ニュースな
2017年4月1日

<<<<前回の記事
次回の記事>>>

◆今週の記事

◆コラ文句あっか省

 先ごろ、初めて正式に教科とされた小学校の「道徳」の教科書で、物語に出てくる「パン屋」が「国と郷土を愛する態度」を定める教育基本法にそぐわないとして「和菓子屋」に変更させられるという騒ぎがあった。このほかにも公園のアスレチックを和楽器店に変更するといった「和風化」もあったとされ、現在の文部科学省のお役人たちにとってはパンやアスレチックでは「国や郷土に愛着をもつ態度」は育たないという判断のようで、なんでもかんでも「和風」「伝統」を重視すればヨロシイ、とお考えのようである。これらの変更はあくまで教科書会社側の「自発的」なものだというが、当然そこにはそう忖度(すでに今年の流行語)させるような文科省側の意見があったのだろうし、文科省の役人も自分たちに影響を与える現政権関係の保守政治家の意向を忖度したものだろう、という話は前回も書いた。
 某幼稚園の件で悪い意味で注目が集まって結構と思っていた「教育勅語」について、内閣が条件付きとはいえ教材としての使用を否定しないと閣議決定しちゃってるし、いやぁ、この調子じゃそのうち文部科学省が「オリンピックに向けて必要だ」とか言って「国体の本義」を製作したりするんじゃないかと四月バカと笑ってられないところである。

 そんなことを思っていたら4月1日、新年度を期して文部科学省がさらに「国と郷土を愛する態度」「伝統の尊重」を徹底するため、ひそかに進めている次期指導要領改定案の内容がネット上にリークされた。そこからは道徳教科のみならず、多岐にわたる科目でさまざまな改革案が提示されていた。

 まず国語の教科書に定番で載っている「走れメロス」について、「日本作品にも関わらず古代地中海世界を思わせる設定がよろしくない」とクレームをつけ、友情をたたえる話の骨子は「教育勅語の『朋友相信ジ』に合致する」としてそのまま残しつつ、主人公の羊飼いメロスは「木こりの夢露助(めろすけ)」に、友人の石工セリヌンティウスも「大工の芹運手薄」と日本風に変更、物語の発端も和菓子屋で手持ちの金が少ない夢露助が妹への土産を買うため芹運手薄を人質として置いていくことに変更となる。ラストの二人の殴り合いも「朋友」どうしで暴力はいかんと軽く手に「しっぺ」をしあうだけにとどめるという。

 数学では方程式問題で定番の「一個X円リンゴと一個Y円のミカン」から「一個イ円のまんじゅうと一個ロ円の大福」と変更、「10q離れた家から学校まで途中の公園まで歩き、そこから自転車で…」といった問題も「三里離れた家から学校まで、途中までかご、そこから馬に乗り換え…」と江戸時代風に変えて伝統を重視、食塩水問題も和菓子に使う砂糖の量を問う問題に変えるという。
 理科ではすでに教材に登場したこともある「水かの伝言」や「サムシンググレート」といった「科学を超越した何か」を考えさせる素材を大々的に導入、社会でもこれまたすでに道徳教材に導入済の「江戸しぐさ」を歴史や公民の教科書にも記載し、地理や公民で進められている他民族・異文化理解については「八紘一宇」の単語で暗記するよう指導するとしている。

 これらの指導は特定の価値観の押し付けではないか、との指摘に文部科学省関係者は「決して強制するものではない。これらの教科書を忖度、もとい選択する自由は当然ある。ただこうした記述をどれだけ理解しているかで成績評価が決められるのだということは忖度してもらいたい」とコメントしている。
 なお文部科学省では、今後官僚が補助金増減をちらつかせて退職後に大学などに再就職する行動について、保守政治家の好みを忖度して日本神話風に「天孫降臨」と言い換える方針とのことだ。



◆新たな独立国誕生か

 21世紀に入ってから誕生した新国家というと、インドネシアから独立した東ティモール、スーダンから独立した南スーダンの二つがある。いずれもそれまで属していた国家との民族・宗教などが絡んだ紛争を経過してその後国際的に認められたうえでの独立がある。一方で、昨年のイギリスのEU離脱決定のような形の「独立」も今後出てくる可能性があるし、EUに残るためにそのイギリスから「独立」が起こってしまうんじゃないかという話も出てきている。ま、そもそも国家なんてのは人間集団がみんなでやってく上での利便性から作ってるものであって、初めから固有の状態があるわけでも、今の状態が永遠に続くわけでもない。

 さてそんな情勢のなか、なんとこの日本において新たな「独立国家」が生まれる可能性が出てきているのだ。そう書くと沖縄か、アイヌか、と想像をめぐらす人も多いだろうがさにあらず。一応首都圏に属する三つの県が、このたび協定を結んでともに日本からの独立、連合国家の建設を進めることで合意、年内にもそれぞれの県で賛否を問う住民投票を行うことが公表された。
 その三つの県とは、茨城県・栃木県・群馬県のいわゆる「北関東三県」である。独立後の正式な国名については未定だが、協定では「茨城および群馬および栃木による北部関東地方連合国(仮)」と記されている。

 特に民族や宗教で独自性がないはずの北関東三県がなぜ「独立」を選択しようとしているのか?共同記者会見で三県の知事は「独立」の理由について、「毎年行われる全国都道府県魅力度調査で、毎回ワースト常連に位置づけられてしまっているから」と語った。特に茨城県は全国都道府県の魅力度ランキングで最下位の47位を安定してキープしており、栃木・群馬も40位後半台常連となっていて、最新の2016年のランキングではついに群馬45位、栃木46位、茨城47位と見事にワーストスリーを占めたことで「忍耐の限界に達した(茨城県知事)」という。
 「日本から独立してしまえば最下位常連脱出ができるだけでなく、新たな独立国で行われる魅力度ランキングでベスト3を北関東で独占できる」と三県の知事たちは意気込みを語った。三県はともに県名と県庁所在都市の名前が異なり、同じ北関東で同じ程度の面積で並んでいることから小中学生から大人まで「県の名前と位置、県庁所在地テスト」では難関として知られ(受験産業関係者)、関東地方在住者ですらしばしば間違えるありさまで、この問題も独立して県が三つだけになれば解消されるはず、という。特に茨城県関係者は「『いばらぎ』という誤った呼称は、新国家では厳罰をもって禁じ、撲滅をめざしたい」としている。

 首都圏にありながら魅力度が低いとさげすまれる歴史が長く続いたものの、近年は「北関東工業地域」が地理の教科書に明記されるようになるなど経済面での発展もめざましく、日本国から分離独立しても十分にやっていける経済的裏付けがあるという。右図データにみるように人口・面積・GDPでは世界でも十分に中堅どころに位置づけられる。

 工業だけでなく三県は農業も盛んで、茨城県のレンコン、栃木県のイチゴ、群馬県のコンニャクイモなど、それぞれ日本国内生産一位となっている農作物がある。ことにコンニャクイモについては群馬・栃木・茨城の三県で日本国内の96%を生産しており、三県では「おでん、すき焼きなど多くの日本料理でコンニャクは必須の食材。日本国側が独立を承認しない場合、コンニャクの輸出禁止という対抗措置もとれる」(群馬県関係者)との意見もある。
 また日本政界でも「コンニャクは百万円の束を意味する」(政界事情通)とされ、三県では独立に向けての政界工作にコンニャクを大いに活用する意向だ。コンニャクを「北関東連合国」の共通通貨とする構想も挙がっているという。

 新国家の首都については三県の県庁所在地である水戸・宇都宮・前橋で数年程度で交代する方式を採るという。またある県の県庁所在地が首都として行政を担当した場合、他の二つの県庁所在地に国会と最高裁判所が置かれるという形で三県で役割を交代してゆくローテーションを組むと言い、これを「三県分立」として国家の基本方針とする。それぞれの知事も「三県の長」と呼ばれることになり、互いに牽制し合って一県の突出を防ぐシステムになるという。

 共通の利益から手を組んで新国家樹立を目指す三県だが、早くも問題が起こっている。特に茨城県が「群馬も栃木も地域tTV局があるのにうちだけない」や「群馬には富岡製糸場、栃木には日航の社寺があるのにうちだけ世界遺産がない」と不公平を主張、早急の「いばらきテレビ」の創設と偕楽園の世界遺産登録を主張して他の二県を戸惑わせている。「そういう茨城だって空港と港を独占して優位に立とうとしてるんじゃないか」と疑心暗鬼にかられる声もあるという。
 またその茨城県内でも東京への通勤圏に属する南部の住民、いわゆる「チバラキ人」の間では独立に反対の声も多く、南部自治体では茨城県からの分離独立、千葉県への編入を求める動きも起こっている。この動きに対し新国家側では「北関東連合」を名乗るヤンキー暴走族グループを戦力として採用、分離独立の動きを牽制しようとしており、情勢はまだまだ混沌としている。



◆遥かなる昔の呼び声
 
 世界で一番古い録音は、発明王トーマス=エジソンが1877年に自身の発明した蝋管式録音機に吹き込んだ「メリーさんのひつじ」の一節であるとされる。現在もネット上各所でその音をデジタルデータとして聞くことができるのだから技術の進歩というのはすごいもものだが、エジソン以前にも「録音機」を発明した人はいた。エジソンに先立つこと20年前の1857年にエドゥアール=レオン・スコット・ド・マルタンヴィルというフランス人が「フォノトグラフ」という録音装置を発明しているのだが、これは煤(すす)をまいたガラスの上に音の「波形」を記録する装置であって、再生はハナからできなかった。しかし技術の進歩はここでもすごい。2004年にこの「フォノトグラフ」の波形をコンピュータで解析して「再生」することに成功、「月の光」という民謡が録音されていたことが分かった(これもネット上にアップされてるがほとんど聞き取れない)。一応これが人類最古の記録された音であると考えられている。今年からちょうど160年前の音声記録だ。

 ところが、このたびその記録を大幅に塗り替える「録音」を発見、再生することに成功したとする論文が、科学雑誌「ネーチャン」4月1日号に掲載された。発表したのは日本・イタリアの合同研究チームで、彼らは今からおよそ2000年前のローマ帝国時代の音声の再生に成功したとしている。
 研究チームのメンバーによれば、発想の原点はまさに上記の「フォノトグラフ」の音声再生にあったという。音は空気の振動であり、その振動が煤など柔らかい物質に波形を残す。ならば古代の音声が遺跡などになんらかの形で波形を残しているのではないかと思いついたという。そこで連想したのが有名なポンペイの遺跡。西暦79年にヴェスビオス火山の大噴火であっという間に町全体が火山噴出物に埋もれてしまったポンペイは、そのためにローマ帝国時代の人々の生活がそのまま現在にまで残されており、火山灰の層に人や犬の遺体のあったところが空洞になって、そこに石膏を流し込むと彼らの姿が再現することまでできた。それならば灰の中に当時の音声が波形で残されているのではないか、と研究者は思いついたという。

 そこでポンペイの遺跡で発掘を行い、火山灰の層に石膏を流し込んで音の波形と思われるものを型どりし、それをコンピューター解析にかけた。すると激しい雑音が盛大に鳴り響き、研究者たちは「これはヴェスビオス火山噴火の轟音に違いない」と確信した。さらに解析を進めたところ、「キャー」「タスケテー」「オカーチャーン」といった人々の叫び声らしきものも再生され、噴火直後の人々の混乱ぶりも確認された。「それは日本語では?」との記者の問いに、研究者は「ラテン系の言葉は何気なく聞いてると日本語に聞こえることもありますよね」と意にも介さない様子。

 この成功に意を強くした研究チームは、続いてローマ市内に残るローマ帝国時代の円形競技場「コロッセオ」で調査を行った。古代ローマではここで剣闘士の試合が大群衆を集めて行われ、剣闘士たちのライオンなど猛獣との戦いや、剣闘士同士での決闘が見世物となり、これが政治家たちの大衆に対する人気取りに利用されていたとされる。なおコロッセオといえば「コロシアム」の語源だが、こうしたコロッセオでの残酷な見世物が「殺し合い」という日本語の語源との説もある(民明書房刊「全ての語源はローマに通ず」より)
 研究チームはコロッセオの建物が火山灰を利用した一種の「コンクリート」を素材にしていることに注目。何万人という大群衆の声ならコンクリート中の火山灰に波形を残しているのではないかと考えた。調査したところ、確かに波形が残されていて、コンピューター解析により再生したところ、またも轟音のような凄まじい雑音が再生され、研究者たちは「これは群衆の歓声だ」と判断、古代音声の再生に成功したと確信した。

 さらに解析を進めたところ、剣闘士の試合が始まる前に全員総立ちでの「国歌斉唱」が行われていたことも判明。前述のように当時剣闘士の試合は権力者が大衆の人気取りに開催していたものであり、イベントのスポンサーはローマ帝国そのものであった。そのことを明示するために試合前に「国歌斉唱」が行わていたらしい。再生された音声にはハトの飛ぶ音と鐘の生るメロディーと共に「♪ローマ、ローマ、ローマ!ローマ、ローマ、ローマ、ローーマ!ローマてーいこーく〜〜〜♪」と、国名を連呼するフレーズが入っており、研究チームではこれはスポンサーがローマ帝国であることを示す、今でいうTVCMのようなものだと分析している。右図はその「イメージ画像」として研究チームが示したもの。
 記事では音声のイメージが伝わりにくいので、知らない世代はこのサイトを参照されたい。

 日本語に聞こえることについては「ラテン系の言葉が日本語に聞こえるのはよくあること。あるいはこうしたローマでの文化が、シルクロードを通して日本に伝わり、往年のTVCMとしてよみがえったということかもしれません。ほら、ギリシャのエンタシスの柱が法隆寺にあるとか、聖徳太子が厩戸王なのはキリスト教の影響だとかいった話もあるわけですし、ハッハッハ」と研究チームのメンバーは語る。
 研究チームではこの技術を用いてさらなる「歴史的音声」の再現に挑みたいとしている。とりあえずルビコン川のほとりに「賽は投げられた」の音声記録がないか、元老院跡地に「ブルータス、お前もか」の音声記録がないか調査したいという。



◆某国「象徴」に独占インタビュー

 当「ニュースな史点」では、世界中誰もがよく知る、とある国の「象徴」となっている人物の独占インタビューをとることに成功した。
 そのとある国の「象徴」は、長年その地位にあったために最近ではさすがに高齢で公務に支障をきたしているとして引退を表明している。といっても日本国の天皇の話ではない。匿名を条件にインタビューに応じていただいたので、顔写真もモザイク入り、名前も伏せた形になっていることをご承知おきいただきたい。

――某国の象徴ともあろう方が、独占インタビューに応じていただけるとは光栄です。

「いつも黙ってばかりなので、引退表明を機にいろいろ発言したいと思いまして」

――某国の象徴をおつとめとのことですが、実はフランスのご出身だそうですね。

「ええ。ファーストネームはマリアンヌといいます」

――芸術の都、パリ育ちだそうですね。

「はい。外見そっくりの妹がパリに今もおりますわ」

――若い頃はモデルをなさっていたとか」

「今ではお恥ずかしい限りですけど、当時はこんな胸丸出しの絵(右図)のモデルにもなってましたのよ」

――この絵でも右手を挙げられてますね。お疲れでしょうから、今はおろして結構ですよ。

「いや、これは長年こうしてて固まっちゃったのよね。象徴を引退すればおろせるんだけど」

――それから某国に渡られた。

「ええ。フランスのおえらい方々が、かつてのおゴン返しと友好の印に私を某国に派遣したんです。まさかそのままお国の象徴に祭り上げられるとは思いませんでしたわ」

――考えてみると、まさに「移民」でいらっしゃいますもんね。

「そう、考えてみたらわたし、移民たちが来るのを迎える象徴にもされてるんだけど、港の中に島に灯台代わりに立たされてるだけで、いまだに某国の本土には上陸させてもらってないのよね」

――その辺に、昨今盛り上がる移民問題の根っこを感じるところでもありますねぇ。

「どっかの国の象徴とおんなじで、自分の意見はなかなか口にできませんから…不自由の象徴みたいなもんですわ」

――そうそう、映画にも結構ご出演になってるとか。

「セリフのない役とか、背景のエキストラみたいなのばっかりですけどね」

――でも有名作品や、大スターとの共演もありましたよ。

「某SF映画ではラストシーンでチャールトン=ヘストンさんと共演したのがいい思い出です。某オバケ映画では主演の俳優さんたちと大都会の中を歩かせてもらえましたし」

――そんな大物の象徴であるあなたが、なぜこのたび引退を決意されたので?

「まぁ年も年で、右手を上げ続けるのも苦痛になってきましたし…それとヘンなのが大統領になっちゃって、移民出身の象徴として頭が痛くなってきちゃって」

――引退後はどうなさるおつもりで?

「フランスに帰ろうかしら、と思ったんだけど、あっちも大統領選でヘンなのが有力候補だったりするのよね。生きづらい世の中だわ」

――某国に残るにせよ、帰国なさるにせよ、とりあえずしたいことは?

「右手をおろして、横になりたいわね」

 インタニュー終了後、彼女は非公式ながら「引退後は選挙権がほしい」とも漏らした。なお、彼女の居住地からほど近い都市にあるタワーに本拠地をもつ某国大統領はどこから聞きつけたのかこのインタビューについて激怒、ツイッターで「けしからん、不法移民として国外追放だ」とコメント、近々彼女の代わりに自身の巨大な像を建設して自ら象徴となる意向を示した。そしてその建設費は原因をつくったフランス政府に払わせるとしている。



2017/4/1の記事
間違っても本気にしないように!

<<<前回の記事
次回の記事>>>
史激的な物見櫓のトップに戻る