過去の雑記 03年 9月上

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9月 1日
朝から腹痛で1回休み。

休んでしまうとそれはそれで暇なので買出しにも行ったりする。鮭ハラスというのは美味いものだなあ。

9月 2日
SFM 9月号読了。だんだん遅くなるな。久方ぶりのジェンダー特集号。

コンスタンティン「白蛇の呪い」:亡国の王子が出会った耽美な化物。化物の設定も含め、あまりにありがちなファンタジー。美というものが足りません。よんじってん。ムーアの爪の垢でも煎じて飲むんだな。

エスクリッジ「そしてサロメは踊った」:観客を吸い尽くす魔性の役者。こちらはまあ、それなり。

エムシュウィラー「ビーナスの目覚め」:女性原理に基づき平和に暮らす水棲人類。男性原理の権化たる異世界の樹上人がやってきたとき、平和な世界は崩れ始める。そうですか、悪は外からやってくるんですか。水棲人社会はよく練りこまれているし、語り口も優れていると思うのだが、大声の主張がうるさすぎ。もっと静かにメッセージを乗せられないのか。

井上佳穂/藤原ヨウコウ「優しい音(ことのはの海、カタシロノ庭)」:湖の底で囁かれる言葉。ふーん。

小説外では、ジョアンナ・ラスのやおい論が楽しそうだった。書いている方は。

9月 3日
腹は痛まなくなってきた。これなら病院に行かずに済みそうだ。せっかく病院に行かずに済むのだから、入れ替わりに手にできた謎の発疹については気にしないことにしよう。きっと、電気クラゲに刺されたあとが広がっているだけだし。広がるもんなんだろうか?

翻訳SFの新刊把握のためというか、新刊が既知のものの他に存在しないことの確認のため、定時であがって池袋ジュンク堂へ。……向かおうとしたら、途中の常磐線内で、大雨のため山手線運転見合わせの報が。どうやら京浜東北、中央快速などなどほとんど止まっている様子。仕事を半ばで切り上げて出てきた手前、ぜひとも行きたかったのだが、辿りつけないのではしかたがない。泣く泣く諦めて、柏で降りる。いや、高速バスに乗らないでおいて良かった。

つくば〜柏間はたいした雨ではなかったので、いまいち状況がわからないのだが、東京、埼玉方面の方はご無事でしょうか。

……そんな雨で、よく神宮のヤクルト・横浜戦が出来たなあ。
#上野に着く頃(午後8時前)には通常運転になっていたに10000クレジット。

9月 4日
SFM10月号読了。珍しく早かった。今回は非英語圏SF特集。各国SF事情は充実。どれを読んでも仮想歴史小説云々とある(やや言いすぎ)のは印象深い。

ルキーン(ロシア)「日の沈む国で」:労働フェチは収容所送りだ!あまりにもソ連的に見えてしまうのがあれだが、2段落ちの1段目はなかなか。最後の落ちは蛇足気味。皮肉の利いた異色短篇がアネクドートになってしまった感。

ボリュー(フランス)「クレ」:鍵穴付きの男との交感。気取りかたがフランスな感じかな。クレのイメージはそれなりに良いんだけどね。

ハマーシュミット(ドイツ)「暴風監視官(あらしばん)」:ガス惑星の嵐番となった男。ダイジェストを読まされているかのよう。もう少し膨らまして、中篇にしてくれないと評価の仕様が。

遙(中国)「アッシャ」:永遠に繰り返される恋人たちの生活。星新一のショートショートのようだ。作中の設定からすると「わたし」は男だと思うのだが、なぜ女言葉を喋るのだろう。いや、喋ってもいいけどさ。

ゴロディッシャー(アルゼンチン)「或る王朝の最後、もしくはフェレットの博物誌」:伝説の古代王朝の、最後の王のエピソード。ファンタジー系短篇としてはかなりふつう。これだけ投げ出されてもなあというところはある。特に思わせぶりな枠側の話は、これだけだとただのストレス源。もう2、3話無いと評価しづらい。内側の話は物語としてよく出来ている。これはまあ、これで。

深堀(日本)「夫と妻の小粋な会話」:表題通りとでも言う他あるまい。尺が短く、持ち味の饒舌が十分に機能する前に終わっている。もっと行けると思うんだがなあ。

9月 5日
所用で相模原へ。相模大野の駅は、荒川沖やひたち野うしくとは比べ物にならない賑わいで驚く。同じJAXAの施設だというのに、最寄り駅にこれほどの格差があるなんて。こんな横暴を許していて良いのか!> NASDA

もうひとつ驚いたのはバスの仕様。せっかく大きな中扉があるのに、前乗り前降りってのは、なぜなのか。昼間だから普通に捌けていたようだけど、通勤・通学時間帯は明らかにボトルネックになりそうな。整理券配布器くらい後部につけようよ。

それと。信号で止まるたびに「停車信号です、ご注意ください」と告げるのはうるさいから止めた方が良いと思う。

ふと気がつくと新宿南口にいたので、諦めてYellow Submarine新宿西口2Fへ。財政逼迫の折、へらへらと笑いながら眺めて何も買わずに帰ると天に誓ったはずなのに、いつのまにかGame Journal8号だの『キャッスル・ファルケンシュタイン』だの抱えているのはどうしたわけか。まあ、GJ8号は百年戦争のゲームがつくなどという反則行為をしているのだからしかたがない。「〜血戦ジャンヌダルク〜」の副題を見て、買わずに通り過ぎることが出来るような奴とは、共にアザンクールの戦いを語る言葉を持たないね。

『キャッスル〜』は19世紀のヨーロッパを妖精が舞い、蒸気の怪物が闊歩するスチームパンクRPG。細かな遊びで雰囲気を盛り上げようという姿勢が気にいったので、ちょいと腰を据えて読む予定。

一昨日、車内放送に止められて行きそびれた池袋ジュンク堂へ。翻訳SFはひょっとしたらというのが1作あったくらい。SF度は、いっそ『キャッスル〜』の方が高いかも。

地下のまんが売り場は、なかなか凄いことになってますね。コミティアタイアップの同人誌棚が出来ていたり、そこかしこに試し読み用のコミック一部抜粋があったり、オリジナルの新刊案内チラシがあったり。がんばってるなあ。
狙われたとおりに夢路行の同人誌を買ってしまったあたりで箍が外れたんで、色々馬鹿買い。三部敬の『ほたる』は東京一ワニマガジンコミックスに強い店と見込んで探しに来たのだからともかくとして、『藤子・F・不二雄 SF短編PERFECT版』5巻なんてのを買ったのは空気に飲まれたとしか。勢いで「レミニ3003」2号まで買っちまいましたよ。この雑誌(というかアンソロジー)、画力が上滑りしている作品が多くて、評価してなかったはずなのに。草なぎ琢仁がいるからしかたないと諦めるか。

しかし、さすがにGAINAXの草なぎ琢仁CD-ROMは買わなかった。いまどきWin3.1&95対応といわれてもなあ。多分、動くとは思うんだけど。

で、なんでこんなものまで売っているのだろう。> ジュンク堂地下

帰宅すると腹が減りすぎて物が食えなくなっていたので、コンビニのモンブランと「甘栗むいちゃいました」で夕食。腹が痛み始める前に物を食い損ねたのは不覚。腹が痛み始める前は腹が減ってないというのがネックだ。

三部敬『ほたる』(ワニマガジンコミックス)。ホラー色の強いエロ作品集。この人の画風はエロよりエッチに向いているようで、これは実用的にも観賞用にもイマフタツ。どうも『菜々子さん的な日常』は彼の作品の中でも飛びぬけた出来だったようだ。一枚絵はエロっぽくても巧いのになあ。惜しい。

とまあ、近況をだらだら書いてる現在な訳ですが、部屋の中に鈴虫がいるように思えるのは気のせいか。

9月 6日
昼過ぎから渋谷イメージ・フォーラムで週刊カレル・ゼマンを観る。先週いっしょに映画を見にいった人に出会うのはお約束という事で。

「王様の耳はロバの耳」は、柔らかそうな材質の人形による、神話(民話)に題をとったコメディ。人形の動きも愛らしく、なかなか魅力的だったのだが、体力不足ゆえか中盤以降寝てしまったので落ちがわからない。解説本によるとやや捻ってあったみたいで。ちょいとくやしい。

「鳥の島の財宝」は、レリーフによる中東系教訓話。一攫千金に憧れた男が見つけた海賊の宝により、島全体が金持ちになるが、誰も働かなくなったので前より生活は辛くなって……。海賊の宝を見つけたという噂が一気に広まっていくあたりなど、ユーモラスでよく出来ているとは思うのだが、いかんせんたるい。これもまた、頭の方で寝てしまった。

「水玉の幻想」は、ガラス細工の人形を用いた幻想的な小品。ただただ画面が美しい。アニメーションとしての技巧も絶品で、輝きに満ちた水滴の中を踊り続ける人形の動きの滑らかさを見ていると、これがガラス製というのが信じられなくなる。どうやって撮ったのだろう。オブジェクト・アニメが好きなら一度は見ておくべき作品。まあ、超有名なんで見てるとは思いますが。

「ホンジークとマジェンカ」は、切り絵アニメによるラブ・ロマンス。手法といい、画風といい、愛が魔法に打ち勝つというテーマといい、「クラバート」とそっくり。クライマックスのトーナメントなどコメディ・パートは本当に楽しい。これで、もう2割短ければ、寝ることも無かったのに。そんなわけで、事前にチェコ・アニメのリズムに慣らしておかないと、たるいかも。

1stでしばし棚を眺めた後、STRさんと別れて元ユタ。参加者は堺三保、林哲矢、三村美衣、山本和人、SF人妻、高橋良平、小浜徹也、大森望、バラライカ宮崎、添野知生(FIAWOL-logより引用)。

僕の周囲での主な、あるいは主でない話題は、例によっての今月の新刊、『ほんとにあった怖い話3』の怖さ、フィニイ128の秘密の秘密、ジュンク堂地下の秘密、ファウストの真の秘密、三村美衣子をはじめとする偶然?の一致の秘密、王立科学博物館の秘密、三村美衣さんはただいまムーミン・ヴィネット収集中(協力求む)の秘密、食事制限中なのに牛鍋を食ってもいいのかの秘密、裏DVD製作機器の秘密、抜け毛が気になるなら飯を食えの秘密、『サウンド・トラック』の秘密、世間は狭いの秘密、ナルニアDVDの秘密、シリーズタイトルを思い出す勝負の秘密、本の中に入るなら赤毛のアンの秘密、最も誠実なSF作家と最も不誠実はSF作家の秘密、SFと会社の2サンプルがあれば流行中と判断する秘密、何はなくとも阪神タイガースの秘密、など。

三村説によれば、フィニイの各パラグラフには「14に行け」の一節が隠してあり、真の14ではピップが死んだことが告げられているのだそうな(註)。
註)このネタがわからない者は14へ行くこと。

「最も誠実」云々は、いくつシリーズを終わらせたか/終わってないシリーズがあるかによってSF作家の誠実度を判定するというもの。その場に居合わせた人の記憶ベースでは、誠実なSF作家の代表は朝松健と友成純一ということになった。なった。なったんだってば。

9月 7日
ふらふらと覗きに行ったCD屋で、見てはならないものを見てしまう。『チェコアニメ新世代 I』。ついでに『イジー・トルンカ作品集』の1まであったり。緊縮財政の折、大変苦しいところではあるが、隕石にでもあたったものと諦め購入することに。

購入するのはともかくとして、なぜ『ノーマン・マクラレン作品集』まで手元にあるかはわからない。

ま、しかし。今月の生活だけは大丈夫だ。カードで買ったんだから。

ってなわけで酒飲みながらブベニーチェク「三人のフーさん」。いやほんとに、心地良く首の飛ぶアニメだ。屈託のない差別といい、実に良い。こういう小気味だけの良いアニメを集めたDVDがでないかな。カートゥーン・ネットワークのカナダ・アニメとか。

酒を入れてから仕事をしようと思っていたはずなのに、思いのほかまわりが速く沈没。人生に張り合いというものが無いと、生産効率はとめどなく悪くなるね。

いつもと同じという気もする。

9月 8日
だから体だけは大事にしてくださいよ、ほんとに。

S-Fマガジン考課表更新しました。こちらの処理があまりに遅れたため、参加人数激減の8人。追加で増えることを無責任に期待中。

元ユタでもらった「歌会」のアニカラ・リストをながめていると、いろいろな発見があった。まさか「Bomb Dancing メガレンジャー」が入っているメイカーがあるとは。歌いたい。激しく歌いたい。パセラに入っているならいうことはないが、B-kara/neonだけだとしても甚だしく歌いたい。どうしよう。

9月 9日
齋藤日記より現代系オタの特徴
  1. 文学や哲学に詳しい。しかしエンターテイメント小説にも精通していて、ライトノベルも読む。
    × 文学はまだともかく(詳しかない)、哲学の知識は皆無に近い。娯楽小説でまがりなりにも精通してなどと言えるのはジャンルSFくらい(いや「精通」などというのはおこがましいが)、YAはSF界隈で話題になったもののうち自分の守備範囲と認めたものだけ。なんか狭い趣味だなあ。
  2. 哲学は現代思想がメイン。しかもフランス系のポストモダンとか。
    × 体系としての哲学には欠片も興味が無い。
  3. 山形浩生や東浩紀が好き。
    △ 山形浩生の本は3冊読んで、1冊半は面白かった。東浩紀はまともに読んだことがない。
  4. ブックマークに「カンタン系」や「人工事実」が入っている。個人ニュースサイトにも詳しいが、HOTWIREDやSLASHDOTが好き。
    × HOTWIREDや/.jは好きだが、他はあまり。ところでなぜ「個人ニュースサイトに詳しい」と「HOTWIREDやSLASHDOTが好き」が逆接でつながるのか。常識的には相反することなの?
  5. 漫画は、アフタヌーンとIKKIとコミックビーム。アニメは何故かSFアニメを好む。
    △ コミックスとして買うものはこの辺の収録作が多いが、雑誌自体は買ってない。雑誌としてならOursや、サンデー、チャンピオンの方が好きだ。SFアニメは好きだけど、「何故か」というよりは「当然の帰結として」。
  6. エロゲは主にエロゲ板では「〜厨」とつけられるものを好む(葉鍵月姫菅野など)。
    × エロゲって、大昔(MS-DOS時代)にやったきりだし。勉強のためにやらなきゃな、とか思うことはあるけど、「勉強のために」という時点でまったくダメだな。
  7. 映画といえば、マグノリア。
    × 観てない。
  8. 音楽は洋楽かクラシックを好む。
    × アニソン(特ソン)中心に邦楽がほとんど。というか聞いてないが正しいかも。
  9. コミケという言葉を難なく使う。
    ○ 使うのに難のある言葉なのか?通じる相手が限られるのは当然としてもさ。相手の所属コミュニティによって使い分ける必要があるのはどんな言葉でも同じで、「難なく」とかどうとかとは違うよなあ。
  10. 〜論とか書くのが趣味。
    × あまり興味がない。事実関係を明らかにするのは楽しいけど、それ以上は。
都合、よんてん。Fですか。最初から門前払いだろうと思ってたけど、予想通り。えーと。お呼びでなかったらしいので、安心してこっちでクロノアイズでも読んでよう。

島泰三『親指はなぜ太いのか』(中公新書)を購入。日々是魚を蹴るの9月2日で見たときから気になっていた本なのだが、たらたらしている間に向井君に先を越されてしまったので、これ以上遅れてはならじと急いで買ってきた。とりあえず最大の関心事である「初期人類の主食とは何か」を書店店頭でチェック。なるほど。どういう論旨で、この結論になるのか、読むのが楽しみだ。

#犯人をチェックしてからミステリを読むようなことをするなと非難の向きもあるか思うが、僕はふだんからそんなこと(犯人をチェックしてからミステリを読むこと)をしてしまうので問題なし。

B-karaは10月中旬にパセラのシステムに組み込まれる予定らしい。それは楽しみ。楽しみなのだが、今「Bomb Dancing メガレンジャー」を歌いたいという衝動の解決にはならないのだな。しかたがない、小声で歌ってよう。Bomb Bomb Dancing♪(めが!)

「ビーナスの目覚め」を古代地球の話と解釈してしまうと、ザトワンの出自の馬鹿馬鹿しさが気になるので、僕はその説を取ってません。 > 向井君
遠未来の地球人の子孫達の話ととらえ、「エレイン・モーガン「人類の起源論争―アクア説はなぜ異端なのか?」「女の由来―もう1つの人類進化論」に基づいて」の一文は、世界構築の参考にしたという意味に解釈。独立に進化した生物が交雑可能というのはどうにも気持ちが悪いんで。
平和な女性原理の社会のもとに「外」から邪悪な男性原理がやってくる話と読むと、古代地球としたほうが主張が強くなるわけだけど、政治性なんぞのために自然科学的整合性を犠牲にしてはいけないのだ。
#もちろん、面白さのためだったら自然科学的整合性を気にしないのもあり。

9月10日
腹痛、復活。ちょっと調子がよくなると薬を飲むのを忘れるから、いつまでたっても良くならないのだな。当事者には、腰を据えて根気良く治療にあたることを望みたい。望まれるのはわかってんだがなあ。

書店で那須雪絵『魔法使いの娘』なる本を見つける。那須雪絵の新刊かあ……。近作の出来についてはいろいろ聞いているので、手を伸ばすべきかどうか。10年前にも次第に趣味から外れてきていたし。しかし、なんとなく呼ばれているような気も……。

誰か、読んだ人がいたら、どんなもんか教えてくださいませんか?

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