過去の雑記 01年 9月

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9月11日
出勤時刻の時点では台風はまだ相模湾におり、通勤に支障は無いものと思われたが、昨日雨に濡れたのが祟ったか鼻風邪がひどかったので休むことにする。こんな形で貴重な有給を無駄にすることになろうとは。

休んじまったものはしかたがないので食料を買い込んだ上で再度寝る。昼前に起きたときにはすっかり台風の勢力圏内で、北に向かう常磐線は見事に止まっていた。まあ、そうだろう。雨音を聞きつつ雑誌を読んだり資料を整理したりするうちに台風が通り過ぎたので、さぼっていた異形系アンソロジーだの、小説すばるだのを買い込んだり。あ、『夢魔』がダブった。

さらに雑誌を読み、CATVでCoccoのビデオクリップを見てから就寝、しようと思ったら、電話でニュースを教えられる。あわててテレビをつけ、地上波とCNNをザッピング。なんというか。

しばらく呆然と画面を眺めつづけた後、眠る。

9月12日
なんかこう、「本当にこんなことをしているだけでよいのか」との思いが拭えないが、別に何か出来るわけではないので、ふつうに日常を過ごす。日常が日常でありつづける保証はどこにもないが、何かあったとしてもそれもまた日常になるに決まっているのだから心配しても始まるまい。

あ、ふつうに日常を過ごしたはずだったのに、いつもより生産性高く過ごしちまったい。< それは良いだろう

9月13日
なにおかいまさらシリーズ、デイヴィッド・ブリン『知性化戦争』(ハヤカワ文庫SF)を読了。面白い冒険SFだ。一つの事件を多くの視点から描き全体を浮かび上がらせる形式がちゃんと機能しているし、複数の流れのまとまり方も美しい。キャラの魅力の点でも、『スタータイド』のイルカに匹敵するティンブリーミーという種族がおり問題なし。あまりに陽気な世界観は好きになれないが、それは作品の欠点ではなく相性の問題なのでしかたがない。この調子なら<知性化の嵐>もストレス無く読めるかも。読めるといいなあ。

都会の本屋でやっと<異形コレクション>『玩具館』を入手。お祝いに(違う)ビールを飲んで帰宅。

9月14日
会社の強制有給日なので休み。これ以上ないほど自堕落に過ごしたり。でれでれ。

<異形コレクション>『玩具館』から浅暮三文「喇叭」を読む。こういうものもリドルストーリーというべきか。主人公が喇叭をほしがることから、謎のクイズの問題まですべて好み。ここまでくると巧いんだかどうだかよくわからないが、少なくとも大好きな作品ではある。

9月15日
<異形コレクション>『玩具館』から竹本健治「フォア・フォーズの素数」を読む。四つの4と演算子で自然数を作る物語。解答を見る前に自分で検討したり、解答を見ながら検算したりといった作業が忙しく読むのに時間がかかりすぎるのが難点か。ただ、その難点も作品の魅力の一つ。少年の栄光と挫折の物語として実に良く出来ている。今まで読んだ異形短篇の中でも屈指の出来だ。しかし校正の人は大変だっただろうな。

夕方からユタルノアール。参加者は高橋良平、大森望、小浜徹也、添野知生、三村美衣、宮崎恵彦、堺三保、SF人妻、山本和人、さいとうよしこ、志村弘之、林、福井健太、英保時央(順不同、敬称略)。

近場での主な話題は、辛いシリーズ、河出アンソロジー、教科書問題、粘土アンソロジー、米国同時テロ、ヒースロー空港、考課評、自粛様々、ダメをだされる絵コンテ、石森章太郎(当時)、SFオンラインSFクイズ特集(予定なし)、食事にうるさい人(あるいはうるさい人)、まだ諦めてない、おたくがヒーローになる時期、スクェアルートはフェアか、「まったくなんでも読んでいる」ことの辛さ、三州と尾州の文化の差、など。

個人的には、夕食の際、取り分けようのれんげに直接口をつけてしまい良平先生に叱られたことが重要か(違う気がする)。いや、尊敬する批評家の方に、隠さずに書いておくようにと釘を刺されたので。

帰宅後、89の可能性についてしばし検討し、寝る。

9月16日
仕事と日常のメンテナンスと睡眠で潰れた一日。このところ自分のキャパ以上に生産的(注:キャパが非常に小さいのだ)な生活を送っていた反動が来たか、多分に非生産的に過ごしてしまった。せめて本の一冊なりとも読み上げたかったのだが。

古いマシンのマシントラブルについて調べたりした後、就寝。

9月17日
朝方、突然堰を切ったように鼻水が流れ出してくる。どうやら季節の変わり目恒例の鼻風邪が悪化したらしい。こうなるとまともな思考が不可能になるので、一日おとなしくして過ごすのみ。ごんだごどをしでいる場合じゃだいんだがだあ。

今号のSFM関係で某所には書かないことにしたネタ。

(1) リーダーズ・ストーリーがすごい
今号の入選作、「麦穂の大海のなかで」は秀逸。破滅に向かう火星移民船の情景を静かに描いた作品なのだが、描写が実に巧い。ここ10年のリーダーズ・ストーリーでは最高じゃなかろうか。派手さはないけどお薦め。

(2) いまさらそれは
ブリンの<知性化>短篇の解説によると、『遙かなる地平』収録の<新・知性化>短篇は<知性化の嵐>のネタバレを思いっきり含むらしい。できれば<知性化の嵐>2巻を読み終えてから読んでくださいって、そんなこといまさら言われても。

9月18日
なんとなくまんがを読む。

ゆうきまさみ『パンゲアの娘 KUNIE』1巻(少年サンデーコミックス)。南国おしかけ女房もの。ときおりゆうきまさみ的ニュアンスが入るので読めているが、読めているという程度。今後に期待。

陽気婢『内向エロス』1巻(ワニマガジンコミックス)。現実と創作内世界が交互に描かれる技巧的エロまんが。現実のはずの世界も美術教師が登場するたびに別人になるというギミックがしかけてあるので、どこまで「現実」なのかはわかったもんじゃない。いまのところは作品内作品という位置付けの読みきりまんがの方が出来がいい。

朔ユキ蔵『無軌道メルヘン』(コアマガジンHMコミックスEX)。抑制の利いてないまんが絵エロの作品集。作中人物の行動は明らかに非常識なのだが、描き方が冷たいためか意外なほど落ち着いた印象を与えている。まあ、落ち着いたといっても程度の問題ではあるが。

9月19日
突然、河出アンソロジー6巻をなくしたことに気づく。昨日は確かに読んだはずと必死で記憶の糸を辿ってみるに、どうやら帰りのバスの中で置き忘れてきたらしい。まだ市場に存在する本だけに買いなおせば済むことなのだが、じつにこうまったくもって微妙に腹立たしいのだった。

帰宅後、洗濯物を取り込もうと窓を開けると蜻蛉が飛び込んできた。ふむ。夏も終わりだねえなどと思いつつ部屋から出してやろうとするのだが一向に出て行こうとしない。空も真黒き午後8時。そう正の走光性を持つ蜻蛉は、部屋の中に入って来こそすれ、出て行く謂れは無いのだ。はじめは優しく追い出そうとしていたのだが、だんだん鬱陶しくなってきたので結局むんずと掴んで放り出したのだった。明日の朝には野良猫の餌かも。

9月20日
河出アンソロジー6巻を買いなおした。うー。

買い物ついでに小説誌をぱらぱらと眺める。どの雑誌だったか忘れてしまったが、恩田陸が自作について語っている記事にはちと苦笑。「『ドミノ』は「マグノリア」をやろうと思って」って、それはあまりにもそのまんまですがな。

一昨日書き忘れた小ネタ。『KUNIE』で忘れてはならないのが、その流暢な名古屋弁。非ネイティヴのゆうきまさみにここまで自然な名古屋弁が書けるとは。おそらくネイティヴの監修者がついているのだとは思うが、しかし驚いたことである。ちゃんと男言葉と女言葉を書き分けてるんだもんなあ。

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