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#9800 
黒駒 2015/03/30 13:14
信長英雄譚

>アブダビ様
その刀は確か武田家から今川へ渡ったという由緒があったはずなので、私も聞いたことはあります。史料的根拠は洗ったことはないのですけどね。

今川義元といえば公家風で暗愚なイメージから、近年の歴史愛好家の間で定着しつつある「東海一の弓取り」の肯定的イメージがありますけど、私は義元を暗愚な人物としてイメージするのっていつからだろう?割りと最近のことでは?とも思います。

よく語られることですが、義元の評価って信長英雄観と連動しているのですよね。最近は後退しつつあるらしい義元の上洛説ですが、桶狭間を例えば単なる国境紛争と見るよりも、上洛を意図していた義元を信長が撃破したという「物語」のほうが信長英雄観を形成しやすいわけで、そういう事情で出来たイメージかなぁとも思います。ですから義元も暗愚な人物ではなくて、ある程度器量を持った人物として理解していたほうが、それを撃破する信長がより英雄に見えるのでは?とも思います。

そういえばある中世史家の先生から聞いた話ですが、義元上洛説の根拠として義元の官位上昇が足利尊氏と同じだ、という説もあったらしいですね。その後誤りであると指摘されたらしいですけど、尊氏と同じ官位上昇をしている、つまりは義元は将軍を志向し、上洛しようとしていた、という説なのかなと思います。



#9799 
アブダビ 2015/03/30 01:49
便乗ネタ

武蔵の話で盛り上がっているので。
日本刀なんですが、聞きかじりなんですが、織田信長は今川を桶狭間で葬った時に、大将の拝刀を戦利品として自分の差し料にして、それは家康に伝わったとか……
今川てーとかなりアレなイメージなんですが…大河の観ると。
でも差し料に用いたくらいだから、乱戦の中で意外に奮戦して、信長もリスペクトする最後だったのでしょうか?
バカにするなら頭骨を酒杯にするとかで良いと思うのです。
武士がリスペクトしない相手の刀を自分の差し料にしない気がするのですが?
如何なものでしょうか?
ってか、私の聞きかじりが、そもそも間違いなら済みません。



#9798 
黒駒 2015/03/29 22:33
系図

>つね様
つね様の家の「系図」の史実性については他の方にお任せするのですが、系図ってかつては信頼できるかできないか、あるいは歴史史料として使えるか使えないかという観点で扱われいましたけど、近年は系図の記述が示す由緒を大事にして、どういう意図のもとに家の歴史を綴ろうとしたかという観点で、系図史料を評価する動向もあります。

お話を伺う限りではつね様の御祖父様が位牌などの資料をもとに作成された「系図」のようですから、まず一次史料としての位牌に託された由緒があって、それを御祖父様がまとめられたのでしょうから、記述の史実性以外に、御祖父様の歴史観・由緒観が伺える史料として読むのが良いのではないでしょうか。

系図でも何代にもわたって書き継がれた史料などは、書き継がれるたびに異筆になりますから、何を意図して書き継ごうとしたのかとか、そういう検討もされてますね。



#9797 
つね 2015/03/29 21:45


重ねてで申し訳ありません。
「織田家に仕えて」です。ちなみに全文は
「山城国山崎ニ住テ而仕右大臣信長公攻城戦野顕勇誉数限無其履歴信長証織田軍記及豊臣実録等ニ詳也○○天正十(一五八二)年壬午六月二日為惟任穢カラル洛陽於本能寺之時出安土城○居城○○山崎急馳○○至干○○尼ヶ崎与池田信輝促誅光秀○謀俟羽柴秀吉於山崎○東門而敵将敗守○利光之軍隊光秀滅亡之后山崎源太左衛門○為惟任之○流○頻也○筑前守秀吉疑○深厚○而山崎時○能○○何此時避害遁走讃岐香川郡○○村住○称四郎左衛門○」
・・・○ばかりで恥ずかしいです。



#9796 
つね 2015/03/29 21:41
家系図

連投容赦願います。

本家では家系図(正確には仏壇の繰り越しを祖父が要点のみ書きだしたもの)があり、最初が清和天皇から始まり、義家のところで「鎮守府将軍左衛門尉 八幡太郎 猛将武略通神弓馬之達人也」とあるのはお笑いとして義氏のところで「従五位足利武蔵守 母ハ平時政之女和田合戦之時○朝比奈三郎 義秀馬上之組討冑之袖ヲ引切最武勇 大也○○ニ出」とあり(○は私が読めなかったところ)、房義が「山嵜三郎四郎 新田義貞之属○族下於箱根坂下ニ戦死ス」とあるのですが、文献的に実証できるのでしょうか。
その後、兼嘉のところで「山崎源太左衛門尉又号四郎左衛門室十河存保女兼嘉死年天正十五丁亥(一五八七)九月十七日寿六十歳」(一五八七は私の補記。なにやら織田家に閊えて山崎合戦に関係があり秀吉に疑われて讃岐に逃れたとあり、このあたりからは真実味があります)。
ほとんど私信で申し訳ありません。







#9795 
つね 2015/03/29 16:18
巌流島

私は役所広司の宮本武蔵くらいしか見ていないのですが、
小次郎のセリフは「おくしたか」と記憶していました。で、youtubeで映像を探してみるとやっぱり「おくしたか」のようです。原文は確認していませんが、ドラマでは分かりやすいように変えたんでしょうか。
ここでyoutubeのアドレスをリンクするのは問題があるかもしれませんので自粛。5分弱のシーンですが、クライマックスだからという以上に迫力があります。思い出補完というのもあるかもしれませんが。



#9794 
黒駒 2015/03/28 20:45
宮本武蔵

史点読んで思いましたけど、吉川武蔵のセリフは「怯れたか」なんですね。私も「遅れたか」だと思ってました。吉川武蔵は未読ですが、武蔵が決闘に遅れたという筋のなかでのセリフなわけで、これは読んだ人ですら「遅れたか」だと思っているのではないでしょうか。しかし、そうなると吉川武蔵はまず決闘にわざと遅れて小次郎を焦らす心理戦、「怯れたか武蔵」「小次郎敗れたり」と口で挑発しあう口喧嘩、そして真剣勝負と、三段階を踏んでるわけですね。

そういえば市川海老蔵(市川新之助)の大河「武蔵」では小次郎は「お前を斬った刀を俺はもう使わぬ」と反論するという、アレンジがあったと思います。大河「武蔵」も盗作問題があり、後半が評判悪くてとソフト化されてませんね。私も確かに後半はあまり褒められませんが、記憶の上では前半から巌流島あたりまではそう大きな破綻もなかったような印象もあるのですよね。個人的に市川海老蔵という役者を評価してるだけあって、若い時期に一年かけて取り組んだ仕事がちゃんとした形で見れないのは、少々残念です。

そういえば最近、人物叢書から「宮本武蔵」が刊行されました。パラパラと見ましたが、やはり実証的なきちんとした評伝を書こうとなると伝記的事実に多くを記せるわけでもなく、人物面に側面を当てた近世の文人の評伝という感じもしました。そのうちちゃんと読むかもしれませんけど、在野の人物とはいえ近世前期で、もうここまで事跡がわからないものなのだなと思いましたけど。



#9793 
アブダビ 2015/03/25 02:56
すみません、当て推量です

人口と戦争の激しさ…について書いた駄文が管理人さんに挙げて頂いたのは嬉しいのですが、あれ、当て推量です。
なんか大河の営業時間で、徒歩で斬り込んでいたイメージがありまして。
人口が増えれば兵士の動員も増えるけれど、全員に馬を配備するのは大変だろと。逆に増えた人員を有効に使うのならば、槍とか薙刀とかを持って密集して、
面の圧力で押すのが妥当かと思いました。結果として、騎射で攻めるより人死には多くなるだろうな…くらいの発想です。正直、「もっと読みたい」です。
あの時代、長子相続の習いが確立していなかったそうですね。そこで実力主義の争いが起きるというのは、なんかモンゴルとか、騎馬民族系の王朝が必ず内乱になるという大陸のパターンに似ている気がしました。



#9792 
徹夜城(先日昔通った小学校が二つ同時に廃校になった管理人) 2015/03/24 00:34
ウソとマコトと

 リー・クワン・ユー元首相が亡くなるなど、ここ数日だけで「史点」ネタにしたいニュースが次々と…ええい、毎年恒例行事の準備で大変なのに(爆)。ウソ記事とホント記事が接近しちゃうのもまずいんだよな(まぁ以前にも二日連続更新があったような)。


>南北朝戦争論
 この件でちょこちょこっと盛り上がっておりますね。
 まず昨年に二冊も南北朝および中世の「戦争」をテーマにした著作が出てるんですよ。いずれもここで紹介済みではありますが…
 一つは呉座勇一『戦争の日本中世史・「下剋上」は本当にあったのか』(新潮選書)。元寇の実態の再検証(文永の役は結構日本軍善戦、の一方で鎌倉武士たちはかなり平和ボケでもあり問題点多し)から始まり、鎌倉末期の「悪党」の実態の再検証(そう一口にまとめられるもんじゃない)、鎌倉幕府の突然の滅亡の原因は「分からない」、南北朝動乱における戦争実態のあれやこれや、そして南北朝の記憶も薄れた「戦争を知らない室町時代」へと、まぁとにかく盛りだくさんな内容です。書き手の世代がわかるネットスラングも交えたライトな書きぶりが他世代には拒否反応を起こされそうな気もしましたが(笑)。
 この本で戦場の記録から浮かび上がらされる南北朝の「戦争」は、総じて「結構みんな大変」ということになりますか(笑)。戦死者を多く出し負担も大変な武士たちももちろんですが、現地調達という名の略奪にあう農民たち、一方で予備戦力として動員される百姓たち(史料で「野伏」と表現されるのは実はこれ)などなど、いろんな話題が出てきます。
 戦闘方法そのものについての言及もいくらか含まれてまして、これまで一般イメージになっていた鎌倉武士=一騎打ち、南北朝=徒歩斬撃戦という変化についてもかなり疑問を呈しています。

 もう一冊が先日紹介した新井孝重『日本中世合戦の研究』(東京堂出版)ですが、こちらは一般向けとは言い難いし高価なので…中身は濃いのでまだ読みとおしてないんですけどね。


さて、アブダビさんのご質問に関して。
 上記の呉座さんの本ですと、まさにアブダビさんが書いてた件について言及があります。鎌倉時代の合戦はあまり人も死なない、南北朝に比べればかなり穏やかなものだった、それに比べて南北朝のムチャクチャぶり(情勢の複雑さ、変化の激しさ、大軍大移動など)は…という指摘があるんですね。そう考えれば確かに南北朝はいろんな意味で空前の「戦争時代」だったと言えるかもしれません。
 楠木正成やその息子たちの千早・赤坂籠城戦、あるいは天王寺方面、さらには京都攻防戦で見せる変幻自在というか、「ゲリラ」な戦いぶりの理由はなんなのか…はまだまだ謎が多いと思います。よく言われた「悪党だから」なんて簡単に済ませられるものではなく、最近では正成は御家人・御内人出身説が有力になっていて、京都でも「楠木の根は関東にありながら」なんて狂歌に歌われていたくらい知られていたとの指摘が出ています。
 それでも「太平記」では楠木軍の兵士たちが関東武士たちの古風な戦いぶりを眺めて「あれが坂東武者というものか」なんて馬鹿にしてるんだか感心してるんだかという反応を見せる描写がありますから、かなり異質な連中ではあったんでしょうね。それともとは関東武士の出らしい楠木氏がどうつながったのか。
 足利方が書いた『梅松論』でも足利軍が瀬戸内海を進軍中に見知らぬ軍船が近づいて来たら「すわ、楠木の奇襲か」と大騒ぎしたとの描写があり(「げえっ、孔明の罠か!」というわけですが実際は味方の軍船だった)、やっぱり普通じゃない奇策を弄する武将だと思われてはいたんでしょうねぇ。


>モンゴルばなし
 何度か書いてることですが、僕はモンゴルの歴史映画「マンドハイ」の大ファンでして(笑)、あれを最初に見た時、まさに「馬が小さい!」と驚いたことが覚えがあります。しかしその馬を巧みに使った大合戦シーンを見たら、「ああ、小さくなきゃダメだ」と実感したもんです。日本の時代劇でサラブレッドで一騎打ちしてるの見てるとやっぱりやりにくそうですもん。
 動物油脂と炒め物の話は初耳で、「へぇ」ボタン連発でした(笑)。



#9791 
黒駒 2015/03/24 00:21
まだまだ浅学でして・・

私も動物考古学はまだまだビギナーなので、あまり色々と紹介できる情報が少ないです。もう5年くらい勉強したら、そこそこ知識がついてくると思うのですが(笑)。

動物考古、面白いですよ。遺跡から出土した骨を同定して種を特定し、切痕などを確認して食用の証拠とする。それだけではなくて骨から動物の体高を推定したり、馬でした乗用か農耕馬かをハミ痕により判断する。また、同じく骨格の特徴から家畜化の進行度合いを論じたり、遺跡から出土する多数の骨やその部位の組成と、出土いた遺跡の性格、さらに文献資料を加味して人形の生業を復元していくと、なかなか面白いことをしてます。

動物考古学の研究者さんの専門分野はとても広く、獣骨の同定も陸獣から魚類・貝類までなんでも扱いますし、時代も縄文から近代までカヴァーします。さらに文献資料も扱えないといけませんし、人間と動物の関わりは生業、信仰、民俗、文化、軍事とあらゆる分野に及びますし、その専門領域の広さに驚かされます。それゆえに、失敗も目につくことがあるのですが。

馬ですけど、日本の在来馬はモンゴルの在来馬が近縁だと言われますね。日本の在来馬はいま本格的に系統分類が行われているようで、もう少ししたら研究成果が揚がってくると思います。



#9790 
アブダビ 2015/03/23 02:54
追記です

黒駒さん
知人の中国人の方が万里の長城の話で、
「軍事的にはあまり役に立たなかったけど、遊牧民の羊を食い止めて、草原を食い荒らさせなかった点では、地球環境に役立った(笑)」と言ってました。
彼のお話では、中華料理のメインである炒めものは、実はモンゴルの置き土産なんだそうです。
それまでの中国料理は、日本と同様に蒸す、焼く、煮るが主体で「炒める」はオイルを主に灯油として用いたので、炒める風習がなかったのだそうです。
モンゴル人が大量に家畜を連れてきた結果、動物油脂が市場に出回るようになり、それが料理に使われて明の時代に体系化されたのだそうです。
人間の歴史と動物のそれは、結構に交わるものなのですね。



#9789 
アブダビ 2015/03/23 02:27
回答をありがとうございます

バラージさん
過去ログを読みました。 いや面白かったです。バラージさんの弓矢が主武器で、接近戦では槍がこれに変わる!どっちも両手が塞がるから盾は廃れた…との弁に感心しました。
Toさんが源為朝の話で、私と同じ疑問を書いていましたが、バラージさんの記事を読むと、当時の武士が責任分担を明確に戦争していたので、勝手に持ち場を離れられないお話に納得です。
しかし格闘技の話まで出てきて楽しめました。戦史て面白いなあ。

黒駒さん
動物考古学て初めて知りました。面白そうなお話ですね。
ずーっと前にモンゴルに馬で旅すツァー
に参加したのですが、ジンギスカンの軍隊が乗った馬に乗りたい!とオーダーしたら、出てくるのが不細工な小柄な馬でして(笑)
ガイドの大学生の話では、モンゴルの馬は小さいけれども、草を喰ってどこまでも進めるので、大陸規模の戦争では有利なんだそうです。
モンゴルでも、中国東北部でも、大きな馬格の馬を馬族とかが使用するのは、コサックが今のロシアの沿海州あたりに植民してからの影響なんだそうです。
そういう馬は穀物を食わせないと馬力が出ないので、ヨーロッパまで攻めて行くには問題があるのですって。
それと実兄のドバイはパキスタンとウズベキスタンの国境付近まで汗血馬の子孫を探しに行った男ですが、持って帰ってきた汗血馬の写真が、皮膚病の馬ばかりでして((爆))
皮膚の寄生虫を痒くて擦るうちに、血が滲み出てくるのが実態だったそうです(笑)
彼は「だから武帝の集めた馬は死んでしまい、後世に血統を残していないのだ」と申しておりますが。
私は匈奴だのスキタイだの好きなので、
遊牧民が騎馬民族に進化した由来には興味があります。牧畜の始まりとか。
そういう意味で興味深い学問ですね。



#9788 
黒駒 2015/03/22 20:57
軍事史は苦手でして

ご指名のところ申し訳ないのですが、軍事史は知識関心ともに低くて、お答えしかねます。

軍事史はバラージさんご紹介の源平合戦については川合氏の本がありますし、戦国の軍事史は近年研究が活発な分野でもありますね。最近の長篠合戦論などは読んだのですが、軍事史って政治外交の話であり、史料論の話であり、考古学や城郭史の話でもあり、動物考古学の話であり、美術史料の解釈の話でもありと、なんだかそれ自体がひとつのジャンルを形成している学問分野だなって感じがしました。

そういえば源平と戦国に挟まれて、南北朝期の軍事史って欠けてるような気もしますね。楠木正成は出自が鎌倉武士ではなさそうですし、鎌倉武士的な合戦の作法は身につけていなかったという気もします。

私はここ数年は動物考古学に非常に興味を持ってますので、「馬」について関心があるのですよね。南北朝に近い鎌倉末期では鎌倉の在木座遺跡の馬が著名ですが、馬の骨は平安から鎌倉時代に多くて、以外なことに戦国になるとぐんと減ります。このことが「武田騎馬隊」の否定説の一因になってるかもしれませんが、私は戦国合戦で馬を使わなかったわけではなかろうと思いますし、埋葬形態が変わって馬の骨を二次加工して使うようになったのかな?とも考えています。

というわけで、南北朝期の馬の位置づけってちょっと興味がありますね。



#9787 
バラージ 2015/03/22 16:41
アブダビさんへ

 その手の話は以前にも話題になったことがありまして、過去ログの9085〜9137のあたりにありますよ。
 源為朝について説明しますと、保元の乱では為朝の属する崇徳上皇軍も敵対する後白河天皇軍も諸武士の連合軍で、攻撃・防御の担当部署は決められてましたので裏口は(当然ながら)別の武士が守ってますし別の武士が攻撃してます。為朝に苦戦してるからと言って自分の持ち場を放棄して他武士が攻撃してる裏口に行ったりするということはあり得ません。なお、最終的に攻撃側は火攻めで崇徳上皇軍側を倒しています。ただ、保元の乱の細かな戦闘経緯は軍記物語である『保元物語』にしか描かれていないので、どこまで信用できるか不明な点もありますが。
 源平合戦時代の戦争については、川合康『源平合戦の虚像を剥ぐ』(講談社選書メチエ、講談社学術文庫)、近藤好和『弓矢と刀剣』(歴史文化ライブラリー)などがくわしいです。



#9786 
アブダビ 2015/03/22 01:44
追記

兄貴のドバイと同様に私も元自衛官ですが、演習といえ近代戦の訓練を受けているので、小説やマンガに出てくる鎌倉武士の戦い方はヌルいと思うのです。
そのヌルさが気持ち良くもあるのですが。だから南北朝はプレ戦国の内戦で、
戦争のやり方が変わったのかな?
とも思うのですが…いかがですか?
あと、暇があればでさが、
兄貴の書いていた「アンゴルモア元寇合戦記」は、題名をググると、
角川書店の無料Web配信で読めます。
暇があった時はどうぞ。



#9785 
アブダビ 2015/03/22 01:06
黒駒さん、管理人さん、質問していいすか?

やっと中高文庫を読み終えました。
で、ふと疑問が…
楠正成とか、ゲバラみたいな戦い方をするのは、多勢に無勢だから…とは思うのですが、なんか鎌倉の古武士っぽくはないですね。
平家物語とか、ああいうのを読むと、
源為朝だったかな…こう、弓の名手が正門の櫓か何かにいて、バタバタ敵を射倒すと。だったら後ろから火をつけるとか、こつそり裏口から入って背中を撃つとかすれば良いのに、正面攻撃にこだわって、沢山死ぬ…とかするシーンを小説で読みました。
鎌倉時代の武士って、そういう戦いを理想としていたような感じが有ります。
ドバイは「後ろから撃つと感状か出ないからだろ!」と申してましたが、そうなのかな?
とにかく、櫂を漕ぐ非戦闘員を射てしまうみたいなリアルな戦争をやるのは義経ぐらいしか思い出せません。
(私は義経が非業の死を遂げたのは、実は美学に反するリアルファイトするので、案外、周囲の鎌倉武士に嫌われていたからでないか?などと考えてます)
それで、南北朝の戦争なんですが、正成
からしてリアルなんすね。
やはり、正成がリアルファイトするので、苦戦した坂東武者が、やってらんねーよ!と 美学も糞も捨てたからなのでしょうか?
或いは関西の悪党たちは、同じ武士でも異なる価値観を持っていたのか?
異文化が衝突して、戦争のやり方が変わったのか?
はたまた南北朝の時代には戦争に動員できる兵士の数が増えて、
人口の少ない鎌倉時代より、より凄惨な戦闘ができるようになった(鎌倉時代は兵士の数が少ないので、あんまり人死にが少ない戦闘法を取っていたという仮説が前提です)のか?
南北朝の戦争は、なんか戦いの質が変わった気がするのですが、私の思い過ごし、もしくは不勉強でしょうか?




#9784 
つね 2015/03/22 00:05
補足

>大和と武蔵
「両舷に副砲があるから武蔵とは言えない」というのは、武蔵が後に副砲を外したからというよりは、大和も最初は両舷に副砲があったが、後に(武蔵も同じく)取り外したからでした。

>視聴率
以前、ここでも話題になりましたが、特に大河ドラマの場合、翌週再放送があり、BSでも放映しているし録画もあるので、昔とは単純比較できませんね。「清盛」とならほぼ同条件でしょうが。技術的には「録画率」は可能みたいですが、TV局側が「録画されているから視聴率が悪いんだ」という言い訳をスポンサーにできなくなるので難色を示していると聞いたことがあります。なんだかなあ、と思ってしまいます。



#9783 
バラージ 2015/03/21 18:30
陸奥のニュースもありました

 戦艦武蔵のニュースのちょっと後に、さらにマイナーな戦艦陸奥のニュースもありました。陸奥は大和・武蔵の1つ前の長門型の戦艦で、1943年に瀬戸内海で停泊中に謎の爆発を起こし沈没。船体の70%は引き上げられたのですが、残りは未だそのままなんだそうです。航行する大型船舶の安全確保のために海上保安庁が海底に沈んだままの陸奥(の一部)の調査をしているというニュースでした。
 陸奥が爆発を起こした理由は未だ不明で様々な説があり、直前に窃盗の容疑者となった乗員、または艦内でいじめにあった乗員の自殺・放火、海に落としたまま回収されなかった爆雷の爆発、さらにはスパイの破壊工作なんて説まであるようです。
 ちなみに末期の新東宝ではこの事件を題材とした『太平洋戦争 謎の戦艦陸奥』という映画が作られています。この映画ではスパイの破壊工作説を採用してるそうですが、単にそれが一番映画として面白くなりそうだったからでしょうね。何しろ新東宝ですから真面目な意図で作ってるとも思えませんし。なんとDVD化もされています(レンタル店で見かけたこともあるが、さすがに観る気はない)。

>ネタニヤフ首相
 選挙に勝った途端、前言を翻してパレスチナ国家を認めると言い出しちゃいましたね。いや、認めないよりは認めるほうがいいんですが、いくらなんでも節操なさすぎやしないか。

>『花燃ゆ』
 欠かさず、といったほどではありませんが、僕は結構観ています。ドラマとしてよくできてますね。視聴率については残念としか言い様がありませんが。ただ来年の『真田丸』も視聴率は期待できないでしょう。何度か書いてますが、近年の男性主人公大河は清四郎くん人気の『天地人』を除けば全部視聴率が低いです(『新選組!』も低かった)。
 朝ドラも一時低視聴率が話題になった時期がありましたが近年は好調ですし、紅白もなんとか下げ止まったようですから、大河もなんとか持ち直してほしいものです。



#9782 
徹夜城(そろそろ恒例行事の構想に入る管理人) 2015/03/21 00:24
後醍醐の選択

 どうも、ちとまた書き込みをお留守にしてしまいました。「史点」更新をやっと果たしたんで、ためこんだレスともどもササッと書き込みます。

 まず昨日のTV番組。僕も放送当日まで気付いてなかったんですが、NHKのBSプレミアム「英雄たちの選択」で後醍醐天皇が取り上げられました。内容としては建武政権が巷間言われるような復古志向ではなく危険なまでに急進的であったという評価(最近そう言われる、みたいな紹介は明白に違うんですが…歴史番組、この手の「新説」演出多いんだよな)、中国の影響を強く受けた政策、歴代天皇の中でも飛び抜けた行動力と執念、いや天皇に限らず数百年に一度レベルの超個性派では…などなどといった紹介がなされてました。
 1時間番組なので全体はかなり駆け足。そして毎回「選択」の場面が入り、ゲストたちが自分ならこうする、みたいな意見を言い合うのですけど、後醍醐の「選択」場面は湊川の戦いの直前、楠木正成が迎撃策ではなく足利軍を京に入れて兵糧攻めにするという献策をした時点に置かれました。「正成作戦の通りにやる」「湊川で迎撃する」「和睦する」の三択という形で、最後のものについては「梅松論」にある正成の和睦献策を紹介してました。
 ま、例によって南北朝マニアの目からみるとそう目新しい話はなかったんですが、四天王寺に残る後醍醐本人の「手形」が映像で紹介されたのが目を引きましたかね。これ、実物大の写真が雑誌に載ったのを持ってるんですけど、後醍醐の手ってデッカいんですよねぇ。


>アブダビさん
 ドバイさんに続いてアブダビさんが登場したので、もしや、とは思っていました(笑)。御同業というお従兄弟さんには愛読していただいてるようで、よろしくお伝えください。「カンニング」なんてとんでもないことで。
 僕も塾では「今年の大河の…」なんてネタにすることはよくあるんですが、去年に比べると明らかに今年は生徒が見ていないんですよねぇ。ま、なんにしても歴史というのは趣味にしちゃうと特に教え込まなくても自分でどんどん覚えちゃうんですが、苦手で受け付けない人にはそれこそ太平洋戦争も関ヶ原の戦いも全部同レベルで脳内に混在している、という実に両極端な教科なのです。

>ドバイさん
 その元寇漫画は未読なのでなんとも言えませんが…ただ、元寇って事件自体は日本史上でもまれなスペクタクル素材には違いないですよね。国際的なスケールで描ける日本史ものというのも珍しいですし、そういうところをふまえてうまくやればかなり面白いかと。
 大河「北条時宗」は、発表時に右派系な人が妙に期待感を示したりしたこともありましたけど、製作体制自体は「国際性」重視で中国ロケまで実行してました。ただ一年もつドラマではなかったようで、脚本がかなり無理な展開になり残念な出来になっちゃった、という印象です。放映後のことでありますが、主演のせいである意味大河史上の黒歴史にされてる観もあります。

>黒駒さん
「花燃ゆ」、当初から苦戦は予想されていましたし…視聴率が低いとなると芸能記事で盛大にネタにされるのは常ですけど、大河は特に標的にされやすいような。ただそれらの記事の大半が書き手に歴史知識や大河の製作事情におもいっきり無知なのをよく目にしますので(「花の乱」が打ち切りだったと本気で書いてるのがいたもんな)、局内で実際にどう言われてるかなんて、ほとんどアテにならないと思いますよ。

 「武蔵」の件ですが、なんでもこれまで模型で出ていたものは図面資料に基づいているとかで、このたび現物を映像で見たらいろいろ違うところもあるとミリタリー模型マニアからは指摘があったようです。といっても「大和」「武蔵」は戦中には存在自体が極秘扱いで(知名度はあったけど)写真も出回るはずがありませんから、しょうがないんですけどね。
 「ブラック・ジャック」が、劇画ブームの一方で虫プロの倒産やヒット漫画の一時的不在で「もう終わった」と言われていた手塚治虫があえて劇画の手法を取りこんだ上で自分のものに消化し、よもやの復活を果たした作品、とはよく言われるところかと。「ヒューマン」といえば、チャンピオンコミックスの単行本はあとで「ヒューマンコミックス」と分類されたものの、当初は「恐怖コミックス」と銘打たれて楳図かずお作品や「魔太郎が来る!」なんかと一緒のカテゴリーだった、というのも知る人ぞ知るの話です。我が家にその時点の単行本が転がっていたりします(のちの単行本でカットされた「植物人間」の一編が入ってます)。

>つねさん
 そう、その「こち亀」の武蔵をとりあげた回、おぼろげに記憶にはあったんですが、正確にどう書いていたのかわかんなくって。
 マッカーサーの言葉に関してですが、少なくとも名取市長は例の上院での証言(日付もありまして)での発言としてとりあげてまして、これは完全に嘘なんです。ただマッカーサー自身が太平洋戦争を馬鹿げたもの、回避できたもの、と考えていたこと自体はそうヘンでもないでしょう。といって日本側の指導者を擁護するようなことを公の場で言うのはないでしょうね。
 「こち亀」でも「劇画調」という表現を使ってた段階がありましたねぇ。というか、そもそも「こち亀」自体が「劇画タッチの絵のギャグ漫画」として始まったわけです。秋本治さんも当初はハードボイルドな作品を書いてて、中川が実はその時のキャラの流用、なんて内幕ばなしも書いてたような。



#9781 
つね 2015/03/20 23:57
視点感想

>武蔵
こち亀で大和と武蔵の違いというのは、部長が模型を見て「大和」と言うのに対し、両津が「これは副砲が両舷にあるので武蔵です」という場面ではないでしょうか。副砲は防御が弱く弱点になることもあって武蔵も最終的には両舷の副砲を外しているので正確な指摘ではないのですが。他にもありましたっけ? 記憶に頼っているので曖昧です。今回の実況中継では、三連装機銃のシールドの有無で話題になったそうで、マニアはすごいと思いました。下手な専門家よりも上手かもしれません。

>マッカーサーの言葉
私自身が保守的なところがあります(基本的に人それぞれと思ってるので声高に唱えたりはしませんが)。マッカーサーの言葉で「自衛戦争」というのは記憶にないのですが、太平洋戦争を「馬鹿げた戦争」か「避けられた戦争」とトルーマンに語ったというのはテレビのドキュメンタリーで聞いた印象はあります。もとになっている可能性はあるかもしれませんので時間ができたら調べてみます。

>漫画と劇画
まさに「ブラック・ジャック・ザ・カルテ・ファイナル」でさいとう・たかをがインタビューを受けていて「私たちはちゃんとしたドラマを見せていくのに、どういう絵がいいかということを凄く悩んだんですよ。私たち以前の先生方っていうのは、手塚先生をはじめ、マンガチックな絵しかなかった。よりリアルなドラマを展開するための絵を工夫したんです」「私には医学的な知識がないのでやれなかったでしょうけれども、こっち(劇画)の絵でみせたらいいのになと思いました」ということからすると表現面が強いのかもしれません。こち亀でも後流悟十三かボルボ西郷かが出ていた回で両津が「この時計だけ劇画になっていない」とつぶやいて、次のコマで時計が劇画調になっている場面がありました。



#9780 
黒駒 2015/03/20 18:55
史点感想

>武蔵
私も吉村さんも「戦艦武蔵」は前に読みました。前半はプロジェクトX風、後半は戦記ものでおもむきが違うのが、良かったですね。私は軍事・戦記ファンではないですから、こういう構成のほうが読みやすいです。「坂の上の雲」も前半は青春もの・文学史で後半は戦記という構成でした。吉村さんの「武蔵」は九州一帯から「棕櫚」が消えるという事件からはじまり、図面紛失事件とか進水式のシーンとか、なかなか面白い逸話があって楽しく読めました。武蔵発見は戦史ファンの関心を呼んでいますけど、水深1000メートルですから現状では引き上げや遺骨・遺品回収は難しいでしょうけど、もう少しミリタリー的関心よりも、遺骨に関して言及されてもいいのではないかと思ってしまいました。遺骨のない戦没者遺族も多いですしねぇ。

>イヌ家畜化
イヌは日本では縄文と弥生でもう形質が違うことがわかってるくらいですし、オオカミとイヌを区別することは容易なのでしょうね。ブタなどは長らくイノシシとの違いがわからない時代が続いて、弥生になると縄文に比べて「イノシシ」の骨が多く出る理由がわからなかったのが、実は家畜としての「ブタ」が混在していたと、80年代くらいにわかっていたようですね。ウマなどは馬具の「ハミ」が奥歯に当たるので、そこに摩耗した痕が残るので家畜化が区別しやすいらしいのですけど。

>漫画と劇画
そういえば最近知人と「漫画」の話をしていて、「ブラックジャックがヒューマンで・・」と言ったら、ブラックジャックは無免許だし高額の報酬を取るし、ヒューマンではないと反論されてしまいました。確かにBJを現代の「ヒューマン」と比較したらそう理解されてしまうのもわかるのですけど、夏目房之介さんの受け売りですがBJは「劇画」をやろうとしたのですよね。夏目さんによればBJの黒マントに片目が見えてるというスタイルは劇画の殺し屋の典型としての絵柄らしいですし、手塚さんは設定だけひっくり返して殺し屋から医者にしたと。ですからBJは当時の劇画と比較するべきであり、劇画と比較すると「ヒューマン」と言えるのではないか、と説明したのですが、どうも理解してもらえないようでした。残念。



#9779 
黒駒 2015/03/17 14:46
花燃ゆ終了待望の声だそうで・・

NHK内では、早くも来年の「真田丸」への期待が高まっている、とのこと。私は花燃ゆにはまだ付き合っているのですけど、けっこう好印象を持ってます。

正直、若手キャストの演技がかなり弱いなとか欠点も感じるのですが、女性脚本家らしい丁寧な話というか、きちんと人間関係で話を進めているあたりが好印象を持ってます。官兵衛さんなんて一年中戦っていたわけで、派手な合戦シーンなど見せ場に依存することなく話を作っている、わりと良い脚本ではないかと思ってます。

あと、主演の井上真央さんの演技が良いですね。やはり子役出身で芸歴長いだけあって演技の水準が高いと思いますし、やっぱり役者さんは俳優さんにしろ女優さんにしろ、演技が成熟してくるのは30から40くらいだなと痛感しました。伊勢谷友介さんの松陰先生もなかなか良くて、私は白洲次郎という人に懐疑的だったので白洲次郎ドラマをちゃんと見てなくて、ちょっと後悔しました。吉田松陰という人の評価もなかなか別れるところだと思いますけど、伊勢谷さんという人もそういう役柄ばかり当てられていますね。

で、冒頭のニュース記事紹介ですけど、私はむしろ真田丸のほうに不安を感じるというか、あまり期待しないほうがと思ってます。三谷幸喜の新選組は良かったと思うのですけど、正直いって映画に転向してからの三谷作品はコメディとしてもドラマとしても中途半端な印象がありますし、長いスランプに入ってるんじゃないかと思うのですよね。蓋を開けてみないとわかりませんけど、私は過度の期待を持たないほうがって、思います。



#9778 
ドバイ 2015/03/17 03:31
ちなみに

アブダビは私の実弟にあたります。兄弟でお世話になります。
どちらもアラブ首長国連邦の都市名をハンドルにしているので、紛らわしいかと思い、蛇足ですが記させていただきました。兄弟揃って歴史好きなのてすが、
二人とも日本史は苦手でして。今後とも
弟共々、お付き合いいただけますよう、
よろしくお願いいたします。



#9777 
ドバイ 2015/03/17 02:46
中世で盛り上がっているように思えましたので

中世史は日本もアジアもヨーロッパも複雑な気がします。
それとは関係なあのですが、職場の歴女から1冊のマンガ(笑)本を借りました。
「アンゴルモア元寇合戦記」角川書店
これは題名の通り元寇ものです。
少なくともマンガ媒体で「元寇」を扱ったものは他に見た記憶がありません。
珍しいケースな気がしたので書き込みました。北条の争いで対馬に流人として流された後家人が、元軍へのレジスタンスの指揮を取る…そういうお話しでした。
面白いのですが複雑な想いも…
中国かを海軍を増強して、あれこれ事件が起き、東アジアの緊張が高まる風潮を
追い風としての出版なのだろうか?
作品としては愉しいですし、合戦ものは好きなので、異国と坂東武者が戦うマンガは興味もあります。
ただ…
私は自衛官だった事もあり、おそらく保守的な方なのだとは思うのですが、
エンターティメントの世界で冷飯を食わされてきた中世の題材が、いきなりマンガという大衆娯楽で現れ、類を見ない(私の私見ですけれども)元寇が主題なのは、
どうも政治的な臭いを感じるのです。
私は祖先には203高地の戦死者もおり、
日中、太平洋戦争で、少なからずの戦死者を出した軍人一族の出であります。
自身も十代〜20代の数年を国防の現場におりました。海外放浪した時期に紛争の現場に居合わせた事もあります。
たから安易な「戦争やりたい」的な若者の意見には拒否感がある。
好きな歴史がそうしたプロバガンダに使われるのであれば、複雑な想いです。
考え過ぎでしょうか?
機会があれば一読、感想を願えれば幸いであります。





#9776 
黒駒 2015/03/15 13:49
中世は大変

「列伝」更新されていたのですね。ようやく畠山氏にまで来ましたか。北条一族がいて、細川頼之・清氏が見えてきましたね。楽しみに拝読させていただきます。

>アブダビ様
中世は本当に教えるのが大変らしいですね。そもそもいちばん研究史の揺れが激しいというか、旧来のモデルが崩れて新しい時代像が構築されている真っ最中ですから、教えるほうもなかなか最新の動向をチェックして子どもに教えるのは、難しかろうと思います。

鎌倉幕府の成立年代であるとか、あるいは頼朝や足利尊氏の画像の像主のように基本的な事項でさえも揺らいでることもありますし、最近だと信長の評価の再考などもありますね。ポピュラーな戦国時代でさえも、戦国大名が「天下」を目指して覇権を繰り広げ統一国家ができたという理解が通じなくなってきて、なかなか大変だろうと思います。



#9775 
アブダビ 2015/03/15 02:45
でも…

やはり、教職者が「カンニング」するのはいただけませんよね?
だって管理人さんの成果を盗んでいる訳でしよう?
言うと逆キレされました。
「中世は大変なの解る?(知らねー)」
「それを江戸時代の前は?
と問うたら、大正時代って本気で答えるガキに、中世を、教えるのが、どんだけかって解るの!?」
う〜ん、今時の公立高校で歴史を教えるのって大変なのですかね?
塾で進学校生徒に教えるのと、どっちが大変だったと聞きますと、
どっちも極端で、頭が痛い!
だそうてす。
日本の歴史教育、なんか間違った道に入っているのですかね?



#9774 
アブダビ 2015/03/15 01:50
追記

従兄弟が管理人さんと同業者でして。
(彼は近代史が専門)
列伝を教えたら、
「御厄介になってます!」((爆))
塾では実はマニアな生徒がツっ込んで来るが、そもそも彼は「明治以前は…」な部分が多々あり、ドラマ放映中には凄い困ったそうで。
こそこそ、ここの記事をチェックしていたそうです。だから、このサイトの知名度が上がらない方が助かる(笑)ですと。
しかし、歴史の研究者も、全ての時代に通じている訳ではないのですね。




#9773 
アブダビ 2015/03/15 01:37
楽しいです

管理人さんと黒駒さんの教示に従い、
本を読みながら、列伝チェックしてます。仕事が煩雑さを増す時期ですので、一気読みできないのが残念ですが。
こらから旗がころころ変わる時期に差し掛かると思うのですが、列伝があるので、そこは安心しています。
いやー、でも日本の南北朝、中国のそれより乱世ですねー。なんかバイオレンス・ジャックに、宗教やら文化やら伝統やら、武力以外要素も盛り込んだ感じ。
こういう混沌とした時代に生きるのはゴメンですが、読む分には実に面白い。
戦国や幕末よりも、歴史としては面白くね? 日本も苦労して日本になったのだなと実感いたしています。



#9772 
徹夜城(先日神保町に出かけてついつい散財した管理人) 2015/03/08 23:59
高い本を買ってしまった

 受験シーズンが個人的には終了したので、つい先日東京は神保町まで出かけてきました。やっぱりああいうところの大型小型の書店を覗くといろいろ買ってしまうんですなぁ。最近は近所に書店がないものでアマゾンで買っちゃうケースも多くなって来てましたが、専門書系のはノーチェックになる(あるいはそもそも扱ってない)ケースが多いので。

 一番高い買い物は新井孝重著「日本中世合戦史の研究」(東京堂出版)。論文・コラムを集めた専門書ですが、こういうのは高いんですよねぇ。消費税込みで9000円越しましたからね。しかしパラパラとめくって論文タイトルをいくつか見たら「こりゃ買わないと」と即断しました。
 新井先生はもともと伊賀の悪党研究ですとか、それにからめて楠木正成についての研究もなさっていてそれらの本も読んでました。この本では南北朝から戦国にかけての「合戦」をテーマに、あれやこれやの研究が載ってまして、やはり正成も扱われてます。「元弘以前の正成」「楠木合戦」の考察、北畠顕家の大遠征、足利尊氏の六波羅攻撃などなどの有名どころもありますが、むしろ僕が注目したのは義貞の鎌倉攻め以来南北朝のさまざまな戦いに参加して多くの一族を失い、しまいには「戦争なんてだいっきらいだ!」の心境にいたった武蔵・高麗一族の研究論文ですとか、護良親王の子とされ常陸から山陽まで各地に出没した謎の皇子「常陸親王」についての考察といった、マニアックな話の方でした(笑)。ほかにもいろいろあるんですが、まだ目を通してない…

 他にも去年出ていたのにすっかり忘れていた「描かれた倭寇・倭寇図巻と抗倭図巻」も購入。これで2000円台は安い!しばらくぶりに「本職」の倭寇研究者の血が騒ぎました。「倭寇図巻」の原本らしい「抗倭図巻」のほうには胡宗憲やら徐海やら、実在人物たちが描かれていた!というのには倭寇マニア的に卒倒しかけました(笑)。
 他に「中世武士選書」シリーズの「駿河今川氏十代」も買っちゃったし、古本でアシモフの科学エッセイやら小説やらも買っちゃったし…で、えらい散財になりました。


>アブダビさん
 中国の南北朝の方も首を突っ込みかけて断念したクチです(笑)。いま中国の大奥ものドラマで南北朝ネタのを見てるんですが、歴史背景はとんと分からないままで。
 でもアブダビさんのお書きの、中世の混沌の魅力、と言うのは分かるような気がしますね。

 日本の南北朝ですが、確かに鎌倉幕府滅亡までは筋が通ってるんで分かりやすい。古典「太平記」もここまではすんなり読めるんですよね。そこから頑張って建武政権崩壊過程と湊川の戦いあたりまでは濃密に劇的。日本史上類をみない全国規模一斉運動の大動乱になりますし。
 そのあと南北朝分裂になって、南朝・北朝の色分けがはっきりしてるうちはまだいいんですけど、そこに「観応の擾乱」が絡んで来て、全国各地で離合集散が繰り返されるともうグチャグチャ(笑)。大河ドラマ「太平記」でもこの辺で投げ出した方も少なくなかったみたいですね。あれは作り手も苦労してそこそこ単純化してまとめましたが。
 南北朝動乱がややこしいのは戦国時代みたいに支配領域の奪い合い、国とり合戦みたいな構図とは違うから、というのもありますね。公家さんたちや寺社業界もあれで結構力を持ってる時代ですから単純に武士どうしの戦いだけで理解はできませんし…

 あ〜ついつい話がまとめられなくなってきましたが、「入門書」につきまして。
 一応定番でお勧めなのは佐藤進一「南北朝の動乱」(中公文庫・日本の歴史シリーズの一冊)でしょう。よくある日本通史概説シリーズの一冊として書かれたものですが、この一冊だけ飛びぬけて評価が高い。今ではちょっと議論のある部分もありますけど大筋で南北朝史を論じる場合は本書は「誰でも読んでる」前提になってると思えるほどです。一般向けを意識して分かりやすい文章ですが、それでいてかなり専門的な議論も紹介していて、「南北朝動乱とは何か」というところまで踏み込んだ「名作」です。
 この時代を知らない人には、「え?こんなことが?」と驚くような話もいっぱい出てきますし、南北朝の奇奇怪怪ぶりを実感できるかと(笑)。あくまで「南北朝時代」担当なので鎌倉幕府滅亡後から南北朝合体と義満時代までが扱われていますけどね。

>黒駒さん
 「南北朝列伝」はまだまだ未完成なので…実は今も作業してるんですが、年代や個人名など誤りも見つけてしまって、ヒヤヒヤしながら自分で読み返してます。



#9771 
黒駒 2015/03/08 00:08
南北朝の入門書といえば

>アブダビ様
やはり、こちらの「南北朝列伝」ではないでしょうか(笑)。基本的に読み物ですから平易に著述されていますし、「人物」から入るのが入門として良いのではないかと思います。複数の人物評伝を読むことで同じ時代の反復学習にもなりますし、足利方、南朝方と立場の違いから読み比べることもできます。いいと思いますよ。



#9770 
アブダビ 2015/03/07 00:45


このところ記事を拝見して思いました。
鎌倉炎上あたりまではスペクタクルに見えるのですが、素人目には!その後の混乱が九州も関西も板東も奥州も、しっちゃかめっちゃかで、何がなんだか解らん!と敬遠してきました。
しかし…この1年くらい中国の方の南北朝の本を読むようになりまして。契機は宮崎市定の本が「さっぱり解らない」ので、腹を立てて、理解できるまで勉強してやると憤慨したのが理由です(笑)
あれこれ読むうちに。解らないなりにツボ(解りにくい理由)が見えてきました。
南朝なら、皇帝が皆、若死にするので、
世継ぎも子供だし、であるので子供が暗君であると解っていても廃嫡できない。
するとバカ天子のオンパレードになって、王朝はぐるぐる代わる。
北も南も分裂、簒奪、粛清だらけで、頭の中かごちゃごちやする。
しかし、それって本当の乱世って事てすよね。
歴史がグローバルからローカルに分裂するので、実に覚え難いのですが、
個々のエピソードには光るものが多い。
鳥瞰しにくく、理解しにくいが、それ故に個々はダイナミックに展開している。
ヨーロッパの歴史でも、フランク王国が分裂して、バイキングが雪崩れ込んでくる辺りの歴史は素人には解りにくいですが、一つは一つ見て行くと面白い。
中世の歴史の楽しさは、このグチャグチャな力の衝突にあるのかと。
それで…今、日本の南北朝の歴史に手を付けようとしています。
とはいえ、一回、大まかな流れを掴んだ方が、学習効率が良いと思います。
そこで、良い入門書があったならば、教えていただけませんか?


南北朝て面白そうですね


#9769 
黒駒 2015/03/05 22:04
森茂暁氏の南北朝本

直義本、刊行されていたのですね。そのうち読みます。そういえば吉川弘文館からも、この3月に「佐々木道誉」「戦争の日本史 南北朝の動乱」が重版されているようです。南北朝ってなんだかんだいって、歴史出版界ではけっこう優遇されてませんか?。

森さんはけっこう読んでますけど、「南朝前史」よりも「闇の歴史 後南朝」を先に書いていたというのは読んでて気付いて、びっくりしました。残念だったのは中公新書の「後醍醐天皇」で、正直言ってこれは内容がいまひとつ薄いですし、後醍醐天皇の定本という評伝ではなかったですね。今後、定本としての後醍醐天皇伝が書かれることを期待したいのですが。

最近は個人評伝だけでなくて氏族評伝でも両著が出てきてますよね。私も最近、戎光祥出版さんの「朝倉孝景」を読みましたけど、南北朝期の朝倉氏にもかなり言及されていました。



#9768 
バラージ 2015/03/03 23:40
いろいろ小ネタ

>木曜時代劇
 4月からの木曜時代劇(地上波)が前田慶次の晩年を描いた『かぶき者 慶次』というドラマになるそうです。木曜時代劇では復活第1作の『あさきゆめみし』以来久々の歴史ネタですね。まあ、慶次の晩年はほぼ不明なのでほとんど創作エピソードになるんでしょうが、もともと歴史ドラマ枠ではなく娯楽時代劇枠ですから。

>蝦夷(えみし)
 僕もアイヌに関してはあまりくわしくないんですが、蝦夷(えみし)は平安中期あたりでほぼ消滅してしまいますからね(奥州藤原氏はもちろん、安倍氏や清原氏についても俘囚(朝廷に帰順した蝦夷)ではなく土着した在庁官人だとする説があります)。人種はもちろん文化的な部分も今となっては知りようのない部分が多すぎるかと。

>高橋是清
 そういえば子どものころに、森繁久彌が主演した高橋是清の単発伝記ドラマを見た記憶があります。調べてみたら『熱い嵐』っていうドラマだったようですね。僕はこのドラマで高橋是清という人物を知りました。森繁の是清はなかなかにはまってたように記憶しています。

>歴史雑誌
 僕も『歴史読本』はほとんど読まないし、『歴史群像』に至っては全く読んだことがなかったりします。ただ、ムックの『歴史群像シリーズ』は結構読んでた時期があります。わりとマイナーな題材も取り上げてくれてましたが、こちらもすっかり出版されなくなりましたね。僕がわりと定期的に読んでた歴史関連雑誌(歴史雑誌そのものではない)は、ボードシミュレーションゲーム誌『タクテクス』と、光栄(現・コーエー)の歴史投稿誌『光栄ゲームパラダイス』→『歴史パラダイス』→『月刊ダ・ガマ』→『歴史ファンワールド』だけだったりします。



#9767 
ドバイ 2015/03/03 15:27
管理人さん、ありがとうございます

地名の件は言われてみて納得です。アイヌ語地名ばかりですから。
蝦夷の人に、北から来た別系統の部族、いろんな部族が集まってアイヌ族が産まれたが、それはヤマトの圧迫によって自覚されるまで、一つの民族集団として意識される事がなかっだけ!
そして民族の成立は年表に何年何月何日と書けるようなものではなく、13世紀だから先住民じゃないなどと言えるものではないということですね。
知人にも伝えます。

ところで鎌倉の蝦夷大乱で、アイヌの戦闘法が…という下りで思い出しました。
ちょっと本を処分してのて、著者名や仔細が解らないのですが…
その毒物をけんきゅする民族学者は、蝦夷大乱の時に、下馬せざる得ない地形に引き込み、ヒット&アウェイで毒矢を浴びせかけてきた話を載せてました。
アイヌ族はトリカブトの毒を用いますし、あの毒はヒグマも倒すそうです。
鎌倉の大鎧は皮革鎧と思うので、石の矢じり(貫通力は金属鏃を上回る)に毒を塗って用いたら、そうした習慣の無い板東武者は困ったのでなあでしょうか?
そういえば三国志には毒矢をうでに受けた関羽が、酒を呑み碁を打ちながら手当てされるシーンが出てきますが、日本人は戦争に毒矢を用いませんね。
指揮官や足(馬)を狙うには有効でしょうけれども。
では、有り難うございました。



#9766 
徹夜城(受験シーズン一段落でぼちぼちいろいろ書きだす管理人) 2015/03/03 13:09
北海道はアイヌ語地名だらけ

>ドバイさん
 ちと出遅れましたが、アイヌの「先住民」論議につきまして。
 「アイヌは先住民じゃない」というトンデモ史観を披露している札幌市議が実際にいるんですよね。トンデモ科学にハマってしまった船橋市議と並び評されているとかなんとか(笑)。
 この話のまとめサイトを覗くと、その市議への批判としてタイトルに書いた「北海道はアイヌ語地名だらけ」という一語で片付く話、と書いてる人もいましたね。
 ちょいと違う話ですが、首相官邸だったか国会のどこかの建物だったか失念したんですけど、イザナギ・イザナギの「国産み」の場面を描いた大壁画に「北海道がないとは何事だ!」と噛みついた無知な国会議員がいたんですよね。日本神話に北海道が出てこないということ自体、あそこを「領土」と認識したのがずいぶんあとであることを示してます。

 さて民族だって歴史的経緯で生まれるものですし、しょせんは当人たちが自覚する、あるいは他者からそう定義づけられるものですから、アイヌ民族成立が13世紀なのはほぼ確実としてもだから「先住民」に疑問符、ってのもおかしな話で。それを言い出すと「日本(ヤマト)民族」とやらだっていつできたのか、という話になってきます。
 蝦夷とアイヌの関係についてはそれこそずいぶん昔から議論が続いてまして…今の時点でなされる一般的説明は、東北にいた蝦夷の末裔やら北方から来た各種民族やらが入り混じって12、3世紀ごろに「アイヌ」とまとめられるような人々ができあがったらしい、ということになりましょうか。北米インディアンもそうですが、「アイヌ」と一口に言っても北海道・千島・樺太でそれぞれ違いがありますし、部族社会(と言っていいのか)の集まりみたいになってたから当人たちは「民族」と自覚してなかったかもしれません。それこそ和人など外圧にさらされた時に初めて一体感を覚える(北米でもまさにそうでした)ということもあるでしょう。

 南北朝史から中世北方史に首を突っ込んでもおりまして、この辺の話はやりだすときりがなくなります(笑)。元軍が樺太に侵攻して樺太アイヌと思われる民族と戦争していたり、鎌倉幕府を揺るがした陸奥安藤氏の「蝦夷大乱」の記録に明らかにアイヌの戦闘方法と思われる描写が出て来ることとか、史料は少ないながらも想像がふくらむ話が多いんですよね。


>足利直義本
 森茂暁さんの新著「足利直義・兄尊氏との対立と理想国家構想」(角川選書)を読了しました。これまでありそうでなかった直義を単独で扱った評伝本になります。いや評伝というより、現時点での直義に関する研究成果まとめ、といった性格が強い本ですね。
 森先生は当人たちが書いた書状類を収集して証拠をもとに堅実に議論を進めるスタイルなので、一般向けにはちととっつきにくいかもしれません。また、あまり思い切った新説を打ち出すというものでもないので、南北朝史にすでに詳しい人は新鮮味を覚えないかもしれません。一方で要領良くコンパクトに史料や論点をまとめているので「現在の直義イメージ」を知るには恰好かと。

 新説というほどでもないんですが、本書では、これまでの直義論であまりクローズアップされなかったある一点に関してはかなり「押し」てます。それは直義の実子・「如意王(如意丸)」の存在です。直義の妻が42歳という高齢出産で産んだ、直義としてはまさかの実子の誕生(直冬を養子にしたくらいで)が、直義とその周辺に「野心」を起こさせた、それが「観応の擾乱」の大きな原因ではないか、という話なんですね。これ、僕も「南北朝列伝」でちょこっと書いてる話なんですが、やっぱりそこに話がいくか、と。
 しかし直義が一時的に勝利を収めた直後に如意王は5歳で夭折。以後の直義はセミの抜け殻のようであった…という記述が直義好きには涙を誘うところです。
 直義といえば長らく「源頼朝像」とされた神護寺の肖像画についても当然のように触れてまして、直義の肖像であるとの説を歴史的背景もふまえて完全支持しています。

 余談のようですが、本書で書かれていて初めて知ったのが、作家の杉本苑子さんが佐藤進一先生の名著「南北朝の動乱」の付録(発刊当時についてたもの)の中で佐藤さんと対談されていて、「直義ラブ」を告白していた、という事実でした(笑)。なんか不思議と女性に人気があるんだよな、ということを本書でも書いてますね(湯口聖子さんの漫画の方は知ってるんだろうか…)



#9765 
ドバイ 2015/03/03 04:26
黒駒さんありがとうございます

丁寧な回答を感謝いたします。
DNA判定は絶対的ではないのですね?
私は手塚治の「シュマリ」に憧れ、北海道に自衛官として渡り、除隊後にはアイヌ系の猟友会の先輩に、追跡猟や罠猟を習いました。
そのせいか、アイヌ系の方たちに同情的です。
仮にアイヌ族が成立したのが、ヤマト族の北海道植民の後であったとしても、独自の文化を築いた事は確かだと思います。寛容さが欠ける今の時代、居住地の近くでも駅でヘイト・スピーチを聞くようになりました。
だからこそ、日本人にも色々なルーツがあって、様々な文化があったと、多様性を学べる点でも、彼らの文化保存にお金を出すことは、「アイヌ系でない日本人」にも有益であると考えたいのです。
それに「原住民」がアイヌか倭人かは、
エベレスト初登頂ではあるまいし、
「どっちが先か?」は文化的には意味がないと思うています。
次いで語らせていただければ、ヘイトスピーチ、する人たちは「発言、表現の自由権」を主張しますが、では「聞きたくない者の権利は無いのか?」とも思います。逸脱しましたが、
親切なアドバイス、有り難うございます。同僚の若者に伝えます。



#9764 
黒駒 2015/03/02 16:27
DNA分析は慎重に・・

>ドバイさん
若干お話が見えにくい部分がありますしアイヌの起源に関しては私の手にあまるので回答は他の方にお任せするのですが、ただ近年のDNA分析の歴史学への応用というのは、慎重に見たほうがいいと思います。

DNA分析は考古学・歴史学において重要な手法には間違いありませんし、人類でも動物でも作物でもなんでもそうだと思うのですが、まだまだ手法の確立が途上というか、まず試料の問題もありますし、どこの塩基配列に注目するかで結果がまったく異なることも起きてるようですし、慎重に見たほうが良いという指摘も聞きますね。DNA分析は重要ですが、動物考古学であれば従来の形態的な特徴であるとか、土器などの他の考古資料や文献資料の成果と付きあわせて考えるべきであろうと思います。

DNA分析という手法が出てきてから、ある最新の研究が出たらそれを確実視してまるで事実が判明したようにおっしゃる人を見かけるようになりましたし、それが後の研究で覆ったりする事例を見てますので、DNA分析は慎重に見たほうが良いなと思うようになりました。



#9763 
ドバイ 2015/03/02 03:24
どなたか教えてください

職場にアイヌ族の血を受け継ぐ青年がいまして、私と「ヴィンランドサガ」てマンガの話題で盛り上がりました。この作品はコロンブス以前に、新大陸に到達さたとされる、レイフ・エリクスソンというバイキングの親族の戦士が主役。
戦乱のない国を作ろうと、伝説のアメリカ大陸を目指す物語です。
バイキングの渡航は私の子供時代は仮説に過ぎませんでしたが、考古学調査により、カナダのラブラドール州のニューファラウンド島にコロニーを築いていたのは今や定説なそうで。
ラブラドール・レトリバー犬の先祖になったニューファラウンド犬は、バイキングの連れてきた犬の子孫だとか。
それで、話しわしていた青年に十数年前に新聞で読んだネタを話したのですね。
アメリカ本土の陸軍基地で、白人のものと推定される頭骨が見つかり大騒動になったと。
アメリカってけったいな国で、
「バイキングは新世界を撤退せず、本土に渡った!我々はその子孫である!」
と主張する人々がいるそうで。
彼らが先祖の遺体として返還の訴訟を起こしたと。
ところが、先住民に白人がいる…て説は
厄介な政治的な問題をはらむ訳で、
先住民協会が激怒して、DNA鑑定および放射性炭素年代測定を政府に求める訴訟を起こしたと。
当時は未だヒト・ゲノム解析が完全に終えておらず、DNA鑑定も刑事事件で誤解が出たり、技術的に問題がありました。
アメリカ政府は困るわけです。
そこへ、日本の人類学者がアイヌの研究を持ち寄り、「モンゴロイドにも白人にに似た人たちがいたよ!」と主張して、
政治的な危機を脱したらしいんです。
私はこの話をアイヌ系の人に肯定的な話として語ったのですが、
彼は顔を曇らせるのです。事情を聞くと…実はゲノム解析から、アイヌ族が蝦夷の子孫(ヤマトに追われて北海道に渡った)のではなく、ツーングース系の種族であり、民族として成立したのが13世紀頃であるとされつつあるらしいのです。
そして歴史学や考古学の成果から、アイヌ民族が成立する以前に、ヤマト民族かを北海道に植民していたのが明らかになりつつあると。
この為に「アイヌは先住民ではない!」として、国の文化などへの予算を「しはらう根拠がない!」と排斥活動が始まっているのだとか。
本当にアイヌの人たちは蝦夷ではなあのでしょうか?
仮にそうだとしても、独自の文化を持ってたし、明治以後に迫害を受けたのは事実なのだから、予算を出しても構わないと思うていますが。
まず問題の「先住民か否か」を知ることは必要だとも思うので、投稿させていたたをきました。御意見をいただければ幸いです。



#9762 
ひで 2015/03/01 15:37
広く浅く歴史に興味をもってもらう方が必要な気がするんだよなあ。

深くはまるのはそっから後で十分でしょう。仕掛方は色々ありそうです。

>「歴史群像」
マニアックとか濃いというより、ミリタリー分野に的を絞っていき、それ以外が載らなくなったという雑誌ですからねえ、アレ。そっち系の分野の時は売れ行きが良かったと言うことが背景にはあるとか。ある意味日本の“歴史好き”というのがどういう物なのか、その一面を著している雑誌ではあるともいますが、日本における“歴史好き”の分野的な偏りを体現しているような雑誌でもありました。そして、“歴史好き”に対するイメージを固定化させる要因でもあるかなと。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9761 
徹夜城(受験シーズンもいよいよ大詰めの管理人) 2015/02/28 00:09
歴史雑誌ってあんまり読んでないんですよねぇ。

 時期が時期なので、書き込みやら更新やらをする精神的余裕がありませんでした。現時点でまだ終わってないんですけどねぇ、ほぼあとは受験する当人たちの努力次第というところです。運を天に任せた、とも言います。

>ドバイさん
 ずいぶん反応が遅れてしまいましたが、スコットランドでのご経験、面白く拝読しました。ロバート・ザ・ブルースは「ブレイブハート」にも出てきましたけど、本国のほうでは彼を主役にしたドラマなんかもあるようですね。
 卒業シーズンの定番のひとつ「蛍の光」は確かにスコットランド民謡なんですよねぇ。それに「蛍の光、窓の雪」と中国の故事成語をのっけたところが面白い。


>黒駒さん
 「経世済民の男」、大河ドラマとは別にこういう企画があってもいいよな、という話ですね。
 高橋是清は最近では「坂の上の雲」で西田敏行が演じてましたが、後年「ダルマ」とあだ名されるだけにグッドキャスティングと思ってまして…さすがに再起用はなかったですねぇ。日露戦争段階までしか描かれませんでしたが、あの西田是清で二・二六事件の最期を見て見たい気もします(過去の二・二六もので1シーン登場は結構あるんですが)。

 学研の「不採算部門」整理の話は、僕もネット上の知り合いで歴史ライターの方も若干居るので耳には入って来ました。「M文庫」は消えるけど、とりあえず「歴史群像」は今のところ大丈夫と言うことになってるらしいです。
 新人物往来社の「歴史読本」…正直なところ僕も全然読んでませんでしたし(南北朝特集でもやらないと読まない(笑))、同じネタを何度も何度も、実のところあまり濃くない内容(「群像」は濃いんですけどね)とで、わざわざ買ってまで読む気はおきなかったんですね。だから季刊になると聞いても「やっぱりなぁ」と。
 かつては中央公論社の「歴史と人物」、秋田書店の「歴史と旅」なんてのもあったんですが、どんどん消えて行ってしまってますね。最近はカラー大判薄型タイプ、ムックタイプの歴史雑誌が中心で、一般向けのライトなものもありますが、マニアックなものはとことんマニアックに走ってる傾向です。だけどマニアックに走るならそれこそネットの歴史サイトにかないませんもんねぇ。
 どっちにしても「南北朝時代」はそれこそ「不採算部門」なので(涙)、まず取り上げられることがありません(大河にでもならんとなぁ)。だから自分でやるしかないな、とこんなサイトをやってるわけですが。



#9760 
黒駒 2015/02/26 17:05
歴史系出版冬の時代・・

先ごろ「歴史読本」が3月をもって季刊化されるというニュースがありましたけど、今度は学研が不採算部門整理で、「学研M文庫」「歴史読本」がなくなるとのことです。歴史系ライターさんたちが悲鳴を挙げてますね。「M文庫」などは硬派な歴史読み物から路線を変えたりいろいろしていたようですけど、出版界の厳しさを感じますね。

一方で歴史書出版は戎光祥出版のようにより専門的にマニアックに特化したところもありますし、マクロで見ると出版不況なのですがミクロ的にみるとそういう様相があって、面白いものです。変な例ですが、自民党がこれだけ勝っていても地方では民主王国がぽつぽつ生まれつつあるような状況と似てるなとか思っちゃいました。政治も経済も出版も、マクロ的視点とミクロ的なそれでは、様相が違うものです。

ともあれ、歴史系ライターさんの仕事が減っちゃうのは、いろいろよそにも影響は出てくるだろうなと懸念します。



#9759 
黒駒 2015/02/18 23:08
経世済民の男

経世済民の男

NHKで「経世済民の男」と題した近代実業家ドラマを三部作で制作、だそうです。高橋是清に小林一三、松永安左エ門。松永安左ェ門は脚本が池端俊策氏のようですね。私は小林一三に注目してしまうのですが、脚本が松永が池端氏、高橋是清がジェームス三木なのに対し、小林一三は主演が阿部サダヲで脚本は連続テレビ小説の女性作家の人らしいですから、一本だけカラーの違う作品になるかもなと思います。花子とアンにつづいて前半生で山梨県近代史の世界が描かれるかなと期待するのですが。

阪急創設者である小林一三は、地元の家伝史料をまとめて引き上げてしまったので、地元にあまり史料が残ってないのですよね。いわゆる「甲州財閥」の一人とも言われますが、甲州財閥というのはかなり実業者同士の郷土意識が強く(反発もするのですが)、共同で出資して鉄道や電力会社を買い占めたりして東京の実業界でも隠然たる影響力を持っていたのですが、小林一三は関西に進出したため、こうした共同出資とは距離を置いていて、ややカラーが異なるのですよね。

小林は若い頃に『練絲痕(れんしこん)』という小説も書いていて文化的関心も強かったらしく、宝塚も創立しますし、古美術蒐集なども行いました。また、近年は茶人としての活動にも注目され、甲州財閥でも根津嘉一郎なども同じく茶人として活動し、近代の実業家の多くは茶会を通じて情報交換などをしていたらしいですね。

ところで甲州財閥には甲州屋忠右衛門というあまり知られていない人物がいます。この人は甲州財閥の先駆けとなった人で、幕末に横浜開港したらいち早く甲州の生糸を輸出して、横浜において新興商業家として台頭したのですよね。ただ、フランスの養蚕不況の影響だったと思いますが、生糸価格の暴落により没落してしまい、のちの甲州財閥のように歴史にあまり名が残ることはありませんでした。

想像してみれば当たり前のことですけど、明治とか近代の実業家が全員成功したわけでなくて、「敗者の物語」はあるわけですよね。むかしプロジェクトXが流行ったときも、高度成長期には裏面史があって敗残者たちの物語もたくさんある。NHKもそういうところに注目するべきと指摘している人もいたのですが、確かにそういうこともあるのだろうなと思います。



#9758 
ドバイ 2015/02/14 05:14
蛍の光

2月の後半であります。
柔道整復師、看護師、理学療法師、鍼灸師、そして医師…医療系の国家試験が連なる時期であります。
私は看護師と鍼灸師の免許を持ちますが、今年はいずれも試験の出題者が刷新される年でいるので、後輩の事が危ぶまれます。
彼らも来月には、「蛍の光」を歌うのだと思います。
もう四半世紀前ですが、スコッチ・ウイスキーの酒造呑み歩きと、ロバート・ブルース王の史跡巡りの旅行をスコットランドにした事があります。
ロバート・ブルース王は映画の「ブレイブ・ハート」で、メル・ギブソンの理解者として出てくる人ですね。
同行して通訳をしてくれた大学の日本語学科の学生さんが、
「この人はロバート・ブルース王の史跡を観る為に日本から来たのだ」
とスコットランドの田舎のパブで話したら、屈強な牧童や農夫の青年たちが敬礼したので驚きました。
何か演説しろと言われたのですが、私は英語が話せません。
ヤケクソになって、蛍の光を歌ったら、
なんか大合唱になりました。
スコッチにとって大事な歌だったのですね。
帰りがけに、バーテンや店長と通訳の大学生が話していたと思うと、通訳の大学生が教えてくれました。
日本人は別れの歌だけど、我々には再会の歌なのだ!
また戻って来い、この店で再会の喜びに歌おう!って。
あれから四半世紀たちますが、未だにクリスマス・ガードのやり取りを、しています。
今、アジアで布教をしているシスターと婚約しています。彼女と結婚を、遂げたら、彼と今度こそ、再会の「蛍の光」を歌うつもりです。
管理人さんの教え子の皆さんが、合格するすることを祈っています。そして、
これからも歴史に愛着を持ってくれたらば、嬉しいと思い、願います。
私事を書いてすみません。




#9756 
ドバイ 2015/02/13 16:14
出エジプト…

管理人さんへ、
丁寧な返事ありがとうございます。
テュルク(チュルク?)ですが…
職場(病院)のドクターが言ってました。
生物が固有の種だけで遺伝的な変異をするにはるのは 時間がかかるけれども、
ホモ・サピエンス見たいに基本が同種(一種)の中での小進化は、車メーカーのマイナーチェンジみたいなもので、そこに混血という要素が加わると 、数世紀で外見がガラッと変わってしまうこともあるそうです。



#9755 
徹夜城(十戒映画を述懐する管理人) 2015/02/12 23:52
出エジプト3D

 本日、「エクソダス神と王」を見てきました。歴史スペクタクルものを3Dで見たのはこれが初めてだったような。
 元ネタがしっかりあるからしかたありませんけど、やっぱり「十戒」リメイク作になっちゃったな、という印象です。宗教色は薄めていて、エジプトに次々起こる災難も科学的に一応の説明がつくレベルにはなってますし、少年の姿でモーセの前に現れる「神」もしくは「神の使い」は他人には見えず、モーセの脳内妄想(幻覚?)ではなかろうか、という描写になってました。この辺、リュック=ベッソンの「ジャンヌ・ダルク」に似てますね。
 出エジプトとくれば、紅海渡りが見せ場になるわけですが、ネタばれで書きますと、本作では「津波の前触れの大潮引け」の間に海を渡り、そのあと津波本体が押し寄せて来るという描かれ方です。インド洋大津波やら東日本震災やらを経たからこその描写ですね。

 この映画ではモーセは割と無計画でして(笑)、ヘブライ人たちを引き連れて紅海のほとりまで来てどうしたものかと途方に暮れちゃう。ヤケクソになってラムセスとペアで持っている剣を海に放り投げ、ひと眠りしたら潮が引いていた、という描写になってまして…
 おいおい、稲村ケ崎の新田義貞かよ!とツッコんでしまった南北朝マニアがどれだけいたことか(笑)。

 結局見逃したんですけど去年は「ノア約束の舟」もありましたし、聖書ネタ映画がまたちょこちょこあるのかな。都内の一部で公開中なんだそうですが、「サン・オブ・ゴッド」というキリスト映画もあるそうです。


>ドバイさん
レスが遅れまして、すいません。
 トルコ系民族は古代中国史では「鉄勒」だの「突厥」だのといった表記で登場し、いずれもちゃんと「チュルク(トルコ)」という発音を表現しているところが凄いなあと前から思ってるんですが、この時期の彼らはどういう顔つきだったのか分かんないんですよね。研究者のどなたかはこの時期は完全に東アジア的な顔つきだったと書かれているようなんですが…でも「楼蘭の美女」なんかは西洋風な顔立ちだったような気もしたんですがね。
 どっちにしても中央アジアはそれこそ民族大移動の通り道ですし、なんだかんだでさっさと混血してヨーロッパ的な顔立ちになっちゃった、ということかもしれません。先日見たケマル・アタチュルクの伝記映画でもケマルの母親の描写とか、こっちから見るとえらく「ヨーロッパ的」でしたしねぇ。
 連想話ですが、今日映画館で「ナイト・ミュージアム」シリーズの予告編をやってまして、あれに「アッティラ」が出て来るんですが、これが思いっきりモンゴル風(というか東アジア風)な人が演じてます。欧米ではアッティラ=フン族と言うとモンゴルと一緒、ってイメージになってるらしい。フン=匈奴という説は有力ではあるんですが匈奴がモンゴル系なのかトルコ系なのかはまだ議論があったはず。少なくとも現代のトルコ共和国ではフン=トルコ系と見なしていて、ディズニーアニメ「ムーラン」のフン族描写に抗議活動が起こっていた記憶があります。


>黒駒さん
 一応「ヨーロッパ」はキリスト教世界オンリーではない建前なんですが、やっぱり「建前」であってトルコに対しては「お前は違うだろ」と言っちゃう人は多いわけです。以前ジスカールデスタン元仏大統領なんかもはっきり言っちゃったことがあったし。そうするとトルコでは「EUは所詮キリスト教徒サロンなのかよ」と反発も起こるんですが、それでもやっぱりEUに入るのだ、という姿勢は変わんないらしいんですね。
 
 歴史関係の報道についてですが、「ニュース」というものの性格上、発見話が中心になるのは、まぁ仕方がないかなぁ、とも。報道ってのはとにかく「第一号」が大事であとのフォローにはあんまり力を入れませんし、何かとセンセーショナルに書き立てる悪い癖にもなってますね。


>バラージさん
いや〜やっぱり他人の目って大事だなぁと思うことしきり。ずいぶんやっちゃってるもんですね。作ってる当人だとかえってミスに気付かないってことがあるわけで。まぁ次の更新時にでも直しておきます。
「おんな太閤記」のテレ東版は放送時にちょこっとだけ見てて、森光子のナレーションのあぶなっかしさに見てられなくなった覚えが(汗)。いま「原作」のほうの「おんな太閤記」も全話見始めているところなので、リメイク版はそっちを見終えてからということになりそうです。



#9754 
バラージ 2015/02/10 22:38
歴史映像名画座

 俳優と役名が逆になっているものを、いちいち見つけるたびにちょこちょこ指摘するのもあれなんで、ざっと全般的に目を通して調べて観ました。以下のものが逆になっています(見落としもあるかもしれませんが……)。

『塚原卜伝』の松本備前守と永島敏行、龍子と江波杏子。
映画版『風林火山』の武田勝頼と中村勘九郎。
『おんな風林火山』の俳優と配役のすべて。
『乱』の鶴丸と野村武司=野村萬斎。
『信長』の帰蝶と菊池桃子。
『江』の柴田勝家と大地康雄。
『琉球の風』の真鶴と小柳ルミ子。
『徳川綱吉』の桂昌院と戸田恵子。
『河井継之助』のすがと稲森いずみ、安子と京野ことみ、川島億次郎と吹越満、山本帯刀と田中実。
『吶喊』のお糸と伊佐山ひろ子。
『テンペスト』の尚育王と高橋和也、尚泰王と染谷将太。
日本のドラマ『水滸伝』の小蘭と松尾嘉代。
『大聖堂』のバーソロミューとドナルド=サザーランド。

・その他に気づいた点
『紀元前1万年』の日本公開年がおかしい(先史時代執筆の時点では日本公開年も掲載されてたんですね。その後なくなっちゃったみたいだけど)。
『柳生一族の陰謀』の西郷輝彦の役名は徳川忠長、三船敏郎の役名は徳川義直が正しい。
『徳川慶喜』の石田ひかりの役名は美賀が正しい。
『JFK』でゲイリー・オールドマン演じるオズワルドが重複して2つ掲載されている。

・その他、未記載情報
『陰陽師』は、同時期に同じ原作がNHKで連続ドラマ化されている(主演は稲垣吾郎)。
『おんな太閤記』は、テレビ東京新春ワイド時代劇でリメイクあり(主演は仲間由紀恵)。

 以上、なんか重箱の隅をつつくみたいになっちゃって申し訳ないっす。



#9753 
黒駒 2015/02/08 23:58
記名忘れ。

すいません。下の書き込みは記名し忘れました。



#9752 
歴史上の「発見」について 2015/02/08 23:58


史点などを読んでいてもたまに思うことですが、ニュースにおいて報じられる歴史的話題というとたいていが「新発見」に関するものですね。考古遺跡から何か重要な遺構や遺物が出たとか、新出の文書が発見されたとか、所在不明になっていたものが再発見されたとか。

「新発見」はもちろん学術的にも重要なものが多いわけですけど、最近織田信長の禁制一点が出てきただけでも記事になってるのを見て、歴史に関する報道っていうのは発見の意義そのものよりも「発見」という事実自体が重要なのかな?と思いました。信長の禁制が出てきた意義よりも、「織田信長の新発見の文書」という世間に話題提供を行うことが重要なわけですよね。

「新発見」は一発でニュースになるわけですが、考古学でも文献史学でも、膨大な史料を精査した研究成果というのが報道にはならず、何か「新発見」がればすぐに報道されるというのも、解せないものがあります。もちろん、新出の古文書なんかも偶然発見されたものもあれば、研究者の執念により発見されるケースもあるのですが。

もちろん、研究のほうが報道されることがあるにはあるのですが、だいたい「通説では何々とされているけれど、最近の研究で違うとわかってきた」という文脈でしか報道されていない気もします。

政治・社会であれば調査報道というものもなされるのですけど、しょせん歴史に関するニュースっていうのは文化蘭に載るものであり、刺身のツマなのかな、と思いました。



#9751 
バラージ 2015/02/07 00:23
邦題をつけ放題(特に意味はない)

>皇帝と公爵
 正確なDVD邦題は『ナポレオンに勝ち続けた男 皇帝と公爵』で、劇場公開邦題もサブタイトルとして一応残ってました。Wikipediaによると、最初に映画祭で公開された際の邦題は『ウェリントン将軍 ナポレオンを倒した男』だったそうで、最初の邦題に戻っちゃった感じですね。まあ原題にも「Wellington」は入っちゃってますし、案外製作者側も「Wellingtonとでも付けとかねーと、客が入んねーだろ」とか思ってたのかも。個人的には、タイトルというのは人の興味を引くようなものである必要があるわけで、そういう意味では劇場公開邦題が一番つまんなそうなんだよなあ。『皇帝と公爵』なんていう味もそっけもない邦題で、「面白そうなタイトルだなあ。どんな映画なんだろ?」と思う人がいるとは到底思えないんですけど……。
 ちなみに僕の地元では劇場公開されなかったんですが、去年超久しぶりに大学時代に住んでた仙台に行った折に、1館だけ残っていた学生当時からの映画館(他は全てつぶれていた……。代わりにシネコンとか新しい映画館がいくつかできてました)で上映されてました。『ほとりの朔子』(こちらも地元じゃ上映されず)という日本の青春映画と交互に上映されてたんですが、僕は迷うことなく『ほとりの朔子』のほうを観ちゃいましたです、はい(笑)。

>イスラム国人質事件
 以前からわかっていたこととはいえ、とんでもないことをするやつらだな、とも思ったんですが、いま久しぶりに読み直している村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』でちょうど「皮剥ぎボリス」のところを読んでたんで、こういう残虐性というのは歴史の中で決して前例のない特別なことではないんだよな……、とも感じましたね。



#9750 
ドバイ 2015/02/06 22:20
トルコ人て白人なんですか?

突穴とか柔然とか、そんな名前で中国史に出てくる騎馬の民が、ずうっと西に行ってトルコ人になったとか。
でも、トルコ料理店のトルコ人を観ると、ぜんぜん白人ぽくてアジア人してないのです。昔、パキスタンのトライバルエリアで、アフガン人(パシュトーン族)よりアーリアぽくて、眼が青や緑の人を沢山みました。彼らの幾人かはアレクサンダーの軍隊に子孫たとかフカしてました。他にもイズマリとか呼ばれるひどく嫌われている部落とかあって、アサシンの子孫とか言われてまして。
こんなぐあいですから、何とかスタンの国々から西に行く途中で、色んな人種が混血されてのでしょうが、トルコ民族の出エジプトじゃなかった、出中国はせいぜい1000年くらい前だと思うのです。
たかが10世紀ぐらいで、人種がモンゴロイドからコーカソイドに変わるなんてことがあるのでしょうか?
不思議でならないのです。管理人さんのお考えを伺えますか?



#9749 
黒駒 2015/02/06 01:31
トルコは「ヨーロッパ」か?

そういえば、2000年くらいにトルコのEU加盟は良くニュースになりましたね。あれはどうなったのでしょうか。トルコはもちろんキリスト教国でなく「ヨーロッパ」であるはずはありませんけど、かといってアラブ人国家でもなく、人種的には中央アジアに近いのですけど、中東に立国してしまっている。

オスマン・トルコの時代であればトルコはイスラム圏のなかでも「トルコ」という帝国として君臨したわけですが、いまは近代化を成し得たとは言え、中小国家であるからEUとして大国となった「ヨーロッパ」と、イスラムの間でどちらに属するべきかという悩みはあるのでしょうね。台頭する中国に属するか西側に属し続けるかという、韓国の抱える悩みと似ているかもです。

連想するのは日本の戦国時代の「国衆」論というやつです。来年大河の「真田」がまさに国衆そのものなのですが(戦国大名と思っている人も少なからずいますね)、戦国時代の大国間に存在した国衆は、台頭する戦国大名の間に挟まれてどちらに属するべきかと悩みますし、両属とか半手(双方に半分ずつ年貢納入)とか、様々な方法で生き残りを図ります。

「戦国」の最終的段階となった小田原合戦にしても、北条と豊臣政権が拮抗する中で真田領を巡る争いが全面戦争に発展するわけですから、国衆論を学んでいると、これは現代の世界に敷衍できる話であるなと、たびたび思います。

>歴史小説
司馬遼太郎などは確かに歴史小説しか書いてないずいぶんストイックな作家なのですが、歴史小説の中でも前期の娯楽小説・剣豪小説から文明史観もの、歴史エッセイと変化している人ではありますよね。アイザック・アシモフという人はSFとミステリーを書いて、SF作品でミステリーも取り込んだと、こちらのサイトの紹介で読みましたけど。

なんか、歴史小説とSFって似てるかもしれないなと思いますね。歴史小説といっても司馬的なひとつのサブジャンルに過ぎないのでしょうけど、歴史小説というものが過去の歴史に題材を取って今日的意義を引き出してくる文学のジャンルであるとすれば、SFっていうのは今日の社会の抱える問題をそのまま敷衍したら未来社会はどうなるだろうと考えて、未来の寓話として今日的意義を提示するジャンルではないかと、そんなことを考えちゃいました。



#9748 
徹夜城(ここんとこトルコ史映画ドラマづいている管理人) 2015/02/06 00:45
ヨーロッパへの片思い?

 ここんとこトルコ史関連を映像作品を立てつづけに見てましてね。オスマン一世とケマル・アタチュルクだけじゃ…と思い、コンスタンチノープル陥落を描いた作品を三つも立てつづけに見てしまいました。白黒映画、児童向けアニメ、そしてつい最近作られたCGバリバリの大作まで。当然なんでしょうが、元ネタがおんなじなので全く同じシーンが手を変え品を変え出てきます。なんか「木口小平は死んだらラッパを離しませんでした」(笑)みたいな場面がどれにもあるんだよなぁ。


>バラージさん
 まぁ僕も直接トルコに見聞きしに行ったわけではないんですが、トルコがらみの本とかTVとか見てると出てくる話なんですよね、近代トルコの「ヨーロッパ志向」の強烈さというのは。

 これは歴史的に見ると東欧まで支配していたオスマン帝国時代からジワジワとありまして、上記のコンスタンチノープルを攻め落としたメフメト二世からして結構ヨーロッパ趣味でしたし、近代になって西欧に押され気味になってくると「西欧的」な改革が何度か行われていて、領土的にはヨーロッパ部分はほとんど失ってしまったトルコ共和国時代になってその建国者ケマル・アタチュルク自身の強い西欧志向(嗜好?)もあってますます「ヨーロッパ的」になっていったんですね。

 だいたい先日見たケマル映画でも強調されていたんですが、ケマルは現在のギリシャの出身であり、今のトルコ領内にも多数のギリシャ人がいて戦争と民族交換をするまではトルコ人もギリシャ人も結構ゴチャゴチャに住んでたわけです。キプロスの「分断」もそういうことなんですけど、あれも「統一」志向はあるらしいんですよね。また一方の「ヨーロッパ的」で「古代ギリシャ後継者」な顔をしてるギリシャ人意識ってのも完全に近代の産物だったりします。

 そんなケマルの思いもあってかトルコってスポーツの国際大会でもヨーロッパ枠ですし、20年来「EU入り」が国家的悲願なんですよねぇ…今の政権はイスラム保守志向だと言われてるんだけど、その点はほとんど「ブレ」てないみたいだし。EU入りを果たすためにこれまでやってきたあれやこれやの涙ぐましい努力を見ていると、その「片思い」っぷりは凄い物があると思います。これでウクライナに先にEU入りが認められたらさすがに激怒しそうな気がするけど。

「皇帝と公爵」のDVD化ですか…劇場公開時の邦題もどうかと思いましたが(ナポレオンは全く出てこない)、DVDは別方向にもっと暴走しましたねぇ(笑)。ウェリントン主役映画だと勘違いさせて売ってしまおうという(笑)。



#9747 
バラージ 2015/02/05 23:51
トルコのコルト(特に意味はない)

>ヨーロッパ枠に入れたのは…結局のところ今のトルコ人が「ヨーロッパ」と言い張るから

 えー、そうだったんですか!? それは不勉強にして初耳でした。まあ、確かにトルコ共和国はバルカン半島に少し領土を持ってますが……。ビザンチン帝国時代の意識の名残なのかなあ(ギリシャなんかにはそういうところがあるらしい)。

 『獄に咲く花』は題材だけでなく出演俳優もずいぶん地味な映画なんですが、なぜか僕の地方でも上映されました。『長州ファイブ』を製作した会社の第2作なんだそうです。僕は興味がないのとあまりに地味だったため観ませんでしたが。

>DVD化情報
 『皇帝と公爵』が、『ナポレオンに勝ち続けた男』というタイトルでDVD化されました。

>陳舜臣追記
 陳舜臣はデビュー作をはじめとする初期の作品には推理小説・ミステリー小説が多く、歴史小説一辺倒の人ではなかったんですよね。そういう小説家は他にも多く、途中から歴史小説に転身したという人や、現代小説や時代小説を主として時々歴史小説も書くという人のほうが圧倒的に多い。むしろ司馬遼太郎のように最初から歴史小説一辺倒という人のほうが珍しいんですよねえ。



#9746 
徹夜城(受験シーズンに風邪をひいた塾講師の管理人) 2015/02/04 22:04
風邪も治り

レスが少々遅れました。ここんとこ季節がら忙しいのと、そのタイミングに風邪で寝込むというのをやっちゃいまして…
「史点」もネタだけためてずいぶん遅れてまして、人質事件の何らかの解決でも機に、とも考えていたんですけど、最悪な結末になってしまいました。それにしてもまぁ、そこまでするかということをホントにやっちゃう連中だなぁ…(汗)。そういうところも含めていろいろ無理が出て来てるようにも思うんですが。


>バラージさん
 「歴史映像名画座」のトルコの件は、ホントに熟慮の末なんですよ。本音を言えばオスマン帝国初代のドラマは「イスラム圏史」枠にしたかったとこなんですが、ケマルの映画やドラマを今後入れていくことを考えると「トルコ史」という枠を作っちゃった方がいいだろうと。そして本数揃えにオスマン1世もこっちに来ていただこうと。気がついたらオスマン帝国を建てた人と滅ぼした人の伝記作品が並んでしまいました。
 ヨーロッパ枠に入れたのは…結局のところ今のトルコ人が「ヨーロッパ」と言い張るから、というのを考慮したからです。僕自身それはどうなのかと思ってるのは事実なんですが、トルコの人がひょっこり見てどう思われるかというのもいくぶん気にしておりまして。

 今回入れた「Veda(さらば)」はケマル=アタチュルクの伝記映画で、ずいぶん昔に「しりとり人物」のコーナーで彼をとり上げた僕には非常に感慨深い作品でした。あれアップした当時なんて日本語サイトでケマル伝をやってるとこなんて他になかったような気がするくらいだし、参考文献も実質一冊しかなかったんですよね。さすがに本国は映画もドラマもあるか、と最近になって知った次第で、その意味でもいい時代になったもんだ、と。
 この「Veda」ですが、恐らくケマル伝映画自体は過去にもあるからでしょう、ケマルの建国英雄話は割と脇道になってまして、母親への強度のマザコンぶり、二人の女性の板挟みになる割とフツーの男であるケマルがかえって印象的でした。特に少年時代に実父が亡くなり、母が再婚して「新しいお父さん」ができちゃうくだりのケマル少年のショック描写とか、ギリシャに故郷を追われ難民となった母たちをあちこち探し回るくだりなんかは他の作品ではあまり見られないかも。
 オスマン帝国最後のカリフに対して反乱を起こす時も信心深いお母さんは「そんなことしちゃ縛り首だよ」と息子に忠告したりするのもやはりそんな気分だったかな、と。大統領の激務中に母が亡くなってるのでその死を電報で知るだけのあっさりした描写ですが、ケマルが今わの際に見る夢は、少年時代の優しい母の姿。大人のケマルがだんだんと子役ケマル(二人いる)に変わっていって母親に甘えるシーン、なんだか大河「独眼竜政宗」のラストみたいでした(笑)。

 ご指摘の俳優名と役名の入れ違い、結構やっちゃってましてねぇ…僕自身つい先日「ポーツマスの旗」の川谷拓三についてやらかしてしまってました(汗)。
 ほほう、あの高須久子主役で一本映画があるんですか…松陰との絡みがあるんで今年の大河にいたるまで登場例は結構多いんですけどね。


>バラライカさん
 はじめまして。
 熊野神社や熊野海賊について、そう詳しく知ってるわけではないのでズバッとは回答できないんですが、日本に限らずある海域を支配している「海賊」的勢力というのはそういうことをよくするものではないかと。神社の神様が航海の神様であるなら、「通行税」というのも理由づけになりますよね。
 熊野海賊はともかくとして、瀬戸内の海賊たちは通れる水路が決まってますから「通せんぼ」がやりやすく、戦国時代までなにがしかの通行税を彼らに納めないと襲撃されても仕方ない、ということになってたようです。物品を納める、あるいは何らかの話をつけて水先案内人を船に乗せたり、通行許可を示す旗を立てるといったことをすれば通してもらえたそうですが、それを無視したりすると、ホントにどこまでも追いかけて来たとか。戦国期に来た宣教師たちも堺の港まで追いかけられ、堺に入っても沖合でずっと支払いを待っていたとの証言を残してますね。
 室町時代に朝鮮から来た使節も瀬戸内海で出会った親切そうな船乗りたちが実は海賊であった(大したものを持ってなかったので襲われなかったですが)という怖い思いをしています。



#9745 
バラライカ 2015/02/03 09:10


はじめまして、バラライカと言います!
熊野神社はむかし海賊を使って海で通行料を取っていたそうですけれど、熊野神社の人たち的には「これはヨソの国に入ってきた旅人が神様にお供え物をするようなもの(だから通行料を出せばある程度の安全は保障するけど、払わなければ容赦はしない)」という意識だったというのは本当でしょうか?



#9744 
バラージ 2015/02/01 21:48
歴史映像名画座

 更新ご苦労様です。今回追加されたもので観たのは『ジェロニモ』のみ(感想は#9703)。
 今回新たに「トルコ史」がヨーロッパに追加されてますね。熟考された末のことだとは思うのですが、やはり地理的にはどちらかというと西アジアなんじゃないでしょうか? 文化的にもイスラム圏ですし。ちなみに僕のトルコ史紹介作品は、『ラスト・ハーレム』(#9403)だけ。

・追加紹介
江戸後期
『獄(ひとや)に咲く花』……吉田松陰が野山獄で出会った女性・高須久を主人公とした映画。

・気づいた点
 大河ドラマ『義経』のキャストの上戸彩と役名の「うつぼ」が逆になってます。



#9743 
黒駒 2015/01/30 18:42
人質事件

人質がどのような人であれ我々の同胞に違いないはずで面白がってはいけませんけど、怪しげなイスラム法学者が出てきたり、女テロリストが出てきたりと、次々に新キャラが出てきて耳目を集める展開ですね。

自己責任論は案の定、国内から出てきますけど、自己責任論之是非はともかくとして、民主主義国家の日本よりもテロリストのほうが同胞意識が厚いというのも、皮肉なことだなと思います。



#9742 
ひで 2015/01/30 16:35
外は寒い、、、、

>センター試験の問題
世界史で答えが2つあるという問題ができてしまったようですが、やはり問題文の吟味が足りなかったなあとしか言えないですね。作問の段階でそういう読みをされないように、文章チェックとかもやっていると思うのですが、はたしてどの程度まで気をつけたのか。

個人的には、マーク4択で答えが必ず一つという問題つまらないとか、問題のリード文が解答を導き出す上であまり活かされていない(リード文読まなくても解けてしまう)問題ってつまらないなあとか、センター世界史については色々と思う所はありますが。いっそのこと、センター試験廃止後の統一試験的なものでは、ある問題については正解となり得る答えの組み合わせはどれくらい作れるのかを考えさせるような試験にでもしてみると面白いかもしれませんね。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9741 
黒駒 2015/01/24 16:21
海上小説も手がけてるのですね

なんだか、私は作家さんに限らず著名人が亡くなってからその業績の全貌を知ることが多いのですが、陳舜臣さんも同様でした。漠然とした中国史作家という印象でしたけど、むしろ東洋史作家とでも位置づけるほうが正確なんでしょうね。

司馬も関心対象は日本史のみならず東洋史・世界史スケールな人ですし「街道をゆく」などではそういう関心を発してはいるのですが、作品化したのは日本史の範疇に収まる題材が多いですね。やはり、日本人の歴史的関心っていうのが、日本史の狭い範疇にとどまっているのかなとも思います。

陳舜臣さんは「戦国海商伝」を地元図書館(県立レベル)で調べてみたらライブラリー版がひとつ入ってるだけで、単行本・文庫は入ってないようです。絶版の作品も多いようですし、やや不遇な作家という印象はありますね。



#9740 
徹夜城(歴史小説なんぞも書いてみることもある管理人) 2015/01/23 23:32
ちょいと乗り遅れましたが

 陳舜臣さんの訃報の話題、ちょっと乗り遅れましたがこちらでも(他所で一度書いたもので…)。
 正直に白状すると、陳舜臣作品、わりと読んでるんですけど歴史小説に関しては僕の好みとあわなかったんです。淡々としてるというか、カラッとしたところはむしろ僕の好みのようにも思うんですが、史実と創作のバランス部分がどうしても気になっちゃった。これはむしろ書き手の姿勢としては誠意ある態度なのかもしれませんけど、創作部分は創作とはっきり分かっちゃう書き方だなぁ、と。
 それでいて歴史史料の調べ方、読み方はよく分かってる方なので(この点は僕の大学の師匠も高く評価してました)、「史実」もきっちり重視する。僕にはその両者の「ひらき」がかえって小説として読む時に気になっちゃった…ということなのかな、と書きながら分析してます。

 それでいてそこそこの数読んでいるのは、やはり興味の対象が僕のそれと大いにかぶるからなんですよね。多民族が入り乱れるボーダーレスというかグローバルなネタを好む方だったようで(それは当然ご自身の出身の影響でしょう)、中国にとどまらずインドやイラン(だいたいペルシャ語の専門だったような)、中央アジアといったシルクロード世界も扱いましたし、東アジアから東南アジアの海の世界を舞台にしたものも多かった。
 特に僕は後者の「海の世界」ネタは関心対象にドンピシャでして…鄭芝竜から鄭成功の時代を描く「風よ雲よ」「旋風に告げよ」、王直たち後期倭寇世界と戦国日本をリンクさせた「戦国海商伝」などは、僕自身内心こういう世界を書いてみたいなぁ、と思っていたもので最初に書店で「戦国海商伝」を見つけた時は「先を越された!」などと不遜なことを考えたもんです(笑)。さすがに林鳳には手を出されてなかった気がするけど、世界観的には完全に視野に入っていたでしょうね。
 それでも歴史小説としてあまり好みでなかった原因は、小説のひとつのやり方と分かってはいるんだけど、どの小説でも自由に行動して有名人とやたらにあちこちで顔を合わせる狂言回し的架空人物が出て来ることかな。あまりに便利に使い過ぎてる、と気になっちゃうところもありまして…大河ドラマ原作として書かれた「琉球の風」なんかも見事にそのパターンで、ドラマにしたら余計に無理があると思っちゃいました。

 個人的には小説よりも、「中国の歴史」シリーズなど、一般向け歴史解説書の業績がかなり大きいのではないかなぁ、と思ってます。日本の南北朝時代を扱った「山河太平記」なんて歴史エッセイもあるんですよ。そういや神戸の方だから楠公はおなじみだったんでしょう。
 アイザック=アシモフも本業(?)のSF小説もさることながら、一般向け科学解説書の業績が高く評価されてまして、それにも似てるかな、と思ってます。




#9739 
バラージ 2015/01/23 23:15
陳舜臣の小説には

 日本人の小説にありがちな湿った感じというか、ねっとりとした粘っこさがほとんど感じられなかったのが、個人的な好みに合ってたんですよね。同年代の小説家である松本清張や司馬遼太郎にはやはりそういう湿った粘っこさのようなものが感じられました。僕は清張はどうにも苦手で何度か読もうとしては挫折したし、司馬は清張ほどには湿った粘っこさは感じませんでしたが、それでも『城塞』『豊臣家の人々』ぐらいしか読んでません。陳舜臣にそういうものを感じなかったのは、彼が中国系だったからかなと思ってたのですが、日本生まれ日本育ちとのことですので、単なる個人的資質なのかもしれませんし、日本を舞台とした歴史小説が(琉球を除けば)なかったからかもしれません。
 あと、女性描写が繊細なのも好きだったところで、『秘本三国志』では張魯の母を少容と名付けて彼女を狂言回しにしてました。他にも蔡文姫、貂蝉、曹操の丁夫人や卞夫人、曹丕の甄夫人、劉備の孫夫人など、いずれも印象的なキャラクターに描かれてましたね。

>蘭学
 これまた『「蛮社の獄」のすべて』に書かれていたネタになってしまうのですが、やはり『風雲児たち』では悪人としか言いようのない描かれ方だった鳥居耀蔵の再評価がなされている本で、1つには通説とは違って彼は別に蘭学嫌いではなかったことが明らかにされてます。彼は蘭学を弾圧すべしという意見を退けるよう水野忠邦に具申しているほどで、幕府にとって有益無害な部分については積極的に取り入れるべしという考えだったようです。ただし蘭学の中でも幕府にとって有害な部分はどのような手段を使ってでも弾圧する人物でもあり、結局彼にとっては幕府に有益無害か有害無益かがすべてだったという評価でした。



#9738 
黒駒 2015/01/21 23:48


>バラージさん
陳舜臣さんの三国志が一番という方もいらっしゃるのですね。私はあまり、魅力が良くわからないうちに読んでしまったのかもしれませんけど。著作一覧をみたらけっこう作品数多くて驚きました。最初に手がけた小説が「アヘン戦争」というのもなかなか彗眼というか、目を引くところです。気になるのは現代中国に対するスタンスとかどうだったんでしょうねと。最近の日中関係も晩年にはわかっていたでしょうし、複雑な思いはあったのかもしれません。

松平定信はやはり幕末に至った江戸後期に至る情勢を理解する上でも重要でしょうね。大河ドラマだけで幕末を見ているとなかなかわからない視点です。私も幕末って難しい政治劇中心で苦手だったのですが、幕末とは違う視点で江戸後期の学芸なり博徒史なりあるいは教育史なりを断片的に学んでいたら、先述したような幕末状況に至る流れが見えてきて、面白いじゃなと思った感じです。

幕府体制の再建と打破のせめぎあいという流れで見ると、明治維新を進めた志士と呼ばれる人たちが見な若い下級藩士であるという点も、ある程度年齢層上になると、幕府や藩の要職について体制を維持する側になってしまうのでしょうね。蘭学を学んだり、尊王攘夷思想を身につけたりして維新を主導するのはやはり若い下級藩士であると、歴史の必然なのだろうなと思います。



#9737 
バラージ 2015/01/21 22:14
追悼・陳舜臣

 小説家の陳舜臣が亡くなりました。それほど多くの著書を読んだわけではありませんが、小説『秘本三国志』『小説十八史略』、エッセイ『中国の歴史』『中国五千年』などいずれも面白く、特に『秘本三国志』は僕が読んだすべての歴史小説の中で1番面白かった小説です。僕にとっての三国志は吉川英治でも横山光輝でも光栄ゲームでも演義でも正史でもなく、陳舜臣だったんですよね。実は数ヶ月前に、未読だった陳舜臣の『曹操』『曹操残夢』がふと読みたくなったんですが、近くの大型書店にもなかったため、なんとなく買わないままでいたところでした。
 ご冥福をお祈りします。

>松平定信
 定信については、#9391で紹介した『「蛮社の獄」のすべて』(田中弘之・著 吉川弘文館)でも、彼が鎖国を祖法と定めた理由が蛮社の獄の前史として触れられてました。その理由とは、幕府=徳川政権のコントロール下に置けない外国との接触の増大によって徳川政権の絶対性が揺らぎ、ひいては倒壊につながることへの危機感にあるとのことでした。鎖国政策が始まった当初の頃から時が流れて泰平の世が続くようになるとそのような危機感が薄れ、ついには田沼のような幕府首脳の中からさえも外国との通商によって幕府の財政難を乗り切ろうと考える人物が現れた。定信が田沼を刺殺しようとまで一時考えたのも、個人的怨恨などではなく田沼が徳川政権の根幹を危うくすると考えたためだ、というような内容でしたね。



#9736 
黒駒 2015/01/21 19:59
歴史小説家ふたりの訃報

宮尾登美子さんに陳舜臣さん。相次いで亡くなられてしまいましたね。正直な印象を言ってしまいますけど、ご両人とも個人的にはあまり感銘を受けず、どちらかと言えば苦手な印象がありました。宮尾さんは歴史ものよりも花柳界もののほうが個人的には関心があって、また読んでみようかと思っているうちに亡くなられてしまいましたね。

陳舜臣さんは作品よりも司馬遼太郎の友人としての印象が強いです。訃報のニュースで見るまで、そういえばあまり作者近影を見たことのない人だなと思いましたけど、それだけ司馬がメディアの露出が多かったかもしれないと感じました。なんとなく、友人の司馬さんはあれだけ国民作家としてもてはやされて、俺はいまいち文壇の主流に乗り切れないなと創作上の悩みはあったのではないかと、勝手に想像したのですが。

ともあれ、ご冥福をお祈りします。



#9735 
アジアのバカ大将 2015/01/21 14:53
博徒と儒学

幕末の四国に、有名な儒学者でもあったヤクザの親分がいませんでした?
司馬遼太郎さんの「峠」か「世に棲む日々」に登場していた気がします。
NHK大河ドラマ「花神」にも、ちょっと出ていました。



#9734 
黒駒 2015/01/19 20:52
博徒と南北朝

これも前に紹介した気もするのですが、幕末と南北朝の関係を伺わせる要素に博徒の活動がありますね。博徒は配下の子分たちは身分的に下層ですけど、親分は村役人階層で、読み書きの基礎的素養と、ある程度の学問・思想を持っていただろうと考えられているようです。甲斐の竹居安五郎は流暢な自筆書簡を残してますし、黒駒勝蔵は私塾で国学を学び尊皇攘夷思想を身につけ、やがて赤報隊に身を投じていきます。

勝蔵のライバルの清水次郎長の教養や思想はわからないのですが、ただ次郎長は肖像画において孝明天皇宸翰を引用し、次郎長を勤王博徒と位置づける見方が、少なくとも後世にはあったようです。

などと考えていると、幕末という時代は身分的に下層だった博徒やら「草莽」と言われる一般庶民、あるいは維新を主導した下級藩士など、身分が比較的低いグループが勤王精神を持ち天皇と結ぶことで幕府体制を転覆していった時代という、まるで南北朝のようだなと通じるものがあるなと感じます。

松蔭先生と楠木正成の関係は「太平記読みの時代」という本で読んだと記憶していますし、こういうことも多少は論じられているのでしょうね。博徒の思想的背景なんかはまだきちんと論じた人が少ないらしく、まだまだ余地があるようにも思えますけど。特に思想史って専門家が少ないようですね。



#9733 
徹夜城(センター試験の世界史Bを解いてみた管理人) 2015/01/18 23:36
正解は二つ?

 センター試験の「世界史B」で、受験生の指摘から正解が二つ認められたというニュースがあったので、どういうこっちゃと新聞サイトで確かめてみました。ついでに全部解いてみましたが…えーと、ちゃんと採点はしませんでしたが、感触では85点くらいかな?

 さて、問題となった問題は、世界史の問題でありながら日本史の安井算哲(渋川春海)に絡んだもの。彼がもともと碁打ちで、碁はもともと天地を現すものだったというから彼が貞享暦を作ったのもうなずける…ってな、いささか強引なつながりで世界史の問題にいくわけです。作成者の方、絶対「天地明察」を意識してますね(笑)。
 それで、問題はというと、以下のようになっています。

 貞享暦は、中国の( ア )の時代に、( イ )によってつくられた授時暦を改訂して、日本の実情にあうようにしたものである。

 それで( ア )の選択肢が元か清、( イ )の選択肢が顧炎武か郭守敬、 でそれを組み合わせた四択問題となっています。
 分かる人には「元の郭守敬」で即座に決まり(この件も「天地明察」で描かれました)。なんでこれで「出題ミス」なんだ?と首をかしげましたが、実は問題文の句読点の切り方にポイントがあったみたい。「時代に」のあとの「、」がなけりゃ何の問題もなかったんですよ。ところがこれを入れたために「時代に」が「改訂した」にかかるようにも読めるようになり、それなら( ア )を清としても問題ないことになっちまうと。なんだかトンチみたいな話ですが、これを受験生から指摘受けてよく認めちゃったなぁ、と。


>黒駒さん
 「風雲児たち」は基本的に蘭学の流れがその後の幕末維新を準備したという歴史観にもとづいて描かれてますし、蘭学に理解を示し貿易にも積極的で新興商人層と結びついて「身分破壊」をやりかねなかった田沼を高く評価してましたから、そのぶん松平定信が反動的で「ワル」に描かれてしまうのは無理もなかったでしょうね。ま、歴史評価というのは何をもって「正しい」とするか基準に大きく左右される、ということでもあります。
 実際漫画の中でも描かれてますが、蘭学やった人たちというのはごく少数派なわけで、江戸時代の知識階級は儒学、ことに朱子学が圧倒的多数派でした。その朱子学が身分制度・幕藩体制を支えるものになっていたのも確かで、そりゃまぁ為政者としてはそれを断固として守ろうとするでしょうね。

 ただこの朱子学ってのがまたいろいろと厄介で…あの漫画ではわかりやすく「朱子学は身分制を正当化して支配者に都合がいい」とズバッと書いちゃってますが、僕の大学の師匠の受け売りですと朱子学は基本的には人間平等に基づくんです。ただ科挙に代表されるように基本的には国民平等になっている中国と、歴然とした身分と家格が存在する日本とでは朱子学の受容・解釈に違いが出て来るのは当然ではあったわけです。

 吉田松陰と正成の関係ですが…実のところ、江戸時代における「大楠公」受容っていうのは実態の正成ではなく、江戸時代になって大幅に潤色されたものだと言っていいです。なんせ当人については「太平記」など軍記物でしか分からないし、活動期間もごくわずかで彼がどんな思想の持ち主だったかなんてまるで分からない。「楠木流軍学」とやらも太平記人気を背景にした怪しげなものですし、水戸学が朱子学的解釈で正成を大忠臣に持ち上げてしまい、以後は「尊王」の象徴として神格化され、幕末の志士たちはみんな「大楠公」の影響下にあることになっただけ、と思います。
 後醍醐天皇とその周辺に宋学=朱子学思想が入り込んでる気配があるので、正成も朱子学信奉者では、との見方もあるんですが、僕自身は否定的。そもそも後醍醐自身どこまで朱子学を意識していたか怪しいもので、自分に都合よく使えるならなんでもアリだったというのが実態でしょうね。ただ当時としては外来の最新思想だったわけで、外来もの、新もの好きの後醍醐が魅せられた可能性は否定できないでしょう。


>つねさん
実は「映像の世紀」もとりあげようかな〜ってことは長年考えてはいるんですよ。だって「歴史映像」って本来はああいうものですよね。劇映画以外では「東京オリンピック」とか「戒厳令下チリ潜入記」とかはとっくに入れてましたし。ただこの2本は一応「ドキュメンタリー映画」として一本にまとまってる作品なので例外的に扱ってたところもあります。これがテレビ番組まで拡大すると、対象があまりにも多くなっちゃう可能性が…
 ひとつ考えているのは、教養番組的な枠、といったものを設けること。そこになら「映像の世紀」は入れられそうです(ただ各集ごとにつくるのはさすがに特別扱いしすぎかと)。もう一つアニメ「まんが日本史」もなんとか入れられないかと以前から考えていて、これもそこに入りそう。
 言い出すときりがなくなりますが、再現ドラマを入れたものとしては「ドイツ統一の舞台裏」とか「20世紀『核』の内幕」といった海外ドキュメンタリー番組なんかも候補にあがってきます。


>バラージさん
 DVD発売情報はチェックが大変でして…(^^;)。やるんじゃなかった、とちょっと思っていたりして(笑)。
 「戦争のはらわた」、確かにエグい話の戦争映画なんだよ、ということを強調する意図はあったろうし、それなりに成功(?)してるんですが、当時はああいう描写は一種のホラーととられたのかなぁ、とも。それにしても売上を考えてのことではありましょうがひどい邦題をつけられてしまった不幸な作品って結構ありますねぇ。
 大河1作目「花の生涯」、ううむ、そう言われれば、な話ではありますが、すでに映画版もあって人気になってた原作ですし、案外自然な流れだったのかも。それとは別にこれはまったくの偶然ですが、放送された1963年の11月22日にケネディ暗殺事件があり、その直後の年末に放送された桜田門外の変のシーンに事件を重ね合わせる視聴者も少なくなかった…なんてな話もありました。



#9732 
バラージ 2015/01/18 22:59
再びのベスト歴史映画

 #9602で歴史映像名画座未掲載の歴史映像作品ベストを書きましたが、名画座未掲載作品紹介も一通り終了してベスト作品がちょっと変わったんで改めてベスト5を。
 前回挙げたのは、『炎のランナー』『クルーシブル』『リトル・モー』『鬼が来た!』でしたが、この中で『リトル・モー』はちょっと落ちるかなぁというのと、『鬼が来た!』は実際の事件や実在の人物を扱ってないのでやっぱりちょっと違うかなぁということで除外。代わって『トキワ荘の青春』『ロアン・リンユィ 阮玲玉』『ドアーズ/まぼろしの世界』を入れたいと思います。というわけで、

『トキワ荘の青春』
『ロアン・リンユィ 阮玲玉』
『炎のランナー』
『クルーシブル』
『ドアーズ/まぼろしの世界』

 がベスト5(順不同)となります。まあ、『ドアーズ/まぼろしの世界』もドキュメンタリー映画なんでちょっとどうかとは思うし、全体的にあまり歴史映画っぽくない作品が並んじゃいましたが、面白かった映画を選んでいくとどうしてもこうなっちゃうんですよね。

>歴史映像名画座ネタ
 『ラスト・オブ・モヒカン』は僕も劇場で観たんですが、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』より後だった記憶があったんですよね(日本では翌1993年公開でした)。『ダンス〜』みたいな新しいインディアン像を描いた映画だと思って予備知識まったくなしに観たんですが、古臭いというかハーレクイン・ロマンスみたいな話(ハーレクイン・ロマンスを読んだことはないんですが)で期待外れでした。
 『戦争のはらわた』という邦題、僕は結構気に入ってるんですよ。外側からは見えない戦争のエグイ部分をえぐりだしたって雰囲気が感じられる邦題に思えまして。
 『戦場のメリークリスマス』は、ロレンス・ヴァン・デル・ポストの実体験を反映した自伝的小説『影の獄にて』が原作なんで、ある程度は実際の話と考えてもいいようにも思います。僕は、心理学者河合隼雄の著作『影の現象学』の中で高く評価されていた『影の獄にて』を読み、そのずっと後で『戦場の〜』がその映画化だと知って観たという順番でした。それにしても『影の獄にて』(『戦場のメリークリスマス』)や『鬼が来た!』『南京!南京!』を観ると、むしろ外国人のほうが日本人の本質的特徴を上手く描けているように感じます。

歴史映像名画座で気づいた点
・『坂の上の雲』はすでに全3部DVD化されています。
・『ワレサ 連帯の男』がDVD化されたようです。

>大河の黒い霧
 『利まつ』については初耳でしたが、もっと古い大河ドラマの政治との黒い噂は何かで読んだことがあります。それは第1作の『花の生涯』。なぜ第1作目の主人公が井伊直弼?というのは誰もが思うこと(当初は2作(2年)で終わるつもりだったとはいえ)でしょうが、日米修好通商条約を強引に締結し暗殺された直弼を悲劇の英雄として描くことで、放送の数年前に反対デモの嵐の中で日米安保条約を強行採決した岸政権になぞらえた、きな臭い作品という憶測もあるようです。
 もう1つは『黄金の日日』。呂宋助佐衛門という商人が主人公のこれまた珍しい大河ですが、こちらも当時、日本企業が東南アジアに進出するという社会状況の肯定的な一面だけ(負の側面も当時から指摘されていた)を取り上げたという見方もあるみたいですね。まあ、もともとNHKはその構造からも、最も権力に弱く体制に従順なテレビ局とも言われますからねえ。



#9731 
つね 2015/01/17 23:49
ふと

思ったのですが、「映像の世紀」って歴史映像名画座の対象にはならないですかね。ドキュメンタリーにはなるのですが、「対象は映画やテレビドラマに限らない」みたいですし。11集をそれぞれ紹介する形で希望(世界大戦とJAPAN以外は国別にするのが難しそうですが)。



#9730 
黒駒 2015/01/17 22:23
教育・思想史から見た幕末史

「風雲児たち」などを読むと、江戸時代に蘭学がいかに弾圧されていたのかが描かれてますよね。「風雲児たち」では松平定信が出てきて寛政異学の禁などにも触れられていましたが、定信は蘭学の弾圧者として出てくるのであって、定信の振興した学芸振興などには余り触れられていなかった、「ような気がします」(記憶ですので、違うかもしれません)。

定信は実は文教政策振興ということをやっているのですが、医学・軍事・科学のような実学である蘭学を弾圧して、歴史であるとか系譜であるとか、学芸であるとかそっちの学問を振興しているのですよね。「風雲児たち」だけを読むと定信に対しても否定的印象を持ってしまうのですが、ただ私は定信の文教政策を知るにつれ、やや考え方が変わってきました。

というのは幕末に至る江戸後期の社会というのは身分制が同様し、体制側からすれば秩序が危うくなって幕府の存続が危うくなるという認識があったのだろうと思います。歴史書や系譜を編纂するのも身分制を正すことが体制側にとっての秩序再建になるわけで、定信にしてみれば理にかなった政策であったのだろうなと、思うようになりました。

明治維新を推し進めたのも下級藩士でありますし、幕末は博徒が台頭していた時代でもあります。身分制社会において底辺に属するグループが上昇志向を起こし、ついには明治維新として結実する過程を見ると、松平定信が感じていた危機というのは、現実的なものであったのだろうなと思いますね。教育・思想の観点からしても幕藩体制・身分制を維持しようとする動きと、打破しようとする動きがせめぎ合って、後者が勝利したのだろうなと思います。

あと、前に指摘したかもしれませんけど、南北朝との絡みで吉田松陰が楠木正成に影響を受けていたというのが興味深い点ですね。



#9729 
徹夜城(そういや今日はカリ城やってたと後で気付いた管理人) 2015/01/16 23:36
「カリ城」ネタは偶然です

 先ほどアップしました今回の「史点」、ひとつの記事に「カリ城」ネタが入ってますが、アップのその日にそれが放映されていることにまったく気付いてませんでした(笑)。

 ルパン三世がらみの話題ですが、先ほど初代五エ門役であった大塚周夫さんの訃報が…子の方、大河ドラマにも結構出ていて、「太平記」でも正成を追跡する幕府武将役で2回だけ登場していました。
 ルパン三世の山田康雄さんも「風と雲と虹と」に出演されてるんですよね…これ、昨年になって全部見たんですが、山田さんの出演は知らなかったので見つけてビックリしました。

 さて、「史点」アップしてからと考えていたレスをまとめまして。

>「花燃ゆ」
 視聴率が低い低いとずいぶん言われてますなぁ、まだ第二回なのに。もっとも素材を聞いた時点である程度予想はされたことですよね。幕末ものはこれまでも視聴率的に厳しかった経緯もありますから、あとは雑音を気にせずがんばってね、と言うしかないかな。
 現首相の地元ということでいろいろ噂はされてますが、森首相の時に決まった「利家とまつ」なんかも疑えば疑えるんです。ま、ほかに合致するものはないような気がしますが。
 まだ二回まででは何とも言いようがないわけですが、教育ネタの話のせいか当時の知識階級には常識であった儒教、ことに朱子学ネタの読み上げが何度も繰り返されるのがちょっと面白いな、と思ってるところです。それもあって今、図書館から江戸時代の朱子学に関する本を借りて来て読んでます。


>阿祥さん
 その「大国海盗」の話、なかなか興味深く拝読したんですが、まず中国ではよそを侵略して敗戦した経験がないから、そういうことを堂々と言っちゃうという面もあるでしょうし、また一方で所詮は過ぎ去った昔の話を「あの時こうしていれば…」と今さら再現不能とわかってることを繰り言を言ってるだけ、とも思えます。正直なところ僕はそれほど現在の状況と結びつけた考えではないように思ってます。またこの件については実は大陸に住んでる人と台湾や華僑華人でもそう温度差はないんじゃないか、下手すると在外の人ほどその思いが強いかもしれない、というのが僕の感触です。

 中国において歴史上の一つの大きな問題は、かつて世界的大国だったのにどうして欧米の近代化に後れをとってしまったのか?ということなんですね。これは明治以後なんとかうまいこと「近代化」してしまったらしい日本との決定的な感覚の違いでしょう。
 で、一つの説明として「明朝」の時代がその別れ道だった、という考え方があるわけです。ずいぶん経ちますが、在外中国人の研究者が「万暦十五年」なんて本を書いたことがありましたし、あの辺りが凋落への「分岐点」という見方は少なからずあるようです。明朝というのが鄭和の大航海のあとは内向的傾向を強め、海禁政策により海外発展の阻害をした…という論法自体はそう無茶でもないかと。林鳳らの活動も東南アジアへの植民活動といえば言えますし(同時期にタイやカンボジアにも進出してますね)、日本で江戸幕府の鎖国政策で朱印船貿易や日本町といった日本人の海外発展が阻害された、ってな話と基本的には同じだと思います。


>バラージさん
 毎度どうもです。
 「ラスト・オブ・モヒカン」、1992年でしたか…実は劇場で見てるんですが、ほとんど記憶にないくらいつまんなかったんで、年代も適当に書いていたんですよね(笑)。
 ご紹介の作品の中でも実はいくつか見たことがあるのがありまして…「戦場のはらわた」(ひどい邦題の代表ですね)「無防備都市」「地下水道」「戦場のメリークリスマス」は見ています。じゃあなんで入れてないのかというと、現時点で記憶があいまいなのと、完全に架空の話の場合はちと入れにくい、という帰順もあるんです。「無防備都市」と「地下水道」に関しては史実背景がちゃんとあったはずなので再見したら入れようと思います。
 第一次大戦の空戦を描いた「レッドバロン」はただいま鑑賞中だったりします。


>「キスカ」DVD購入
 以前自作していた「キスカ」DVDがなぜか読み取り不能になってしまったので、アマゾンで中古市販品を購入しました。わざわざ買った理由は映画の出来もさることながら、このDVDにはキスカ撤収に実際に参加して映画制作にも助言した方の証言インタビュー(30分)が付いていると知ったからでもあります。
 で、さっそくその証言インタビューを見てみましたが、なかなか面白かったですねぇ。キスカ島での体験はもちろんでしたが(大筋で映画の通りのようですね)、キスカから撤収後、半年ほどで日本海軍最後の空母「大鳳」に乗り込んだそうで。そしてマリアナ沖海戦で大鳳はいきなり初戦で撃沈されてしまうんですが、その時にも九死に一生で脱出。艦長は慣例通り船に体を縛り付けて艦と運命を共にしようとしますが、沈む途中で弾薬庫が爆発、そのあおりでロープが切れてしまって海面に浮上、そのまま命を拾ってしまった、という事実もこのインタビューで初めて知りました。



#9728 
阿祥 2015/01/16 22:53
「大国海盗」の追記

先に投稿した「大国海盗」ですが、調べてみたら大陸での出版の方が先のようでした。それでしたら、腑に落ちます。大陸の出版界での言論ならいかにもという内容です。著者はもともと浙江省の人でオーストラリアに移民したという事のようです。
一方その内容をそのまま台湾で出版することができるというのは、考え方の懐の深さというか、自由さを感じます。



#9727 
バラージ 2015/01/16 21:18
訂正

 1992年の映画『ラスト・オブ・モヒカン』を「2度目の映画化」と書きましたが、『モヒカン族の最後』は何度か映画化されてるようなので2度目の映画化ではありませんでした。すいません。



#9726 
バラージ 2015/01/12 22:16
歴史映像名画座

 リニューアル完了、おめでとうございます。早速、今回の感想と紹介をば。

気づいた点
・戦国時代の『鶴姫伝奇』には「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルがついています。
・アメリカ合衆国史の『モヒカン族の最期』の解説に2度目の映画化が80年代とありますが、2度目の映画化『ラスト・オブ・モヒカン』は92年の作品です。
・アメリカ合衆国史の『トルーマン』はビデオ邦題が『プレジデント・トルーマン』です(『トルーマン』はテレビ放映題でしょうか?)。

感想
・第二次世界大戦・アジア太平洋戦線
『ミッドウェイ』……昔にテレビで観たけど、もうあんまり覚えてないなあ。
『連合艦隊』……まあまあでした。しかしこの頃の日本の戦争映画のエンディング・テーマっていつも高らかに歌いあげる泣かせソングですね。なんか感動を押し付けられてる感じがしてちょっといや。じゃあどんなのならいいんだって言われたらそれはそれで困っちゃうけど。
『硫黄島からの手紙』……終わり方がちょっと唐突な感じもしましたが、なかなか面白かったです。日本描写もおかしなところは見受けられなかったですね(テレビ放送でカットされたのかもしれんけど)。
『マッカーサー』……マッカーサーがかなり美化されてましたね。まあ、グレゴリー・ペックは激似でしたが。
『黒い雨』……#9403

紹介
・第一次世界大戦
『担え銃』……チャップリンの短編(もしくは中編)コメディ映画。第一次大戦の西部戦線を舞台に、二等兵チャーリーのどたばたを描いて戦争を風刺した、チャップリンらしい反戦映画。
『突撃』……未見。フランス軍上層部の無謀な作戦で危険にさらされる兵士たちを描いたスタンリー・キューブリック監督の映画。
『ジョニーは戦場へ行った』……未見。出征して四肢と目と耳と口を失ったまま生かされる主人公を通じて、人間の尊厳を描いたドルトン・トランボ監督の反戦映画。
『ブルー・マックス』……未見。ドイツ空軍のパイロットが主人公の空戦映画。
『レッド・バロン』……未見。ドイツ空軍の撃墜王リヒトホーフェンの伝記映画。同名の映画が2本あり、古いほうはロジャー・コーマン監督の米国映画。新しいのは本家本元のドイツ映画。

・第二次世界大戦・欧州戦線
『戦場のピアニスト』……未見。ユダヤ系ポーランド人ピアニストのウワディスワフ・シュピルマンの体験記をロマン・ポランスキー監督が映画化。
『ウィンター・ウォー 厳寒の攻防戦』……未見。ソ・フィン戦争(冬戦争)を描いたフィンランド映画。
『眼下の敵』……未見。Uボートと米駆逐艦の戦いを描いた潜水艦映画の古典的作品。
『ビスマルク号を撃沈せよ!』……未見。ドイツ海軍の戦艦ビスマルクとイギリス海軍の海戦を描いた映画。
『戦場の小さな天使たち』……未見。ドイツ軍のロンドン空襲を舞台とした映画。
『僕の村は戦場だった』……未見。独ソ戦におけるソ連軍の少年兵を主人公としたアンドレイ・タルコフスキー監督の映画。
『戦争のはらわた』……独ソ戦を舞台としているが、どちらかというとドイツ軍内部を描いている映画。かなりハードな描写が散りばめられてます。昔、民放テレビで観ましたが、よくこんなの放送したなあ。
『戦火のナージャ』……未見。ニキータ・ミハルコフ監督が『太陽に灼かれて』から16年ぶりに作った続編。『プライベート・ライアン』を意識した戦争スペクタクルらしい。
『遥かなる勝利へ』……未見。『戦火のナージャ』に続くミハルコフ監督の三部作完結編。
『無防備都市』……未見。ナチス占領下ローマでのレジスタンス活動を描いたロベルト・ロッセリーニ監督のネオ・レアリズモ映画。
『戦火のかなた』……未見。イタリア戦線を描いたオムニバス形式のロッセリーニ監督のネオ・レアリズモ映画。
『アンツィオ大作戦』……未見。連合軍によるイタリア半島のアンツィオ上陸作戦を描いた映画。
『ブラックブック』……未見。ポール・バーホーベン監督が母国オランダで撮ったレジスタンス・スパイ映画。
『ナチスが最も恐れた男』……未見。ドイツ軍占領下ノルウェーの実在のレジスタンス活動家マックス・マヌスを描いたノルウェー映画。
『誰がため』……未見。ドイツ軍占領下デンマークでレジスタンス活動をする2人の男の実話を描いたデンマーク映画。
『遠すぎた橋』……未見。マーケットガーデン作戦を描いたリチャード・アッテンボロー監督の映画。
『ネレトバの戦い』……未見。旧ユーゴスラビアが国家の総力を挙げて製作した、パルチザンによる解放を描く映画。#9239
『地下水道』……未見。大戦末期のポーランドでのレジスタンスを描いたアンジェイ・ワイダ監督の映画。
『橋』……未見。大戦末期のドイツを舞台に、ドイツ少年兵の悲劇を描いた西ドイツ映画。

・第二次世界大戦・アジア太平洋戦線
『少年義勇兵』……太平洋戦争前夜の緊張するアジア情勢の中で、タイ軍は戦力補充のために少年義勇軍を編成する。前半は少年義勇兵の恋と友情の青春群像、後半は戦争勃発と共に中立侵犯してきた日本軍との戦闘を描いています。なかなかの佳作。
『地上(ここ)より永遠(とわ)に』……真珠湾攻撃前夜のハワイ米軍基地を舞台に、軍隊の非人間性を描いたフレッド・ジンネマン監督の名作。邦題は傑作だと思う。ただ、戦争シーンは最後のほうだけで、戦争映画というより軍隊映画ですが……。
『パールハーバー』……未見。太平洋戦争開戦前からドーリットル空襲までを描いた映画で、どっちかというと戦争を背景とした三角関係恋愛映画らしい。かなりトンデモな日本描写があるみたい。
『風の輝く朝に』……中国近代史のところでも紹介しましたが、アジア太平洋戦争でもあるので、どっちにするか迷います。#9549
『ハリマオ』……ビデオ化のみ。これも明治〜戦中で紹介しましたが、どこに入れるか迷う作品。主人公と主演俳優は日本人の日本映画ですが、舞台はほとんどが英領マレー(他にタイと日本がちょこっと)。とはいえマレーシア・シンガポール史に入れると、そこにはこの作品だけになってしまいますし、かといって太平洋戦争のシーンは終盤だけなんですよねえ。#9525
『戦場のメリークリスマス』……ジャワの日本軍捕虜収容所における日本兵看守と英国人捕虜の奇妙な交流を描いたヴァン・デル・ポストの自伝的小説を大島渚監督が映画化。原作と比べちゃうとやや劣るものの、なかなかいい作品でした。
『日本戦没学生の手記 きけ、わだつみの声』……未見。学徒兵の書簡集『きけ、わだつみの声』を原作とした映画で、インパール作戦が描かれる。ちなみに1995年の『きけ、わだつみの声 Last friends』(こちらは観た)は、上記作品と同じ書簡集を原作としているものの内容は全く別のお話で、フィリピン戦・沖縄戦・特攻隊などが舞台。こちらは残念ながら話が散漫でいまいちな出来でした。
『春婦伝』……未見。アジア太平洋戦争末期の中国戦線を舞台に、従軍慰安婦と日本兵の恋愛を描く。#9511
『黒い太陽七三一 戦慄!石井七三一細菌部隊の全貌』……ビデオ化のみ。これも中国近代史でも紹介しましたが、アジア太平洋戦争とどちらかで迷う作品。#9602
『鬼が来た!』……これまた中国近代史でも紹介しましたが、アジア太平洋戦争とどちらかで迷う作品。#9602
『ひめゆりの塔』(1954年版)……沖縄戦におけるひめゆり部隊を描いた今井正監督の映画。昔NHKで(確か途中から)観たんですが、突き放したようなラストが鮮烈で、とても印象に残ってます。1982年に今井監督自身がリメイクしています(こちらは未見)。
『ひめゆりの塔』(1995年版)……ビデオ化のみ。1954年&1982年版とは原作が違うため、当然ながら全然別のお話。何本か作られた戦後50年記念映画の中で一番(というか唯一)出来の良かった映画です。
『戦争と青春』……ビデオ化のみ。東京大空襲を描いた今井正監督の遺作。残念ながら今井監督衰えたりと思わせる凡作。
『TOMORROW 明日』……未見。長崎原爆投下前日を描いた映画。

・タイムスリップ歴史映画
『テラコッタ・ウォリア 秦俑』……ビデオ化のみ。秦の始皇帝の時代に不老不死になった衛兵と輪廻転生を繰り返す宮女のアクション・ラブストーリー映画。兵馬俑をモチーフにした作品で、最初は秦の時代ですがメインは1930年代、そしてラストは現代です。なかなか面白いんですが、ラストが日本人大爆笑なのがつらいところ。
『THE MYTH 神話』……ジャッキー・チェンが現代の考古学者と秦の将軍・蒙毅(モン・イー)の二役を演じたアクション映画。蒙毅は一応実在の人物で、朝鮮(古朝鮮?)の姫なども出てきますが、史実とはほぼ関係なし。ジャッキー映画としても残念ながら並の出来。
『信長のシェフ』第1〜2部……#9684
『JIN 仁』『JIN 仁 完結編』……#9684
『ミッドナイト・イン・パリ』……#9684
『スローターハウス5』……#9687



#9725 
阿祥 2015/01/12 21:57
「大國海盗」

この年末にまた台湾に行って来ました。本屋めぐりをしていて、中国の海賊の事を著した「大國海盗」という本があったので、見てみたところ、徹夜城さんの構想と同じような時代と人物を取り扱っていたので、思わず衝動買いしてしまいました。明代以降の海賊の活躍を列伝的に語っています。第1章:鄭和、第2章:王直、第3章:林道乾、第4章:林鳳、第5章:鄭芝龍、第5章:鄭成功、第7章から第9章までは清の時代を、第10章はイギリスのフランシス・ドレークを取り扱っています。
ななめ読みしてみると、専門の研究者ではないけれども、専門書を渉猟してこの著作をものしているということでした。著者はオーストラリア在住の華僑だそうです。中国国内にいる人よりも、国外にいる人間の方がこういうジャンルには興味があるのかもしれません。

購入してまえがきを読んでみて驚きました。えらい物騒なことが書いてあります。明代の海賊の活躍に対して、これが明王朝の後ろ盾を得られていないことに関して憤慨しており、もし中国が国を挙げてこれらの海賊の活躍を応援していたら、世界の植民地の半分は欧米のものではなく、中国のものであったろうと書いているのです。これは誰の文章だと思い前書きの著者を見ると、なんと中国人民解放軍空軍将校出身の文筆家でした。
改めてこの本の著作者によるあとがきを読んでみると、ほぼ同じ趣旨の事が述べられています。海外に在住する華僑として、非常に肩身の狭い思いをしている、と。華僑という言葉は、それだけでそれぞれの国にとっての外来者、よそ者ということを意味している。華僑はいずれも自分たちの国家を持てない、それぞれの国の客人としての扱いしか受けられない。それを非常に悔しく感じているとのこと。そして、歴史をひも解くと明の時代の海賊の活躍には、もう一息で国をつくることができるところまで来ていると、そんな風な思いからこの著作を書いたそうです。

そんな視点で描いた本なので、それぞれの章の内容は、海賊自体の活躍だけではなく、彼らに対する明王朝の対応にも同じようなボリュームを割いて描写しています。
そんな中で林鳳の章に対する描写が特に力が入っていたように思います。林鳳がマニラを襲った時点で、スペイン側の防御態勢は必ずしも万全ではなく(マニラ入植のわずか2年後)、タイミングが少しずれていたら、もしかしたらフィリピンはスペインの植民地ではなく、中国人の植民地となっていたかもしれない。林鳳の船団は戦闘員だけではなく、女性や子供を含めた植民団的な構成でマニラに来ていたそうです。そのままマニラを占領して、植民するつもりであったろうと述べています。マニラの戦いに負けて、その北部に拠点を移したさい、明朝の役人がマニラに入ってきて、スペイン人との共同戦線で林鳳を征伐しようと持ち掛けます。もし、この時点で明朝がスペインの側に立たず、せめて中立の立場で林鳳を追い詰めることがなかったら、彼の運命は違っていただろうと、非常に悔しそうに述べています。

この本の各章では、どのようにして中国の海賊が中国の王朝に足を引っ張られてきたかを説明しています。唯一の例外は鄭芝龍が、明朝の役人としての立場で王朝の支援を受けつつ海洋の覇権を確立したことです。そして最終章でフランシスドレークがイギリス王朝により公認された私掠船としての立場で海を席巻した事例を持ち出し、もし中国の中央政府がイギリスのように海賊の支援をしていたら、世界各地の華僑は、華僑としてではなく、自らの政府を持つそれぞれの国の主役として、現在の世界でふるまうことができただろうという感慨を述べています。

こんな趣旨の本は中国の大陸の本だろうと思ってみてみたら、さにあらず、台湾の出版社のものでした。出版は2013年、最近の本です。
今の中国の、海洋に対する積極的な働きかけをみると、この本のような考え方は、中国の国内においてはもしかすると共感を得ているのかも知れないと、非常に不気味な感想をもちました。

日本の歴史認識では、明治期から昭和にかけての外交政治の失敗というのは、遅れてきた先進国として海外への進出、植民地獲得をめざしたことにあると考えているのではないでしょうか。第二次世界大戦後に、イギリスを初めとしたヨーロッパ諸国の植民地が解放され、多くの新しい国家ができるという時の流れに対し、戦前の日本が国家の目標として植民地の獲得をめざし、国境線を拡大してきたことが、時代の潮流の中で仕方のないことだったとはいえ、挫折せざるを得なかったのだと。
しかし、国が異なればこのような歴史認識は全く共有できないのだという事を感じました。彼らは、中国が本気で後押しをすれば、東南アジアの国などは、自分の領土とすることは可能であるし、そうするべきと考えているのかもしれません。逆にかつての歴史的な過ちを繰り返してはならないと。

一方で、台湾や香港の民主化運動さえもどうにもならず、中国への反感を強めていくばかりだし、チベットやウイグルの問題もあるので、それどころではあるまいというのが現実と思いますが。



#9724 
黒駒 2015/01/09 23:43
花燃ゆ第一回は・・

そういえば管理人様のご専門はいくつかありますが、こちらでは「海上史」「南北朝」以外でも「教育」の専門家でもあらせられるわけですよね(笑)。

私も教育関係者ではありませんけど、教育という分野には若干関心を持っています。風雲児たちだったら松蔭が松下村塾で輪読しているテキストが話題の「トマ・ピケティ」だとかそういうギャグもできるだろうとくだらないこと考えたのですが(笑)、「輪読」とか前近代の教育スタイルをちゃんとやってくれるのか。

「官兵衛」も第一話で少年官兵衛が兵書を読んで軍師としての教養を育んでいるシーンがありましたけど、官兵衛さん師匠にもつかずに黙読してたのですよね。あれは近代的な「読書」だろうと、思ってしまいました。

花燃ゆも首相の地元なもんですからNHKは媚売ってるのかと言われますね。個人的には、過去に首相の地元と題材がかぶった例が少ないことからそれはないだろうと思うのですが、ただ保守政権が進めたがっている道徳教育の強化とか、そっちの面で媚を売ってるとは言えるのではないかと思ってしまいましt。

保守政権のやりたがる道徳教育というと「愛国心」とかもちろんそっちもあると思いますが、しかし私が知人の親御さんに話を聞いただけでも、いま日本の公立小中学校は子どもの躾ができていなくてそうとう現場が荒れてる問題があるらしく、そういう実情をそろそろ国で本腰入れてなんとかしてくれという声を反映しているのかもなと、そのへんを深読みしてしまいました。このあたりは、徹夜城様のほうがお詳しいと思いますけど。

ともあれ、私はそういう意味で今年は「教育」に着目して見てみようかなと思ってます。



#9723 
バラージ 2015/01/09 22:35
文は、刻の涙を見る……

 こちらの板でも明けましておめでとうございます。

 『花燃ゆ』の第1回を観ました。まあまあよろしかったんじゃないでしょうか。『八重』と違ってちゃんと主人公中心に物語が展開してましたし、『官兵衛』と比べてもドラマとして面白かったです。『篤姫』に続いて長塚京三が主人公の父親役なのもうれしい。まぁドラマとしてどうか、続けて視聴するかはもう少し観てみないと何とも言えませんが。
 しかし大沢たかおが出てくると、どうしても『JIN 仁』に見えちゃうなあ(笑)。新島八重が「南方先生、ペニシリンでございます!」って乱入してきたらわけわからんことになって面白そうですね(笑)。

>歴史映像名画座
 ついにオセアニア・南極史が追加されましたね。といっても僕は何本か紹介したわりには1本も観てなかったりするんですが(笑)。『南極物語』をテレビ放送で観たことがあるようなないような……というくらいです(ついこないだも追悼放送してましたが)。他の追加作品では、以前も書いたとおり『仁義なき戦い』シリーズは『完結編』だけ観てて、『軍師官兵衛』もちょっと観たというくらい。
 『二人の軍師』はテレ東系列局がないんで観てないんですが、そういえば新春ワイド時代劇は昔半年後ぐらいに1日1時間ずつ放送してました。『おんな太閤記』のリメイクとかも仲間由紀恵主演でやってましたね(橋田壽賀子のは原作として、別の人が脚本を書いてた)。こちらも観てはいないんですが、大河『おんな太閤記』は僕が最初に観た(全話観た)大河ドラマで、橋田ホームドラマだけあって、ねねや秀吉の家族・家庭描写が多く、秀吉の弟秀長も後の大河『秀吉』に先駆けて頻繁に出てきてました。ねね・秀吉夫婦のお隣さん(かつ親友)として前田利家・まつ夫妻も頻繁に登場しており、これまた後の大河『利家とまつ』を作るときに『おんな太閤記』は確実に意識されていたでしょう。

気づいた点
・NHK大河ドラマ『元禄繚乱』も完全版と総集編がDVD化されたようです。
・NHK大河ドラマ『天と地と』の解説で、「ごく一部の映像が残っていない」とありますが、「ごく一部の映像しか残っていない」の間違いではないかと。
・アメリカ合衆国史の『モヒカン族の最期』は観てないんですが、2度目の映画化『ラスト・オブ・モヒカン』は観ました。解説に80年代とありますが92年の作品です。

作品追加紹介
・インドネシア史
『聖なる踊子』……ソフト化なし。未見。9・30事件を背景としたインドネシア・フランス合作映画。2014年アジアフォーカス・福岡国際映画祭で公開されたらしい。
・アメリカ合衆国史
『ビートニク』……1950〜60年代の米国で一代ムーブメントとなったビートニク(ビート・ジェネレーション)という文学カルチャーを描いたドキュメンタリー映画。ビートニクとその時代をポップな編集で描いた映画でなかなか面白かったです。
『ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間』……未見。1969年に米国で行われた歴史的な大規模野外ロック・コンサート「ウッドストック・フェスティバル」のドキュメンタリー映画。



#9722 
徹夜城(正月明けでかえって暇もできた管理人) 2015/01/07 22:17
歴史映像名画座も更新しました

 こちらに報告はしませんでしたが一昨日に「史点」も更新してます。ついでに史点の去年の過去ログ、および史劇的伝言板の過去ログも篇集の上でアップしてあります。
 「歴史映像名画座」の方では以前から作ろうとは思っていた「オセアニア史」のほか、ついでにと「南極史」(!)のコーナーまで作ってしまいました(笑)。あと、以前から迷いのあった「仁義なき戦い」も菅原文太追悼ついでに追加してあります。そういや「南極物語」も高倉健追悼みたいになりますね。



#9721 
サヤ・オリノ 2015/01/02 03:35
謹賀新年

新年明けましておめでとうございます。サヤ・オリノです。
昨年中はお世話になりました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
(というほど、ここの伝言板に書き込みをしてはおりませんが。)
冬らしく寒い日々が続いておりますが、
皆様もどうぞご健勝でお正月をお過ごしください。
皆様の御多幸をお祈りいたします。



#9720 
徹夜城(正月中に史点を書くつもりの管理人) 2015/01/01 21:42
あけましておめでとうございます

 とうとう2015年ですよ。2000年過ぎてからこっち、年数が一つあがるごとにSF世界へ突入して行く観がありましたが、2015年になってますますその観が。結構多いんですよね、この年が舞台のSF。
 昨年のうちに「史点」をアップするつもりだったんですが、ズルズル遅れてしまい、正月にもつれこんでしまいました。内容的には昨年のまとめみたいな記事になりそう。

以下、冬期講習のせいで遅れていたレスです。


>バラージさん
 「軍師官兵衛」、数字的には最近の大河では「盛り返し」といったところみたいですね。「江」の方が視聴率が高い、という一事を見ても視聴率と内容は無関係、とも思っちゃいますが。
 ところで最近、テレビ東京が数年前に放送した新春大型時代劇の「戦国疾風伝・二人の軍師」を鑑賞しました。山本耕史の竹中半兵衛、高橋克典の黒田官兵衛の二人を主役とするドラマですが、当然ながら内容はほぼ去年の大河そのまんま。もちろん細かいところではいろいろと違うんですけど、見せ場エピソードがおんなじなので…
 「軍師官兵衛」では描かれつつも深入りしなかった観のある「キリスト教入信」の件ですが、このドラマでは面倒くさいと思ったか一切カットしてました。
 「花燃ゆ」は一応つきあうつもりではありますが…「八重の桜」でもそうだったんですが、意外と明治以後が面白くなったりしないかな、と。

>つねさん
半藤一利さん、いまNHKの戦後史番組に80代代表(?)として出てますね。お歳の割にかなりお元気に見えますねぇ。

>黒駒さん
「97代内閣総理大臣」ねんですよねぇ。もちろん一人で何代かやってるケースも多いのですが、内閣制度が出来てから130年ということを考えると1代あたり平均2年いかないわけですね。「百王説」に関しては人数で数えるべきなんでしょうけど。
義満も言及したという「百王説」ですが、歴代天皇の数え方もいろいろとありまして。それこそ二度なった人もいますしねぇ。

>阿祥さん
明朝も後半(16世紀以降)になってくると、経済的にかなりの変化が起こっていて、「銀のブラックホール」になったなんて言われてます。ちょうど日本で石見銀山の生産が始まり、後期倭寇なんかもその銀の流れに乗っかった物でもあったのだろうと思ってます。そして同時期にポルトガルなど新規参入勢力が北上して来て貿易に参加して来るもんだからますます過熱・複雑化していった、それが矛盾をひきおこして「嘉靖大倭寇」になっていくんだろう、といった見方を僕はしています。それが海禁政策が緩和されたのちの万暦年間以降までも形を変えて続いて行き、林鳳やら鄭芝龍・鄭成功やらへと…と言う話を「海上史事件簿」で書かなきゃいけないんですよねぇ(汗)。

>サヤ・オリノさん
こちらなんか各方面で年が明けてからの挨拶しかできてません。
今年は「日本のいちばん長い日」リメイクもありますが、おそらくこれも終戦70周年とかぶせてるんでしょう、アンジェリーナ・ジョリーの監督作品で米兵捕虜を扱ったものも公開されます。ただ一部に議論を呼びそうな気配もあって日本公開をやってくれるのかどうか…

>ひでさん
直義本の件、お教えいただき、初めて知りました。森茂暁さんの著書なんですね。2月発売とのことですが、楽しみにしたいと思います。




#9719 
ひで 2014/12/31 21:20
良いお年を

今年ももう少しで終わりそうですが、いかがお過ごしでしょうか。
今年は歴史本で面白いものにいくつか出会うことができました。
来年は足利直義の本が角川からでるらしいですね。

世の中を見ていると何か微妙な感じもしますが、
来年が少しでも良い年になることを願うのみです。

http://historia334.web.fc2.com/index.html


#9718 
サヤ・オリノ 2014/12/31 06:02
時候の挨拶はお早めに

ということで。(ホント、一寸早すぎるんですけど。)
御無沙汰しております。サヤ・オリノです。
2014年の大晦日、久方ぶりの書き込みで書きたいことは山程あるのですが、
個人的事情により(大掃除その他)時候の御挨拶のみとさせていただきます。
来年この伝言板で又お会いいたしたく存じます。
ですが、一言だけ。
リメイク版「日本のいちばん長い日」大ゴケしなければいいですけどねぇ。
ま、「あの御方」を美化しさえすれば、それだけで感動する、という方々が
この国にはいらっしゃるようですから、その点大丈夫なんでしょうけど。
では、取り急ぎ用件のみ。
今年中お世話になりました。来年又どうぞよろしくお願いいたします。
皆様、どうぞ良いお年を。



#9717 
阿祥 2014/12/25 00:53
明朝の海禁政策の矛盾

明の海禁政策についての説明ありがとうございます。明朝の初期では貿易にそれほど重きをおいていなかったという指摘はなるほどと思います。明の国是は“士農工商”で、農業重視/商業軽視でしたから、洪武帝の時期では貿易の絶対量が減ることによる悪影響のことまでは考えが及ばなかったでしょうね。
手元にある「白銀帝国」という明の経済政策に対する本には、宋/南宋/元にかけて発達してきた海外交易による税収が、明の時代になると激減していると書いてあります。官による交易だけでは、貿易の規模が小さくならざるを得なかったのでしょう。そのことが後になって密貿易を促すことになってしまうと考えられます。

明の時代の政治的なポリシーは国粋主義的なもので、海外の物産は必要なく中国だけで十分、外国には施しをしている位の考え方だと多くの本には書いてありますが、この貿易量の激減と、それに対する反作用としての密貿易の横行を見ると、現実は全くそのようではなかったのではないかと思います。明朝の時代は、後期になると市場経済が発達し、さらに世界の交易システムの中に組み込まれていく中で商業がだんだん重要になっていきます。そんな中で、商業軽視の矛盾がどんどん大きくなっていくのかなという気がしてきました。



#9716 
黒駒 2014/12/24 23:05
平成の百王説・・

安倍晋三が国会の指名を受けて、第97代内閣総理大臣に選出されたそうです。まぁ当然のニュースなのですけど、「第97代」というあたりで、あと3代で100代になってしまうなと、思ってしまいますね。それだけ明治や昭和戦前期、戦後にかけて政治的混乱を繰り返しているわけで、あまり名誉なことではないですね。先進国では例を見ないと思います。英国なんか18世紀から議院内閣制をしているわけですが、まだまだ100代には当分届きませんしね。



#9715 
つね 2014/12/18 23:44
そういえば半藤一利原作

半藤さんは自分で「臣・一利」を名乗るくらいですからね。ただ美化というよりは同情といった面が強いように感じます。人格・識見を高く評価し、立場や法に縛られていたことを理解しつつも、「もう少し」と残念に思うところもある、という感じです。
4ヶ月というのは4月の鈴木内閣発足からということになりますが、半藤さんはちょうど終戦2か月前の6月14日の午後に天皇が体調を崩して翌日政務を休んだのを天皇の終戦への決断転機と考えているのでクローズアップされそうです。



#9714 
バラージ 2014/12/18 23:34
花より男子(だんご)燃ゆ

 僕は『軍師官兵衛』はかなり序盤で脱落してしまったんですが、家族が観ていたためところどころチラ見してはいました。そんなチラ見程度の感想としては、確かに官兵衛が幽閉から解放されて以後のほうがドラマとしてよかったと思います(正直前半は退屈だった)。岡田君の演技も後半になるほど凄みを増していったし、竹中直人も晩年のダメになっていく秀吉を嬉々として演じてましたね。三成や淀殿が悪者になっちゃうのは、う〜んまたか、とは思いましたが、まあドラマ的には悪役がいたほうがいいってのも確かなんで仕方ないところなんではないかと。視聴率的にはまぁあんなもんでしょう。21世紀に入ってからの男性主人公大河で平均20%を越えたのは清四郎君人気の『天地人』だけですし。

 『花燃ゆ』は公式サイトができてますが、タイトルの横に「幕末男子の育て方。」というサブタイトルともキャッチコピーともつかぬものが。ホームドラマ&青春群像劇という『篤姫』路線なんではないかなあ。去年の『八重の桜』は震災を受けて急きょ決まったものなんで、『花燃ゆ』はその前に予定されてた題材なんではないかという気もするんですが、どちらにしろ女性主人公という前提がまずあって、次いで時代は安土桃山を連続ではできないしマイナーな時代も視聴率的にやばいってことで幕末になったんではないかと。題材も、確かに首相と会長のアレな噂がやや引っかかるのは確かなんですが、完全版が残ってない幕末過去作の再ドラマ化だと龍馬の次に長州が来るのはまず順当かと。



#9713 
徹夜城(師走なので走る先生になっている管理人) 2014/12/17 22:40
「南北朝列伝」がジワジワジワ

 このところいろいろと没頭してることがありまして、書き込みがすっかりおろそかになってしまいました。「史点」も総選挙のあとということもあり、ネタはいろいろあるので何とか年内にあと一回は書きたいもの。

 ところで今日は「南北朝列伝」を更新。「に」から始まる二条家(御子左系、摂関家)、仁木氏、新田氏の皆さん合計26名が追加されています。「新田」は義貞の息子さん、お孫さん達がようやく追加できまして、新田ファミリーがほぼそろって南朝方がややにぎやかになりました(笑)。
 調べつつ書いていて面白かったのが「二条家」の人々。つまり公家さんですね。摂関家関係は割と知っていたのですが、和歌を家業とする「御子左系二条家」の皆さんが実に興味深い人生を送ってます。和歌の世界も激しい闘争の世界でありますし、この時代はお公家さんでも「戦死」する人が出たりします。箱根・竹之下の戦いで戦死して尊氏が涙したという二条為冬は知っていたのですけど、その子、孫については今回の執筆で初めて知って驚きました。なんて家系だよ、と。


では、大幅に遅れてしまっているレスをちょこちょこと。

>アジアのバカ大将さん
 発想としては面白いな、とは思うのですが、さすがに実際の明朝の政策を見てると「海のモンゴル」を直接的に警戒していたとは考えにくいと思います。ただ鄭和艦隊の遠征が「海のモンゴル帝国」の再編を志したものだったかもしれない、という話なら誰かが言ってた気がします。
 鄭和の話が出たんで、ついでですが、前回の「史点」でトルコ大統領が「イスラム教徒が12世紀にアメリカに到達していた」とのたまった件についてネットで調査していたところ、以前「鄭和艦隊がアメリカに到達していた」説を唱えた人はその後「鄭和艦隊の一部がヴェネツィアまで来ていた」説で本を出してるみたい。「じゃあなんであの噂好きのイタリア人が全く記録してないんだ?」というツッコミが当然出ていましたが(笑)。

>黒駒さん
 「軍師官兵衛」、現代の天下分け目の決戦(大げさか)のせいで一週間遅れることになっちゃいましたね。関ヶ原やっていきなり最終回なんだなぁ。
 とうとう主役にされてしまいましたが、当然ながらこの黒田官兵衛という人、大河ドラマでは「常連人物」の一人なんですよね。先日テレビ放映もしていた三谷映画「清須会議」でも重要な役どころで登場してましたが、あれも多分に「大河マニア」な監督の意図であろうと思ってます。
 来年の「花燃ゆ」は…幕末から明治にまたがる話ということでは「八重の桜」路線だな、と思うのですけど、決定の過程に何か政治的なものがなかったかな、というのが気になるのですよね。妙に発表が遅かったですし。

>つねさん
 「日本のいちばん長い日」リメイク情報は2ヶ月ほど前にネット上で見てました。考えてみりゃ来年で敗戦70周年ですから、「○○周年」企画が大好きな映画業界が考えつくのは当然ではあったのでしょう。50周年の時に「きけわだつみの声」「ひめゆりの塔」リメイクになった時も企画力の貧困を感じてしまいましたが…
 役所広司が山本五十六を演じた「聯合艦隊司令長官山本五十六」も実質リメイク企画でしたし、「開戦50周年企画」のおまけつき(笑)。それで今度は敗戦記念企画映画にも、というわけですが、どちらも三船敏郎が主役を演じているという共通点もありますね。

 今回のリメイク版「いちばん長い日」は、本木雅弘演じる昭和天皇がポイントになってるようです。オリジナル版では先代の松本幸四郎が演じてましたが顔がまともに映ることはなく後ろ姿や手で表現され、声や口調もあえて似せていない(玉音放送があからさまに違う)ものでしたが、あれは当時昭和天皇自身が存命で描きにくい面もあったからでしょうが、かえってそれを逆手にとってあの状況における天皇の微妙なポジションを描けたという気もしてます。
 今回は当人が亡くなってから四半世紀たつし、ということでより昭和天皇に着目する形になるらしんですが…監督のコメント見てるとちとひっかかるのですよ。なんだか昭和天皇の「聖断」をやたらに持ち上げる内容になる気配でして。「終戦のエンペラー」にもにおったことなんですが、昭和天皇を断罪しろとはもちろん言いませんけど、ヘンな美化もよろしくない。
 映画「大日本帝国」の玉音放送のシーンで「陛下のお言葉で戦争が終わるなら、なんでもっと早く終わらせられなかった」と戦死者の親がつぶやくセリフなんか、実感がこもっててよかったんですけどね。この映画、実は結構辛辣な昭和天皇批判が巧みに含まれていて当人の生きてるうちだけに一部気付いた人がブチ上げたりしておりました。



#9712 
つね 2014/12/11 00:19
日本のいちばん長い日リメイク

来年夏公開だそうです。
http://www.cinra.net/news/20141209-nihonnoichibannagaihi

役所広司さんは山本五十六の次は阿南陸相ということで、開戦時の海軍と終戦時の陸軍のそれぞれキーパーソンを演じることになりますね。
たしか元祖では昭和天皇はほとんど出てきてなかったように記憶していますが、今回はかなり出番がありそうです。元祖は24時間で今回は4ヶ月間の物語らしいのでかなり趣が変わりそうな気がしますが、楽しみです。



#9711 
黒駒 2014/12/07 23:38
かくして大河の歴史がまた1ページ・・

「官兵衛」がいよいよ最終回のようです。実は私、本能寺後くらいからずっと見てないのですよね。DVDは放送中からすでにレンタル店に並んでましたし、どうしても気になるようだったら後でレンタルで見ればいいやと思って、脱落しちゃいました。

印象としてはぎりぎり及第かなとも思うのですが、まず絵に描いたような暗君っぷりの片岡鶴太郎演じる小寺政職がちょっとう〜んという感じでしたし、人物の造形がキャラっぽいというか、あまり奥行きを感じない印象が前半ではありました。後半も噂によると秀吉は耄碌し、淀は傾国の美女で、三成は悪役という話を聞きましたし、そこまではっきりと、視聴者にわかりやすい造形にしないといけないのかなと思いました。終盤はそこそこ盛り上がってる感じらしいのですが。

黒田官兵衛という人は本当に、生涯戦い続けたような人ですし、戦国エンターティメントの権化みたいな人であると思います。まだ再来年に真田大河がありますけど、NHKとしてもこれでヒットしないとなると、いよいよ打つ手が無くなってくるのではないでしょうか。

さて来年は松蔭の妹ですね。「松蔭の妹」というと異様な主人公ですけど、本当は幕末をやりたい、長州をやりたい、松蔭をやりたい、でも松蔭はすぐに死んでしまう、できれば女性主人公がいい、適当な人物はいないか、松蔭の妹がいいのではないか、というあたりで決まったのではないかと思ってます。本当は別に主人公を定めずに、松蔭とその一族みたいなお話にすればいいのだろうと思うのですけどね。

私も松蔭という人物は若干気にかかっていて、「風雲児たち」では大村益次郎に「国内にいても蘭学は学べるのに、いったい黒船に密航して何をしようとしたのか。天下の佐久間象山先生に師事しておきながら蘭学を学ぼうとしない」と言わせてますが、確かに松蔭先生の行動原理って、よくわからない部分がありますね。

南北朝との関わりで言うと、松蔭先生の学んだ山鹿流兵学は楠木正成の軍学の影響を受けており、松蔭先生も正成の史跡を尋ねたなんて話もありますね。



#9710 
アジアのバカ大将 2014/12/06 14:14
明海禁の理由

資料をあさっていないので、思いつきにすぎないのですが、
「モンゴル帝国の海上からの反攻を恐れたから」では
ありませんか?
元朝は滅亡したわけではなく、草原に帰って健在、
アラビアやインドでも同様でした。海上からの攻撃の
威力は倭寇が証明しています。陸海からの挟みうちを
明朝は最も恐れたはずです。
謎といわれる鄭和の大航海の動機も、この文脈で理解
できます。モンゴル海軍の航路の主要港をすべて、
友好国にしておき、少なくともモンゴル艦隊出撃を
明朝に通報してもらえるようにしておくことは
絶対必要だったはずです。




#9709 
徹夜城(健さんと文ちゃんの相次ぐ死にかなりショックの管理人) 2014/12/02 01:14
倭寇と海禁政策

 高倉健に続いて菅原文太まで。ちょうど大河「獅子の時代」全話を見ている最中だったので余計にショック。菅原文太となればやっぱり「仁義なき戦い」が筆頭に挙げられてまして、当サイトの映画日記コーナーも今日は「仁義」関係が盛況です。やっぱり戦後史の一側面を描いた実録系として「仁義なき戦い」も「歴史映像名画座」に入れちゃおうかな。
 数日前には中島啓江さんが亡くなり、「太平記」出演者がまた一人逝かれてしまいました…


>阿祥さん
 さて、久々に、かなり重厚な倭寇関係ネタの投稿、ありがとうございます。このところどっぷり南北朝脳になっていた僕なので、いま必死に倭寇脳に戻そうとしているところです(汗)。だからなかなかレスが難しいなぁ、と思いつつ書いてるのですが…なまじ「専門」と思ってるだけにうかつなことが書けん、という気分もあります(^^;)
 まずその鄭永常さんの著作の狙いは良く分かるし、なかなか面白そうだなぁとダイジェスト紹介を興味深く読ませていただきました。今の時点で思ったところをいくつか。

 まず海禁政策の原因ですが、これがなかなか即答しにくい。元末の群雄割拠を朱元璋が勝ち抜いて行く過程で沿岸諸島部の勢力が日本方面にわたって「倭寇」と結びついた事例はあり、舟山群島なんて島の住民がまるごと内地に移住させられてますから、まず建国当初の国家として沿岸部の治安維持、というのは頭にあったでしょう。こうした沿岸住民(海民と言ってもいいでしょうか)が海洋勢力と結びつくとして警戒された例は清初にもありましたし、後期倭寇が出て来るのも彼らに対する規制が緩んだから、とも思えます。

 明の「海禁政策」はこうした民間レベルの私的な交易活動を禁じて、貿易はあくまで外交とセットにした公的なもののみに絞って管理する体制、と理解すればいいのかな。明におけるそれは国際的な「朝貢システム」と合体してより「公的」度の高い仕組みになってるかと。で、明初の段階では「貿易」にどこまで重点を置いていたのか、疑問もあります。朝貢貿易じたい明政府側は「赤字」にしかならず、あまり来てくれるな、という態度ですし。

 後期倭寇の評価については面白いな、と思いつつも革命だの地方政権レベルだの…とまでくるとどうかなぁ、という感想。むしろ階級闘争史観はなやかかりしころに日本でも中国でも出てきた倭寇評価に先祖がえりしてる気もします。
 盛んになった私貿易と国家管理の矛盾とが「倭寇」を引き起こす、一応の「管理」の上で交易を認めてやれば倭寇は治まる、というのは前期倭寇に対する朝鮮王朝の政策にも見られ、それ自体は確かなのですけど、後期倭寇の場合、現実問題として密貿易の活発化は沿岸の治安悪化を招いていますから朱ガンの攻撃も無理もないといえば無理もないんですよね。
 後期倭寇も集団ごとに傾向の違いがありますし、そもそも16世紀半ばの密貿易の活発化は他の時代とはまた違った経済事情も大きかったと僕は思ってます。だから一口にまとめるのは難しいなぁ、と。
 その後の月港「開港」とか、オランダ人の進出とか、いろいろと思うところはあるのですけど、頭の中がまとまったら、また書くことにします。それこそ「海上史事件簿」をちゃんと書けばこの辺の話も自分の中でまとまるんでしょうけどねぇ。とにかく「倭寇脳」を取り戻さなくちゃ(笑)


>アジアのバカ大将さん
 おお、あるんですか!ワシントン主役のドラマが!これは調べてみないと。
 「ワシントン王朝」の案とか、さらには将軍制度の検討もあったというのも初めて知りまして、なかなかに驚いてます。建国当初はそんなことも考えたんだなぁ。


>さらまんささん
 はじめまして。海禁政策というのも説明しようとするとなかなか複雑なんですが、一応いま思いついた範囲で。
 明がやってた「海禁」はイメージ的には日本の江戸幕府の「鎖国」に近い。いや実際、江戸幕府の「鎖国」もイメージを誤るってんで「海禁」と呼ぶべきという意見もありましたし。
 まず明の「海禁」というのは、民間人は基本的に一切海外へ出てはならず(板一枚でも渡海を許さぬ、とされてました)、貿易というのは外交関係に付随して国家間で公的に行われるものなんですね。足利義満の日明貿易もそういうことです。
 今日の感覚からすると分かりにくいのですが、明でも清でも政府レベルは交易にあまり関心がないように思えます(これも時期や場所で異なりますが)。基本的に外国は中国にたんまりある商品や文化が欲しくて来る訳ですが、中国側は特に欲しい物はないわけです(これも表向き、という部分もありますけど)。むしろあんまり貿易に来られると赤字になるだけで損になる。国際秩序というか、外交的・政治的・儀礼的なものがないまぜになった貿易状態なんですね。なつまり明の海禁というのは国家による貿易管理制度ではあるんですが、今日の貿易管理の在り方とは根本的に異なる発想なんです。
 内陸の方の交易については思いっきり疎いので、それこそうかつなことが書けません(汗)。モンゴルと「馬市」で交易し、それがうまくいかなくなるとモンゴルの進攻を招く、というパターンは倭寇と通じるものがあるとは言われてるのですけど。
 



#9708 
さらまんさ 2014/11/30 14:53
海禁とは?

はじめまして。初めて書き込みさせていただきます。
阿祥さんの書き込みを拝見して改めて疑問に思うことがありましたので書き込ませていただきます。海禁政策や世界史については高校生レベルの知識しかありませんがどうしても納得できないことがありました。所謂海禁政策と現代まで続く国家による貿易管理とは何が異なるのでしょうか
現代でも出入国には国家の発行したパスポートが必要で場合によっては入国を拒否されます。
貿易も自由ではなく検疫があり関税がありTPPの議論なんて国家が貿易の形態をを独占的に決定しようとしているように思えます。
前近代でも専売制があって商品の流通を管理しようとしていましたし、資本主義が発達したといわれる西洋でも自由主義貿易の議論が盛んになったのは19世紀以降で、それまでは18世紀イギリスの南海会社のような独占国策企業が存在していました。
また海禁政策の話で常々疑問だったのですがシルクロードは明時代にはどうなったっていたのでしょうか。たしかモンゴル帝国時代はジャムチが設置されて旅行者の便宜が図られたと聞いています。マルコポーロも内陸経由でやってきたのではなかったでしょうか。また海洋貿易の管理はモンゴル時代にもなされていたと聞きますが明時代とはどう違うのでしょうか。




#9707 
アジアのバカ大将 2014/11/30 13:25
アメリカ建国ドラマ

題名が思い出せないのですが、20年ほど前、ジョージ・ワシントンを
主人公にしたTVミニシリーズがあったのを覚えています。独立がなり、
権力と利権を求める輩がうごめき始めたころ、ワシントンは単騎、
老妻のもとにひっそりと帰りつく場面で終わっていました。
歴史ではこの後、ワシントンは大統領を2期務めますが、
任期中に自分からは何もしなかったそうです。軍事以外に
能がない、己を知っていたからでした。史上最高の大統領は
彼だという米国民は今も多いそうです。
当時新政府には内政のジェファーソン、外交のフランクリンという
2人の天才もいました。
ちなみに、米国憲法制定会議では政体についての論議があり、
その中には、ワシントンを国王にする王朝創設案もあったそうです。
なお、日本の将軍制度導入も検討されたとのこと(中央公論社世界史
シリーズ「アメリカ独立」)。ナポレオン憲法と同様、民主憲法
=共和政体と決まっていたわけではないのが興味深いですね。
そういえば、1970年代初めのNHKテレビ時代劇「天下御免」で、
主人公の一人「田舎剣豪」(役名失念。林隆三演)が米独立戦争
勃発を知り、その「自由、独立」の趣旨に共鳴し太平洋を渡ろうと
するエピソードがありました。武士道とアメリカ独立(アメリカ
革命)とは相性がよいのかもしれません。




#9706 
阿祥 2014/11/30 12:16
海禁政策の原因について

最近「來自海洋的挑戦、明代海貿政策演變研究」(鄭永常著)なる研究書を読み終えました。台湾の本で2004年の出版です。明の時代の対外関係を総括的に著述することを目指した著作です。これまでの研究書が、倭寇の研究とか鄭和の遠征とか特定の事象に注目しているものが多いことへの批判として、通時的に明代全般の外交経済関係を述べたいというのが抱負で述べられているだけあって、明代のそれぞれの事件に因果関係を持たせて説明している点が特徴で、なかなか読み応えがありました。
色々感想はあるのですが、ここでは海禁政策のそもそもの原因について徹夜城さんにうかがいたいと思い投稿しました。

この作者の考え方では、明代の対外関係の流れをおおよそ次のようにとらえています。
1)洪武帝の時代:貿易の制限を開始し海禁政策をとり始める。当初朝貢国は限られていた。日本も含まれていない。
2)永楽帝の時代:洪武帝の政策を踏襲。アラビアとの交易ルートを確保するために鄭和を派遣。東南アジアのジャワと日本からも朝貢をさせるのに成功する。朝貢政策はピークを迎える。
3)永楽帝の後ポルトガル人の来航まで:朝貢制度はそもそも永続的に持続できる交易制度ではなく、明側にも朝貢国側にも無理があるシステムであった。そのため、現実的な対応として朝貢外の貿易制度が整備される。広州外港における交易所の運営が代表的。これは朝廷の許可を得た役人が関与するもので、準公的交易システムと言える。この制度の下、朝貢以外のある程度自由な国際貿易の枠組みができたことで、安定的な国際関係を保つことができるようになる。
4)ポルトガル人の来航から双嶼港事件まで:ポルトガル人は中国に対して交易を求めるが、広州当局は彼らが朝貢国ではないのでこれを認めない。そのため彼らは私貿易を行っている福建・浙江地方に移り、双嶼港において大々的に交易を行うことになる。日本の私貿易家も寧波の乱以降、公的貿易の道が絶たれていたためこれに合流。しかし、明朝はこの私貿易の隆盛を快く思わず朱ガンを派遣、これを壊滅させる。
5)倭寇の大乱:明との貿易の道を失ったポルトガルは、福建・浙江での交易を諦め、広州において改めて交易拠点を求める。広州当局はマカオの地をポルトガルに租借することでこの利権を確保し安定的な関係を築くのに成功する。一方日本との貿易を担っていた者たちは、武力による強硬策を展開、これが後期倭寇の大乱となる。著者は単なる私的な騒動ではなく、地方政権の設立までを目論んだ革命政権なのではないかと示唆している。(南京を攻め落とした太平天国の乱のイメージを持ちました)
6)マカオと月港の開港:貿易の利権がこれらの乱の根本原因であること考えた地方政権は、朝貢貿易外の交易ルートを確保することで海上の治安の安定化を図る。これがマカオと月港の開港につながる。これらはいずれも朝貢国外への貿易の枠組みとなる。マカオはポルトガル人を中国に来させる港であるのに対し、月港は逆に中国人(福建の&#28467;州に限っていたらしい)が外国(特にフィリピン)に出向いて行うという違いがある。いずれも地方政権は関税を徴収しており、これは大きな収入源であり利権となる。
7)オランダ人の来航と再度の混乱:17世紀初頭、オランダ人が現れると、上記の交易システムに対して正面から挑戦してくることになり、この貿易システムもその再編を迫られる。ポルトガル人がマニラを拠点に東南アジアや日本と行っていた交易、&#28467;州人が月港を拠点にフィリピンと行っていた交易のいずれもが、オランダ人により大きな影響を受け衰退していくことになる。オランダによるマカオ攻撃、澎湖等の占領、福建への攻撃はいずれも失敗に終わるが、貿易のシステムは混乱する。
8)オランダ人による台湾占領と、鄭芝龍の勃興:オランダ人は中国との直接交易と、中国フィリピン間の交易の断交を明朝に求めるがいずれも失敗する。この状況の打開を図ったのが李旦であり、その後を継いだ鄭芝龍であった。オランダの海上勢力の実力と日本政府の鎖国に向かう時局を正確に把握していた鄭芝龍は、オランダに対して協力する方針に踏み切り東シナ海の貿易を一手に掴むことになる。

キーワードを並べると、“朝貢政策の理想と現実”、“朝貢外交易の発展と展開”、“欧州勢力による交易システムへの挑戦”といったところでしょうか。このくくり方についてもいろいろ聞きたいと思いますが、特に朝貢交易とそのコインの裏になる海禁政策についての評価について伺いたいと思います。

この本においては、朝貢交易というのが、いま流行りの言葉で言えば“サスティナブル(持続可能)”な政策ではなかったというのがポイントになっていると思います。そのため、永楽帝が無理をして風呂敷を広げてもそれを続けることができなかった。また、朝貢外の交易システムの確立を目指すが、それが表向きの国是と対立しているため、政策としての一貫性に欠けた。朱ガンによる双嶼港への攻撃などは、現実的ではないとかなり否定的に評価しています。一方倭寇の大乱を納めた地方政権の誘導政策を積極的に評価しています。広州政府によるマカオの開港と、福建政府による月港の開港です。この交易ルートの成立により安定的な貿易が可能になり、そのため密貿易は必要なくなり、倭寇の乱は納まったと見ています。
ところが、この海禁政策の理由をあらためて様々な本やネットの文献で調べて見ると、海禁というのはそもそも倭寇取り締まりが理由であると書いてあるのです。確かに明初の前期倭寇というのは元末から起きており、それを取締るために行ったというのは洪武帝の考え方であったようです。しかし、本質として密貿易業者である倭寇を取締るために海禁政策を行い貿易ルートを閉ざしたというのは、火に油をそそぐ様なもので、間違った対応だったのではないかというのが僕の感想です。
洪武帝以降の時代でも、この海を閉ざすという政策は明と清の時代に何度も行われています。いずれも治安維持のために海上勢力との接触を断つという目的と考えられますが、これは海に生きる民の生活の糧を奪い、必要な交易ルートが滞ってしまい、事態を悪化させているように思います。逆に、交易のルートを開いて確保する方向に政策が向くと、海上の治安は安定します。

この洪武帝の海禁政策の根本的な理由は何なのでしょう。個人的には元朝による世界に開かれたオープンな商業システムに対する本能的な反発、農業優先とそれに対応する商業蔑視というのが本質なのではないかと考えています。また、この海禁政策に対する一般的な評価はどうなのでしょうか。



#9705 
黒駒 2014/11/24 11:02
アメリカ史もの

私も長らくアメリカ建国史に関心を持っているのですが、日本語文献の乏しさとともに、映像作品の少なさも感じますね。アメリカのテレビドラマは大ブームですが、そういえば歴史ものが無い気がします。確かにアメリカは歴史が浅く、日本でいえば幕末から近代史しか素材が無いのでいたし方ない気もしますが、アメリカ人って歴史もの好まないのでしょうか。でも、前にyoutubeで探してたら建国ものらしき映像見つけたことあったので、輸入されてないのかもしれないですね。



#9704 
つね 2014/11/23 16:08
アメリカ史映画

私も未紹介で印象に残っている映画を2本ほど。

アラモ(2004年版)
こちらのアラモはかなり史実重視らしく、例えば最後のメキシコ軍総攻撃は、1960年版だと白昼堂々、進軍ラッパを鳴り響かせながらの進軍だったのが、こちらでは未明の暗闇の中、静かに砦に近寄ってからの奇襲となっています。ただ1960年版だと、アラモ砦の人たちが英雄的に描かれていたのが、こちらはそもそもアラモ砦に立てこもること自体が戦略ミスにしか見えなくなっています。結果的に時間稼ぎになって、テキサス軍の逆襲となるサンジャシントの戦いに繋がるということにはなっていますが。サンタアナ将軍が悪役に見えるのは多分、史実通りで仕方ないんでしょう。

フロスト×ニクソン
ウォーターゲート後、大統領辞任したニクソンに、インタビューをしかけるジャーナリストのフロスト。インタビューを復活の足掛かりとしたいニクソンと、ニクソンから失言を引き出したいフロストの駆け引きが見もの。個人的にはニクソンの参謀役を演じたケヴィン・ベーコンが印象的。

途中までしか見てないのですが、アポロ13なんかもそろそろ歴史映画になるのかなあ。911関係もいくつか出ていますが、こちらは少し早い? 「ユナイテッド93」は空港の管制官で本人が演じていたりしてかなり緊迫感があります。




#9703 
バラージ 2014/11/21 22:49
アメリカ史 紹介編

 続いて未収録作品紹介編。掲載作品のない「オセアニア史」も挙げておきます。

・アメリカ合衆国史
『ポカホンタス』……未見。ポカホンタスの伝説をそのままに描いちゃったディズニーのアニメ映画。ネイティブ・アメリカン(インディアン)側からは散々批判されてるらしい。テレンス・マリック監督も同じテーマで『ニューワールド』という実写映画を撮ってます。
『クルーシブル』……1692年の英国植民地マサチューセッツ州で起こった「セイラムの魔女狩り」を描いたアーサー・ミラーの戯曲『るつぼ』の映画化。#9602
『それでも夜は明ける』……南北戦争前の時代、誘拐され奴隷として売り飛ばされて10年を過ごした黒人ミュージシャンの自伝の映画化。#9616
『黄金狂時代』……19世紀ゴールドラッシュの時代を舞台としたチャップリンの有名なコメディ映画。靴を煮て食べるシーンなんかが有名。正確には歴史映画ではないんですが、個人的趣味で紹介してしまいます。
『七匹の無法者』……ソフト化なし。未見。奴隷解放のために挙兵した奴隷制廃止論者ジョン・ブラウンが主人公の西部劇。
『ジェロニモ』……有名なネイティブ・アメリカンの戦士ジェロニモを描いた映画。いかにもウォルター・ヒル監督らしく骨太のやたらと男臭い映画で、面白いことは面白いんですが個人的にはもうちょっと女っ気も欲しいなぁという気も(笑)。
『死刑台のメロディ』……1920年に米国で起こったサッコ・バンゼッティ事件(サッコとバンゼッティが、世界的抗議にも関わらず死刑にされた冤罪事件)を描いたイタリア映画。なぜイタリア?と思うんですが、サッコとバンゼッティがイタリア系だからでしょうか? 冤罪の恐ろしさがよく描かれてました。
『アンタッチャブル』……禁酒法時代に財務省のエリオット・ネス率いるチームがギャングのボスのアル・カポネを逮捕し有罪にするまでの映画化。まあまあ面白いんだけど、ちょっとかっこよく描きすぎな気が。
『モダン・タイムス』……1930年代、現代文明による人間の機械化をテーマとしたチャップリン不朽の名作。工場の単純作業の繰り返しで腕の動きが止まらなくなる、歯車に巻き込まれる、自動食事装置など名シーンが多い。これも歴史映画ではないんですが個人的趣味で紹介しちゃいます。
『愛と哀しみの旅路』……第二次世界大戦中にマンザナール収容所に強制収容された日系米国人を描いた映画。日系人の描かれ方に非常にリアリティーがあり、勘違い日本人になっていませんでした(といっても日本人と日系人では違うので、日系人の方から見ればおかしなところがあるのかもしれませんが)。良作でした。
『グッドナイト&グッドラック』……マッカーシズムと対決したニュースキャスターのエド・マローとCBSのスタッフを描いた映画。同じく赤狩りを描いた『真実の瞬間』と違って実在の人物の歴史映画なんですが、面白さはこちらのほうが今一つ。
『リトル・モー』……1950年代の女子テニス選手モーリン・コノリーを描いた伝記映画。#9602
『フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国国防長官の告白』……ケネディ〜ジョンソン大統領期に米国の国防長官を務めたロバート・マクナマラが自らを語ったドキュメンタリー映画。#9665
『ノーマ・ジーンとマリリン』……未見。マリリン・モンローの生涯を、本名のノーマ・ジーンと女優のマリリン・モンローの2人1役で描いた伝記映画。
『パンサー』……未見。黒人解放組織ブラック・パンサーを描いた映画。
『ドアーズ』……60年代末〜70年代初めのロックバンド・ドアーズを描いた映画。ただし本物のドアーズのメンバー(既に死んでいた主人公のジム・モリソンを除く)は内容に大いに不満だったらしい。まぁオリバー・ストーンの眼から見たドアーズってことなんでしょう。でも映画としては面白かったです。
『ドアーズ/まぼろしの世界』……ドアーズを題材としたドキュメンタリー映画。新たな撮影やインタビューは一切行わず、当時のオリジナル映像とナレーションのみで構成された作品。#9665
『7月4日に生まれて』……ロン・コビックの実体験を元にした小説の映画化。ベトナム戦争映画の一つですが、どちらかといえばベトナム帰還兵の反戦運動に力点が置かれているので米国史にちょうどいいかなと。
『ALI アリ』……未見。モハメド・アリの生涯を描いた伝記映画。
『大統領の陰謀』……未見。ウォーターゲート事件をスクープした2人の記者を描いた社会派映画。
『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』……完全にキルスティン目当てで見た作品ながら意外な拾い物だった一本。ニクソン大統領のウォーターゲート事件を扱ったコメディ映画で主人公はお馬鹿女子高生二人組。大統領から『大統領の陰謀』で有名な記者二人まで実在を含む登場人物全員をおちょくり倒しているのが、何とも偉いというかすごいですね(笑)。日本だったらこんなことしたら怒られそうだ。
『シルクウッド』……未見。原発の危険性を告発しようとして謎の事故死を遂げたカレン・シルクウッドとを描いた社会派映画。#8925

・中南米史
『ウォーカー』……未見。ニカラグアの独裁者となった米国人ウィリアム・ウォーカーを描いた映画。
『エビータ』……アルゼンチンの大統領夫人エバ・ペロンを描いたミュージカルの映画化。アクの強いマドンナが演じた割にお話のほうは意外に薄味。ちょっと物足りなかったです。
『汚れた心』……戦後ブラジルの日系人社会で起こった「勝ち組・負け組抗争」を描いた映画。#9351
『ミッシング』……1973年のチリ・クーデターを舞台に、巻き込まれて行方不明になった米国人を探す家族の姿を描いた実話の映画化。非常にストレートで真面目な作りの映画ですが、あまりにも真面目過ぎてもう少し遊びの部分があってもよかったような気も。
『愛の奴隷』……同じくチリ・クーデターを舞台とした、クーデターで失脚したアジェンデ大統領のいとこの娘イザベル・アジェンダの小説の映画化。邦題とパッケージ写真は『愛の嵐』みたいですが、そんなシーンはほんの一瞬だけ。非常に真面目な社会派映画です。いい映画でした。
『サルバドル 遥かなる日々』……エルサルバドル内戦を取材したジャーナリストのリチャード・ボイルがその取材体験を書いた小説の映画化。面白い映画でした。冒頭でジェームズ・ウッズ演じるボイルが、「俺は最後までカンボジアに残ったんだ! 途中で逃げ出したシャンバーグ(『キリング・フィールド』の人)とは違うぜ!」と言う場面がありますが、シャンバーグについてはそういう批判が多かったらしい。

・オセアニア史
『モアイの謎(ビデオ題:ラパ・ニュイ モアイの謎)』……ビデオ化のみ。未見。モアイで有名なイースター島文明の隆盛と滅亡の謎を描いた映画。
『プリンセス・カイウラニ』……未見。ハワイ王朝最後の王女カイウラニの生涯を描いた伝記映画。
『オーストラリア』……未見。第二次世界大戦前夜から大戦中のオーストラリアを舞台とした大河ドラマ映画。
『WAR OF THE SUN カウラ事件 太陽からの脱出』……未見。第二次世界大戦時にオーストラリアの日本兵捕虜が起こしたカウラ捕虜収容所暴動事件を描いたオーストラリア映画。
『あの日、僕らの命はトイレットペーパーより軽かった カウラ捕虜収容所からの大脱走』……未見。カウラ捕虜収容所暴動事件を描いた日本のテレビドラマ。



#9702 
バラージ 2014/11/21 21:20
アメリカ史 感想編

 歴史映像名画座の更新、ご苦労様です。外国映画の主流は米国映画なんで、やっぱり米国史は作品が多いですね。なので観た作品の感想と未収録作品の紹介を2回に分けて書き込ませていただきます。まずは感想から。

気づいた点
・『鶴姫伝奇』には「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルがついています。
・『トルーマン』は劇場未公開で、確かビデオ邦題が『プレジデント・トルーマン』だったと思います。
・NHK大河ドラマ『元禄繚乱』と『徳川慶喜』の完全版と総集編がDVD化されたようです(ちなみに僕が紹介した映画『不滅の恋 ベートーベン』もDVD化されました)。

感想
・戦国時代
『鶴姫伝奇 興亡瀬戸内水軍』……#9525
・インド史
『秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男』……#9648

・アメリカ合衆国史
『アラモ』……はるか昔に民放テレビの吹替で観た記憶が。といっても途中からでほとんど最後の戦闘シーンしか観てなかったような。
『リンカーン』……#9363
『グローリー』……南北戦争の北軍黒人部隊という題材は面白いんだけど主人公が白人隊長なのが中途半端。このころはまだこれが限界でしたかね。
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』……なかなか面白かったです。ネイティブ・アメリカン(インディアン)の描き方がこのあたりから変わり始めたのかな。
『レッズ』……これも面白かった。ジョン・リードを知る人々の証言がドキュメント的に挟まれるのが印象的。恋人役のダイアン・キートンと、ユージン・オニール役のジャック・ニコルソンも好演でした。
『ダラスの熱い日』……当時としては告発性が高いとは思いますが、ドキュメント・タッチというかあまりにも淡々とし過ぎて娯楽性が低いので今の視点ではこの問題に興味がある人にしかおすすめできないと思います。面白さ的にもまあまあの作品。
『JFK』……#9598
『マルコムX』……#9598
『ニクソン』……かなり退屈な映画。内容的にもやや問題があると思う。ウォーターゲート事件については『静かなるクーデター』という本で新説が提起されてましたね(読んでないけど)。そういえばディープスロートの正体も明らかになっちゃったな。

・中南米史
『革命児サパタ』……多彩な人物が登場する複雑なメキシコ革命をわかりやすく描きつつ重要なメッセージ性もきちんと含みつつ、それでいて娯楽性も失わずに作られているのがすごいですね。とても転向した人が作った映画とは思えんな。もしくはそういう人が作ったからこそ単純な革命礼賛映画にはならず、その複雑な陰影が心に残るのかも。
『戦うパンチョ・ビラ』……普通のアクション映画としてまあまあ楽しめました。ただ、この映画だけ観てても、歴史的背景とかほとんどわかんないけど(笑)。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』……題材が題材だけにあんまり歴史映画っぽくはないんですが、ロードムービーとしてなかなか面白かった。まあ個人的には同じ監督の『オン・ザ・ロード』(ジャック・ケルアックの小説の映画化)のほうがもっと面白いけど。
『チェ』2部作……スペクタクル映画かと思いきや、淡々としたドキュメンタリー・タッチの映画でちょっと肩透かしを食らわされました。知人の知人が観たらつまらなかったと言ってたらしいんですが、確かに観る前に期待させられたものとは違う内容なのでそういう人も多かったんではないかと思う。ただ、そういう売り方をしないと客が入んないだろうしなあ。



#9701 
徹夜城(これから高倉健映画を追悼で見まくる管理人) 2014/11/20 20:23
「歴史映像名画座」更新。

 本日昼間に更新してました。ようやくアメリカ、南米のリニューアルとデータ追加の作業を終え、それ以外の地域の新規追加もいろいろとございます。なお、もしかすると該当作があるかな、と名前だけ挙げていた「北米史」という枠はひとまず消しました。

 さて、世間では高倉健さんがお亡くなりになったことで衆議院解散以上の騒ぎとなっているわけですが、この人、意外に歴史ものにはあまり顔を出されてないんですよね。錦之助版「宮本武蔵」で佐々木小次郎ですが、不思議とその恰好が似合わないんですよね。桃太郎みたいで(笑)。
 他に思い当たるものでは市川崑監督「四十七人の刺客」の大石役。かつてないほどにギラギラした大石となり、ラストで「浅野が斬りつけたわけを教えよう」という吉良を、「聞きとうない!」と一刀両断にしてしまう場面は、何やら往年の任侠映画風味でした。
 黒澤明が「乱」の鉄修理役に熱望し、何度も自宅へ頼みこみに行っていた、という事実はつい最近になって明かされた者ですが、健さんが断った理由が「居酒屋兆治」のためだった、と聞くと結果的にはそれが正解だった気もします。


>黒駒さん
 ちょいとレスが遅れましたが、司馬遼太郎の奥さんの訃報は「坂の上の雲」の件もあって印象に残りました。「坂の上の雲」は発表直後からNHKも含めてかなりの映像化要請があったそうで、東映の「二百三高地」なんかもその流れ(断られたので企画が変わった)だったんじゃないかな…とも思ってます。

>バラージさん
「史点」でも書きましたが、昭和の終わりの時期の妙な雰囲気は、さすがに「次」の時にはなさそうな気がするんですよね…少なくともニュースの終わり、株価や円相場のあとに「本日の下血××リットル」はないだろうと。



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