lesson_epilogue:これからが始まり?

独学パントマイム

★パントマイムの意味★
パント....【pantos:すべての】
マイム....【mimos:まねをする】

人間でも、物でも、自然現象でも、
すべてがパントマイムの題材になる。
その題材を使って感情を伝えること。

大道芸と舞台芸の違い

パントマイムに興味を持った方の中で、初めに大道芸を見たから、という人も多いと思います。中には今まで読んでくださって、なにか違和感を持たれた方もあるかもしれません。「独学パントマイム」では舞台で演じられるパントマイムを念頭において説明してきました。ここで、大道芸と舞台芸の違いに少しだけふれておきます。大道芸に関しては私の範疇ではないので、実際に大道芸をされている方が読まれて、間違いを発見されましたら、指摘してください。

大道芸では道行く人の関心を引かなければならない。
――歩いている人の足を止めさせる、クギづけにする、また行ってしまうかもしれない、ある一部分しか見てくれないかもしれない。屋外では人の注意が散漫になる。――それが大道芸での制約になる。その制約の中で人の注意を引くかけひきは快感だろうと思う。しかし、じっと見てくれる人もいれば、去っていく人もいるわけだから、はじめから終わりまで見ないとわからないようなストーリー物は敬遠される。という理由から瞬間的にでも興味を持ってもらえる出し物、つまり何も持っていないのにまるで持っているように見える手品のような感覚のパントマイムが好まれる。その意味から総じてテクニックマイムが多くなるわけである。料金はたぶん、見た人の感動により自由に払うのではないかと思う。または、イベントを企画した会社がギャラとして演者に払い、見る人は無料ということもあると思う。

舞台芸では見るつもりできてくれた人をホールというスペースに閉じこめた形で見てもらうため、1時間半〜2時間かけてじっくりマイミストの主張を理解してもらえるように、演出できる。屋内では観客同志の共感が伝わりやすい。

【余談ながら、ホールの広さと観客の数は丁度よいか、ややぎっしり位の方が共感が観客同志・演者と観客に伝染しあって良い舞台が作れる。広すぎて回りがガランと空いているとか観客同志にすきまのあるような会場はやめた方がいい。小学校の体育館はやりにくい。それと客の入りが悪い時も、収入の面だけでなく共感が減るという結果になる。スイマセン長々と】
屋内ではストーリーのある複雑なもの・抽象的なもの・演者が何人かの複数の役を演じるもの・思い出のシーンなど時間を超越するものでも見てもらえる。その分、演者の内面(人間性とか個性とか感情)が表れた作品でないと長時間観客を楽しませることはできない。特に入場料を取る場合は、その料金と内容が一致して満足したと観客に思ってもらわないと、次の公演にきてくれないなど、この辺は普通の演劇やコンサートと同じである。


サークル運営のコツ

●代表者:パントマイムがうまくなくてもいい。連絡係・なにかの時の責任者。パントマイムよりもサークルの人間関係をまとめる力が必要になる。

●練習場所の確保:無料または格安の広い部屋が必要になる。5人くらいいるとして、最低50平方メートルくらいは必要だろう。ぜいたくを言えばダンス教室のように片面または2面が鏡だったら、最高だが、そんな部屋はなかなかないので、全身が写る鏡が1枚でもあるとよい。夜に練習する場合は、窓ガラスに写すこともできるが、足まで見えないのが難点。しかし、まったく壁だけの部屋よりは、練習になる。

●定期的に続けること:1週間に一度とか2週間に一度とかはそれぞれの事情で決めたらよいが、とにかく続けること。何かの都合で今日は休みとか、今週は○曜日に変更とか、突発的に変えると、次第にやる気が失せていくことが多い。リーダーは続けるために存在するようなものである。

●チャンスがあれば誰か一人でも習えるとよいのだが、そうもいかないときは、お互いがお互いを観察、批評しあってよい方向へ進むしかない。それぞれが自分の意見を持っていること。しかも、言われたことは素直に聞きながら、全く鵜呑みにするのではなく、自分のやりたいことと、人が感じていることのギャップを埋める方法を探っていく。
▲▽▲▽難しいですよ〜!「あんたには言われたくないワ!」と腹を立てる場合もありますからね。「○○してるように見えない」と言われたら、それは本当なんですから。コツとしては、「じゃあ、どうすればいいの!」と相手に解答を求めてはいけない。変だということは、誰でもわかりますが、パントマイムは誰にでもできないのですから。そういうときは、何パターンも考えて「これは?」「こうしたら?」と演者がいろいろなことをやっているうちに、ヒョコッと結構いいヤツが出来たりするんです。創意と工夫!▲▽▲▽

●自分を解放してもいいんだ、という安心のできる場所にする。一般社会では「ソトヅラ」で生きていかないと、仕事にならない。それはそれとして、パントマイムのサークルに来たら、社会での仮面をはずしてもいい人間関係を築くことに努力をする。それを信頼と言うのだろうか。そのための練習として、「自分の好きなように身体を動かす」という練習も有効である。(lesson_3のリトミックまがい?参照)寝ころんだり、立ち止まったり、飛び跳ねたり。「人はどうやっているのだろう」と気にしてはいけない。人のことを気にしないといいながら人のやってることとは違うことをやろうと努力することも、人を気にしていることになる。まったく気ままに。

●私語をつつしむ:私語=パントマイムに関係ない日常の世間話。学校の授業も同じ!私語は秩序を乱す。コミュニケーションをはかるためには、おしゃべりタイムは別に設けよう。パントマイムに関する議論は大いに歓迎。それから、人間の心理として、気恥ずかしいときにしゃべってしまう。しゃべるというのは、一種の逃げの姿勢、自分をさらけ出したくない時の防御の姿勢。「・・・ナンチャッテ!」っていうとすべてがウソかホントかわからなくなる、あの感じ。真剣に練習したい人の妨げになる。

短い結論

【1】立って練習する。パントマイムは身体=胴体・足・つま先も含めた身体の演技。手だけでは表現にならない。
【2】動く。音楽をかけて、歩き回ったりダンスまがい(?)でもいいから、身体を動かして、とりあえずやや興奮状態へ持っていく。「テンションをあげる」という言葉聞いたことありませんか?慣れてくると「セーノ・ハイ!」でテンションが上がるようにもなる。
【3】別世界に入る。違う自分に出会う時間にする。
【4】日常会話は練習中には不必要。何人かいるとついおしゃべりをしてしまいがち。「出来た」とか「出来ない」とか諸々の感想が口から出てきやすいが、しゃべると日常にもどってしまい、せっかく上げたテンションが下がってしまう。おしゃべりは練習のあと。
【5】観察する。他人も自分も物も感情も「観察」するのみ!
【6】習うより慣れろ!昔から言う言葉だがこれほど真実をついた言葉はない。

チコからのメッセージ

パントマイムに限らずあらゆる芸術も、仕事も、人生もみんな同じことが言えるんですが、一つの失敗・悩み・壁を解決したってまた同じことがおこります。「前に悩んでたことと同じじゃないか。進歩してないなあ」と思うかもしれませんが一つとして同じではありません。必ず違うレベルで悩んでいるはずです。進歩すればするほど悩みは大きくなるのが当然です。悩んでそれを通り過ぎた時に、以前より上達しているはずですので、落ち込まないで根気よくがんばりましょう。

では、最後にマルセル・マルソーの言葉を引用します。色の変わっている言葉はパントマイムの一番難しいところです。独りよがりにならにように、自戒をこめて。

『もしパントマイムの役者になりたいのなら、体を動かしているということを見せるだけでなく、動きを通して理念を作り出さなければなりません。パントマイム役者とは曲芸師であり、詩人であり、音楽家です。そして、沈黙とは思想に息吹を吹き込むことです。パントマイム役者は 思想を外に引き出してきて、相手の心にそれが見えるようにしなければいけません。生徒がまったくテクニックを持っていない場合、頭の中で映画を作ってしまいます。
生徒にはすべてが見えているのに、相手には何も見えないというわけです。パントマイムの技というのは、目には見えないものを見えるようにすることなのです。』

(チコ注:生徒=役者・演者....と読み替えると我々にもあてはまる。)


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