圧力がかかってるんじゃないかとさえ思えてきました。
 総長自身はこの報告書に対してやや微妙な表現もしているのですけど…



#9646 
バラージ 2014/07/13 23:23
アイヌは出てきても印籠は出てきません

 『信長のシェフ』第2部が始まりましたが、前回より視聴率が下がってしまったらしい。時間帯を深夜からゴールデンに上げたのが裏目に出たか……。

 つい先日、CSの時代劇専門チャンネルで、#9525でも紹介した映画『水戸黄門海を渡る』を観ました。同チャンネル及び姉妹チャンネルの日本映画専門チャンネルは、DVD化されていない映画やドラマも放送することがあるのでなかなか重宝します。
 原作・脚本は『月光仮面』で(というより最近では『おふくろさん』騒動で)有名な川内康範で、長谷川一夫が黄門様とアイヌの酋長シャグシャインを2役で演じ、助さんが市川雷蔵、格さんが勝新太郎という豪華版。なにしろ水戸黄門なんであくまでも基本は娯楽映画でして、シャグシャインは反乱を起こしたアイヌの酋長というところが史実のシャクシャインと同じというくらいで、基本的には別人と考えたほうがいいでしょう。松前のお殿様も調べてみたら史実とは別人(架空の人物)です。悪者はお決まり通りの悪家老と悪徳商人に、裏切り者のアイヌ酋長。アイヌの風俗などの描写は専門家ではないのでくわしくはわかりませんが、素人目にはそれほどおかしなところは見受けられなかったように思います。当時は「蝦夷(えぞ)」と呼ばれていたはずのアイヌがなぜか一貫して「アイヌ」と呼ばれている(蝦夷地を蝦夷と言っているためかもしれませんが)、黄門様や松前の殿様が「アイヌも同じ日本人なのだから平等に扱わなければならない」とやたらと言う、史実より100年ほど早い蝦夷地測量とロシアの南下が描かれ、異国に測量図が渡る脅威が強調されるといったところは、むしろ製作当時の時代状況の反映と言ったほうがいいでしょう。最後も史実とは違い、もちろん大団円です。
 映画的には、西部劇を意識したようなスペクタクル・シーンがあったりして、純粋に娯楽映画としてなかなか面白かったです。長谷川が黄門様とシャグシャインの2役をやってると聞いて、水戸黄門によくある黄門様と瓜二つの人物と出会ってお互いびっくり!というパターンかと思いきや、年齢も違えばメイクも違ってそっくりさんパターンではないので、長谷川がわざわざ2役をやる必然性が全然ありません。黄門様だけだと長谷川の見せ場が少なかったからだろうか? また、助さんが序盤で行方不明になってしまい、入れ替わるように出てくる謎の虚無僧が助さんなのはバレバレなんですが、虚無僧笠を一切取らない上に声も明らかに雷蔵とは違う。終盤、声が雷蔵に戻ったと思ったら笠を取って雷蔵登場。スケジュールの都合か何かで完全に中抜けしてます(笑)。まぁ、当時の娯楽映画の典型的ご都合主義って感じで、そんなところもなかなか楽しい映画でした。

>ピーター・ホー
 僕は『三国志 Three kingdoms』も『楊家将伝記』も観てないんですが、ではなぜピーター・ホーを知っていたかというと、チャン・ツィイー製作・主演の中韓合作ラブコメ映画『ソフィーの復讐』に出演してたからなんですね。ちなみにこの映画、日本ではチャン・ツィイーとソ・ジソプのW主演のように見せかけてますが、実際にはチャン・ツィイーの単独主演でソ・ジソプは四番手。面白い映画でした。

>マンデラ自伝の映画化
 以前、こちらでマンデラの自伝が南アフリカで映画化されたという話が出てましたが、ちょっと前に日本でも『マンデラ 自由への長い道』という邦題で公開されましたね。僕は観ませんでしたが……。



#9645 
サヤ・オリノ 2014/07/01 22:59
「敵?敵とは誰のことだ。俺たちをこんな目にあわせてくれた奴こそが敵さ!」

という言葉が「銀河英雄伝説」というOVA作品の第22話にありますが、
沖縄戦、特に一般市民の被害についても、同じことが言えないか、と
沖縄戦の惨禍は全て米軍のせいだと思っている人たちに聞いてみたい、
と思っているサヤ・オリノでございます。
(遅ればせながら御無沙汰してます。)
どーも今日は後の世に「歴史的な転換をむかえた日」と記録されそーな閣議決定があったようですが、
もともと日本は現憲法第九条などなくても、いわゆる戦前から「戦争のできない国」だったというのに、
それどころかよ、というのが私の本音なので、テレビのニュースやネットの書き込みを見るのさえ苦痛な日々でございます。
なお私が「日本は戦前から『戦争のできない国』だった」というときの「できない」という意味は
1+1=2ということが分からない子は算数が「できない」子だ、という意味で使っております。そこのところお間違いの無いようお願いいたします。
まったく、「輜重輸卒が兵隊ならば、蝶々蜻蛉(トンボ)も鳥のうち」だなんて……
なんて戯言だ。
しかも、子供だけならとにかく……本職の軍人たちまでが……
どういう軍隊だったのだ、大日本帝国陸海軍とやらは。
一応日露戦争までは、まずまず普通の軍隊だったのに。
(あ、第一次世界大戦は数に入れていません。理由は……、駄目だ、頭がとっ散らかったので、また今度)
あと、タイトルの台詞が、どういう状況において発せられているかは、ご覧の方々が御自身でお確かめ下さい。
そして、このようなことが御自分や御自分の大切な人の上にふりかかったら、とお考えください。
それが一番だと思われます。



#9644 
アジアのバカ大将 2014/06/30 23:36
早雲にも「女っ気」あり?

話の流れをさえぎるようで申し訳ないのですが、
>>北条早雲の件は、女性を出せない作品
草雲は、駿河の今川家に嫁いで、世継を生む妹いますよね。彼女は、物語の狂言回しになりませんかね?架空の個性豊かな腰元なんかを配してもいいですよね。



#9643 
つね 2014/06/28 23:21
ロンゲ尊氏

レスありがとうございます。
そういえば、そのときの尊氏ってあまり記憶に残ってないですね(主役のはずなのに)。知識では頼朝や尊氏や信玄の肖像画は言い伝えとは違うらしいと分かっていても、一種の刷り込みがされているようで、ロンゲ尊氏だと違和感なしにスルーしてしまうようです。
魔王後醍醐もイメージどおりのところもありましたね。管理人さんのように太平記全文検索するような方はほとんどいないでしょうから、このまま「太平記で後醍醐は魔王を名乗った」と広まってしまう危険性も。崇徳上皇の例があるから、「ありかねん」と思ってしまうところもあるんですよね。「太平記」も軍記物だし。崇徳上皇の呪詛も史実ではないそうですが。

今日はケネディ暗殺から4日間を描いた「パークランド」を見てきました。どうしても「JFK」と比較してしまうのですが、こちらはドキュメンタリー的に淡々と記録を映像化していくもの。「淡々と」と言っても迫力はあります。「JFK」が20年前の映画というのも早いものです。基本、陰謀論は信じないのですが、ケネディ暗殺事件はちょっと。CIAや軍産複合体が仕掛けたとは言いませんが、「オズワルド単独犯」は無理があるように思ってしまうんですよね。



#9642 
徹夜城(今ごろになって日テレ年末時代劇を全部見た管理人) 2014/06/26 14:54
大魔王後醍醐

>つねさん
 後醍醐が大魔王のように描かれていたのは、お調べになった通り、朝日新聞社で出してた「週刊マンガ日本史」の「足利尊氏」の巻でした。この漫画については「マンガで南北朝!」にはまだ扱っておりませんが(これも含めていくつか追加候補はあります)、「南北朝列伝」の中に情報としては反映させてます。大魔王の後醍醐も凄いですが、尊氏が「ロンゲ」に描かれるあたり、例の「騎馬武者像」のイメージは根強いのだな、と思わされます。

 ところで僕もつねさんと同じように「後醍醐 魔王」でググってみました。するとなるほど、Yahoo知恵袋の記事で「太平記では後醍醐も第六天魔王を名乗った」とする文章がヒットしますね。ですが僕には全く初耳の話で「?」と首をかしげ、太平記本文を「魔王」で全文検索してみました。
 すると巻27の「雲景未来記の事」という章で、「後醍醐が魔王になった」とする話が出てきます。これは雲景という羽黒山の山伏が不思議な夢を見て、そこで間もなくやって来る「観応の擾乱」の予兆を読者に提示する内容になっています。この夢の中で雲景が連れられていった場所に、崇徳、後鳥羽、後醍醐ら位を追われた天皇たちや源為朝、他に流刑など怨みを抱いて死んだ高僧たちが「魔王」となってずらりとならんでいるんですね。とりあえず後醍醐が「魔王」そのものになったという話は「太平記」でもここにしか書かれてません。
 「第六天魔王」という言葉も「太平記」では何度か出て来るのですが、要するにこの世にあれこれといる魑魅魍魎といったイメージで、特に特定の大魔王を指してるわけではないようです。
 確かに後醍醐天皇は幕府滅亡を祈る修法をやるなど「魔王」的イメージがつきまとうのではありますが、さすがに本人がそれを名乗るということはありえないでしょう。Yahoo知恵袋のその書き込みもその辺のイメージがゴッチャになってしまっているのではないかと思いました。探してみるとこの「後醍醐大魔王」関連の記事に僕と同様に調べて否定的な意見を述べてるのも見つかります。


>バラージさん
ああ、そうか、ピーター=ホーという名前にだけは覚えがあるような…と思ってたら「三国」の呂布役の人でしたか。「King's War」ではまだ項羽役の出番のシーンを見てないんで気が付きませんでした。
項羽と劉邦ものでは10年ほど前に「大漢風」が作られてまして、そこでの項羽は胡軍(フー・ジュン)。この人も趙雲やら朱元璋やらフビライやら歴史映像ものに出まくってますね。


>黒駒さん
大河「太平記」を見ていて、放送時の「時代」をまず感じさせるのは、冒頭がいきなり「ベルリンの壁崩壊」の映像だったことですね。「いま、我々は激動の時代を生きている。太平記の時代も…」といささか強引な結び付けでしたけど。
一説に、ではありますが、大河「太平記」が実現したのは「昭和が終わった」からではないか、との見方もあります。なんとなくやりやすくなった、という空気はあったのかもしれません。





#9641 
黒駒 2014/06/25 22:03
返信ありがとうございます。

北条早雲の件は、女性を出せない作品として例示として出しただけなのですが、確かに架空キャラを作ってしまう手はありますが、架空キャラをそんなにたくさん出すわけにはいかない、という事情ではないかと思います。

もっとも、吉田松陰の妹が出てくるような今日の大河状況を考えますと、なんでもアリになってきてるようにも思えます。でも、女性が活躍しないといけないとか、側室はだめとか、新らしい拘束は出てきているようですね。

私は、『太平記』を見ると90年代の空気が感じられるように、その時代その時代の風潮やら規制やらがかいま見えると、描かれている時代だけではなくて制作された時代の空気も感じられるので、いいんじゃないかと思います。



#9640 
バラージ 2014/06/25 01:14
いずこの国も同じか

>最近の中国歴史ドラマ事情
 『項羽と劉邦 King’s War』はちょっと前にWOWOWで初めて放送されてたんですが、敬遠して観てませんでした。まあ何しろ連続ドラマは長いんで……。その後、DVD化され、今度はBSフジで放送されてるようですね。ちなみに項羽役の台湾の若手俳優ピーター・ホーも『三国志Three Kingdoms』の呂布や『楊家将伝記 兄弟たちの乱世』の楊四郎を演じています。中国史映像作品では、始皇帝・項羽と劉邦・三国志・水滸伝・(モンゴル史だけど)チンギス=ハーンあたりはもうやたらと作られてますね。なにしろ日本をはじめとする外国(中国から見た)でも作られちゃってるくらいですから。今もWOWOWで最新作の『孔子』を放送してるんですが、ついこないだ『恕の人 孔子伝』やったばっかじゃんという。
 最近の中国歴史ドラマですが、現代女性が清の康熙帝時代にタイムスリップしちゃうドラマ『宮廷女官 若曦』が、普段は歴史ドラマに興味を示さない若者たちにバカ受けしたらしく、『宮廷の諍い女』『王の後宮』『二人の王女』『後宮の涙』『美人心計』『蘭陵王』などなど架空の人物を主人公にした大奥ものや、実在の人物をモデルとしながら史実から大きく離れた自由な創作ものが大流行り。中国政府はこの傾向に「けしからん!」と目くじらを立てたようで、「もっとまじめなドラマを作れ!」と製作に制限をかけちゃったらしいんですが、当然ながら視聴率を取りたい製作側もあの手この手で規制をかいくぐろうとしているそうです。『宮廷女官 若曦』の続編は現代に戻った主人公が、恋に落ちた雍正帝にそっくりの人物と出会うラブストーリーだとか。う〜む、いずこの国も同じか。韓国ドラマなんかも同じパターンがありそうな。
 まあ、僕も7月から始まる『信長のシェフ』パート2が楽しみだったりするんですけどね。11時台から8時台に昇格です。ドラマとしてはもちろん、歴史ものとしても案外良く出来てるんすよ。

>大河ドラマあれこれ
 北条早雲が主人公のドラマというと、前にも書いた『若き日の北條早雲』という1980年のテレビ朝日の連続ドラマがあったようですが、ネックになると考えられるのは、@新説にのっとると「下剋上」「遅咲き」という特徴がなくなり、ありふれた武将の1人になってしまう。Aだからといって旧説のままだと、ほとんど最初から爺(じじい)になってしまう。B実は前半生は人気のある戦国時代ではなく、人気のない室町時代。C本人以外の周辺人物が著しくマイナー。といった辺りにあるように思います。歴史マニアには受けても、一般層やライトな歴史ファンに受けるかどうかがネックかと。まあ、『毛利元就』も何とかなったんで可能性はあるかもしれませんが。ちなみに元就は早雲の子供(氏綱)世代、武田信玄・上杉謙信・斎藤道三は孫(氏康)世代、信長・秀吉・家康はひ孫(氏政)世代です。
 女性主人公大河といっても、女性が主人公でさえあれば何でもいいわけではなく、ドラマである以上はある程度の視聴率を狙うのは当然の話。歴代女性主人公大河で視聴率が高かったのは、80年代の橋田壽賀子脚本『おんな太閤記』『いのち』『春日局』と近年の『利家とまつ』『功名が辻』『篤姫』。逆に惨敗だったのが『三姉妹』『春の波涛』『花の乱』『江』『八重の桜』。両極端で中間がないのが女性主人公大河の特徴です(『江』は中間ぐらいとは言えるかも)。これらの作品すべてを見ているわけではないのですが、高い視聴率を取っているのはいずれもホームドラマ的作品と言っていいでしょう。来年の『花燃ゆ』がどんなドラマになるのかはわかりませんが、ホームドラマ的設定は十分可能な題材であろうと思います。このドラマについては、そもそも幕末という時代設定が先にありきで、人物は後から探したんではないかと推測するので、あまり人気のない南北朝と同列には考え難い。また、惨敗したものも含めて主人公が悪女設定のものは1本もなく(というか男性主人公でも悪人設定はほぼ皆無)、日曜8時という時間を考えても昼ドラ的ドロドロ展開はないだろうと思います。大河は基本的に主人公は美化設定ですしね。
 なお、『花燃ゆ』の杉文は旦那が死んだ後、かなりたってからの再婚だし、八重も離婚した上での再婚なんで、いっぺんに複数の奥さんを持つ男性と同列に考えちゃうのは違うんじゃないかと。まあ、『徳川家康』や『独眼竜政宗』でもそのあたりにはかなり気を使った描写だったように記憶しているので(大半の側室がカットされてたような)、上手く描けていれば問題はないんではないかという気もします。
 そういえば『真田丸』の主演が事前報道通り堺雅人に決まりましたね。あまりにもどストレートだなあ。「徳川に倍返しだ!」って絶対誰かが使いそう。



#9639 
つね 2014/06/23 00:37
第六天魔王

管理人さんの書き込みを見て、ふと後醍醐天皇が魔王みたいに書かれていた漫画があったなと思って、「マンガで南北朝」を探しても見当たらず、「後醍醐天皇 魔王」で検索したら(罰当たりな)、2009年創刊の「週刊 マンガ日本史」と判明しました。更新希望。ついでに後醍醐天皇は太平記では「第六天魔王」と名乗っていたんですね。信長は有名ですが。



#9638 
徹夜城(南北朝ネタなら大河候補は10人はいると思う管理人) 2014/06/22 15:51
南北朝で女性といえば

>黒駒さん
 「北条早雲」の名前は、大河候補ネタの話になるとたいてい口に出されますよね。知名度の高い戦国大名ながら、主人公にされた映像作品はほぼないからです。主人公にされた小説は少なからずあるのですけど…
 ネックはいくつか指摘されてまして、まず主人公が「北条早雲」と名乗ったことが一度もない。もっともこんなのはそう問題にならないのではないかと。次にドラマにするには前半生の経歴がいまいち分からない、ってのもありますが、最近は結構判明してきたという状況です。ただかつてのように「一介の浪人から大名に!」という下剋上的サクセスストーリーには描くのは史実的に誤りってことになっちゃいそう。
 女性が出てこない…と小和田さんがおっしゃってるそうですが、そんなものはどうにでもなるんじゃないかと。架空キャラでもいいから作っちゃえばいいんだし。

 それとは別に、近ごろ噂されているのが、「大河の男主人公は妻一筋でないとダメ?」との俗説があります。すでにその説がささやかれている中決定した、今年の黒田官兵衛だってそれで選ばれたんじゃないかと言われたくらいで。側室持ち男はもう主役にできないのか?と思ってしまいますが(義満なんて絶対ムリ)、一方で女性主人公の方は昨年の八重がそうであったように複数男性と再婚パターンがみられるような…来年もそうですし。ま、なんにせよ憶測の域を出ませんが、視聴率的に女性をとりこまないと、と意識してるのは間違いなさそう。

 さて南北朝時代の女性キャラということでは、なんといっても阿野廉子が筆頭でしょう。この人主役にじゅうぶん一年やれますよ。南朝視点のドラマということでも、後醍醐や楠木正成を主役にするより客観性もあってやりやすいんじゃないかという気もします。
 自分の主人である中宮をさしおいて後醍醐に寵愛される「略奪愛」パターン、隠岐や吉野へも常に同行し政治にも介入する積極性、南朝では国母として事実上の「女帝」となり、一時は京奪回に成功するなど材料はこれでもかとばかりにあるんですよ。それでいてこれまで主役にした小説の一本もないのが不思議(自費出版のはありました)。悪女キャラとしても魅力たっぷりだと思うのですけどねぇ。「マンガで南北朝!」で紹介したレディコミ風味のがあるくらいですか。

来年の「松陰の妹」がありなら、もう何でもアリだろ、と思っちゃうのですが、南北朝でやれそうなキャラを思いつくところで列挙しますと…

◎赤橋登子
北条の姫で足利に嫁ぎ、人質にされる上に夫が寝返り兄弟は戦死。感応の擾乱でも影の主役(?)ともいえ、夫の落としタネの直冬の抹殺を図る、とまぁ結構いろいろネタはあります。
◎楠木正成の妻
「久子」とされることが多いあの人。戦前はずいぶんもてはやされましたけどね。今ならまた観点を変えて、三男の正儀に影響を与えているという作り方もできるかと。
◎勾頭内侍
これはさすがに単発ドラマ向き。
◎日野名子
西園寺公宗の妻。なかなか劇的な人生なんですよ、この人。この人の周辺の西園寺寧子など後宮女性たち(北朝系)をちりばめるだけでも結構面白くなりそう。



#9637 
黒駒 2014/06/22 11:14
太平記は女性が少ない?

戦国大河を多く監修している小和田哲男氏が、ある同業研究者から「北条早雲で大河できませんか?」と聞かれたときに答えたのが、「だめ、女性が出ないから」であったという話があります。今や大河ドラマを作るときのネックって、そういう部分になっているのでしょうか。

考えてみると太平記、南北朝史の世界って女性の登場・活躍が他の時代に比べて乏しいような気もします。無論、まったくないわけではないことは承知しているのですが、影が薄い印象は否めないように思われます。南北朝史って書籍の刊行状態から見るとけしてマイナーでもないような気もするのですが、なかなか次の南北朝大河が実現しない理由って、実は「女性の活躍が少ないから」という点もあるのではないでしょうか。



#9636 
徹夜城(また名画座更新にとりかかる管理人) 2014/06/16 12:40
もう何度目だよ

>ひでさん
 「項羽と劉邦King's War」、僕も時間のある時にちまちま見てます。でも録画までして見る気は起きなかったんですよね。「項羽と劉邦」ネタの映画やドラマはそれこそ「もう何度目だよ」というほどやってるので、さすがにチェックする気が起きない、ということもあります。数年前に「大漢風」見たから、もうしばらく間を置きたい気分。
 ただ、この「King's War」は劉邦役が陳道明という大物でして…過去には溥儀、康熙帝、始皇帝などなどを演じているお方。日本でもそうですが中国や韓国でも歴史ドラマには同じ人が何度も出演して大物を演じる傾向がありまして、時代劇役者はどこの国でも限られるということのようです。

 中国の歴史ドラマは全部撮影を終えてから放送するのが常なので、その名場面をちりばめたオープニングやエンディングを見ただけで全部見ちゃった気分になるのも多いんですよね(笑)。
 また中国では中央だけでなく地方局もこぞって歴史ドラマを製作するため本数が半端じゃない。おまけにしばしばネタがかぶってしまう。予算の違いが察せられるものも見受けられますが、これだけガンガン作れる状況というのはやっぱり羨ましいなぁ、と。
 日本の現状は実質大河ドラマとテレ東の正月大型時代劇くらいですかねぇ(これもよくネタがかぶる)。バブル崩壊直前の1990年前後には民放各局も競って大型歴史劇を製作してくれたものですが…これもおんなじようなネタばかりやって、と当時思っていたんですが、作れるだけまだマシだったのだなぁ、と思う昨今です。



#9635 
黒駒 2014/06/15 16:31
返答ありがとうございます。

>管理人様
私もいわゆる陰謀史観にかぶれてしまった人は何人か見てきたのですが、どうしてそういうものにハマってしまうのか考えてみると、歴史そのものを知らないというよりは、史料論といいますか、歴史がどう記録して伝わっているか(伝わってしまうのか)、歴史の記録のされかたに関する感覚が乏しいせいではないかと、思っています。学校教育で習う歴史は歴史的事実のほうで、史料を読むみたいな授業はないわけですし、歴史が比較的好きでも、史料論に対する感覚を身につける機会がないためではないかと考えます。

私が知人と話していたときの「歴史」は日本の中世期あたりを想定していたと思うのですが、日本の中世において、中央でおきた大きな出来事って、密室で起きたことなら隠蔽してしまうことも可能でしょうが、大きくに人々に知られるような出来事は、たいてい公家や僧の日記なんかに多く記録されてしまうはずだ、と思うのですよね。いくら権力者であろうと、プライベートな日記にすべて介入して書き換えることは不可能、だからそういう陰謀論は無いよと私は思うのですが、こういう感覚って話しても理解されない印象でした。



#9634 
ひで 2014/06/15 00:24
中国ドラマなどなど

>中国の歴史ドラマ
何を設定したためなのかわかりませんが録画に入っていたので時々見ていることがあります。最近は項羽と劉邦のドラマがやっており、現在始皇帝が死んだあたりまでやっています。オープニングとかエンディングがやたらと壮大なのと、サブタイトルがKing's warというのがどうなんだろうと思うところはありますが、それなりにお金はかけている方なのかなという感じがします。

>facebook
実名(だろうと思う名前)で良くこういうこと言えるよなあと思うコメントを結構見かけます。匿名でないということはべつに歯止めにはならないようで。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9633 
徹夜城(次はもう少し更新ペースをあげたいもんだと思う管理人) 2014/06/14 22:15
南北朝本ラッシュ?

 ラッシュというのは大げさかもしれませんが、アマゾンでちょろっと検索してみますと、昨日付けで中世武士選書から「北畠顕家」が出てますし、来月には高師直を主人公とする小説が発売されるようです。なんだかんだで結構出てますね。もちろん他の時代に比べると…ではありますが。なまじマイナーなぶん、一般向けの書籍の質は概して高いような気はしています。

>黒駒さん
 かなりレスが遅れてしまいました。
 まぁ確かにあるんですよね、「歴史は勝者が作るものであり、都合の良いことしか書かない」とか、「歴史は権力者によって改ざんされる」とかいった言説は。そういう面があることは否定しませんけど、それをつき進めて行くとそれこそ巷間伝えられる「歴史」を全て疑わなきゃいけなくなる。
 僕も倭寇なんか専門にしてますから、史料はそれを鎮圧する側の記録しかない。そのためそこに書かれる言説をそのまんまうのみにするのは危険だよ、と恩師に注意されましたが、その一方で「その割には…」と思うほど生々しい実態に迫るのではないかと思える記録もいろいろと出てくるわけです。そこから僕らは真相とされるものに可能な限りにじりよろうとするわけで…

 「真実の歴史は覆い隠されているのではないか?」という考え、まったく無駄とは思いませんが、えてしてその手の発想にとらわれる人は、いわゆる「陰謀史観」にハマりこむ傾向があります。何か表には出てこない巨大な陰謀によって歴史は動かされていて…というあれですね。で、それは歴史だけでなく現実の、今の社会情勢についてもそういうふうに考えている人は思いのほか多いのです。でもやっぱり実態とはかけ離れていると思うしかない陰謀論が多いですけど。
 このところのSTAP細胞騒動を眺めていても、世の中には報道など一切信じず、「何か巨大な陰謀、もしくは裏があって小保方さんは陥れられてる!」といった主張をする人が結構見受けられたもので、歴史に関してもそんなもんなんだろうなぁと感じてました。興味深かったのが、それが匿名のコメント欄ではなく、実名を出すフェイスブックの方に多く見られた点でした。さすがにここ数日で小保方擁護派はぐっと減った感じがしますが(世界三大不正とまで言われちゃいましたし)、これも後々まで「実はあれは陰謀で…」といった陰謀史観のタネにされるのではないかと。


 歴史に話を戻しますが、いま中国ドラマ「東周列国」の春秋時代編を見てます。そのなかで「歴史」にまつわる有名エピソードがしっかり映像化されてました。
 斉の大臣・崔杼が、主君である斉の荘公を殺します(崔杼の妻と密通したから)。すると歴史を記録する係官である太史が「崔杼が荘公を弑した」と記し、激怒した崔杼はこの太史を斬り殺してしまう。するとその太史の弟がやはり「崔杼が荘公を弑した」と書いたので、またまた殺してしまう。するとさらにその下の弟がまた同じことを書いたので、とうとう崔杼もあきらめた、というエピソードです。
 権力者の都合のいいように歴史を書かせようとしてもそうはいかない、という歴史記録者の執念を感じさせるエピソードで、僕は鄭問の劇画「東周英雄伝」でこの話を始めて初めて読み、最後の弟が「あったことはあったと書く。それが史書です」と死の恐怖におびえながらも言い放つシーンに感動した覚えがあります。この劇画ではこの弟は「本当にこれでよかったのか?」とつぶやくのですが、老太史から「お前の兄たちはその史書の中に生きているではないか」と諭される、というさらなる感動のおまけがあります。
 元ネタは「春秋左氏伝」だそうで、もっと簡潔に書いた物なのですが、太史の記述に権力者といえども介入はできなかった、というのは本当のようです。それはその後の時代にも引き継がれていて、正史のもとになる歴代皇帝の日々の記録も皇帝といえども記述に介入できない原則になってはいたようです(ま、あくまで原則でしょうが)。その記録が全部真実とは思わないほうがいいですけど、それでもなんだかんだで事実の手がかりってのは完全ではないにせよ後世に伝わるもんだよ、とは思います。



#9632 
黒駒 2014/06/08 23:16
都合の悪い事実は消されている?

なんか、あまり歴史に関心のなさそうな人と話していて思ったのですが、歴史の勝者が都合の悪い事実は抹消しているっていう認識は、一般の人にけっこうあるみたいですね。私は史料に多く接しているわけではないのですけど、なんだかそれって陰謀史観ぎりぎりかもなぁと思ってしまいました。

たとえば戦国・安土桃山期の豊臣政権や徳川政権の暗黒面にしても、政権側が編纂した史料だけでなく、事実を知りうる公家とか僧が残した多様な記録があるわけで、いくら中央政権といってもプライベートな日記の記述まですべて介入し改ざんすることは不可能、と思うのですけど、やっぱり歴史の史料論について素養のないというか、あまり関心の無い人にとってはそういう認識なのかもなと思いました。

無論、ときの政権が事実を抹消するような工作が実際にあるであろうとも思うのですが、現実には同時代の多くの人間が知りうる事実を抹消することは難しく、正史的な史料において、事実は認めた上で正当化するための工作をしているのではないだろうか、と思います。



#9631 
黒駒 2014/06/02 11:15
南朝の真実

まだ未読ですが、ツイッターでけっこう話題になってます。南北朝ってなんだかんだ言ってけっこう新刊が出てますし、この盛り上がりようから見ても、本当にマイナーな時代なんだろうかと思ってしまいますね。そういえば、南朝の本はいくつもありますが、北朝の本ってないような気もします。



#9630 
KMnO4 2014/06/01 09:17
てこ歴には少し弱いか・・・

竹村光太郎「日本史の謎は”地形”で解ける」 PHP文庫 2013年 ISBN978-4-569-76084-1

著者は国交省の河川局長まで上り詰めた河川行政の大物で、治水・利水・防災・流域・資源フローと都市の盛衰の関係に関する知識はかなり正確(実は私も、業界は違うけど同じ分野を専門的にやってきた人間なのですが、この人の自然科学的・土木工学的認識には、「ちょっと古くさい」以外はさほど違和感はなかったです)。あと、ペンネームを使って河川行政のご意見番ともなっています。

では著者の歴史認識のほうはどうか、というと、残念ながら私にはそれを評価できるだけの力量がありません。家康は江戸に移封される前は甲府で城を造っていたとか、赤穂浪士のうち十数人は半蔵門のあたりに潜んでいたとか、次々と出てくるエピソードの大半は私にとって「初めて知りました」というレベルです。(それらの裏取りもしていません)

そのレベルであっても、本全体にわたって「あれ?」という点があります。著者の文章構成は
・日本史において、○○という問いを立てる
・○○については、従来の歴史学は△△という通り一遍の答えですませている(あるいは、答えを出せていない)
・地図を見たら(あるいは現地で地形を観察したら)、まったく別の新しい答えが出てきた
というものです。

このとき、二つの問題があります。
1.その問題は従来の歴史学が本当に軽視してきたものなのだろうか?これまでの歴史学(者)が、自然環境による制約(著者のよく使う用語でいうと「下部構造」)に対する目配りをそれほどまでにしてこなかったのだろうか?
2.著者が自然環境史的考察から独自に出した結論は、従来の歴史学で明らかとなっている事実と矛盾しないのだろうか?

この二つについては、私はまったく分かりません。そして著者は本書ではそれを書いていません。著者は結構断定的かつ個人の主観に重きをゆだねて筆を進めるので面白くすいすいと読めるのですが、一歩立ち止まると「あれ?」となるのです。実はトンデモ本の系譜には、こういう筆致は多いので、少し危険な香りを感じました。

しかし残念なことに(?)、トンデモ本にありがちな、従来の学界に対する罵倒や憎悪は、この本にはまるで見られません。「私こそ真実」という態度も、定評ある(?)トンデモ本に比べると弱いです。

というわけで、私にとってとても評価しづらい本でありました。歴史畑の方が読んだらどう思われるでしょうか、が気になります。

なお、この文庫本は2005年、2007年に出された本の再構成だそうで、歴史畑ではすでに議論の対象となっていたかもしれません。



#9629 
バラージ 2014/05/31 23:55
ヨーロッパ編

 歴史映像名画座の更新ご苦労様です。今回も早速感想&紹介を。

気づいた点
 「明治〜戦前」は「明治〜戦中」としたほうがいいのでは?

感想
・江戸後期
『幕末太陽傳』……独特のシニカルで虚無的な雰囲気がなかなか面白かったです。歴史ものと感じたことはなかったけど。
・ポーランド史
『灰とダイヤモンド』……あらかじめポーランド史をわかってないと、ちょっとわかりにくいところのある映画でした。面白いことは面白かったけど。しかし邦題はかっこいいなあ(原題の直訳かもしれんけど)。このタイトルだけで観たくなっちゃう。
・ドイツ・オーストリア史
『ブリキの太鼓』……まさに「真実はおとぎ話によってのみ語られ得る」というやつですね。ただ、キワモノ趣味的描写ではないもののややグロテスクな部分があるので、万人にはおすすめしづらいかなぁ。
『ニュールンベルグ裁判』……戦争裁判の難しさを描いた佳作。裁判映画には傑作が多いですが、やはり最高峰は『十二人の怒れる男』かな。
・イギリス史
『ブレイブハート』……久々に作られたスペクタクル歴史映画といった感じでした。映画としては、なかなか面白かったんですが、後で史実を調べてみたら、映画は史実と違うところが結構多かったみたいですね。
『ヘンリー5世』(ケネス・ブラナー監督・主演)……まあまあでした。舞台の映画化では、映画の中で舞台的演出がされることがよくありますが、そこは個人的にはどうしてもちょっと違和感を感じてしまいます。
『英国王のスピーチ』……#9039
・アイルランド史
『マイケル・コリンズ』……面白かったです。独立のためにはどうしても必要だった暴力を、どうやって終わらせていくかということの難しさ。自らも最後はその暴力に倒れていく悲劇。簡単には答えの出ない問題を投げ掛けている作品でした。
・イタリア史
『薔薇の名前』……非常に面白いミステリー映画でした。多彩なキャラクターの登場人物たちがそれぞれ魅力的ですが、中でも若いほうの修道士の初体験の相手となっちゃう貧農の美しい女の子が印象的。そして老境にさしかかったと思われる、かつての若い修道士による最後のナレーションがとてもいい。教会の権威主義と魔女狩り描写もポイント高し。
・その他
『タイタニック』……製作されてると聞いたときには、なんで何度も映画化されてるタイタニック沈没を今さら?と思ったし、恋愛がメインストーリーと知ってますます「?」となったのですが、観てみたら映画としてよくできてましたね。壮大なハーレクイン・ロマンスという感じで、それが世界中で大ヒットした理由なんだろうな。

未収録作品紹介
・朝鮮・韓国史(追加)
『於宇同(ビデオ題:哀恋妃)』……ビデオ化のみ。未見。李氏朝鮮の妓生・於宇同の生涯を描いた映画。
『ファン・ジニ』……未見。李氏朝鮮の妓生・黄真伊の生涯を描いた映画。
『美人図』……未見。李氏朝鮮の画家・申潤徳が男装した女性だったという設定の映画。
『炎のように 蝶のように』……未見。日本では「閔妃」と言ったほうが通りがいい李氏朝鮮末期(大韓帝国)の明成皇后に想いを寄せる戦士が主人公のラブロマンス・アクション時代劇映画。
『GABI 国境の愛』……未見。高宗がロシア公使館に移った「露館播遷」を背景としたスパイ・サスペンス映画。
『太白山脈』……未見。日本からの独立から朝鮮戦争までを舞台とした映画。

・朝鮮・韓国史(追加)テレビドラマ編
『大王の夢』……未見。三国時代を統一した新羅の武烈王が主人公。しかし邦題はダサいなあ。なんだよ、「大王の夢」って(笑)。
『根の深い木 世宗大王の誓い』……未見。李氏朝鮮の世宗によるハングル創成をめぐる陰謀ミステリー。映画界の名優ハン・ソッキュが世宗役で久しぶりに連続ドラマに出演し話題となりました。
『不滅の李舜臣』……未見。秀吉の朝鮮出兵を撃退した李氏朝鮮の名将・李舜臣の生涯を描いたテレビドラマ。
『明成皇后』……未見。明成皇后の生涯を描いたテレビドラマ。

・オリエント・聖書関係史(追加)
『プリンセス・オブ・ペルシャ エステル勇戦記』……未見。旧約聖書の「エステル記」の映画化。邦題はどう考えても下記『プリンス・オブ・ペルシャ』の便乗だよなあ。
『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』……未見。古代ペルシャを舞台としたコンピューター・ゲームの映画化とのこと。王様とか出てきますが架空の人物のようで、歴史とはあんまり関係ないようですが……。
『ゴルゴダの丘』……未見。フランス映画界の巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエ監督が戦前に作ったイエス映画。

・アフリカ史(追加)
『おじいさんと草原の小学校』……未見。2003年のケニアで子供たちに交じって小学校に通う1人の老人を描いたヒューマン映画。基本的に2003年が舞台のようですが、その老人の50年前の独立戦争時の苦しみも描かれるようです。

・ロシア史
『アレクサンドル ネヴァ大戦』……未見。1240年のアレクサンドル・ネフスキーによるネヴァ川の戦いを描いたロシア映画。レンタルDVD店に行くと、最近この手のマイナー史劇映画がちょくちょく置いてあるんですが、輸入会社にすれば多分買値がハリウッドより格段に安いんでしょう。
『オルド 黄金の国の魔術師』……未見。14世紀のキプチャク=ハン国が舞台という珍しいロシア映画。
『アンドレイ・ルブリョフ』……未見。イコン画家アンドレイ・ルブリョフを描いたアンドレイ・タルコフスキー監督の映画。
『太陽に灼かれて』……1930年代のスターリン大粛清を背景としたニキータ・ミハルコフ監督・主演の映画。スローテンポで若干かったるいんですが、まあまあ面白かったです。ミハルコフ監督は10数年後に独ソ戦を舞台とした続編『戦火のナージャ』『遥かなる勝利へ』を製作しています。
『映写技師は見ていた(ビデオ題:インナー・サークル 映写技師は見ていた)』……ビデオ化のみ。未見。スターリン専属の映写技師(実在した人物がモデル)の眼を通してスターリン時代を描いた映画。

・カザフスタン史
『ダイダロス 希望の大地』……未見。18世紀、ジュンガル部の侵攻と戦うカザフ・ハン国が舞台のカザフスタン映画。
『レッド・ウォリアー』……未見。こちらも上記『ダイダロス』とほぼ同じ時代を描いたカザフスタン映画。

・ポーランド史
『コルチャック先生』……未見。実在の教育者ヤヌシュ・コルチャックを描いた、アンジェイ・ワイダ監督によるポーランド版ホロコースト映画。

・チェコ・スロバキア史
『存在の耐えられない軽さ』……1968年のプラハの春とチェコ事件を背景として、1人の男と2人の女の恋愛を描いた恋愛映画。背景だけかと思いきや、意外とチェコ事件の描写がハード。面白かったんですが、ラストがずいぶん唐突です。

・ブルガリア史
『略奪の大地』……未見。17世紀後半、オスマン帝国支配下のブルガリアでの宗教弾圧を描いたブルガリア映画。

・ドイツ・オーストリア史
『神聖ローマ、運命の日 オスマン帝国の進撃』……DVD化前。未見。オスマン帝国のウィーン包囲を描いた映画。
『不滅の恋 ベートーベン』……ビデオ化のみ。ベートーベンが書いた「不滅の恋人への手紙」の「不滅の恋人」とは誰か?を探すミステリー仕立てでベートーベンの生涯を描いた映画。映画としてはなかなか面白いけど、この映画独自の「不滅の恋人」の正体はかなり無理があるよなあ。
『敬愛なるベートーヴェン』……未見。ベートーベンの生涯を描いた伝記映画。
『ローザ・ルクセンブルク』……ビデオ化のみ。20世紀初期のドイツの革命運動家ローザ・ルクセンブルクを描いた映画。考えさせられる力作でした。第一次世界大戦の終結によって獄中から出られたにも関わらず、直後にローザが右翼に虐殺されるラストがその後のナチズムの台頭を暗示していて、暗澹とした気分にさせられます。
『チャップリンの独裁者』……説明不要なくらい有名な映画ですね。制作時点では、過去ではなく現在を描いた映画なので、正確には歴史映画ではないかもしれませんが、今となっては「あの時代を描いた歴史映画」と言っていいんじゃないでしょうか。
『ジュリア』……リリアン・ヘルマンの回顧録の映画化。反ナチ運動に身を投じた幼なじみジュリアとの友情と、ダシール・ハメットとの愛を描いています。面白かった。ドイツ史に入れるか米国史に入れるか迷いますが……。
『シンドラーのリスト』……ホロコーストから多くのユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーを描いた映画。『ショアー』のクロード・ランズマンが「ホロコーストを神話化するもの」と批判してますが、それも一理はあるものの、9時間半もある『ショアー』を観ることを大多数の一般大衆に強いるのは無理があるし、多くの人にホロコーストの記憶を喚起したのは意味があったと思います。
『さよなら、アドルフ』……DVD化前。ドイツ敗戦によってその地位から転落したナチス高官の子供たち(いわゆる「ヒトラーの子供たち」)を主人公とした映画。#9583
『ハンナ・アーレント』……DVD化前。ドイツから米国に亡命したユダヤ系学者ハンナ・アーレントがアイヒマン裁判を傍聴して『イェルサレムのアイヒマン』を出版するまでを描いた映画。#9523
『トンネル』……未見。ベルリンの壁の地下にトンネルを掘り、東ドイツから西ドイツに亡命者を脱出させた実話の映画化。

・フランス史
『裁かるるジャンヌ』……未見。ジャンヌ・ダルク裁判と処刑を描いた戦前フランスの無声映画。
『ジャンヌ・ダーク』……未見。イングリッド・バーグマンが念願のジャンヌを演じたハリウッド映画。
『ジャンヌ・ダルク裁判』……未見。ジャンヌ裁判を描いた舞台劇を映画化したフランス映画。
『ジャンヌ 愛と自由の天使』『ジャンヌ 薔薇の十字架』……ビデオ化のみ。未見。ジャンヌの生涯を描いた二部作のフランス映画。後に完全版の『ジャンヌ・ダルクT 戦闘』『U 牢獄』もビデオ化された。
『三銃士 妖婦ミレディの陰謀』……未見。三銃士もののフランス映画。ミレディ役はフランスの国際派女優エマニュエル・ベアール。
『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』……未見。ハリウッドの最新3D映画。
『ソフィー・マルソーの三銃士』……未見。原題は「ダルタニャンの娘」。『三銃士』の後日譚を描いたフランス映画。
『炎の人ゴッホ』……未見。ゴッホの生涯を描いた伝記映画。ゴッホは各地を転々としたのでどこに入れるか迷うんですが、一応ここに。
『カミーユ・クローデル』……彫刻家ロダンの弟子である女性彫刻家カミーユ・クローデルの半生を描いた伝記映画。なかなか面白かったです。イザベル・アジャーニが熱演でした。
『さよなら子供たち』……未見。ルイ・マル監督の自伝的なフランス版ホロコースト映画。
『サバイビング・ピカソ』……ビデオ化のみ。未見。ピカソの晩年を描いた伝記映画。これまたどこに入れるか迷うんですが……。

・イギリス史
『炎のランナー』……1924年パリ五輪陸上競技で金メダルを獲得したハロルド・エイブラハムズとエリック・リデルを描いた映画。#9602
『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』……未見。1950年代、ビートルズ結成以前のジョン・レノンを描いた映画。歴史映画とは言いにくいかもしれないけど、ビートルズは20世紀を代表するミュージシャンなんで紹介しちゃいます。本当はビートルズの全盛期を描いた映画のほうがいいんだけど、そういうのってないんだよな。
『バック・ビート』……ビートルズ初期メンバーのスチュアート・サトクリフを描いた伝記映画。時代的には『ノーウェアボーイ』よりちょっと後で、ビートルズ結成後のお話。ジョン、ポール、ジョージは出てくるけど、リンゴは加入前なんで1シーンのみの登場。面白い映画でした。

・イタリア史
『バルバロッサ 帝国の野望』……未見。12世紀、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世の侵攻と戦うイタリア諸公を描いた映画。
『ブラザー・サン シスター・ムーン』……未見。アッシジのフランチェスコの若き日を描いた青春映画。
『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』……ムッソリーニの最初の妻でその子供を産みながら、後にその存在を抹殺されたイーダ・ダルセルを描いた映画。#9229
『ライフ・イズ・ビューティフル』……未見。アカデミー賞も受賞したイタリア版ホロコースト映画。
『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』……DVD化前。未見。1969年にミラノのフォンターナ広場で起きた謎の爆破事件を描いた映画。

・スペイン・ポルトガル史
『炎のアンダルシア』……未見。12世紀のムワッヒド朝支配下のアンダルシアで、焚書に抵抗する哲学者イブン・ルシュドを描いたエジプト映画。
『サルバドールの朝』……未見。フランコ政権末期の1970年代に25歳で処刑されたアナーキストのサルバドール・ブッチ・アンティックの生涯を描いた映画。

・ギリシャ史
『旅芸人の記録』……第二次世界大戦から戦後の内戦までのギリシャを叙事詩的に描いた映画。時間が前後に行ったり来たりする上に、表現が難解であることは否定できません(個人的には好きだけど)。アンゲロプロスの映画はラストに「終わり」とか出ず唐突にバッサリ終わるので、最初見たときは映写技師のミスかと思ってびっくりしたなぁ。
『Z』……1963年に軍事政権下のギリシャで起きた、自由主義者ランブスキ暗殺事件をモデルとした映画。現代ギリシャ史ってこんなに血生臭かったんですね。全然知らなかったから、古代ギリシャやギリシャ神話のイメージしかないもんなぁ。

・その他
『南極のスコット』……未見。アムンセンと南極点初到達を争ったが敗れ、帰途全滅したスコット隊の悲劇を描いた映画。極地探検ものなんでどこに入れるか困るんですが、一応ここに。



#9628 
徹夜城(歴史映像名画座の区分に悩んだ管理人) 2014/05/31 23:53
歴史映像名画座更新

 もう午前中にアップしたんですが、「歴史映像名画座」を更新しました。とりあえずヨーロッパ部分のリニューアルを済ませ、その間に見たものをあれこれ追加してます。
今回の更新でそれまでひとまとめにしていた「東欧」はポーランドとウクライナに分離しました。「ファーヤー・アンド・ソード」みたいに線引きが難しいものもあるんですけど…今後東欧諸国ネタが増える可能性があるので、一応現在の各国別にしようかな、と。それでいてウクライナのオデッサが舞台の「戦艦ポチョムキン」がロシアのままなのはどうなんだ、との意見も出そうな…
 このほかにもアイルランドもイギリスから分離独立。じゃあいずれスコットランドが独立したら「ブレイブハート」も分離するのか、なんて話になるかもしれませんが…それでいてドイツとオーストリア、スペインとポルトガルが今のところ一緒の扱いになってるなど、僕の「気分」で決めちゃってるところも多いです。
 前から中南米ものかスペインものか迷っていた「1492コロンブス」も「その他」に移動させてます。

 ところで今回の更新でポーランド史部門に「ワレサ 連帯の男」が入れてあります。ついついここには書き込みませんでしたが、先週見て来たんです。岩波ホール、この前ここで見たのはなんだったかな、と上映リストを眺めてみたら川本喜八郎の「死者の書」(2006)でした。う〜む、気が付いたらずいぶん来てなかったんですな。しばらく疎遠になってるうちに上映リストを見ると歴史ネタがいくつかあって、見逃してしまったのが悔しい。
 「ワレサ」の作品自体の感想は「名画座」に短く書いたもので代わりとします。付け加えるなら、映画はベルリンの壁も崩壊してアメリカ議会でワレサが「自由」を称える演説をする、いわば彼にとっての絶頂期で終わりますが、監督としてもあえて「その後」は描かないことにした(描きたくなかった)のだそうです。まぁ関係者ほとんど生きてますし、個人的にいろいろと難しい人間関係があるようですし。
 ただ、この映画、「ワレサってこういう人じゃないのかな」と僕がぼんやりと思っていたイメージそのまんまで、そこにかえって驚きもありました。いや、要するに「フツーのオッサン」なんですよね。映画では6人も子供がいて部屋が狭苦しい場面が目立つのですが、なんとあのあとさらに2人も増えたんだそうで。

>南朝ネタ
 下の話題から少し間が空きましたが、ウヨッキーな業界の方々が今なお南朝正統論に固執しがちなのは、つまるところ「楠木正成」の存在が大きい気がしますね。正成を大英雄・忠臣とする以上、南朝が正統じゃないと困る、という事情で。実のところ水戸史観もそういう順番だったんじゃないかと僕は思ってますが。

 さて、先日ここでも話題にのぼりましたが、吉川弘文館の歴史文化ライブラリーから亀田俊和著「南朝の真実・忠臣という幻想」という本が出ました。さっそく買って途中まで読んでるところです。
 タイトルから内容は察しがつきますが、やはり「南朝=忠臣ってイメージは本当なのか?」と検証する本になってます。もともと著者は足利方好みを公言しておられるそうで、室町幕府側が内紛ばっかりやってるってイメージがあるけど、南朝だって良く見りゃ分派もあるし権力闘争も派閥抗争もあるし、そう単純じゃないんだよ、という例を次々と挙げておられるんですね。南北朝マニアな人にはそう新鮮な話題ではないのですが、この手のテーマで一冊書かれること自体が珍しいですし、随所に最新の研究動向も出てくるので勉強になります。
 世代的に近いからか、大河「太平記」放送時のことに触れてる箇所にニヤニヤしてしまいました。当時便乗して出た多くの南北朝本のなかに、尊氏と廉子が不倫関係をもってしまうというのがあってビックリした、って書いてるんですが、これはスポーツ紙に連載された「女太平記」のことですね。尊氏が主役で南北朝女性キャラとやりまくるという、トンデモない内容で(爆)。
 南北朝本といえば、呉座勇一著「戦争の日本中世史・『下剋上』は本当にあったのか」(新潮選書)も面白い。これまで「常識」とされてきたことをゴロンゴロンとひっくり返す面白さがある本で(ちと勇み足も感じなくはないけど)、ここでも大河「太平記」にチラッと触れてます。北畠顕家に触れるくだりで、「後藤久美子が演じた」とわざわざ書くところが南北朝マニア心をくすぐります(笑)。



#9627 
バラージ 2014/05/18 23:55
トンデモ南北朝

 義経=ジンギス・カン説の本も未だに時々出てますもんねえ。
 どうもよくわからんのですが、現代のウヨクの方々にとって、今の天皇が北朝系でも一向に問題ないような気もするんですが……。一応流れ的には、織豊政権下での楠木氏赦免→大日本史→尊攘過激派→南北朝正潤論って感じなんですかねえ。南北朝とは関係ありませんが、二・二六事件の精神構造にもこの問題と通じるところがあるように思います。
 森茂暁『南朝全史』を読むと、大覚寺統→南朝でも非主流派になっちゃった後二条天皇の子孫や長慶天皇の子孫なんかは北朝と一体化して親幕的になっちゃってるんですけどねえ。特に対北朝・室町幕府強硬派と言われる長慶天皇の子供たちが親幕的というのは意外でした。やっぱり親父を反面教師にしたんだろうか?

>「ラーベの日記」の映画もどっかで自主上映会をやってるとか
 はい。#9583で紹介しておりますが、『ジョン・ラーベ 南京のシンドラー』というやつです。



#9626 
徹夜城(ただいまロシアとか東欧関係映画を見まくってる管理人) 2014/05/18 00:30
やはり「てこ歴」で書くべきかな

 昨年出た本で、「おお、これはヘンテコ歴史本コーナーの候補だなぁ」と思いつつもまだ買ってはいないものに落合完爾著「南北朝は日本の機密」というのがあります。南北朝とあったから目についたわけですけど…サブタイトルに「現皇室は南朝である」とありまして、おおよその内容は察せられます。パラパラと立ち読みすると、やっぱりあの幕末の伏見宮さんが「自分は南朝の子孫」とトンデモ発言していた話が元ネタの一つとなってました。
 内容的にちとマニアックかなぁ、と思ってスルーしていたのですけど、youtubeでいろいろ眺めているうちにこの本の内容を絶賛する動画を見つけちゃって。よくは知らん人ですが自称愛国者でおもいっきりウヨッキーな話題をネット上番組みたいにしてアップし続けている人のようで、驚いたことに有料動画も流しているようです。
 その動画(16分程度)をいろいろと興味深く見てしまいまして…例の本の内容を、少なくともこの人がどこが大事だと判断したのかはわかると思いましてね。で、つまるところはこういう人たちにとってはやっぱり現皇室が北朝の子孫であることがやっぱり究極的にはいろいろと不都合なんだと分かってきます。そこに「実は南朝だよ〜〜ん」と断言してくれるとすっごく有難いわけなんですな。

 その動画、ある意味例の本の内容をうまくまとめてくれてまして、それによると落合氏の主張と言うのは、「北朝の崇光天皇は実は護良親王の子である」というものなんですね。しかもそれは両朝分裂を本音は避けたいと思った南朝・北朝両統のひそかな合意のもとに行われていた!というものだそうで。
 どっからそんなひねくれたアイデアを思いついたのか、察しはつきます。「南北朝列伝」にも書いてますが、いろいろとややこしい南北朝期の皇室系図、現在の皇統のストレートな先祖はこの崇光その人だからなんですよね。しかしだとすると南朝が京都を占領した際に崇光も含めて北朝皇族を拉致した理由が不明ですし、北朝側でも崇光は本来「一代限り」と内定していたこと、崇光の弟の後光厳の系統が皇位を継いで、崇光系と激しく争ったことの説明もつきません。さらにいえばなんで「後南朝」の運動があったのか、ということさえも。素直に北朝でOKってことにすれば楽なのに、やっぱりこういうところは戦前史観を引きずってるんだなぁ、と。
 さらに護良親王の皇子が崇光、というのも…護良は南朝側でも問題児で後醍醐に警戒されていたとしか思えませんし、その子「赤松宮」も南朝皇居の焼き打ちをしたりしてます。さらに落合氏は「護良親王生存説」をとっており(この説自体は昔からある)、どういうわけか足利直義も護良の死亡偽装に参加していたことになってます。もうグチャグチャですわ(汗)。

 さらに言えば、この落合氏、例の「明治天皇は大室寅之祐がすりかわったもの」という、その筋ではなぜか大人気のトンデモ説にもハマってまして、この大室も長州藩がひそかに隠していた南朝子孫ということにしちゃってます。幕末と南北朝と二度も「すりかえ」があったと主張するところがこの人のオリジナリティらしいんですけど、話はさらに拡大して表向きの天皇に対して「裏天皇」がいるとか、護良の子孫が経済界を裏からあやつっているとか、そういう話にまで発展しちゃってるみたい。
 で、その動画でしゃべってる人も言ってましたが、現皇室は南朝子孫でないと困る、それを否定する言説は外国勢力による日本を滅ぼす陰謀だ!ってことになっちゃうようです。このテの人たちには良く見られる陰謀論ですけど、ホントに地球上には「日本とそれ以外」しかないみたいなんですなぁ。

 しかし、他の分野でも見られることですが、トンデモ主張というのは圧倒的多数に無視あるいは否定されながらも、一部に熱狂的な信者を産んでしまうもの。アマゾンのレビュー見ていても頭が痛くなってきます(例の動画の主も書いてた)。どうしてそんなヨタ話があっさり信じられるんだ?と。しかも信じる度合いが高めの人が目立つような。
 「落合史観」とやらの主張って、下手すると伏見宮系を持ち上げて、そっちこそ正統と言い出しかねない、結構アブない傾斜も感じるんですね。どうしても連想しちゃうのが、例の「明治天皇の玄孫」竹田氏が自著のなかで「南朝の子孫が呪ったから皇室になかなか男の子が生まれなかったが、最近彼らに聞いたところでは呪うのをやめたそうだ」という趣旨の話を平然と書いていたことです。幕末のお方と言い、どうもこの系統にはヘンなのが出てきやすいのか?とまで思っちゃいます。


>バラージさん
 そういや、「ラーベの日記」の映画もどっかで自主上映会をやってるとか、東京新聞で出てましたね。



#9625 
バラージ 2014/05/16 16:27
『南京!南京!』を観ました

 ようやく中国映画『南京!南京!』を観ました。某有名動画サイトに日本語字幕付きでアップされてるんで、誰でも観ることが可能です。日本語字幕と中国語字幕が同時に出てくるもので、どうも字幕をつけたのは素人さんなのではないかという気が。若干の脱字がありますが、気になるほどのものではありません。

 で、内容ですが、いや驚きました。さすがにここまで質の高い映画だとは思っていませんでした。素晴らしかった。史実考証もおおむね正確で、非常に感心しました。日本で「史実派」と呼ばれる良心的研究者の方々の著作に出てくるような事実が丁寧に描かれ、かつ非常に上手く物語に取り込まれていました。中国政府の見解に沿ったシーンというのは、僕には特に見受けられませんでしたね。もちろん劇映画ですので、フィクション描写は挿入されているのですが(冒頭のリウ・イエの戦闘シーンなんかはちょっとかっこよすぎる)、それを言い出したら歴史映像名画座に掲載されてる映像作品も全滅です。
 また、この手の社会派映画は広い意味での娯楽性に欠けることがたまにあるのですが、そういう娯楽性(=面白さ)も一級品でした。そういう部分での出来も、『南京1937』はもちろん、『チルドレン・オブ・ホァンシー』などよりも上と言っていいでしょう。確かに目をそむけたくなるようなシーンもありますが、それを言い出せばそういうシーンは『それでも夜は明ける』にも『セデック・バレ』にも『さらば、わが愛 覇王別姫』にもありましたし、この作品が特別というわけではありません。登場する実在人物は、ジョン・ラーベやミニー・ヴォートリンなど南京安全区国際委員会の面々に限られ、彼らと架空の人物が自然に交わっていて不自然に感じさせないのもすごい。映画全体として史実とドラマの融合が非常に高いレベルで成功しています。陸川(ルー・チュアン)監督の力量は相当なものです。

 出演者では、トップクレジットがリウ・イエ(劉Y)ですが、彼の登場シーンは前半だけで実質的に主役ではありません。実質的主人公はファン・ウェイ(范偉)、カオ・ユエンユエン(高圓圓)、中泉英雄といったあたりでしょうか。良心的日本兵を演じた中泉は『実録・連合赤軍』や『11・25自決の日』にも出演してるとのこと。映画ではその「良心的日本兵の限界」も描かれているのも感心しました。それとは対象的な暴力的日本兵を演じる木幡竜はその後、香港映画『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』に出演しており、日本人慰安婦役の宮本裕子、新聞記者役の梶尾潤一なども国際的に活躍している俳優とのことで好演。木幡演じる暴力的(というより一般的)日本兵も、日本兵同士の関係では心優しい上司であったり、また自らの罪の意識をわずかに垣間見せる瞬間など、一面的ではない深みのあるキャラクターとして描かれているのが印象的。他の日本兵たちも、普段の日本兵同士ではごく普通の一般的な人たちが、中国人に対するときは暴虐的になるという、歴史研究で指摘されているとおりの描写がなされていることも驚きです。主要キャスト7、8名の他に、エキストラを入れると50人近い日本人が参加しているとのこと。助監督にも北京電影学院を卒業した日本人が参加しているそうです。

 ともあれ、日本人必見の映画になっている、と言いきっていいと思います。ここまで史実性・娯楽性がともに高く、それが絶妙なバランスで融合されている歴史映画はそう多くはありません。



#9624 
バラージ 2014/05/14 14:44
義経は……

>つねさん
 「武蔵坊弁慶」→「義経」は、それ以前に大河で「源義経」をやってるので、どっちかっていうと義経の2度目の大河化と言ったほうがいいような。



#9623 
つね 2014/05/14 00:22
新大型時代劇3部作

ここで話題になったのとタイミングが重なりましたね。偶然らしい偶然です。
これで新大型時代劇の題材が大河ドラマでも使われたことになります。
「宮本武蔵」→「武蔵」
「真田太平記」→「真田丸」
「武蔵坊弁慶」→「義経」
こちらは偶然というより、よく使われる題材が選ばれていたということでしょうか。ただここまでの2作は予算の割には新大型時代劇のほうができがよかったような気がするので(もちろん好みの問題ですが)、三谷幸喜には期待します。あまり時代考証にこだわると「幸村」と言った時点でアウトになってしまうのですが。

「徳川家康」は、家康が「戦のない世を作る」ことを願いにしていて、幸村は「そんな世の中は作れないことを思い知らせる」と言っていたような気がして印象深いです。他の作品だったかもしれません。



#9622 
バラージ 2014/05/13 22:54
幸村大河

 いやぁ、来ましたね〜、真田幸村。いつかは来ると言われ続けてきましたが、ついに来ましたか。僕が1番最初に好きになった歴史上の人物です。
 主演俳優候補については、役所広司や佐藤浩市の名前が挙がってましたが、いくらなんでも年齢的にそりゃないだろと思ってたら、堺雅人という『半沢』で躍り出たこれまたどストレートな本命候補の名前が。まあ、こっちのほうが年齢的には妥当か。タイトルが『真田丸』ってことは大坂の陣に力点を置いたドラマになるんでしょうかねえ。ただ、個人的に幸村大河は念願なんですが、前から書いてるとおり僕は三谷幸喜が苦手で……。1年付き合うのはちょっとしんどいなぁという気持ちも。

 幸村の登場する映像作品で僕が初めて観たのは日本テレビの『猿飛佐助』でした。太川陽介が佐助で、幸村役は川崎麻世。さらに霧隠才蔵が倉田保昭、服部半蔵が小池朝雄、徳川家康が西村晃など、今思えば結構な豪華メンバーでした。太川に川崎というアイドル時代劇ですが、子供心に非常に面白く、最終回は感動したのを覚えています。ま、あくまで主人公は猿飛佐助で、幸村は脇役ですが。
 大河の幸村で個人的に印象深いのは『徳川家康』。若林豪演じる真田幸村は主人公の敵側ながら、大坂夏の陣での活躍がかっこよく描かれ、胸躍るものがありました。名高い大型時代劇の『真田太平記』はそのすぐ後ですが、せっかくの真田ものでありながら幸村は準主人公だし、最も期待した大坂夏の陣も(予算的に仕方ないとはいえ)しょぼい出来で、個人的にはがっかりしたことを覚えています。草刈正雄はかっこよかったですけどね。そもそも有名で人気があるのはあくまで真田幸村であって、敢えてマイナーな昌幸や信之に光を当てたのが『真田太平記』の特色であり功績でもあるのですが、それはあくまで変化球的作品。幸村を主人公とした作品が本来の直球ものなんですよね。ところが大河には今までその直球作品がなかった。そういう意味では幸村大河に期待しています。大坂夏の陣が楽しみ。でも苦手な三谷ってのがなぁ……。

>それでも夜は明ける
 言われてみれば『遠い夜明け』に似てますね。でもかっこいい邦題だし別にいいんじゃないでしょうか。主人公はどんな絶望的な状況でも希望を捨てない。そういう内容的にも大筋を外れてませんし。

>古代ローマ史
 そういえば最近、連続テレビドラマの『スパルタカス』も作られましたね。昔の映画と関係ある作品なのかわかりませんが。



#9621 
黒駒 2014/05/12 22:09
真田大河

なんか、ツイッターが大変なことになってます。武田・戦国史研究者でもさっそく本の依頼が来たとか、つぶやいている方もおりますね。珍しく二年連続で、スポーツ紙のスクープが当たった結果となりましたけど、真田は企画が浮かんでは消えを繰り返していたという話もあります。

真田で50回やるなら、昌幸、さかのぼって幸綱(幸隆)時代までと思うのですが、最近の大河ドラマは、かなり長いこと子役で通していた「政宗」の頃とは違って序盤から本役を出したがるので、「幸村」がなかなか出てこない構成にするのは難しいかもなと思います。

三英傑まわりのお馴染みのお話で、視聴者は楽かもしれないのですが、勝頼の時代から武田滅亡後の事情はけっこう複雑なので、視聴者がちゃんとついてこられる展開にできるかどうかは気になります。三谷幸喜は新選組でも多摩編がずいぶん長かったので、前半ゆっくりな進行になるのかなとは思うのですが。



#9620 
徹夜城(書き込んだ直後に慌てて書き込む管理人) 2014/05/12 13:06
予想通りか。

さっき長文の書き込みをして、その直後に知って慌てて書き込もうとしたら、もう、ひでさんに先を越されてました(笑)。
 うーむ。拍子抜けするほど予想通りの結果。去年は延々と引っ張って年末発表したのはなんだったんでしょうねぇ。
 真田と言うとどうしても「真田太平記」と比較されやすいでしょうが、こちらは完全に幸村に焦点を当てるつもりみたいですね。どういう感じになるのか、十勇士もバリバリ出て来るようなノリになるのか、先の話とはいえ、やはり注目しちゃいますね。



#9619 
ひで 2014/05/12 13:01
ほんとうに真田になった

三谷幸喜の脚本で戦国ものということはちょっと前の報道でありましたが、題材は真田幸村になるとのこと。はたして昔の真田太平記を越える作品ができるのか、色々と楽しみではあります。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9618 
徹夜城(最近古いビデオテープのデジタル化を再開した管理人) 2014/05/12 12:58
20年以上前のドラマ

 HDDレコーダーを買い変えたのを機に、お古になったマシンを利用してためこんでるビデオテープのデジタル化作業なんぞ再開してるんですが、その中で「新十津川物語」(1991〜1992放送)を今ごろになって通して全編を見ました。当時途中までは見ていたんですが、録画もしてることだしあとで見よう、などと言っていたら20年以上たっちゃったわけですね。
 これ、原作を母親がよく読んでたんで、僕も一部はかじって読んでます。明治時代に奈良県十津川村が山津波に見舞われ、村民の一部が北海道へ移住し「新十津川村」を建設。原生林を開拓して農地に変え…という辺りから始まって、代々の女性たちを軸に現代にまで描く「家族大河ドラマ」となってます。今見るとさすがにNHK、地味な素材ながらカネをかけてじっくり映像化してるなぁ、と感心しました。
 20年以上ぶりに見ると、出演者たちの若いこと、若いこと(そりゃそうだ)。そして主役となる家族を演じるキャストの面白さ。歴史ドラマでは凄い顔ぶれが「家族」になってても特に不自然に感じないものですが、この作品はあくまでフツーの一般家庭だけに豪華な面々が家族になってると、家系図を作ったらなんだか楽しくなってしまいます。

 「明治編」では初代主人公の若いころが斉藤由貴。その兄に江口洋介。
 「大正編」では初代主人公は倍賞美津子に交代して、その娘の二代目主人公に若村麻由美。彼女が夫も子も捨てて恋愛に走っちゃう相手が阿部寛(「テルマエ2」を見た直後だったもんで、ついついニヤニヤ。このころは完全に正統二枚目だったんだよな)。また若村麻由美の兄弟が柳沢慎吾と香川照之というのも凄い話で。ただし香川さんの役は養子設定。今回、今やあちこち出ずっぱりの香川さんがこのドラマに出ていたことを初めて知ってちょっと驚きました。
 「昭和編」では三代目主人公に富田靖子。大正編の柳沢慎吾は平田満に交代、香川照之の役は出てこないけどその娘に小林綾子。
 そして全体の語り手役として、初代主人公の孫の孫の90年代現代っ子を斉藤由貴が隔世遺伝(笑)で演じてます。

 以前からこれって「歴史映像名画座」入りできるよなぁ、とは思ってまして、ようやく全編を見返して改めてそう思いました。実在人物ではなく完全なフィクションの一家の物語ですけど、北海道開拓、日露戦争、大正デモクラシー(香川照之の役は左翼運動家)、関東大震災、太平洋戦争(原作では特攻ばなしがあったけどドラマではカット)、戦後の闇市時代、洞爺丸事故…と歴史的事件が多く組み込まれていて、確かに大河歴史ドラマとなってます。
 調べてみたらこれまだソフト化はしてないんですねぇ。それもあって今回デジタル化作業の対象にした次第です。


では、以下にためこんでるレスを。

>つねさん
 モーリス=ジャールのスピーチ映像、見ました。当然事前に準備していたジョークなんでしょうけど、こういうことを言える機会のある人はめったにいません。
 「パッション」はいまだに見てないんです…なんか「痛そう」で(笑)。メル=ギブソンは「アポカリプト」を見てもいささか悪趣味に感じるんですよねぇ。

>ひでさん、黒駒さん
 再来年大河、どうやら三谷脚本というのは本当なのかな?という情報ですよね。戦国もの、というのも順番からいうとそうでしょう。
 で、以前から三谷さんはやってみたいものの一つに「真田」を挙げてるんですよね。だから下馬評ではそれが最有力とささやかれてるんですが、さて。

>五葉さん
 もう解決されてるかもしれませんが、「歴史映像名画座」のインド史・聖書関係史は古いキャッシュを読みこまれているのではないかと。再読み込みをすると治ると思いますよ。
 「トロイ」は途中まではいいんですけどねぇ。パリスがヘタレなのは原作どおりなんですけど、肝心のブラピ演じるアキレスがあれじゃいけません。あの映画については故ピーター=オトゥールも出たのを後悔してるとか言ってた記憶が。
 「十戒」は今見てもビックリしますよね。かえってCGでは出せない「味」というのもあると、あれを見ると思います。日本のミニチュア特撮SF映画にも言えることですが…まぁ今からあれをやる、というのも難しいと思いますけどね。
 「ベン・ハー」の戦車競走シーンは、僕も金曜ロードショー枠で初めて見た時驚嘆したものです。たださらに驚嘆したのは1925年版を見たときで、すでにこの時点でここまでやっちゃってるじゃん!と驚いたんです。それがあったからこその56年版の名シーンなんですよね。なお、最近TVムービーでまた「ベン・ハー」を作ったそうで日本でもDVDがリリースされてるんですが、ネット上の評で見る限りかなりお粗末な出来のようです。

>KMnO4さん
「佐村河内守」は同様のことを考えた人が多かったみたいですね。僕も「史点」四月バカでやりましたが、「南朝」ネタも含めて同様のアイデアを持ってる人は多かったようでちとやりにくかったです。

>黒駒さん
で、歴史屋にありがちなこと、という話題ですでに黒駒さんにずばり書かれてしまいました。そうなんですね。このサイト内を見ればお分かりのように、僕もあれこれ首を突っ込んでますけど、共通するのがどんなものにも「歴史的考察」をせずにはいられないんです。特にPCエンジン&FXのサイトに顕著でしょうか。ゲームレビューのサイトは数多くありますが、ハードでもソフトでも「歴史」に重点を置いてるのはあんまりないんじゃないかと自負してます。ルパンコーナーでも訳本リストを作っちゃったりするのもそういうサガですね。

>バラージさん
 「それでも夜は明ける」は見ようとは思いつつ、まだ見てません。それにしてもかの「遠い夜明け」を連想させる邦題だな、と思っていたら、原題は「奴隷として12年」といったタイトルなんですね。そのまんまじゃ客が来ないとは予想できますけど、あまりにかけ離れてる気もしなくはないですね。
 ありゃ、「ポンペイ」なんて今ごろまたやるんですね。それは知らなかった。「ノア」にも驚きましたけど…「ポンペイ最後の日」も素材が映画向きのせいか、何度も何度も作られてますね。

>阿祥さん
 鎖国体制に入る前の朱印船時代にも、日本人商人たちはかなりのやり手だったようで、ベトナム方面の絹貿易に関してオランダ商人だったかスペイン商人だったかが、「どこへ行っても日本商人が先回りしてる」と嘆いている資料を見たことがあります。24時間戦えますかのジャパニーズビジネスマンはこのころからいたんだなぁ、と当時流行っていたCMにからめて面白がっていたものです。



#9617 
阿祥 2014/05/11 17:43
レスありがとうございます

徹夜城さん、レスありがとうございます。

おっしゃるように、近代以降と前近代とも違うし、今の状態は太平洋における大国はアメリカで、日本は番頭さんぐらいの感じなのも違うし、確かに同じようには考えられないですよね。日中二大国という見方も、中国側は問題にしていないというのもそうだろうというのもおそらくそうであろうと思います。日本を中心として国際関係を作ったのなんて、第2次大戦時のごく短期間でしかありませんからね。

こんな風に考えたのは、オランダやスペイン側の資料をいろいろ見ていて、彼らが東南アジアやアメリカで行ってきた政治的手法が、日本や中国を相手にはまったく通じず挫折しているのを見て、非常な屈辱を味わったに違いないと感じたからです。
オランダ商館の記録なぞを読んでいると、バタビアや台湾で自由にやっている商売を、平戸や長崎で幕府の役人の顔色をうかがいながら屈辱的な条件で行っているのは、さぞかし悔しいことだったと思います。また、出先機関である日本や台湾の商館長と、本部であるバタビアの総督とでは対応の方針に温度差があり、それが様々な軋轢の理由になったのだろうと想像したりしています。
それでこんな感想を述べてみました。

倭寇関係の更新も期待しています。よろしくお願いします。



#9616 
バラージ 2014/05/11 00:04
それでも夜は明ける

 アカデミー最優秀作品賞を獲った『それでも夜は明ける』を観ました。いやあ、力作でした。アメリカ合衆国の奴隷制度については他にもいくつか映画やドラマで描かれてますが、この作品は主人公が睡眠薬で眠らされ、拉致・誘拐されて奴隷として売り飛ばされるところから始まります。今で言う「誘拐ビジネス」というやつですね。これが怖い。実話だけに余計に怖い。ある意味、誰の身にも起こりうることですから。主人公は幸運にも最終的に家族のもとに戻ることができるんですがこれはまさに奇跡的なことで、多くの誘拐された黒人は奴隷のまま生涯を終えたでしょうし、さらに多数にわたるそれ以外の黒人奴隷も悲惨な生涯を送ったことが想像できます(ちゃんとそれを表現しているシーンもありました)。同様に悲惨な境遇の先住民(インディアン)もちらっと登場したり、細かい部分での気配りも効いてました。しかしこういう映画を見ると、どうして日本ではこういう映画が……とどうしても感じてしまいます。

>東南アジア映画、東南アジア史の映画
 東南アジア各国の歴史映画は、各国の映画界の状況にもよるので、どうしても偏りができちゃいますね(中近東やアフリカ・中南米なんかも)。確か東南アジアで最も映画産業が盛んなのはタイ、次いでフィリピンとインドネシアだと何かで読んだ気がするんですが(もっとも数年前の情報なので、今はまた違うのかもしれませんが)、それ以外の国々となるとお金のかかる史劇映画は探すのが難しそう。
 ベトナム史に関しては、やっぱりベトナム戦争というのは20世紀の歴史的にも大きなトピックだと思うんですよね。だから1本ぐらいは入れておくべきだと思うんです。ただ、僕はベトナム戦争映画はそこそこ観てるんですが、小状況を描いた戦争映画が多くて、歴史映画に類するものが少ないのが(歴史映画を選ぶという基準では)困りもの。ついでに言うと、中国近代史における日中戦争も同様で、孫文と溥儀&満州国ばっかりになっちゃってるのが……。
 李朝ベトナムの太祖が主人公のテレビドラマは、探してみたら『李公蘊(原題)』というドラマのようですね。探してみたら他にも以下のようなベトナム史映像作品がありましたので、他の地域史作品とまとめて紹介を。今回は前半だけ観た『The Partner 愛しき百年の友へ』以外は全て未見です。

・ベトナム史
『西山と愛国(光中皇帝)』……ソフト化なし。18世紀の西山党の乱の阮文恵を主人公とした映画。日本で上映されたかどうかは不明。
『タンロンの歌姫』……ソフト化なし。18世紀末、黎朝末期の首都タンロン(現在のハノイ)の音楽学校に入学した少女を主人公とした映画。アジアフォーカス福岡国際映画祭2013で上映されたとのこと。
『The Partner 愛しき百年の友へ』……ソフト化なし。去年放送された日越合作スペシャルドラマ。20世紀初頭のファン・ボイ・チャウと浅羽佐喜太郎の友情を描く。
『インドシナ』……1930年代のフランス領インドシナを舞台として、ベトナムの独立運動などを絡めたフランスのメロドラマ映画。主演はカトリーヌ・ドヌーブ。

・タイ史
『マッハ!弐』『マッハ!参』……最初の『マッハ!』(これは観た)が現代劇だったんで、てっきり続編もそうだと思ってたんですが、アユタヤ王国がタイを征服していく時代が舞台とのこと。どうやらトニー・ジャーが天狗になってスタッフと対立した上、監督も兼ねる俺様映画になっちゃったらしい。まあ、アクション映画なんで史実云々はあれなんですが、それ以前に映画としての評判があんまりよろしくありません。

古代ローマ史
『ポンペイ最後の日』……今度、『ポンペイ』が公開されると聞いて、「今時『ポンペイ』だの『ノア』だのなんて日本でどれだけ需要があるんだよ?」と思いつつ、「そういやポンペイの映画って前もあったよなあ」と思い出した映画。

>ヌーベルバーグ
 ヌーベルバーグ映画は難解そうでなんとなく観てなかったんですが、どっちかっていうとゴダールよりはトリュフォーのほうが見やすそうだよなあと思っておりました。しかし一昨年、なぜか地元の映画館でゴダールの『勝手にしやがれ』がリバイバル上映され、なんか直観的に観に行ったら、全然難解なんかじゃなかった。いやあ、面白かったです。思い込みはいけませんね。

>その他
 『曹操暗殺 三国志外伝』は来なさそうなんで、DVD待ちになりそうです。
 前回どこで感想書いたかわからんかった『王になった男』は#9351です。



#9615 
黒駒 2014/05/10 20:17
歴史屋の性

最近は「歴史クラスタ」って言うんでしたっけ。歴史好き、歴史ファンの性といえば、何か対象を理解するときに、過去の経緯とか文脈というものを常に意識するという傾向はあるのではないでしょうか。管理人様がそうですし、南北朝や海上史、日々のニュースといった歴史と関係の深い事柄だけではなく、映画やアルセーヌ・ルパン、アイザック・アシモフといった文学方面、はたまたPCエンジンに至るまで、何を見るにしても文脈において理解しようとする態度がそれではないでしょうか。

私はまだ、そこまでには至ってない感じです。



#9614 
KMnO4 2014/05/09 07:53
歴史屋さんって・・・

「笑点」で、お城好き歴史好きで知られる春風亭昇太師匠が面白いことを言っていました。

先日騒ぎになった作曲家の名前は読みづらいが、われわれ歴史ファンにとってはさらに難しい。つい「さむらかわちのかみ」と読んでしまうから。

考えてみれば世の中には「越後 守」さんとか、「但馬 守」さんとかはごく普通にいそうな気がします。こういう人に歴史ファンが会ったら、心の中でニヤリとするものでしょうか。

文系彼女(中世日本文学史が専門)の影響で歴史の勉強をやり直しているところですが、「歴史屋にありがちなこと」といった脱線ネタも多く知りたいところです。



#9613 
五葉 2014/05/07 22:13
歴史映像名画座、お疲れ様です

いつものことながら圧倒的な分量に圧倒されます。リニューアル、お疲れ様です。時間がなくてなかなか映画を観る余裕がないので、紹介なさっているものは大半が未見ですが、観てきたor知っている範囲で、私も感想を述べさせていただきます。(なお、若干ネタバレありです)





『ムーラン』ディズニー的なノリは仕方ないとは思いますが、「木蘭辞」の素朴な雰囲気や感動は取り込む努力をしているかなと思います。ラストが、ディズニーおなじみの好きな人と結婚!とかでなく、両親の元に帰るという終わり方で本当に良かった。
『キリング・フィールド』未見ですが、高校の世界史の先生がすごく薦めていたのが印象に残っています。あれから20年(笑)、いまだ観られず。
『トロイ』当時の彼氏と映画館に観に行った思い出があります。オーランド・ブルーム演じるパリスのヘタレっぷりが印象に残っています。当時その背景となる話を何も知らなかったので、「トロイの木馬ってこういう話だったのか」と素直に入ってきた記憶があります。さすがに木馬だけは唐突な気がしましたが。後に「イリアス」で、パリスが本当にヘタレだったことを知りました(笑)
『英雄』(中国前近代史)歴史の勉強には全然ならないけど、色彩的な美しさが際立っているシーンや、矢が雨のように降るシーンを観た時だけは、映画館に観に行って正解だったと思いました。
『十戒』(1957年版)子どもの時、金曜ロードショーで放送されていたのを観ました。おなじみの紅海真っ二つシーンや、光線が石板に十戒を刻むシーンは子ども心に強烈な印象を残しました。1950年代の技術で今のCGに負けないインパクトが出せるのは、「凄い」の一言。
『ベン・ハー』かの『テルマエ・ロマエ』(原作)でも、これに倣ったシーンが出てきたというくらい、あの戦車競走のシーンは凄い迫力のようですね。未見ですが、気になってたまりません!
『エジプト人』原作は読んだことあるんですが未見です。田中芳樹が「(話は面白いけど)登場人物の名前の響きが悪い」という意味のことを、『アルスラーン戦記』のあとがきで言ってたと思います。



ところで「歴史映像名画座」には未収録ですが、個人的には『アボンリーへの道』が気になっています。(『花子とアン』つながりで最近、モンゴメリ作品に注目しているので)モンゴメリの『ストーリー・ガール』を主な原作に、他の作品の要素も取り入れているカナダのドラマです。20世紀初頭のカナダの雰囲気はしっかり出ているのではと、密かに期待しています。ただ、分量が中国や韓国の時代劇にひけを取らないらしく、その点で観るのを躊躇しています…。



なおインド史、オリエント史のリニューアルページが私のPCからは見ることができませんでした。他の方からはどうか判りませんが、一応お知らせいたします。



#9612 
黒駒 2014/05/07 22:00
真田大河

「真田太平記」は、レンタル店で良く見かけるのですが、まだ見たことがありません。そのうち見るつもりなんですけど。私は甲斐武田を中心に歴史を学んでいますが、長野県地方史の文献は手薄なんですよね。最近、岩田書院から長野県郷土誌の論文がまとまって刊行されたり、昌幸が飛躍するきっかけとなった武田滅亡後の甲斐・信濃をめぐる「天正壬午の乱」の様相が解き明かされたりと、あとは真田のような「国衆」に関する研究もさかんですし、近年、にわかに真田は注目されている感じがします。

そのあたりの研究成果を汲み取って真田を大河でやるには、良い時期だと思うのですけどね。



#9611 
ひで 2014/05/07 21:51
再来年の大河ドラマの話が

ヤフーのニュースを見ていたら、再来年の大河ドラマの話題が出ていました。
もっとも誰を題材にするとかそういう話ではなく、脚本が三谷幸喜であること、時代が戦国時代だということしか出ていません。この情報が果たしてどの程度信憑性があるのか分かりませんが、一体誰を主人公にしたドラマが作られるんでしょうか。新しい人を発掘するのか、過去の作品の焼き直しになるのか分かりませんが…。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9610 
つね 2014/05/07 00:38


>管理人さん
レスありがとうございます。
モーリス・ジャールのアカデミー賞受賞スピーチは転がってないかと探したらありました。
http://www.youtube.com/watch?v=a5sWsf_BzPk
こんなスピーチしてみたいですね。そんな機会がまずありませんが。

>アッティラ
「情けない死に方をした有名人」として「新婚初夜に大量の鼻血を出して死んだ」という紹介をされていたのが記憶に残っています。wikiでは婚礼の宴会となってますが、ギボンの「ローマ帝国衰亡史」では「新婚初夜の翌朝に血を吐いて死んでいた」となっていたような気がします。この部分だけ確かめたくて昔、立ち読みしたことがあるという程度なので、やや不確かです。

>歴史映像名画座
たしか「パッション」は紹介されていたはず、と思っていたのですが、記憶違いみたいですね。この掲示板で言及があったのでしょうか。そろそろ名画座も600本以上になっているので、五十音順リストから紹介場所に飛べるような仕組みがほしいですね。大変であることは重々承知していますが。




#9609 
徹夜城(明日から仕事かとガックリする管理人) 2014/05/06 12:59
そうそう、「真田」もありました。

前回書き忘れたレスも含めまして。

>つねさん
そうそう、「真田太平記」、僕も挙げようかどうかずいぶん悩んだんですよ。地域バランス等も考えまして、泣く泣く外したのですけど。
大河が近現代の時期に、いわばその代替時代劇として企画され、予算的に厳しかった(城遠景はミニチュア、合戦シーンは「徳川家康」の使い回し)状況で製作されたものですが、それを補ってあまりすぎるほどの脚本の出来(ま、角兵衛の末路の改変についてはアレですが)、ミスター大河と言っていいほどの大原誠氏をはじめとした演出陣、原作からそのまんま飛び出て来たような配役の妙とその名演などなど、魅力を挙げるとキリがないです。「中小企業」的ポジションの戦国大名なので、視聴者にも等身大的に入り込みやすいのも魅力でしたね。
 大河ドラマ予想ではしばしば「真田を」との声が挙がるのを見ますが、「真田太平記」を見ていた人は「これは越せない」と書き込んでいるのもよく見ます。

「アマデウス」がアカデミー賞とったとき、モーリス=ジャールがそんなことを言ってましたか(笑)。そういえば彼自身は何でとったんだっけと調べたらデビッド=リーンの「インドへの道」だったんですね。これも歴史物と言えば言えるので見てみたいとは思ってるんですけどねぇ。
モーリス=ジャールは「アラビアのロレンス」「ドクトル・ジバゴ」などリーン作品についたもんだから「歴史大作」というとよく引っ張り出されていた観があります。そのため下手するとどれも似たような感じになっちゃうのですけど(ま、これは他の作曲家にも言えることですが)。日本映画ではあの知る人ぞ知る珍作「落陽」にも音楽をつけちゃってたような。

>バラージさん
また、いろいろとどうも。
アッテンボロー監督、「ガンジー」でそんなことになってましたか。連想したんですが、今回のリニューアルに含まれている「アルジェの戦い」がベネチア映画祭で金獅子とったとき、参加していたフランス映画人が抗議の退場を行ったことがあります。そんななか、一人残ったのがフランソワ=トリュフォーだったとか。この一件だけでこの人を大いに評価したくなりました。この人の映画は「華氏457」しか見てないし、あとは「未知との遭遇」の出演場面しか知らないんですが。

ご紹介されている「覇王伝アッティラ」、実はもうDVD持ってます。前編まで見て疲れちゃって(笑)、後編はなんとなく放置状態のままです。なおアッティラネタの映画では「侵略者」「異教徒の旗印」といった作品もありまして、そのうち三本そろえて追加する予定。
「ガーディアン・ハンニバル戦記」もレンタルで見てるんですが、歴史ドラマというよりは教養番組でしょうね。BBC製作で日本の徳川家康も含めた世界史上の有名人シリーズがあってドラマ部分があるのですけど、現時点では対象外と考えています。なお、ハンニバルを扱った劇映画にはビクター=マチュア主演のものがありまして、これもそのうちに。

ベトナム史はどうしてもインドシナ戦争かベトナム戦争のものばっかりになってしまいそうで、今のところそれらは敬遠気味。ベトナムの時代劇ってないのかなぁ、とネットであたっているんですが、予告編で李朝ベトナムの太祖が主人公というのは見つけています。
「チュ・ニャ・ディン」は日本公開時についついいかなくて、あとで後悔した作品です。そういえば「マンドハイ」と同じ年に公開したんじゃなかったかな。当時「マンドハイ」のパンフだったか、女性主人公歴史ドラマということで引き合いにされていた気がします。

>アジアのバカ大将さん
残念ながら、その方とはまともな議論は期待できませんよ。放置が賢明です。



#9608 
アジアのバカ大将 2014/05/06 11:29
韓国中国の映画ドラマは政治宣伝以外の意味あるんだろうか??

韓国や中国の映画・ドラマにお詳しいとお見受けする方からの
カキコがあったので、おたずねしますが、
韓国テレビ劇「チャングムの誓い」には、どんな政治宣伝が
込められていたのでしょうか?
また、昨年中国で大ヒットした「ロスト・イン・タイ」は?
よろしくご教授ください。




#9607 
バラージ 2014/05/06 00:27
東南アジア〜古代ローマ史編

 歴史映像名画座の更新、ご苦労様でございます。早速、今回分の感想&紹介をば。

感想
・インド史
『ガンジー』……いい映画でした。ベン・キングスレーがもうほとんどガンジーそのものかっていうぐらい似てましたね。イギリスの植民地支配を呵責なく描いたため、アッテンボロー監督は母国イギリスで社交クラブから除名されてしまったとか。

・イスラム圏史
『アラビアのロレンス』……映画としては面白かったです。ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アレック・ギネスがハマりすぎ。『アラブが見たアラビアのロレンス』は読んでないんですが、訳者が書いた『100問100答 世界の歴史』の一節と新書の『アラビアのロレンスを求めて』を読んで、実態とかなり違うことを知りました。
『砂漠のライオン』……マイナーな人物なんで(リビアじゃ有名なのかもしれんけど)、何も知識がないまま観ましたが、なかなか面白かったです。ナチス・ドイツが悪者の映画はよくありますが、ファシスト・イタリアが悪者の映画はちょっと珍しいですね。

・アフリカ史
『ルムンバの叫び』……監督がハイチ人のためか、作風がハリウッド風じゃないのが印象的でした。ハイチはカリブ海(中米)ですがヨーロッパ的な作風というか。その抑えた作風が良かった。なんか人物的にも映画的にも『ガンジー』と似てましたね。
『遠い夜明け』……いい映画でした。映画の最後に当時獄中にいた黒人運動家の名前が流れるんですが、その中にネルソン・マンデラの名前がありました。これまたアッテンボロー監督は現地南アフリカでひどい恫喝を受けたとのこと。今となっては事情は劇的に変わっちゃいましたねえ。なんだか懐かしいなあ。
『インビクタス 負けざる者たち』……面白かったんですが、歴史というにはちょっと時代が今に近すぎるような気も。どこまでを歴史というかは難しい問題ですが、個人的には自分がリアルタイムで記憶・経験してるものは除外しております。

・古代ローマ史
『スパルタカス』……#9598
『ベン・ハー』(1959年版)……#9598


未収録作品紹介
・タイ史
『ソードキング』……未見。1547年のアユタヤ王朝の王位をめぐる争いを背景とした米国・タイ合作のアクション映画。
『セマ・ザ・ウォリアー』……未見。16世紀アユタヤ王朝ナレースワン治世下の伝説的戦士セマを主人公とした映画。
『山田長政 王者の剣』……ビデオ化のみ。未見。山田長政を主人公とした日本映画。
『ラスト・ウォリアー』……未見。アユタヤ王朝を舞台としたタイの古典文学『クンチャーン・クンペーン』の映画化。
『ムアンとリット』……ソフト化なし。未見。19世紀後半のタイで女性の権利を初めて主張したと言われる女性ムアンを描いた映画。当時のタイの人気女優チンタラー・スカパットが主演で、タイ映画で初めて日本で一般公開された。

・インドネシア史
『チュッ・ニャ・ディン』……ソフト化なし。未見。19世紀インドネシアで独立を目指したアチェ戦争の女性指導者チュッ・ニャ・ディンの半生を描いた映画。当時のトップ女優クリスティン・ハキムが主演。

・ベトナム史
『無人の野』……ソフト化なし。ベトナム戦争を描いたベトナム映画。おそらく予算の関係かモノクロだし、ハリウッドに比べれば技術的にも未熟だとは思うんですが、日常生活の中に戦争があったベトナム側から見たベトナム戦争は興味深かったです。米軍兵もきちんと「人間」として描かれてました。
『天と地』……ベトナム戦争を経験した実在のベトナム人女性レ・リー・ヘイスリップの自伝的小説をオリバー・ストーンが映画化。舞台は前半がベトナム、後半が米国。映画としてはいまいち面白くないんですが、原作にもちょっと問題があるように感じます。
『コウノトリの歌』……ベトナム・シンガポール合作のベトナム戦争映画。一言で言うとオムニバス再現ドラマ。撮影技術のようなハードの部分は『無人の野』よりも格段に向上してますが、その分、同時代性の持つリアリティーはなくなっています。21世紀になってからの映画で、戦争終結から25年以上経ってるから当然か。

・インド史
『チェスをする人』……ソフト化なし。未見。19世紀中ごろ、イギリスの東インド会社によってインド北部が植民地化されていく時代を舞台に、国の危機をよそにチェスにふける貴族たちを描く、巨匠サタジット・レイ監督作。
『遠い雷鳴』……ソフト化なし。日本軍のビルマ侵攻で米の輸入が途絶え飢饉に陥ったベンガル地方を舞台に、バラモン階級の夫婦の苦悩を描いた映画。これもサタジット・レイ監督。歴史映画とは言い難いんですが、インド史の映画が少ないし、とてもいい映画なんで。

・イスラム圏史
『ラスト・ハーレム』……オスマン・トルコ末期のハーレムに送り込まれた少女を描いたイタリア・フランス・トルコ合作のドラマ映画。#9403
『キプールの記憶(DVD題:キプール 勝者なき戦場)』……未見。第4次中東戦争を舞台としたイスラエル・フランス・イタリア合作の戦争映画。

・オリエント・聖書関係史
『マリア』……未見。イエスの母マリアとイエス誕生を描いた映画。
『偉大な生涯の物語』……未見。イエスの生涯を描いた映画。
『ジーザス・クライスト・スーパースター』……未見。イエスの最後の7日間を描いたロック・ミュージカル映画。
『最後の誘惑』……未見。処刑されるまでのイエスを1人の悩める人間として描いたマーティン・スコセッシ監督の映画。
『パッション』……未見。イエスが処刑されるまでの12時間を描いたメル・ギブソン監督の映画。

・古代エジプト史
『太陽の王子ファラオ(ビデオ題:ファラオ 太陽の王子)』……ビデオ化のみ。未見。紀元前11世紀のエジプトを舞台としたポーランド映画。

・アフリカ史
『アフリカ残酷物語 食人大統領アミン(ビデオ題:食人大統領アミン)』……ビデオ化のみ。未見。イディ・アミンを描いた映画。テレビでショッキングなシーンを強調したCMが流れてたのを思い出します。でも実際にはそんなシーンは少しだけで、わりと真面目な映画らしい。

・古代ローマ史
『ガーディアン ハンニバル戦記』……未見。カルタゴのハンニバルを描いたテレビドラマ。BBC制作なんで再現ドラマ的教養番組かも。
『覇王伝アッティラ(テレビ放映題:騎馬大王アッティラ 平原の支配者、テレビ放映題:フン軍記 アッティラ大王と騎馬軍団)』……未見。フン族のアッティラを主人公としたテレビドラマ。

・気づいた点(追加情報)
『項羽と劉邦 その愛と興亡』……劇場公開版&ビデオは138分です。
『孫文』……劇場公開版&ビデオは113分、中国公開版は170分です。
『ラストエンペラー』……劇場公開版&ビデオは163分です(219分のオリジナル全長版も後にビデオ化された)。



#9606 
徹夜城(GWは歴史映画の作業に没頭していた管理人) 2014/05/05 22:25
「歴史映像名画座」更新しました。

 やれやれ、どうにかアップにこぎつけました。当初はリニューアル作業だけでもGW宙に全部終わらそうかと思ったんですが、やはり西洋史に入るとえらいことになりそうなので、ひとまず古代ローマ(古代ギリシャと分離)までをリニューアルしておきました。
 見ればお分かりですが、東南アジア史は各国別になりました。今後それぞれ増やせそうな感じですので。アフリカにも同様の措置をとるかどうか迷ったのですが、アフリカ史の一覧を見るとほとんどスーダンと南アフリカばっかりなんですよね。これは今後の増え方次第かと思います。

 中国史では明代で二つ追加。ようやく見終えた「大明帝国・朱元璋」と、昨年中国で公開された映画「大明劫」の二本で、偶然にも明の勃興と滅亡の組み合わせになりました(笑)。これに加えて以前阿祥さんにいただいたっきりいまだ見終えていない「大明王朝・嘉靖と海端」を加えれば明代もそこそこ増えるんですが…
 見返してみると、「元」代だけがすっぽり抜けてます。中国で作ったチンギス・ハーン映画はモンゴル史に入れちゃいますしねぇ。と思っていたら、クビライを描いた大河ドラマがあることがわかり、これなら「中国史」ジャンルに入れてもいいんじゃないかと。

 今回、「聖書関係史」が前半だけ大幅追加になっているのは、実は昨年から海外サイトのリストをもとに可能な限り網羅して(見られるものは見て)ちびちびと作成していたため。後半になると急に飛ぶのは今回のアップに合わせるために途中で打ち切ったからです。まぁしかし聖書ネタ映画も尽きませんな。今年は「ノア」もやりますし。


>阿祥さん
 倭寇関係の更新をまるっきりしてないので忸怩たるものがあります。書き込み、面白く拝読いたしました。
 思うところを全部言い出すときりがなくなるので、ひとまず思ったところをチビチビと。

 日本と中国の関係をそうやって眺めてみると、確かに「いつものこと」と見れなくもないんです。が、やはり近代以降と前近代とではまた違った構造があるかな、とも思います。
 また結局のところ、日本はやはり海を隔てた島国であることがかなり大きく作用しているように思います。だから朝貢体制(これも時代により変わるのでひとくくりにしにくい)に入るか入らないかには割合アバウトで、ブランド志向が強く文化だけ貪るように摂取しながらも自分の庭に直接入ってこられることはかなり嫌う傾向が出てきたのではないかと(これはある歴史学者の見解の受け売りですが)。
 日中二大、というまとめ方は近代以降についてはまぁ言えなくもないか、とも思いますが、前近代においては日本側はともかく向こうからはてんで問題にされてなかった観もありますけどね。



#9605 
阿祥 2014/05/05 19:12
東アジアの海上史を勉強していて思う事

徹夜城さんの倭寇の研究に興味を持ってこちらによくお邪魔しているわけですが、僕も東アジアの海上史についていろいろ本を読んで勉強しています。最近、中国との関係が良くないことについて思うところがあるので少し書いてみます。

僕が、東アジアの海上史について興味を持ったのは、台湾に住んでいたころ台湾の歴史を勉強したことがきっかけでした。特にオランダ時代から鄭家の時代を経て清朝の初期位まで、おおよそ17世紀の初めから1680年代についての様々な研究書を集めました。そこで学んだことは、台湾は中継貿易の拠点としてこの時代に注目されてくるようになり、オランダ東インド会社も鄭氏政権もそれが大きな理由で台湾を統治していたということです。清朝が台湾を納めたのは理由が異なり、反乱者としての明朝の残党を征伐するということで、貿易の拠点とするのが目的ではなかったようです。(実際に台湾を征服する軍事活動を行った浙江省と福建省の政治グループはそれを目論んでいたように思われますが、清朝中央にはその意識はなかったと考えています。)

で、その貿易の中身はというと、主要なものは中国の絹や茶器などを日本に売り、日本からは銀で支払いを受け、その銀でもって東南アジアの諸々の商品を買い、さらに貿易を拡大するという事になります。色々ディテールはありますが、最も基本的な商品は中国の製品になります。オランダにしろ、鄭氏政権にしろ、この中国の商品を如何にして手に入れ、日本を含めた各国に売り捌くかというところに、商売の核心があったように思います。
オランダが台湾に拠点を構えたのは、マカオに対抗して中国貿易を行うという事が動機で、本来福建省内部や澎湖島をねらっていたのが、明朝の強力な反対、実力行使にあい、台湾まで退いたというのが理由です。鄭氏政権は、清朝と対峙するために貿易の利益を確保して軍事活動を行っていましたが、そのための拠点を福建省沿岸に確保できなくなったため、台湾を求めオランダ政権を追い出しました。そして、清朝と戦っている時期も、中国からの商品を入手し、それを中継することで政権を維持していきます。
このようにして中国の商品の中継貿易を行うという事で、台湾の歴史は大きな転機を迎えたという風に考えています。

ところで、この17世紀より以前、東アジアの海では徹夜城さんの専門の倭寇の時代があり、それより先には琉球王国の繁栄した時代があります。いずれも明王朝の時代で、初期から中期にかけての東アジア海域での枠組みとなる出来事だと思います。倭寇の時代については釈迦に説法になるのでここでは詳しくは書きませんが、日中間の密貿易を行っていたという点をポイントとして挙げたいと思います。琉球の時代についても明朝の冊封を受け、正式な明朝の朝貢国となったことにより、明の商品を外国に売るルートを確保できたという点が大きいと思います。(僕は個人的には、これは福建人が琉球国を利用して貿易ルートを確保したのだと考えています。)
さらに思い至るのは、マカオを拠点にしたポルトガルの交易です。これも主要な利益を図る構図は、中国の商品を日本を初めとする周辺諸国に売り捌くことにあります。ポルトガル人が日本との交易に精を出したのは、これが非常に利益率の高い商売だったからに違いありません。ポルトガル領マカオの全盛期は日本の鎖国政策の始まる前、南蛮貿易と呼ばれる貿易が自由に行われていた期間でしょう。

全体として思うのは、中国の商品を、日本やその他の国に売ることは商売になるのに、そのプレイヤーが時代によって異なるという事です。琉球王国、倭寇、ポルトガル人、オランダ人、鄭氏政権。いずれも中国の外側にいて、中国商品の商いをしています。ここには、根本的な問題として、中国と日本の間に国交がないという事があります。

以前、清朝の文化遺産の展示を見た時に、朝貢国を図案化した絵巻物がありました。そこには筆頭に朝鮮と琉球国があり、その他東南アジアの国々などが数十か国並んでいました。しかし、日本は朝貢をせず、国交もなかったので、その絵図には表れていませんでした。
専門ではないので、日中間の国際関係に対して正確なことは言えませんが、個人的に勉強した範囲では、隋唐の時代から積極的になった日中の関係は宋の時代あたりまでは良好に展開していると思います。それが暗転するのは元寇以降です。元の使者を殺害し、国交断絶ひいては二度にわたる戦争を引き起こしてから以降、日中間には正式な国交のない時代の方が長いのです。明の時代の初期には日本は中国の朝貢国だったようです。これも徹夜城さんの専門の足利義満の勘合貿易の開始から、寧波の乱のときまでとすると、1404年から1523年まで約120年です。それ以降明との国交は絶たれ、直接的な貿易ルートが無くなってしまい、そのため倭寇による密貿易が行われ、ポルトガル人が中継貿易に活躍するようになります。そしてこの国交のない事態は延々と清朝末期まで続きます。江戸時代は、日本側の理由で国際関係がなかったという事もありますが、明治維新までと考えると、実に340年ほども国交がなかったことになります。

中国周辺の国々は、中国の面子を立てて、その朝貢国、あるいは藩属国となることで、中国を中心とした国際関係の中で、生きていこうとする場合がほとんどなのですが、日本はその中に入ろうとはしません。理由について僕はまだよくわかっていませんが、中国をトップとする国際関係に対して、納得していなかったという事なのでしょうか。陸続きではないことで、中国の影響を無視しても国際的には問題なかったという事なのでしょうか。そのくせ、中国からの商品に対しては国内で常に需要があり、様々なルートで輸入をしています。

16世紀から17世紀にかけて、ポルトガル/スペイン/オランダの各国がアジア海域に達して様々な活動を行いますが、その中で常に主導権を握ることのできなかった国があります。中国と日本です。他の土地では土地を占領しようが、住民を奴隷にしようが、軍事力に物を言わせて強引に進めるのですが、こと、中国と日本に対しては勝手が異なります。圧倒的な人口と技術力・物量のために、無理なことはできません。
特にスペイン。アメリカ大陸においてその軍事力により原住民を服従させ植民地とし、フィリピンもその傘下に収めます。そして中国と日本に対して宣教師を送り込み、同じように植民地化を進めようとしますが、この試みは頓挫してしまいます。日本に送った宣教師は、日本政府の神経を逆なでし、それがために国に入ることさえままならないことになってしまいます。植民地とするどころではありません。中国に対しては宣教師を送り込みある程度はキリスト教信者も教化することに成功しますが、イエズス会との勢力争いのなかで、康熙帝の逆鱗に触れ、キリスト教を禁止されてしまうことになります。中国の土地が侵食され始めるのは、イギリスによるアヘン戦争以降になります。

産業革命になり、イギリスの軍事力が圧倒的になった18世紀以前の状態では、ヨーロッパ勢力にとってアジアで意のままにならない頭痛の種は中国と日本であったのだと思います。そして、その二国は互いに国交を結んでおらず、ある種反目をし合っているので、それをチャンスととらえて中継貿易をして利益を得ていたという図式が見えます。
清朝になり、日中間の直接貿易が解禁になると、この漁夫の利を得るという手法も中国人にとって代わられてしまうことになります。国交がないにもかかわらず、民間の貿易船は自由に日本にくることになり、長崎における唐人貿易が栄えることになります。

色々長々と書きましたが、思うことは、現在のように、直接的に国同士のやり取りができず、民間の貿易や交渉のみが行われているという事態は、実のところ元寇以降と考えると700年ほどの間では、日中両国にとっては常態であったという事です。現在でもお互いにどう歩み寄りをしてよいか分からないようにみえますが、これがこれまでの歴史のなかで常にそうであったとおもうと、それほど心配することもないのではないか、時間が解決する問題ではないかということ。もうひとつは、アジアにおいて日本と中国は常にBIG2であり、お互いに相手の政治的フレームワークに対して、その中に入ることを拒否してきたという事です。そんな風に考えると、現在の両国の対立している状況は、そう簡単には解決しないように思います。
同じように日中間の事を研究している徹夜城さんに、一度聞いてみたいと思っていましたので、投稿してみました。長文になってしまいました。申し訳ありません。



#9604 
粕谷真人 2014/05/05 17:55
統制国家のドラマを見ても意味あるんだろうか?

顰蹙覚悟で言うけど、韓国中国の映画ドラマは政治宣伝以外の意味あるんだろうか?
韓国はありもしない古朝鮮とかがあったようなドラマを作ってたり、清朝を作った
満州民族と別民族である漢民族が作った今の中華人民共和国が、中華民族という概念を
作って、清朝の最大勢力圏を帝国主義に奪われた回復すべき領土であり、歴代王朝を
中国の歴史としている中国共産党支配化の言論の自由がない所で作られたドラマや映画
を論じてもむなしい。
まあ、相手の政治的意図を探るのはありだが。



#9603 
つね 2014/05/03 14:42
難問ですね

こうしてあらためて聞かれるとやっぱり悩みますね。
かぶるものもありますが、そこは「いいものはいい」ということで。

「羅生門」……説明省略
「七人の侍」……説明省略
「真田太平記」……真田家のイメージはこれで固まってしまってます。時代考証的にも多分正確で「安房守」やら「伊豆守」やらいまだに記憶にあります。最近だと織田徳川間だと「信長殿」とか「家康殿」とか呼び合ってそうです。イメージですが。
「白虎隊」……1986年日本テレビ版。「愛しき日々」とも重なって印象深いです。
「坂の上の雲」……第一部第二部の明治維新期の「坂の上の雲」を追いかけている描写がちょっと羨ましくもありました。3年かけて年末放映という形もおかげで3年間、年末が待ち遠しく楽しかったです。終わってみるとあっという間でしたが。
「アマデウス」……当時の街並み、貴族文化の描写はもちろん、やっぱり音楽がいい(笑)。この年のアカデミー賞作曲賞を受賞したモーリス・ジャールは「モーツァルトに資格がなくて良かった」とスピーチしたそうです。
「ワーテルロー」……管理人さんの挙げている「戦争と平和」と同じ監督のものでやっぱり大量動員。ナポレオンとウェリントンの視点から一つの会戦に焦点をあてているので、「会戦全体」という意味では、一士官の視点が中心である「戦争と平和」よりは分かりやすいです。
「ニュールンベルグ裁判」……アカデミー賞主演男優賞の弁護人のマクシミリアン・シェルはもちろん、裁判官、被告、検事それぞれが持ち味を発揮していました。



#9602 
バラージ 2014/05/02 23:56
ベスト映画パート2

 それではベスト歴史映画で歴史映像名画座に未掲載の作品も挙げちゃいますかね。といってもやっぱりボーダーラインの映画ばっかりになっちゃうんですが。

『炎のランナー』……1924年パリ五輪でイギリス代表として金メダルを獲得した陸上選手ハロルド・エイブラムズとエリック・リデルの2人を描いたスポーツ映画の傑作。栄光や名誉のためではなく、誇りや信念のために走る彼らの姿が感動的です。

『リトル・モー』……1950年代の女子テニス選手モーリン・コノリーを描いた伝記映画。本来はTVムービーらしいんですが、あまりの出来の良さに日本では劇場公開されたそうです。子供の頃にテレビで観たんですが、タイトルも主人公の名前もすっかり忘れてしまったため、観たのはその1回のみ。数年前にタイトルを知ったんですが、ビデオ化のみでDVDはないため観ることはできず。

『クルーシブル』……1692年の北米大陸イギリス植民地マサチューセッツ州で起こった「セイラムの魔女狩り事件」を描いたアーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』の映画化。あまりに悲劇的なラストは号泣必至。僕も映画館で泣いてしまった数少ない映画の1つです。

『鬼が来た!』……#9592に記述。



#9601 
黒駒 2014/05/02 12:40
ありがとうございます

>管理人様
ありがとうございます。ベスト史劇の件では悩ませてしまって、どうもすいません。この話題で盛り上がっていただければ幸いです。

「マンドハイ」は私も長らくこちらを覗かせていただきてますが、ちゃんと語られたのは初めてではないでしょうか?中国・韓国ドラマのご紹介もありがとうございます。参考にさせていただきます。ひとつくらいちゃんと見ておきたいんですよね。

ベスト史劇は「日本のいちばん長い日」や「戦争と平和」、大河「太平記」など、やっぱり入ってくるのですね。大河ドラマでは私は「独眼竜政宗」か「翔ぶが如く」をあげたいです。理由は、時代考証はわからないので保留するのですが、一年通じて主人公が優秀な家臣に支えられたり(「政宗」)、幾多の困難を経て大人物へと成長していく様がよく描けていた点を評価するからです。それに比べると、最近の大河は一年を通じてトーンが同じ、という気もします。

「ラスト・エンペラー」は失礼ながらちょっと退屈な映画だった印象もあるのですが、ジョン・ローン演じる溥儀の幽囚時代の表情なんかは割りと印象に残ってます。



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