過去の雑記 03年 9月

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9月11日
どう考えても、読んだのはこの日じゃないのだが、他に適当な話題もないので歴史を捏造して(9/30記)、みずきひとし『電子の妖精エポ子ちゃん』(三和コミックス)読了。カセットビ○ョンの精をヒロインとするエロまんが。他のキャラも、LY○Xだの、JA○UARだの、バーチャ○ボーイだの。ギャグに力を入れすぎて、エロを忘れがちな上、そのギャグも狭い方向に走っていて読者を置き忘れる傾向にあるという素敵なまんが。かといって、マニア層がつくほど細かいネタふりはできていないという。ぬるく、くだらないので、心の底から脱力したい時にはお薦めです。いや、↑では貶してるみたいだけど、かなり気にいってるのだよ。

9月12日
山本賢治『カオシックルーン』1,2巻(秋田書店チャンピオンコミックス)。ブロッコリーデザインのカードゲームまんが、のはずなのに、なんでこうまでイっちゃった物になるのか。さすが山本賢治。すばらしすぎます。

主人公がわけもわからないうちにカードを使ったモンスターバトルに巻き込まれる1巻もかなり来ていたけど、2巻ではさらにパワー前回。摩擦力を0にしてパンツを脱がすモンスターだの、竜に取り込まれぐるぐる目玉になってしまった姐ちゃんだの出てきてゆかい漫画道を大驀進。スポンサー筋からは非難轟々だと思うけど気にせずこのまま突き進んで欲しい。ああ、3巻は師匠の登場か。待ち遠しいなあ。

2巻巻末で、布を顔に巻いて登場したリョウガは、なんだか流竜馬みたいでしたね。

9月13日
ユーロスペースでトルンカの長篇を2本。短篇は一度見たことがあるからと、涙を飲んで切りました。

『バヤヤ』はチェコの民話をもとにした英雄譚。農夫の息子バヤヤが、魔法の力を持つ母親の手を借りて騎士の姿となり国を苦しめていた悪竜を退治、お姫様に見初められる。しかし彼は母との約束で正体を明かすことは出来ない。農夫の姿でお姫様の前に現れるが姫はまぶたの騎士に恋焦がれ、彼のことなど眼中になし。絶望した彼は騎士の姿になり馬上槍試合で優勝した上で姫の捧げた冠を投げ捨てて立ち去る。悲嘆に暮れる姫。しかし、そこは相思相愛のふたり。やがて、ふたりは和解。互いの愛を受け入れ、姫はバヤヤの元で農夫の妻として暮らす決意をするのだった。……そんなバカな。お話はまあ、民話由来ということで深く追求するべきものではないですな。

人形は愛らしく、その動きも素晴らしい。細かなしぐさに感情をこめるテクニックにはトルンカならではの冴えを感じる。ただ、それ以上のものはないので60分以上の長丁場に耐えられるかどうかは客の調子次第。僕は途中寝ちまいました。良くも悪くもオーソドックスな人形アニメで派手さがないのが辛いところ。姫をやさしく見守る老道化の演技は必見なのだが。

『真夏の夜の夢』はシェイクスピアの戯曲が原作。四人の男女と、素人芝居の一団と、森の夜を統べる妖精たちとの夏の一夜のバカ騒ぎ。これはすごい。物語はともかく、画面の派手さが驚異的。個々の演技の精度は『バヤヤ』ほどではないのだが、画面を埋め尽くした妖精がそれぞれに動き回る迫力は何物にも変えがたい。いくら総力を結集して作った人形アニメだからって、ここまでやらなくても。戯曲由来ということで、普段以上に大仰な独特の振りをつけられた人形の動きも楽しい。機会があれば一度見ておくべき作品。

9月14日
アンサンブル東の例会に参加。1時間ほど遅れて参加したのだが、それでも最終的に集まった人数の6割いたかどうかというところだった。さすがSFの例会。話題は、ワールドコンのみやげ話とか、パズルの解き方とか。なぜ、海外SF同好会の例会でパズルの解き方を語るはめになったかを話し始めると、とてもこのサイトの容量では足りないので、またの機会にしたいと思う。

9月15日
テレビで、横浜ベイスターズが優勝を「決めた」瞬間を観る。

嘘は言ってない。

今年はおめでとう。さすがに来年は今年のように行かないだろうけど、それでも2年はAクラスを争えるだろうと思う。その間に真の力が取り戻せると良いね。こちらは、5位を争えるようになることを祈りつつ、のんびりとゲームを楽しむことにするよ。

来期、少しは今年の貸しを返してくれるんだよね?

98年の借りを返すはめになっただけという説もある。

9月16日
眠い一日。なぜ眠いのかは、ここでは語らないが心底眠い。しかし今日から他部署のヘルプなので、下手な対応を取るわけには行かない。ぴんと張り詰めつつ、それでいて眠い。

久しぶりに立ち寄ったあおい書店中野店には創元の復刊フェア作品が一冊たりとも置いてなかった。『ロシア・ソビエトSF傑作選』という固有名詞に反応できないのはしかたがないにしても、東京創元社が文庫復刊フェアをやっているという事実くらいは知っていても良いのではないか。> レジの担当者

加藤元浩『ロケットマン』6巻(講談社KCGM)。『QED』のスパイ版6巻目。今回、物語の柱となる謎は出てこないが、それ以外は快調。『たった一兆』はSFの題名ではないと思うのだが、どうか。

9月17日
どこまで続くことやらなアニメータームック、『アニメーターズ1 カレル・ゼマン』(日本出版社)読了。おかだえみこによる詳細な作品解説が勉強になるのは当然として、予想外に興味深かったのがペトル・ホリーによるチェコ小史。ボヘミアの語源がその辺に住んでいたケルトの部族だなんてまったく知らなかったよ。でも、できれば小さくてよいから地図も欲しかった。他では、山村浩二による詳細な技術解説、「山村浩二、ゼマンを語る」が圧巻。単純に凄そうだと思っていた「水玉の幻想」も、難しさをこう丁寧に説明されると、改めて尊敬の念がわいてくる。ガラスのアニメーションというのはそこまで過酷なのか。それを、あの精度でやりとげるとは。恐るべし、ゼマン。

さらに松谷健二『東ゴート興亡史』(中公文庫BIBLO)も。西ローマ滅亡後、イタリアを支配し、わずか半世紀で東ローマに滅ぼされた東ゴート族の物語。いや、面白い。知らない話ばかりというのもさることながら、歴史小説と歴史の間を行き交う松谷健二の匙加減がまた絶妙。薄い本でもあるし、ゲルマン史やローマ史に興味がなくても、読む価値はあるのではないかと。

定時であがって渋谷。イジー・トルンカ「皇帝の鶯」を観る。少年が夢の中で観るアンデルセン童話「支那の皇帝の鶯」。会社帰りの夕食後というコンディションの悪さもあり、予想通り寝てしまった部分も多いが、起きていた箇所では、コケティッシュな人形の顔と、「チェコの少年の夢じゃ、しかたがない」という歪んだ東洋像(箸を両手に1本ずつ持って豆を食うのはどうよ)を楽しめた。パイオニアから出始めた長篇DVDシリーズは、全5枚予定のようなので、(順調に売れていれば)これも手に入るはず。そちらで観る時には、もっと丁寧に観よう。
#スケジュールが許せば、もう一度行くんだが。

トマス・ウォートン『サラマンダー ―無限の書―』(早川書房)は3分の1くらい。今のところは順調に面白い。作中の、「ヘレニズム期の作家による小説を読むことへの批判」(63p)が楽しかったのでちょっと引用。 なんと!読書にそんな効果が!< ない

帰ると、テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)が届いていた。週末に見せてもらったときにも思ったのだが、まったくもって新潮文庫みたいな表紙だ。解説は爆笑物なのだが、本文を読んでいないと意味がない(ネタバレ云々の問題ではないんだけど)という困った代物なので、本文を読んでから解説に進むことを強くお薦めする次第。中身の方は必読に決まってるんだけど、そんなことはいまさら書くまでもないでしょう。チャンだし。

直っているものと思い込んでいた湯沸し器は直っていなかった。大家に連絡をとって直してくれるのではなかったのか。> ガス屋
しかたがないので、大鍋で湯を沸かし中。いったい何杯沸かせば、入るに値する量になるのだろう。シチュー用の大鍋が使えるのがせめてものなぐさめか。ありがとう、買ってくれた人。

3D6の9月17日付け記述より、i-mode端末で「ファイティング・ファンタジー」がプレイできるってよ!。そうか、その手があったか!

横浜は、無事、四一勝目をあげました。めでたし、めでたし。

9月18日
TAGRO『宇宙賃貸サルガッ荘』1-3巻(エニックス GFC)。立ち読みした「ファウスト」掲載の短篇が面白かったので、周回遅れまくりで購入。このまんがを買う決心がついたのが、「ファウスト」を読んだ最大の成果だな。自意識の強さをぎりぎりで抑制しているのが、大変好ましい。自意識だだ漏れ(のように見せている)まんが家まんが「Don't Trust Anyone Over Thity」もいい感じです。金髪碧眼ネズ耳ハーフのアシで、無表情風味の蒔子=グレゴリーにベタ惚れだ。

やっと湯沸し器からお湯が出るようになりました。やあ、湯の出るシャワーってのはすばらしい。

9月19日
対中日戦引き分けで借金は46のまま。11位オリックスは敗れたので、ゲーム差は2.5となった。確かに、残り11試合で2.5差は難しい。もはや、直接対決もないし(< 当たり前)。しかし、決して不可能な数字ではないのだ。オリックスが、現在の勝率のまま。5勝8敗でシーズンを終えるのであれば、7勝4敗で逆転できる。三割を守るのが精一杯の横浜には厳しい数字だが、改めて言う。不可能ではないのだ。なに、どうせ残りは消化試合だ。相手チームも油断しているに違いない。えーと、残り試合は……。Aクラスをかけて死闘を繰り広げている中日&広島ですか。無理だな、こりゃ。

小林泰三『目を擦る女』(ハヤカワ文庫JA)読了。仮想現実ネタが多いと思っていたら、書き下ろし作品の中で自ら突っ込んでるし。そんな自己分析はいらないってば。全体のバランスでは、小林泰三会話体が大爆発の「未公開実験」が頭ひとつ抜けている。僕の考えたポーズは、杉浦茂風です。メイン・アイデアだけなら算盤で計算する仮想世界という大ネタが炸裂する「予め決定されている明日」だが、ラストがちょいと。お約束だからといって壊さなくても。「超限探偵Σ」を読んで、腹を立てるほど心が狭くない(というよりはミステリという形式に思い入れが無い)のだが、推理が成立していないのはさすがにどうかと思う。あの解決よりは「自分以外の全員が口裏あわせをしている」という説のほうがしっくりくるだろう、ふつう。

9月20日
起きられたら先週に続いてマジ・スパに行くつもりだったのだが、予想通り寝過ごした。しかたがないので夕方までだらだらした後、元ユタへ。

参加者は、小浜徹也、堺三保、添野知生、高橋良平、林、三村美衣、柳下毅一郎。主な話題は、最近の映画、最近のアメコミ(主にアラン・ムーアとニール・ゲイマン)、TOEFLの難しさ、東京ファンタ、東京国際、買い損ねたまんがを求めて、書評家鼎談の感想、チャンにタイトルのセンスを、ムーミン谷の廃墟など。2度目のルノアールのあと、新宿書店に寄って買いだめしてから、帰宅。

鶴田謙二『Forget-me-not』1巻(講談社KCDX)。ヴェネチアを舞台に探偵と怪盗が対決!出ないだろうとたかをくくっていたので見つけたときには驚いた。大洋ホエールズ38年ぶりの優勝を描いたというかなんというか、な「ママは何でも知っている」は懐かしく、楽しかった。ああ、あの頃は良かった……。

村枝賢一『RED』13巻(講談社アッパーズKC)。イエロー復活。死者が安易に復活するのは感心しないけどもがだよ。今回、魂が震えるシーンが無いかも。

村枝賢一『仮面ライダーSPIRITS』5巻(講談社ZKC)。ZX篇はつづく。こちらも「物語を進める話」中心で、シーンの熱さが不足気味。それでもダブル・ライダーの変身には迫力が、ってそれではZXまんがとして問題が。「アマゾンライダーのマダラ模様を再現する為に特撮版から4面図を起こした」という、村枝賢一のこだわりは信頼しているので心配してないけど。

佐藤マコト『サトラレ』5巻(講談社イブニングKC)。サトラレで無くなった星野と、サトラレを憎む山田が手を組むというシリーズの転回点となるであろう巻。他のエピソードも、テーマのバリエーションとして痒いところに手が届くアイデアのものばかり。「おぼろげながらラストの形が見えてきました」というカバー折り返しの言葉も頼もしく。着地点を楽しみにしたい。

あとは月野定規の初単行本とか。初単行本は初単行本だなあ、と。

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