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2015年4月1日

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◆今週の記事

◆先陣を切って先人に学ぼう!

 3月末、日本の文部科学省がかねてより推進していた「道徳の教科化」を正式に公示した。まぁ無理もない。なにせその監督責任者である文部科学大臣自身が「任意の支持団体」とやらを使った政治資金規正法違反の疑惑がかけられ、市民団体から刑事告発まで受ける事態となっているのだから。そんな大臣を出すくらい日本は道徳の頽廃が進んでいるということで道徳の教科化、いずれはテスト採点による道徳度診断判定でそういう人をエリートコースから排除するのに躍起になっているものと思われる。まぁそんなことをやったら要領の良い「うそつき」ばかりが出世する結果になるだろうが。

 そんな文部科学省、教科化が決まるずっと前に素早く「教科書」になるものを自ら編纂している。そこでは江戸時代の商人たちの間で口伝されていたマナーの数々「江戸しぐさ」なるものが、古き良き日本の伝統であるとして大々的に紹介されている。「江戸しぐさ」の中には当時存在しなかったはずの横座りの長椅子でスペースをマナー「こぶしうかせ」だの、当時の道や傘の使い方ではありえない「かた引き」「かさかしげ」、その他いずれも「江戸時代にはありえない」どころか「昭和以降の現代人でないと思いつかない」マナー」が数々あるという、まさに「オーパーツ」としか言いようのないシロモノなのだが、それを堂々と「教科書」に載せてしまう文部科学省、大臣の意向を受けたのか子供にウソを教えてもいいのだとお考えのようだ。実はその「教科書」には「やってはいけないこと」として「人を傷つけるようなうそをつくこと」というのが挙がっており、やっぱり「聞こえのいいウソなら言ってもいい」と教えているようだ。
 こんなことを書いていたら、昨日の時点で茨城県守谷市という我が家の近所の教育委員会が「江戸しぐさを参考に守谷しぐさを作った」とか新聞で報じられ、二重に捏造教育を行うという、文部科学省を先取りした動きと注目されている。

 そんな文部科学省が教科化を正式に公示して改めて教科書作りに取り組んでいるわけだが、本日4月1日に「史点」編集部ではその検討段階の内容をひそかに入手した。その内容から「江戸しぐさ」にとどまらず、日本の偉大な先人達が歴史の中で作り上げた各時代の「しぐさ」をまとめて子供たちに教える狙いが判明した。

 まず「戦国しぐさ」。勇敢な戦国時代の武士たちが百年間の動乱時代に作り上げた武士たちのマナーである。偉大なる先人たちの知恵や姿勢を知ってサバイバルな国際社会を生き延びるすべを学ぼう、という趣向だ。
 実力のある者が手段を選ばずのしあがる「下剋上しぐさ」。理由はどうあれケンカは必ず両者とも罰する「両成敗しぐさ」。男同士の友情を高めるための「衆道しぐさ」。儒教なんて外来道徳に毒されてないから「親子兄弟で殺し合いしぐさ」。ビジネスの場である戦場では略奪暴行誘拐人身売買は当たり前、海の上でも通行税を払わない奴は襲撃自由という「切り取り自由しぐさ」。戦争のあとでは一般庶民も敗残兵に襲いかかってひと稼ぎする「落武者狩りしぐさ」。女性も純潔は重んじられず、娘も妻も家族にことわりなく平気で外泊する「夜遊びしぐさ」。妻が夫と別に財産をもち、ときに夫に高利で貸しつける「へそくりしぐさ」…などなど、わざわざデッチあげなくても古き良き日本の伝統の「しぐさ」はいっぱいあるものだと思わされる。

 武士の時代ばかりでは殺伐としてイカンということで穏やかな「平安しぐさ」も。
 男女の出会いや恋の告白はメールやLINEではなく雅びに歌を贈り合う「恋歌しぐさ」。おつきあいは夜中にいきなり相手の女性宅へおしかける「夜這いしぐさ」。それは貴族の話だろうという人向けに庶民も恋愛自由であった「歌垣しぐさ」なんてものも記述するとのこと。
 さらに「八紘一宇」なんて言葉が大好きな方々が推奨する『古事記』『日本書紀』にもとづいた「神話しぐさ」も導入。イザナミイザナギの「体の余ってる部分を足りない部分に入れて見よう」という性教育の実践である「国産みしぐさ」(ちなみに『日本書紀』一書の記述では鳥が尻尾を振るのを見てやり方を…なんてえらく実践的である)。夫よりも兄の方が好きと言ってしまうお妃にならった「妹萌えしぐさ」神武天皇日本武尊がみせる手段を選ばぬ「だまし討ちしぐさ」、夫の死後ずいぶん間を置いてその子供を出産するという奇跡をやってのける「神功しぐさ」(ついでに言えば日本武尊の子の成務天皇も父が死んで30年以上後に生まれている)、女の子をナンパして「結婚するよ」と声をかけておいてそのまま忘れて老婆になるまでほったらかした「仁徳しぐさ」…などなど、古代人のおおらかさを現代でも学ぼうという趣向である。

 さらにさらにさかのぼって、日本の古き良き世界最古(?)の見方さえある「縄文しぐさ」という伝統も記述。
 全員陶芸家状態になる「土器しぐさ」。毎日キャンプ状態で、子供部屋大人部屋の区別もなく一家団欒の「竪穴住居しぐさ」。食べ物は狩猟採集による調達が基本で、みんなで分け隔てなく平等に分配する「原始共産制しぐさ」。実在したかも怪しい調理をする「縄文クッキーしぐさ」。女性の生殖関係の部位をやたらに強調した芸術運動「土偶しぐさ」
 食ったものの残骸はその辺に捨ててうずたかく塚にしてしまう「貝塚しぐさ」なんてのも紹介されていたが、これは現代でも花見やキャンプ場や海岸で実践している人多数のマナーなのでわざわざ広める必要はなさそう。あと一万年もすれば現代の生活を後世に伝える立派な遺跡となることであろう。



◆夢の超特急!

 今年は北陸新幹線がついに開業。来年には北海道新幹線も開業し、新幹線網はゆっくりしたペースではあるが日本各地に広がっている。一方でいいことばかりでもなく、新幹線の開通により在来線は経営分離されズタズタ状態、北陸から東京へは便利になった一方で関西へ行きにくくなるなど、「地元の足」はかえって悪くなるというケースも出てくる。
 大動脈・東海道新幹線は去年で開業半世紀となったわけだが、それをさらに補完すべく昨年からリニア中央新幹線の工事も開始された。完成すれば東京から名古屋までたった40分と、狭い日本、そんなに急いでどこへ行くといいたくなるような速さである。リニアというと僕も子供時代から「輝かしい未来の象徴」みたいなものなのだが、途中はほとんど真っ暗なトンネルばかり、電気も大量に食う上に従来の新幹線との両立がどれだけできるのかなどなど、あまり夢のない心配事も多々ある。

 さて開始されたばかりのリニア中央新幹線建設の南アルプスの工事現場で、4月1日に重大な「遺跡」の発見があった。遺跡発見と聞くと工事が中止になるか遺跡破壊になるかといった話になってくるが、これは「工事の手間を省く」発見であったために関係者が困惑している。工事にとりかかってみたらそこにトンネル遺跡があったのである。それも南アルプスを完全にぶち抜いていて、すでにトンネルができちゃっていたのだから驚きだ。

 関係者の調査によると、トンネル内には「二千六百五年五月」と書かれたプレートがあったという。もちろん西暦ではない。戦中に日本人が使用していた「皇紀」で、西暦に直せば1945年=昭和20年にあたる。その5月といえば太平洋戦争も末期で日本が敗色濃厚どころか破滅の淵に立っていたころだ。なぜそんな時期にこんな大トンネルが?
 日本近代における鉄道開発史に詳しい畔柳鐡子教授は「これは戦時中に極秘に進められた『弾丸列車計画』の遺構ではないか」と指摘する。「弾丸列車計画」とは、戦時中に日本・大陸間の輸送力強化をはかって進められた高速鉄道計画で、実際に土地の収用も行われたが実行に移す前に敗戦により立ち消えとなった。だがこの計画はのちに「新幹線」となって復活し、収用された土地も活用されてもいる。つまり「弾丸列車計画」は「新幹線」のルーツとなった計画であるわけだが、戦局の悪化により中止され、実際の建設にはこぎつけなかったと見られてきた。

 畔柳教授は昭和20年5月という時期に注目する。この月には同盟国ドイツも降伏し、沖縄も敗色濃厚で、日本の戦争指導層は「本土決戦」へと邁進していた。東京の大本営も長野県の松代に移転することが決まってひそかに地下施設の建設が進められるなど、米軍の本土上陸後の長い戦いを想定して多くの建設作業が極秘のうちに進められた。「表面的には消えたと思われていた「弾丸列車計画」も極秘のうちに実行に移され、トンネルだけは突貫工事で作ってしまっていたのではないか。当初計画されていた東海道ルートでないのは連合軍による攻撃を恐れたことや、松代大本営との結びつきを考えたのかもしれない」と畔柳教授は指摘する。また当時発表されていた「弾丸列車」の予定路線図(右図)を見ると、漠然とではあるが東京―名古屋間のルートは東海道ではなく南アルプスをぶち抜いているようにも見える。

 トンネルを調査した関係者によると、この「弾丸列車」用のトンネルは南アルプスを抜けてほぼ完成状態であるという。さらに調査を進めたところ、鈴鹿山脈にもトンネルがすでに掘られているのが見つかり、名古屋から奈良へと抜ける、まさにリニア中央新幹線の予定ラインのままに建設されていたことが判明した。
 建設を進めるJR東海ではトンネルを掘るための膨大な予算が削減できると大喜びだが、工事を請け負った大手ゼネコンは受注した大型プロジェクトが取り消されることになるので不満をつのらせているため、今後法廷闘争の可能性もあるという。またこのトンネルを使用するとリニアに素通りされることになると京都市も警戒しており、リニアを奈良から京都へ北上させる案や、奈良市を京都市に併合して奈良市内にリニアの「新京都駅」を建設するといった対案を出す動きを見せている。

 この発見を受けて、韓国でも調査が行われた。そもそも「弾丸列車計画」は上に載せた地図のように、日本本土だけでなく当時日本領だった朝鮮半島を経て満州、さらには華北まで結んでしまおうという壮大なものだった。日本から朝鮮半島までどうやってつなぐのかといえば、もちろん「海底トンネル」である。驚くなかれ、「弾丸列車計画」では九州から壱岐、対馬を経て朝鮮半島まで海底トンネルを掘ってしまおうと本気で考えており、しかも対馬海峡では海底にチューブ型の構造物を設置してその中に鉄道を通そうという、手塚アニメ「マリンエクスプレス」まがいの構想まで存在していたのだ。日本本土ですでにトンネルが完成していたのなら、海底トンネルも作ってあったのではないか、と韓国側でも調査が始められた。
 韓国当局は、つい先ごろ戦艦武蔵を発見した富豪ポール=アレン氏に協力を要請、スーパーヨット「オクトパス」号の潜水艇による対馬海峡海底調査を開始した。その結果、やはり対馬海峡の底に巨大なチューブ状の構造物が発見され、内部には「下関-釜山」の案内板も確認された。さすがに70年も前の建造物だけに外見はかなりぼろぼろだったが、もともと海底への設置を念頭に作られているために出来は頑丈で、トンネル内部は十分今でも利用できるようだ、という。
 
 日韓間では主に保守系政治家の一部で「日韓トンネル計画」がかねてから推進されてきた(そのバックにいたのが統一教会だったりするわけだが)。だから今度見つかったトンネルを「再利用」すれば安くあがるぞ、と喜ぶかと思いきや、事情はそう簡単には行かない。戦時中には対馬に多くの朝鮮人労働者が渡っており、このトンネルの突貫工事にも彼らが駆り出された可能性が高い。となると、これは韓国にも所有権があるのではないかとの主張も出て来て、またぞろ「領土問題」に発展しかねないとの見方もあるのだ。またトンネルの名称についても「対馬海峡トンネル」ではなく「大韓海峡トンネル」だとモメそうな気配もあり、「面倒なんでいっそ爆破してしまえ」との声も政治家から挙がっているともいう。



◆建武政権崩壊の核心

 当サイトをよく覗いてらっしゃる方はご存じだろうが、後醍醐天皇が進めた「建武の新政」というのは、ひところ通説のように言われて今も歴史の授業で定番だったりする「平安時代への回帰」「公家中心の政治」なんかではなく、実際はかなり過激な急進的改革だった。

 さて、その後醍醐の急進的かつ中国かぶれの政策の一つとして「紙幣発行」もあったことが知られている。建武年間の記録『建武記』に記されている「楮幣(ちょへい)」がそれだ。後醍醐天皇は平安時代並みの大内裏を建設しようと考えたのだが(この時代の皇居は里内裏といって公家の邸宅などで代用していた)、その費用にこの「楮幣」を発行して当てようとしたという。当時の中国、モンゴル王朝の「元」では実際に紙幣が発行されていたので、中国かぶれの後醍醐はそれをヒントにしたのではないか、との説もある。
 吉川英治の小説『私本太平記』ではこの「楮幣」が実際に発行され大騒動を巻き起こす描写があるが、歴史家たちの間は実際の発行はなかったとみるのが定説だ。理由は実際に発行されたことを示す直接的史料が存在しないこと。そして実物が一枚も発見されていないことだ。もっともモノが「紙」だけに、めったに後世に残らない、という事情も考慮した方がいい。

 ところがである。去る4月1日に、京都市内の工事現場で14世紀のものと思われる遺構が発見された。当時京都市内には多くの「土倉」と呼ばれる金融業者があり、発見された遺物からここもその一つと見られたのだが、発見物の中に重大なものが含まれていた。なんと、半分ちかくちぎれてはいたものの、明らかな「紙幣」が見つかったのだ!

 見つかった「紙幣」のほぼ実物大の写真が左図である。額面に「壱万文」と書かれ、当時日常的に使われていた比較的少額の単位である「文(もん)」で額が表されている。右側には当時の支配者である後醍醐天皇の肖像画があしらわれ、その下には四天王寺の伝・聖徳太子の写経に残る後醍醐自身の手形を模した小さな手形がデザインされている。
 南北朝時代に詳しい吉野山大学の大覚寺尊治教授は、これこそ存在が疑問視されていた「楮幣」の実物であろうと言う。「後醍醐天皇は自身の聖徳太子の生まれ変わりと信じていたようですから、日本初の高額紙幣に聖徳太子の代わりに自身の肖像を使う発想を持ったのでしょう。生きてるうちから自分で『後醍醐』のおくり名を決めちゃったくらい自己主張の強い人ですから」(大覚寺教授)
 また本人の手形が押されていることについては、「偽札対策でしょう。当時はすかし技術もありませんし、ただハンコを押すのも信用度が低いから天皇自身の手形を小さいサイズで入れることにしたんでしょう。もしかすると実はこれが『手形』という言葉の由来かもしれません」(大覚寺教授)と大胆な説も提示している。

 アラビア数字が使われていることに疑問の声も上がっていることについても大覚寺教授は「足利義満の側近にも『天竺聖』と呼ばれ、アラビア人と疑われている人がいたくらいですから、性格も似ていて国際派だった後醍醐の周囲にアラビア人がいても不思議ではないでしょう」と話す。また斜線や「みほん」といった印刷が加えられているのも、計画段階で試作品の「みほん」まで作られ金融業者に配布されたものの、諸般の事情で実際の発行には至らなかったことを推測させるという。
 
 さて後醍醐天皇が日本初の紙幣発行を計画した背景には、当然ながら財政的事情もあったとみられている。大内裏建造といっても慌ただしい政権交代の直後で混乱した状況であり、政府にちゃんと入って来る税金は微々たるものだった。後醍醐は「二十分の一税」、すなわち5%の消費税みたいなものの徴収も試みているが増税には当然反発も多かった。じゃあ8%に上げたらなおさら反発もあるだろうと考え、「それなら紙幣をバンバン刷ってカネそのものを増やせばいいんだ!」と紙幣計画を推し進めた。まさに国債発行だか金融緩和だかデフレ脱却だかな話で、今風に言えばさしずめ「ゴダイゴノミクス」といったところだろう。
 しかし所詮は「困った時のカミ頼み」。実際の紙幣乱発によるインフレ混乱に至らぬうちに建武政権は綸旨の乱発により崩壊、日本における紙幣発行は江戸時代まで持ち越されることとなる。



◆ろくなもんじゃねえ〜TPP〜TPP♪

 近ごろはアルファベット略称の国際組織や会議が多くなって社会科の先生も生徒も大変な苦労をさせられるのだが、「TPP」も最近増えたアルファベット略称重要事項のひとつ。「TPP」とは「チアミンピロリン酸」の略でチアミンの活性型…じゃなくって、「トリフェニルホスフィン」という有機リン化合物の一種の略称…違った、「リン酸トリフェニル」という難燃剤の一種で…これも違った、ポルフィリンの一種「テトラフェニルポルフィリン」の略で…ってな具合にウィキペディアを眺めただけでも次々とボケがかませるくらい「TPP」という略称は化学系で多い。火力発電所の略称も「TPP」なんだそうで。
 さて社会化分野で出て来る「TPP」とは、もちろん「環太平洋経済連携協定」あるいは「環太平洋パートナーシップ協定」などと訳されるもの。訳だけでも何種類かあるんだよな、これが。太平洋を取り囲む国々がひとまとまりの自由貿易協定を結んで経済圏を作ろう、と凄く大雑把にまとめればそういうことになるのだけど、話がなかなかまとまらずズルズルとやってる印象もある。聞くところでは結局アメリカが自国有利の条件を飲ませようと躍起になって話をぶち壊してる、なんてなことになってるみたいなんだが。交渉国は交渉内容について守秘義務があるため、どう交渉が進んでいるのかまったく分からないのも困りもの。

 そのTPPでアメリカが強く要求しているものの一つに「知的財産権保護」がある。ま、簡単に言えば著作権の話。ハリウッド映画をはじめ多くの「知的財産」をもち有力な収入源としているアメリカとしては、その保護強化を各国に求めているわけだ。たとえばアメリカはじめ欧米の多くの国では著作権保護期間を著作者の死後70年としているが、日本など死後50年としている国もかなりある。アメリカは特にこの分野でのTPP交渉ではまだ50年規定の国々に70年への延長を強く求めていると言われ、さらには著作権違反を親告罪(基本的に被害者が訴えないと罪に問われない)から非親告罪(被害者の訴えがなくても警察が取り締まれる)にすることも要求しているとされている。
 なにせミッキーマウスの著作権が切れそうだってんでディズニーのロビー活動で「ミッキーマウス法」と揶揄された著作権保護延長を決めた国である。ディズニーがキャラの二次利用など著作権にやたらうるさいことは有名だが、ディズニーに限らず過去に蓄積された多くの著作物が今後も多大な利益をもたらしてくれるから、その「保護」要求は強烈なものらしい。

 一部報道では日本政府はこれらの要求をほぼ飲んだと伝えられているが、なにぶん守秘義務があるため政府関係者は具体的なことは口をつぐんでいる。とかくアメリカ様のおっしゃることはハイハイと飲んでしまいがちな日本政府だけにこういう文化面のことは深く考えずに飲んじゃいそうなのだが、4月1日にハッカー集団「ヴィキリークス」がスッパ抜いて公表した交渉資料によれば、意外にも日本側がアメリカの要求のはるか上をゆく著作権保護規定を提案していたことが明らかとなった。
 著作物ということでは日本だってずいぶんな過去の蓄積がある。お得意の漫画やアニメはもちろん、映画や小説、さかのぼれば浮世絵やら歌舞伎、能などなどなど「著作物」なら山ほどある。それら全部に著作権保護を規定するため、「著作者の死後1000年間」という飛び抜けた長期間の設定を提案しているというのだ。世界でもっとも長い著作権保護規定を設けているのはメキシコの「著作者死後100年」だが、それを10倍も上回る規定で、実現すれば世界新記録としてギネスブックにも認定される予定だ。

 「1000年」という飛び抜けた設定については資料にも具体的理由はなく推測をするほかないが、およそ1000年前に書かれたとされる紫式部の小説「源氏物語」の著作権を保護する狙いでは、との見方が出ている。「源氏物語」は最古の長編小説とも言われて世界中で翻訳され、その影響を受けた近代小説も多い。一人の男性主人公が次々と女性たちと恋愛を繰り広げる展開はアニメやゲーム、ライトノベルで1ジャンルをなしている「ハーレムもの」のルーツともみられてもいるため、「源氏物語」の著作権を保護すればそのアイデア模倣、二次使用から莫大な利権が吸い上げられると期待される(「源氏物語」の最終章「宇治十帖」もファンの二次創作の可能性があるし)。また紫式部は没年も不明のため、まだ死んでいないという推定もできるので「死後1000年」という枠に縛られることもないとの意見もある。

 世界的に影響を与えた日本製品は「源氏物語」だけではない。江戸時代の葛飾北斎歌川広重らの浮世絵はゴッホなど西洋の印象派画家に大きな影響を与え、一部の画家は北斎らの浮世絵を自作のなかにそのまま模写する「二次使用」をしているため、ここからも二次使用料の徴収が見込める。日本の漫画が「MANGA」として世界的に影響を与えているが、そもそも「漫画」という言葉も北斎が最初に使用しているので、世界中の漫画家から著作権料がとれるのでは、との意見もある。

 と、いろいろウハウハなことを考えていた日本政府だったが、これに対して同様の「1000年著作権」を中国政府も主張するとの観測も出てきた。中国側では「三国志」「水滸伝」「西遊記」といった明代に完成した小説類の著作権を保護し、日本の「三国志」テーマの小説・漫画・ゲーム類、「水滸伝」の翻案である「南総里見八犬伝」、「西遊記」が元ネタの「ドラゴンボール」、さらには名前だけ拝借している「次郎長三国志」や「天保水滸伝」「最遊記」に至るまで、著作権料を徴収する動きがあるというのだ。日本の仏教の禅宗ももともと中国からの輸入だとして同様の主張をしようとも計画したが、これについてはインドからも「もともとインドのダルマがルーツだ」との主張がなされそうだということで断念、代わりに漢字フォントの「明朝体」などに著作権を設定しようとの案も出ているという。

 あれ?もしかしてこの記事のタイトルも「無断の二次使用」ってことで、TPPが決まったら僕もしょっぴかれちゃうのかな?


2015/4/1の記事
間違っても本気にしないように!

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