大高重成 | おおたか・しげなり | ?-1362(貞治元/正平17)? |
親族 | 父:南重長(一説に南頼基) |
官職 | 左衛門尉→伊予権守 |
幕府 | 小侍所・伊予守護・若狭守護 |
生 涯 |
―足利家臣団随一の猛将―
足利氏の執事をつとめる高氏(高階氏)の支族が「南」家で、その南重長の子である重成自身は「大高」の名字を名乗った。読みについては「おおたか」とするものと「だいこう」とするものとがあり、明確ではない。
高一門の一員としてはじめから足利高氏の重臣だった。元弘3年(正慶2、1333)5月の足利高氏による六波羅攻撃での重成の勇猛ぶりは「太平記」が詳細に記している。華やかな鎧に五尺六寸の大刀(1.7mぐらい)を肩にかけ「足利家臣・大高次郎重成」と名乗り上げた重成は「先日戦功をあげたという陶山次郎・河野通治どのはおられぬか」と六波羅軍の猛将二人を名指しする。陶山はたまたま他方面に出撃しており、この場にいた河野通治が呼びかけに応じて出馬しようとしたところ、通治の養子で16歳になる通遠が先んじて重成に飛びかかった。重成は通遠を怪力でつかみあげ「お前のような小者は相手にせぬ」と言ったが、河野の家紋があるのを見て河野一族と悟り、両膝を一刀両断にしたうえ弓の長さの三倍も投げ飛ばして殺したという。
建武2年(1335)に起こった中先代の乱でも尊氏に従い、鎌倉に突入した8月19日の戦闘で負傷する奮戦をしている(「足利宰相関東下向宿次」)。それに続く建武の乱でも尊氏につき従って各地を転戦し、九州・多々良浜の合戦にも参加している。「太平記」によれば重成はこのとき直義のそばにいて苦しい戦いをしていたが、離れたところにいた尊氏のことが気がかりだとしてその場を離れようとした。すると直義が「さては臆病風に吹かれたか。大高の自慢の大刀を切り刻んで剃刀(かみそり)にしてしまおうか」と嘲笑ったとの逸話がある。
その後の幕府成立時には直義の側近となっていたとみられ、康永3年(興国5、1344)には直義と夢窓疎石の宗教対談本『夢中問答』を出版・刊行したのは大高重成その人である。同年、重成は自身が守護を務める若狭国・小浜の焼失した寺を再建して禅寺とし、自身の名から一字ずつとった「高成寺」として開山させている。詳細な原因は不明だが貞和4年(正平3、1348)に尊氏の勘気を受けて領地を没収されたこともある。
直義と高師直の対立が激化した貞和5年(正平4、1349)6月ごろ直義とその腹心・上杉重能と畠山直宗が師直暗殺を計画した時に大高重成がその怪力を生かして師直をはがい絞めにする予定だったと「太平記」は記す。しかしこの計画を師直に漏らした粟飯原清胤とともに大高重成が直後に「将軍の勘気」(実質直義の指示)によって自宅謹慎の処分を受けており、師直とは親族である重成が粟飯原と共に計画を事前に漏らしていた可能性も考えられる。それでも8月に師直がクーデターを起こした際には重成が直義邸に馳せ参じたことが「太平記」に見える。
失脚した直義は南朝と和睦して師直派打倒の兵を挙げ、翌年2月に師直が殺されて直義が政権に返り咲く。この間に重成がどのように立ちまわったのか分からないが、その後の直義と南朝の間で進められた和平交渉で直接交渉役にあたったのが重成だった。相手は楠木正儀の家臣で、重成が依然として直義の代理を務める腹心として扱われていることがわかる。しかし間もなく尊氏と直義の直接対決という事態になると直義を見限って尊氏についたらしい。文和元年(1352)5月に幕府の雑務引付頭人となり翌年も在職していることが確認できるが、その後の消息は不明。「大高系図」に貞治元年(正平17、1362)4月に死去したという記述がある。
「太平記」の六波羅攻めでの武勇が印象的なせいか、江戸時代に作られた武功列伝や「義烈百人一首」「武家百人一首」にも大高重成が選ばれている。
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大河ドラマ「太平記」 | 尊氏(高氏)の側近の一人として第10回から最終回までしばしば顔を見せている(演:渡辺寛二)。登場は全49回中の30回に及ぶほど。しかし同じ一族の南宗継・三戸七郎と一緒に「尊氏家臣一同」といった感じで出てくるのであまり個性を見せず、古典では最高の見せ場となった六波羅攻撃では全く姿が見えない。ほぼ唯一個性を見せたのは第13回で、尊氏を訪ねてきた北畠顕家と弓の勝負をする場面ぐらい。
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歴史小説では | 特に個性があるわけではないが、「太平記」における活躍が印象的なせいか各種歴史小説の六波羅攻めではよく登場している。 |
漫画では | 沢田ひろふみの漫画『山賊王』では足利高氏の六波羅攻撃の場面で「太平記」そのままに河野通遠を投げ飛ばして殺す場面が描かれている。
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PCエンジンCD版 | なぜか甲斐国の北朝方武将として登場する。登場時のデータは統率41・戦闘82・忠誠79・婆沙羅51。 |
メガドライブ版 | 楠木・新田帖でプレイすると鎌倉攻防戦のシナリオで登場。能力は体力69・武力83・智力122・人徳84・攻撃力77。 |