- 12月11日
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すごいぞ新庄。さすがにメッツは予測しなかった。どうせ、イチローだけに注目が集まるのが気に入らなかったとか、その程度の理由なんだろうが、それにしても。
ともかくおかげで波留の必要性が増してしまった。僕は新庄と波留は(年棒の安さも考慮に入れれば)等価という立場なので、純戦力的には不満はないが、気になるのはモチベーションの問題。それでなくても森とは反りが合いそうに無い波留が、こんなごたごたの後で使えるのか。不安感は増すばかりなのであった。
のむのむさんの日記(12月9日)を読み心底羨ましく思う。くそう、SFセミナースタッフの人はいいなあ。なんで自分はセミナースタッフじゃないのか、って、のらりくらりと逃げ回っていたからですか。そうですか。
いや、スタッフだったとしても9日は本棚の受け取りで動けなかったはずなんだけど、しかし羨ましい。だからベアのプルーフなんぞに注目してないで、もっとラファティに注目すべきだろう。 < 余計なお世話です
- 12月12日
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夕方休みに寄った書店で、『日本の苗字ベスト10000』を眺める。電話帳ソフトから苗字の件数を統計処理して、人数の多い苗字上位10000を抽出したという豪気な本。とにかく、ただひたすらに苗字のリストだけが続く紙面は実に楽しい。欲しくは無いけど眺めるには好適。
ただ、リストに対する解釈には不安なところがある。三重県の苗字人数順リスト(そういうリストもある)で、「伊藤という苗字が最多なのは不思議。伊藤は東日本に多い苗字なのに」(大意)とか言い出すのはどうか。伊勢藤原氏縁の苗字が伊勢に多かったからといって、何の不思議があるというのだ(注)。どうもこう、歴史的経緯に注意を払わず、統計データだけで話をしているような気がする。
注:もちろん、「伊勢藤原氏が源流なのだから伊勢には伊藤姓が多いはず」という断定はできない。歴史的過程でどんな変化があるかわかったものではないからだ。しかし、「伊勢に伊藤姓が多いのは伊藤姓の源流が伊勢藤原氏だからだ」という推測は可能なはずである。
なお、この本によると林姓は全国19位、愛知県に多い姓なのだそうだ。やはり林通勝(秀貞)とか、尾張織田家の武将に林姓がいた事と関係があったりするのか。ちょっと興味深い。
いや、僕の父方の姓は安井だし、母方の姓は長坂だから、林姓がどうだろうと関係無いんだけど。
- 12月13日
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何週間ぶりかで昼、夜とも油を使ってない食事をする。快挙と言う外あるまい。この健康への気のつかいっぷり。「世紀末記念、自分普通の人化計画」は着々と進行中だ。< だから、それなら髪を切れ
「普通の人化計画」の一環として、数年ぶりに年賀状を出してみようかと思い立ち、近所の電器屋に出かける。今のパソコン(純正のPC98NOTEだ)に繋がるプリンタを探す気力が無かったので、型落ちのワープロを探したのだが、ワープロ自体売っていなかった。年賀状作戦は取り止めかな、うん。
あ、昼飯のサラダにドレッシング(含む油)がかかっていたことを思い出した。
というわけで、今日の「普通の人化計画」は全面的に失敗。
# っつーか、朝から「マイボーイChrysler」を聴いて涙ぐんでいるあたりで駄目な気が。
今日の一言メモ:切干大根とひじきはバーボンのつまみには向きません。
今日の一言メモ2:それ以前にいくら煮詰まっているからってバーボンをマグカップで飲むのはやめましょう。
- 12月14日
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今号掲載のSFオンラインの記事に関して指摘を受ける。北野勇作「よくある話」の評中、「二人称の」という表現があるが、あの語りは「一人称説話体」であるとのこと。確かに、言われて見ればその通り。いや、「一人称説話体」という言葉は知らなかったのでその通りも何も無いんだけど、二人称ではなく一人称であるのはその通りでした。多分、このような間違いは散見されると思うので、他にも見つけた方は教えていただけると幸いです。
近所の中古屋でワープロを見つけ、その値段に驚く。中古の型落ちなら2万前後とたかを括っていたら、3万から6万が相場でやんの。そうか、ワープロという商品はまだ現役だったのか。
久しぶりに『ハッカー/13の事件』(扶桑社ミステリー)を読み進める。シルヴァーバーグ「免罪師の物語」読了。ハッカーが捕まって復讐する話。展開それ自体はありがちながら、ハッカーという生き方を否定してしまうラストの嫌さ加減はシルヴァーバーグっぽい。
- 12月15日
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近所の書店の棚を眺めているうちに文芸書ハードカバーが、男性作家と女性作家に別れていることに気づいた。「なるほど、まだまだ、そういう分類は生きてるんだね。しかし、誰かのためになるのか、その分類」と、書籍流通におけるジャンル分類の功罪などについて思いを馳せつつ再度棚を眺めると、女性作家の棚に違和感があるものが目についた。北村薫が並んでいる。
いやまあ確かに、よくあることではある。性別を間違える作家リストを作れば、横綱とはいわないまでも、東の大関くらいには出てくる名前だ。タイミング良く見つかってしまったのがツボに入っただけで、さほど面白味のある事態ではない。そう思いつつ三度棚を眺めているうちにあることに気がついた。あの作家の本が無い。無いわけはないのだ。今年あれだけの本を出した作家、なんの間違いがあろうと一冊くらいはあるはず。ひょっとして、もしかしたら。期待を込めて男性作家の棚を眺めると、まさにそこにあった。
恩田陸の本の山が。
なんぼなんでも、その間違いの取り合わせはベタすぎる。
- 12月16日
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昼過ぎに起きだして、池袋へ。芳林堂→芳林堂コミックプラザ→ジュンク堂と回って、何がなんだか分からない数の本を買う。都会には数々の罠が待ち受けているようだ。
買ったのは楠野一郎・監修『戦う女優(ヒロイン)』(扶桑社)、『サンライズ・ロボットコンプリートファイルII スーパーロボット編』(竹書房)、サーデグ・ヘダーヤト『生埋め ある狂人の手記より』(国書刊行会)、貞本義行『新世紀エヴァンゲリオン』6巻(角川書店カドカワコミックスエース)、あさりよしとお『HAL はいぱあ あかでみっく らぼ』(ワニブックス ガムコミックス)、エドワード・ゴーリー『優雅に叱責する自転車』(河出書房新社)、井上雅彦・監修『雪女のキス』(光文社カッパノベルス)、いしいひさいち『女(わたし)には向かない職業』1、2(東京創元社)、清水義範『銀河がこのようにあるために』(早川書房)、網野善彦『「日本」とは何か』(講談社 日本の歴史00)、クラフト・エヴィング商會『らくだこぶ書房 | 21世紀古書目録』(筑摩書房)、澤井繁男『魔術と錬金術』(ちくま学芸文庫)。惜しい、もう少しで一つも出版社がかぶらなかったのに。
その後、例によって大熊君達と合流し、「ゴジラ×メガギラス」を見る。なんかとんでもなく評価の難しい出来。
設定ベースでは噴飯もの。なにひとつ正しく用いられていない物理用語といい、大森一樹でももう少し工夫するだろうというメガギラスの設定といい、笑う以外の対処の方法がない。
特技、演技ベースでもあまり褒められたものではない。CG合成もミニチュアカットもどうやったらここまでリアリティを消すことが出来るのかというくらい、作り物めいている。役者も、主役級はともかく脇のそこそこ重要な位置に拙い役者を置きすぎ。このレベルまでは実に大きな欠点を抱えている。
しかしそれらを補ってあまりあるのが、怪獣プロレスシーンをはじめとする特撮部分の画。ウルトラホークと見間違うばかりのグリフォンのデザインや、ゴジラとメガギラスがはったと睨み合い一瞬の交錯の後に一方が崩れる様式美などは、実に素晴らしい出来。よくもまあ、ここまでベタに作れるというくらいに伝統を引いている。これぞ70年代ゴジラの正嫡(というか帰マン以降のウルトラマンの正嫡かも)。この一連のシーンの後では、どんな設定の矛盾も気にならなくなる。そしてラスト前のクライマックス。あれほど退屈だった話をよくぞここまで盛り上げた。
しかし、であるが故に、落ちの付け方が許せない。あれではカタルシスも何もあったものじゃない。もっとこう、気分よく終わることは出来たはずだ。
30点。
とりあえず、作品としての存在意義は「ミレニアム」の方が上だね。どんな意義かはともかく。
ゴジラ後飲みに行く。結構危ない時間まで飲んでいたのに、結論としては楽々終電に間に合った。西葛西なら30分前に帰れなくなっていた時間帯である。おそるべし柏。
- 12月17日
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色々あった。
新宿で、本屋に行ったり、ハンズに行ったり、タイガーマスク2世のお面をつけた謎の衣装のおじさんと2度遭遇したりする。路上ですれ違う分には特にどうということも無いが、喫茶店の斜め前の席に座られるとかなりインパクトがあるね。 > タイガーマスク2世のお面をつけた謎の衣装のおじさん
いしいひさいち『女(わたし)には向かない職業』1、2(東京創元社)読了。ミステリ作家、藤原瞳を主人公とする4コマ〜短篇集。面白いに決まっている漫画家の漫画なんで面白くて当然と思いつつ読みはじめたら面白かった。< それは何も語ってないだろう
藤原先生がカルチャースクール出身というのはなんだか意外。師匠筋とかどうとかいう概念があるんだから不思議はないんだけど、ちょっと盲点だった。
あさりよしとお『HAL はいぱあ あかでみっく らぼ』(ワニブックス ガムコミックス)読了。すばらしい。全編にあさりよしとお一流のケレンが満ち溢れている。そう、このうさんくささこそ、あさりマンガの真骨頂。全体にハイレベルな中、特に気に入ったのは膨張宇宙ネタ。「1918年シャプレーによる測定では17万5千光年の距離にあったアンドロメダ星雲は、今では230万光年の彼方と考えられている。アンドロメダ星雲はわずか80年で実に200万光年以上も後退したのだ!」(要約)。いいぞ、あさりよしとお。
楠野一郎・監修『戦う女優(ヒロイン)』(扶桑社)はまだ途中。アクション、ホラー、SFなどのジャンル映画に登場した女優に対するインタビュー集。菅野美穂、麻生久美子、仲間由紀恵、安藤希、水野美紀、三輪ひとみ、中山忍というラインナップだけでもある種の人は必読だろう。ただ、上記ジャンルをまとめて<ファンタ系映画>とまでいうのなら、なぜ佐伯日菜子は対象外なんだという疑問はあるが。今、日本で最も返り血が似合う女優だというのに。
- 12月18日
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色々あって、ちょっとテンションが狂い気味。
エドワード・ゴーリー『優雅に叱責する自転車』(河出書房新社)を読了、したのは昨日か(←なぜ昨日分に書かない)。黒いユーモア、白いユーモアときて、今度はゴーリーのシュールリアリスティックな面を代表する作品だとか。今回、出版された3作の中では最も読みどころがわかりづらい。十分に感想を消化できていないので、判断は保留。
楠野一郎・監修『戦う女優(ヒロイン)』(扶桑社)読了。最初の菅野美穂、仲間由紀恵あたりがあまりに面白かったんで期待しすぎたのが良くなかったのか、後半ややだれた。映画に対する思い入れを持つ者、変な映画に対する思い入れを持つ者、変な作品に対する思いいれを持つ者、とそれぞれの立ち位置が違いが、キャラクターを反映していて(あるいはしてなくて)興味深い。とりあえず、水野美紀は気に入ったのだが、今この瞬間でも顔を思い出せないので、出演作を見る機会があってもそれと気づけるかどうかは不明。
『ハッカー/13の事件』はアレクサンダー・ジャブロコフ「死ぬ権利」まで。ハッカーたるもの自分の行動に最後まで責任を持たなくてはという話(違う)。テーマとアイデアが表に出た話だが、スタイルだけが売りの作品と並んでいてもそれなりに戦える力がある。SFM99/6に載った「フィットネス・クラブの恍惚」も、変な魅力があって面白かったんで、もう少し紹介されると嬉しいかも。
- 12月19日
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テンションはなんとか調整中。
前回のユタ参加メンバーを見て(福井日記12月16日分)行かなかったことを少し残念に思う。いや、映画はともかく、その後は楽しかったんで、大熊君達と遊びに行ったこと自体は後悔していないんですが。
Web日記といえば(←どの辺が「といえば」なのか)、一歩日記12月13日付のWeb書評に見るSF御三家というのは面白かった。イーガン、ホーガン、ソウヤーですか。オーストラリア、イギリス、カナダね。偉大なりコモン・ウェルス。
人から借りた森奈津子『西城秀樹のおかげです』(イースト・プレス)をようやく読了。全編<バカ本>のノリなんで1作、2作はともかく、まとめて読むとさすがに胃にもたれる。<バカ本>掲載の4作は既読。アンソロジー上で読んだときに最も印象に残ったのは、「哀愁の女主人、情熱の女奴隷」なのだが、改めて読み返してみるとそれほどでもなかった。どうも、作品自体よりも、初めて<森奈津子>というジャンルに触れた衝撃の方が大きかったようだ。集中のベストは……表題作かなあ。先にも書いたとおり、まとめて読むとくどいので、胃の弱い人は間を置いて読む方が良さそう。
今日も今日とて『ハッカー/13の事件』。スワンウィック&ギブスン「ドッグファイト」、スターリング「われらが神経チェリノブイリ」、キャンダス・ジェイン・ドーシイ「マシン・セックス〔序論〕」を読了。
前二者は既読。スタイル(と非SF的感動)だけの「ドッグファイト」も、アイデアだけの「われらが神経チェリノブイリ」もそれなりに楽しんだが、それなりでしかない。「ドッグファイト」のテーブルの上の空中戦は好きなんだけどね。
「マシン・セックス〔序論〕」はテーマが勝ちすぎ。収奪者に対する復讐の物語は良いんだけど、わが筆力を省みず虚仮脅しに時制を混乱させたもんだから収拾がつかなくなっている。もっとすっきりさせちまえばいいのに。
近所の書店で、クラーク&バクスター『過ぎ去りし日々の光』(ハヤカワ文庫SF)、イーガン『祈りの海』(ハヤカワ文庫SF)、川又千秋『火星人先史』(徳間デュアル文庫)を買う。イーガンは何故か戴けることになっていたのだが、つい勢いで買ってしまった。少しでも早く読みたいし、と思いながら柏に戻ると、既に戴いた方が届いていたのはご愛敬。まあ、イーガンの短篇集を買うことはすべてのSFファンの負った責務だから何の問題もあるまい。
『祈りの海』の訳者あとがきと解説だけを読む。瀬名秀明の解説はイーガンの魅力を語るものとしては最高の出来なんで、是非とも読んでいただきたいところ。万が一、イーガンの短篇を読んだことがない等という不届き者がこの世にいたとしても、この解説を読めばすぐさま全篇読んでみたいと思うはずだ。これで、その気にならない人とは共にSFを語る気にはならないね。
- 12月20日
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ほぼ原状復帰。……したと思ったら体調が悪くなったり。なんだかなあ。週末は名大OBMLの忘年会風だから、それまでにはなんとかしたい。
会社の近所の書店に寄ったら平積みだった『祈りの海』が無くなっていた。4、5冊のことではあるが、つくばの片田舎(つくばが片田舎というのではなく(片田舎だけど)つくば市内でも学術・研究施設から離れた片田舎という意味)こんなに早く無くなるとは頼もしい限り。この調子でがんがん売れて、がんがん増刷がかかれば、"Diaspora"が出るのだって夢じゃないな。
『ハッカー/13の事件』読了。
ダニエル・マーカス「マイクルとの対話」はハッカーがセラピーを受ける話。これはハッカーが主人公なだけで「ハッカーの話」じゃないだろう。アンソロジーテーマとの整合性はともかく、話自体はまあまあ。
マコーリイ「遺伝子戦争」は遺伝子をハッキングする話。若干記憶と違った部分があり、とある理由で冷や汗をかいた。まあ、論旨に影響を与えるほどではないからいいけど。まあ、それはともかく。大まかな展開と傑作という事実だけは分かった上での再読だが、やはり傑作だった。90年代の翻訳SF短篇でもベスト10には入るだろう。
スティーヴンスン「スピュー」は電脳警察の話……ではないな、少なくとも。一応のストーリーはあるが、世界の紹介に忙しくてそれどころではない様子。でもまあ、それはそれで面白いから別に構わない。柴田元幸 訳で「饒舌な語り」が楽しめるんで、雑誌掲載時に見落とした柴田ファンは要チェック。
ベア「タンジェント」は作品集の表題作にもなった数学SF。わるかないけど、同テーマならラッカーの『セックス・スフィア』の方が良いな。
全体としては非常に高品質なアンソロジーだ。若干既訳が多すぎるきらいはあるが、すっかり忘れているものばかりだったんで問題無かった。< おい
集中のベストはマコーリイ「遺伝子戦争」を別格とすると、ジャブロコフ「死ぬ権利」。やっぱ、SFはアイデアストーリーっすよ。
クラフト・エヴィング商會『らくだこぶ書房 | 21世紀古書目録』(筑摩書房)読了。2052年の京都に存在する古書店、らくだこぶ書房から送られてきた21世紀前半の52年間に出版された“古書”の目録。その目録掲載の書籍21篇を書影入りで紹介する。全篇に漂う余裕がなんとも心地よい。中でも気に入ったのは、全国の老人が3回以上繰り返して話したエピソードを集め、ランダムに並べた『その話は、もう3回きいた』。この飄々としたユーモアがたまらない。
貞本義行『新世紀エヴァンゲリオン』6巻(角川書店カドカワコミックスエース)読了。トウジがエヴァ3号機のパイロットになる話。1巻完結で見事にまとまっている。まとまっているのは良いけど、このペースだといつ終わるのか(っつーか、終わるのか)は、そこはかとなく心配。