過去の雑記 03年 9月

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9月21日
朝からの雨に敗北し、一日中部屋に籠もる。雨が降らなくても、籠もっていたという説もある。

ミステリーズ2号を鯨統一郎だけ。これは駄目だろう。ケルト関係の薀蓄に嘘が多すぎる。リアリティを積み上げるための薀蓄部分にこれだけ隙が多いというのは、嘘薀蓄物としては致命的。

まんがを中心に積読を大量に消費。何ヶ月単位で積んであったものが多い中、比較的新しいのは金田一蓮十郎『チキンパーティー』1巻(秋田書店プリンセスコミックス)とか。一人暮らしの少女の下に、何事もポジティヴシンキングのニワトリのきぐるみ(にしか見えないニワトリ)がやってくる。1話完結の人情コメディ。基本路線は人情物なのに、辛辣な突っ込みセリフが飛び交うあたりは出世作ハレグゥと同型、なのかな?(ハレグゥを読んでないので良く知らない)表紙に、前回の落ちにあたる四コマが載るという形式は面白いけど、連載で見ないと効果が薄いかも。

あとは、ぱらぱらとしか読んでいなかったゆうきまさみ『鉄腕バーディー』1,2巻(小学館YSコミックス)をちゃんと読んだり。1巻がギーガー篇、2巻がバチルス篇。3巻がウンディーネ篇、4巻がOVAの氷川篇になるのかな。丁寧に読むと、丹念に伏線が張ってあるのがわかるのだが、それは週刊青年誌連載の速度じゃないという気もする。雑誌でこれを読んでいたとしたら、楽しめる自信は無い。単行本で丁寧に読む分には面白いが、リライトゆえに評価しづらいところも。早く、以前語った部分が終わらないものか。とりあえず、早宮のキャラデザは、前のバージョンのほうが良いな。

以前から、近所のおもちゃ屋にあるファミコンのガシャが気になっている。ファミコンや、ツイン・ファミコンや、ファミリー・ベーシックや、ディスク・システムのミニチュア・モデルが入ったガシャ。いったい、どこをどうすると、そんなものが売れるという幻想が発生するのだろう。

売れてたりして。

9月22日
「へこんだときにギューってしてもらえる」相手も欲しいが、それ以上に幸せを分かち合える相手が欲しいと思う今日この頃。面白かったことなら話す相手はそれなりにいるけど、嬉しかったことを話す相手というのはなかなかなあ。

考え始めると悲しくなるから、やめよう。

訥ツ庵 9月21日より、現代の珍名。世の中、馬鹿ばっかりだ。どれもこれも凄まじいが、やはり情報元も突っ込んでいるピカチュウが最凶だろう。字がまたすごいし。光宙って。ガンダムの最終話かよ。

縁あって、「なるたる」第12話「わたしの目は被害者の目、わたしの手は加害者の手」を観る。観るのは第1話以来なのだが、ここまで来ていたとは。あんなほのぼのとしたOPではじめておいて、よくもまあこんな陰惨な話を描けたもんだ。小学生が、女性器に試験管を突っ込むなんていじめをしちゃいけませんよ。原作通りとは言え、本当にやるとは思わなかった。これで画がもう少しなんとかなっていたら、かなりの作品だったのでは。

今、心の底から眠いのだが、ゴミを出すまでは眠れないのだった。ああ、あと2時間か。

9月23日
ゴミ捨てが終わってから眠ったら、昼だった。昔は、こんな時間に床に着いたら平気で夜まで眠っていたのに。年を取るのは意外と便利だ。

だらだらと本棚の整理。段ボール一箱分の本を整理し、一束の資料を捨てたというのに、客観的にはまったく変わってないというのは、どんな魔法が使われたのか。きっと、あれだ。本棚というのは、鏡の国のように全力で走らないとその場に留まれないのだ。不思議なことだよ。

躊躇しているうちに好意的な書評を、それも僕が最も望んでいた方面で好意的な評価を読んだので買ってきました、那須雪絵『魔法使いの娘』1巻(新書館WINGS COMICS)。父親である陰陽師の非道な所業にもめげず、健気に生きる女子高生の妖怪退治物。やはり那須雪絵は化物まんがに限るね。ギャグのテンポも、アクションの魅せ方も年季の入った味を見せてるし、なによりキャラの活きが違う。那須雪絵の描く凛とした娘さんは実に良い。画力で魅せるタイプでもないし、話し作りが上手いという感じでもないんだけど、キャラが走っているときの力は、他に替えがたいものがある。これなら、この先も期待できそうだ。今回収録の中では第四話がお気に入り。この心の毅さこそ、那須雪絵。『フラワー・デストロイヤー』以来のファンにも安心してお薦めできます。

ついでに買ってきたものをいくつか。久正人『グレイトフル・デッド』(講談社 ZKC)は清朝末期の上海を舞台とする霊幻道士物。夜は娼婦、深夜は霊幻道士として、魔都上海を彷徨う死者を切るコリンの活躍を描く。わりときちんとしたオカルト描写や、独特の影の使い方でかなり面白かったのだが、残念ながら1巻で終わり。これを終わらせるくらいなら他に切るべきものがいくらでもあると思うんだが。> マガジンZ

神崎将臣『ブルーバック』2巻(講談社 アッパーズKC)。謎の鞄をめぐるノンストップアクション。1巻に優るとも劣らぬ見せ場の連続。これぞ、清く正しい青年誌連載のあり方だ。コミックスよりも雑誌で毎週追うほうが楽しいかも。

9月24日
寒い。寒すぎる。起きたら鼻風邪風味だったので、思わず会社休もうかと思っちまいましたよ。見損ねてたゼマンを観にいくついでに。いや、休みも残り少ないんで、ちゃんと出社しましたが。

仕事で、久々にCを使う。たかだか数十ステップ程度の極小プログラムだから楽勝、かと思いきや、関数どころか制御構文まですっからかんに忘れていたので、えらい苦労をするはめに。「ループ構文の中で、後を省略して次の回に進むのってなんだっけ?」とかで悩んでいるようじゃ、さくさくプログラムを書くなんてのは夢のまた夢ですな。

今月のエンゲル係数は26らしい。やあ、生活にゆとりのある中流家庭っすね。って、収入 < 支出なのに、ゆとりなんざあるものか。

もう少し、本とDVDを買うのを控えよう……。

9月25日
こう毎日、広島戦がつづくといいかげん飽きてきますね。いや、試合やっている時間にはうちにいないんで、観ちゃいないんだけど。

テッド・チャン『あなたの人生の物語』(ハヤカワ文庫SF)をいまさら読了した話は来月末に別の場所で。この表紙、大好きなんだけど、帯を外すととたんに間抜けになるのが難点。惜しい。実に惜しい。

とりあえず、星雲賞候補に推すのはどれかを決めておくべきだろう。> イーガンの4年連続を阻止したい人々

9月26日
定時前にあがって、イメージフォーラムのカレル・ゼマン・レトロスペクティヴの最終。

「カレル・ゼマンと子供たち」は、ゼマンの作品解説&メイキング。ゼマンという人が、本当にトリックを愛していたことがよくわかる。演出のテンポも良く、今日見たプログラムでは一番よくまとまっていた。メイキングが一番よくまとまっているというのはなんだかなあ。

「彗星に乗って」はヴェルヌ原作。革命の機運高まるアルジェリア。駐留フランス軍、現地のイスラム兵、漁夫の利を狙うスペイン船。それぞれの思惑は、地球をかすめた彗星とともに空の彼方に吹き飛ばされる。図らずも、宇宙の中で呉越同舟となった各勢力の思惑は。植民地支配に対する痛烈な皮肉や、ユーモラスな個々の場面は良いのだが、全体のまとまりがあまりにも悪い。シーンのつなぎも唐突だし、なによりラストがあまりにも、あれ。退屈はしないが、だからといって高評価もしづらい。

「前世紀探検」。三葉虫の化石を拾った少年の「三葉虫が見たい」という言葉に応えるため、少年たちは過去の世界につながる時の川を下る旅に出る。川を下るごとに、時代を遡るという設定は秀逸。これでもう少し物語に起伏があれば素晴らしかったのだが。牧歌的な探検の楽しさなど見るべきところは多いだけに、全体としてのあと一歩感がもったいない。

そんなわけチェコ祭りはやっと完走。ティールロヴァー、トルンカ、ゼマンあわせて15プログラムを2ヶ月でというのは、やはり大変だった。もう少し時期をずらしてくれても。三者三様の面白さがあったが、僕が一番好きなのはゼマン。手法は何を使ってもいいから、観客を楽しませようという意思が伝わってくるのが嬉しい。技術や予算の不足で意志が上滑りしている作品もあるが、上手く開き直った作品だとすべてが良いほうに回転している。「狂気のクロニクル」の皮肉な視点、「盗まれた飛行船」に溢れる少年の冒険心は必見だろう。人形アニメという技法への執着が見えるトルンカの作品もまた、好きなものではある。超絶技巧(というよりは単に予算かも)に支えられた傑作、「真夏の夜の夢」を見ずにチェコ・アニメを語ることは許されならんだろう。暖かな視線と卓越した語りの巧さを持つティールロヴァーも、良いとは思うのだが、僕の趣味とはいささか異なるところにあった。ひとつ結んだだけのハンカチを、表情豊かに動かした「結んだハンカチ」など、すばらしい技術だとは思うのだけどね。

久しぶりに映画を観る楽しさを満喫したところに、かっこよい予告を見せられたので、つい「中平康レトロスペクティヴ」の5回券を買ってしまったというのはまだ良いとしよう。しかし、ついふらふらと立ち寄ったTSUTAYAでオブジェクト・アニメーションのDVDを5枚も買うというのは申し開きの出来ることではないような。毎月、収入+2〜3万の支出があるという生活はいかがなものか。いくら、ボーナスの範囲内といっても。

それはそれとして買ってきたDVDを見る。「水玉の幻想」はやはりすばらしいなあ。

9月27日
夕方、ユーロスペースで中平康レトロスペクティヴ「砂の上の植物群」。ここ1月、週末の半分はイメージフォーラムかユーロスペースにいるような。映画は吉行淳之介原作の文芸エロティカ。この手の作品の感想を簡単に言語化できるほど、映画を見ていないので評価は保留。面白いとは思った。とりあえず、稲野和子の存在自体がエロ過ぎます。白い肌に残る指の形の痣とか。休みなく動く唇とか。

その後、先行していた某ML有志と合流し、東池袋の南インド料理屋「A Raj」でカレーを食う。南インド料理とはなんぞやというのが、最大の疑問だったのだが、頼んだメニューが普通すぎたか、よくわからなかった。次回は、南インドに特徴的な料理とは何かを予習した上で勝負に臨みたい。勝負なのか。
あ、料理は美味かったです。目の前で、マサラ・チャイの入れ方を実演してくれるのも楽しい。池袋東南側によく行く人にはお薦め。

トマス・ウォートン『サラマンダー ―無限の書―』(早川書房)をやっと読み終える。副題どおり、無限の書を巡る冒険譚。前半の、スロヴァキアに建つ機械仕掛けの城のエピソードまでは幻想的で面白かったのだが、後半世界をめぐりはじめてからは砕け気味。謎を仄めかしただけで終わってしまったような。肝である「無限の書」の設定も、ボルヘスやアンデルソン=インベルに比べうるものではない。前半で高まった期待からすると、かなり残念な出来。オストロフ伯爵の城だけは、訪れる価値があると思うが。

平野耕太『進め!!聖学電脳研究部』(角川書店 Kadokawa Comics A Extra)。新声社から出たものの再刊。天才ゲーマーがゲーム部に入って大活躍というまんが、が編集部の期待したものなのだろうが、平野耕太なのでそうはならない。先に進むに従って、いい感じに気の抜けた絵や、見事にやる気のない展開、ヌルゲーマーに対するあからさまな罵倒と、地がすべて出てきてしまい、あえなく打ち切り。らしすぎます。出てくるゲームが中途半端に古いのがネックかな。< 作品の責任じゃありません

9月28日
読み終えた人たちが楽しそうに語り合うのが羨ましかったので読了しました、紺野あきちか『フィニィ128のひみつ』(早川書房 ハヤカワSFシリーズJコレクション)。叔父の残した謎の言葉から世界をまたにかけたライブRPGに巻き込まれる主人公。ふつうなら、フィクションが世界を侵蝕する話にでも持っていきそうなものだが、そう成っていない。あるいは、そう成れていない。感動的なほどにカタルシスの無いラストなど、まったくもって噂通りの作品。「なんで俺は噂の確認だけのために無駄な時間を使っちまったんだろう」という後悔も含めて、噂通り。

今日もユーロスペースに詣でて、中平康レトロスペクティヴ「月曜日のユカ」。加賀まりこ演じるユカの可愛さに圧倒される。それはもうしぐさの一つ一つ、セリフの一つ一つが蠱惑的。必見。

帰りに寄ったBook 1stでいささか面妖なものを見る。このフィギュア付きの「美術手帖」のようなものは、「美術手帖」なのだろうか。フィギュアを芸術として扱うことに対して、特に思うところは無いが、雑誌の付録につけるというのはなんというか、この、「「美術手帖」必死だな」という感じが強い。もう少し節度というものがあっても良くないか。

夕食はハーブチーズ牛丼。『ジオブリーダーズ』で見て以来、一度は食べてみようと思っていたのだが、行動範囲内に無く涙を飲んでいた代物。なるほど、こういう味のする食い物だったのか。名前から想像していたほどくどくは無い。むしろ美味いかも。紅の流れ星の舌は、別に変ではなかったのだな。< 失礼な想定をしていた奴

帰りがけに、勢いで買ってしまったホラー・ドラコニア少女小説集成【壱】、サド『ジェローム神父』(平凡社)を読む。森で出会った少女を犯して殺した男が、シチリアで神父となり、さらに放蕩の限りを尽くす。……なんて話よりは、表紙、挿画として用いられている会田誠の絵のほうがメインかも。真面目に退廃しようとする文章と、あっけらかんと退廃的な絵が見事に噛みあってなくて、なんだか楽しい。

9月29日
アジア選手権(野球アテネ五輪予選)の日本代表が発表された。

投手:安藤(T)、石井(S)、岩瀬(D)、上原(G)、木佐貫(G)、黒田(C)、和田(H)、松坂(L)、小林(M)
捕手:谷繁(D)、城島(H)
内野:宮本(S)、井端(D)、二岡(G)、松井(L)、小笠原(F)
外野:赤星(T)、福留(D)、高橋由(G)、木村拓(C)、和田(L)、谷(BW)

「内野の層が薄すぎないか、っつーかセカンドとサードは誰だよ」という疑問はあるが、大筋は納得。阪神、ダイエーの選手が少ないのは、日本シリーズとの絡みで仕方ないのだろう。球団別に見ると読売、中日の選手が多めだが、当然の名前ばかりなので違和感はない。まあ、宮本(S)と井端(D)はどちらか一人で良いようにも思うが。
ほぼ全チームから選出されている中、誰も選ばれなかったのが横浜と近鉄。セントラルの最下位街道を驀進し、外国人選手以外にタイトルを争った選手がいない横浜は当然として、パシフィック3位、終盤まで優勝争いに絡んだ近鉄から選ばれる選手がいないというのは意外だ。きっと誰かを見落としているに違いない。とりあえず、今期成績から言えば……、えーと、誰がいるんだ?

小腹が空いたので、軟らかめに茹でたスパゲッティにめんつゆをかけて食いました。これはこれで結構いける。

9月30日
日本代表。近鉄は中村紀洋、阪神は今岡、矢野、井川、ダイエーは井口、松中、篠原あたりに声がかかり、それぞれ怪我などを理由に断っていたとのこと。まあ、それは断るのもしかたなかろう。中村紀洋は今シーズンまともに働いてないし。リーグ優勝チームの選手は日本シリーズ直後で、そんな状況じゃないだろうし。2選手ずつでも参加することの方が凄い。まあ、それはそれとして。て、ことは、声もかからなかったのはやはり横浜だけということですね。鈴木尚、金城はそれなりに働いてるんだけど、今のメンバーに追加するほどじゃないからなあ。

雷句誠『雷句誠作品集 玄米ブレード』(小学館 少年サンデーコミックス)。人気が出てきた時のお決まり、初期作品集。高校生時代の短篇はさすがにあれだが、他はかなりの出来。「ガッシュの原点」ではなく単独の作品として評価するに足る短篇が並ぶ。中でも、「哀愁戦士 ヒーローババーン」の湛える哀しいおかしさは特筆物。力を持たない者が正しくあろうとすることの哀しさ、滑稽さ、そして崇高さを堪能できる。ああ、これはガッシュの面白さの精髄なのかも。
それぞれの漫画を描いていた時の回想コラムなんてのも載っているのだが、中で「玄米ブレード」のエピソードが面白かった。事故で入院していた時に隣のベッドの子と交わした会話なのだが。ガッシュの病院のエピソードって、一部実話だったのか。
と、まあいろいろと楽しかったが、一番良かったのは、カバー折り返しの四コマかも。この手の感情を描くのは本当に巧い。

日本橋ヨヲコ『G戦場ヘヴンズドア』3巻(小学館 IKKIコミックス)。長谷川と堺田の戦いもついに完結。すべての思いが落ち着くべきところに落ち着いたラストには、ため息をもらすしかない。巻末に引用されたヤプーズの歌詞まで含め、実に熱く狂おしく強い作品だった。良いです。

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