過去の雑記 03年11月

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11月11日
手短ですが。

ただでさえ左腕が足りないというのに竹下を金銭で放出してどうするつもりなんだ?> 横浜

11月12日
資料としていまさら「マトリックス」を観る。どこかで(主にマトリックスのパロディとして)観たような画ばかりだったので新鮮味には欠けた。話は、まあ、いまさら何か言っても。これで無限後退の仮想世界じゃなかったらちゃぶ台ひっくり返すよなあ、という、どうにもならん「現実」世界の正体がどうなるか楽しみ。

11月13日
資料にはならないと知りつつ「マトリックス・リローデッド」を観る。で、これをどうしろと。この作品を観る限りでは、レボリューションズ勝ち組が存在したというのが信じられない。

11月14日
久しぶりに、ネットニュースで「スーパーフリー」という語を見る。その瞬間から「スーパーフリーはちょーほーぶーいーん」というフレーズが頭の中で回りだし止らなくなる。なんたって、「ラリホー、ラリホー」なのだ。眠らせてしまうのである。これで連想するなといわれても。思わず替え歌を作りそうになるが、こんなベタなネタ、誰かやっているに決まっているので、ちょいと「スーパーフリー&ラリホー」で検索。やはり既出でした。12件と意外に少ないのは、思いついた人のほとんどが書くのを躊躇したからだろう。ベタ過ぎだもんなあ。

11月15日
阿佐ヶ谷でアニメ・フェスのパスポートを買って、銀座でスロヴァキア映画を観るはずだったのだが、ついだらだらしてしまいチャンスを失う。おかしいなあ、こんなはずでは。

だらだらしながら溜めていた漫画を消化。

能田達規『ORANGE』11巻(秋田書店・少年チャンピオンコミックス)。涙雨降る中の最下位長崎テンボス戦と最終前の大一番、4位アヴァランチ仙台戦。ゲームのテンションには一切緩むところがないのだが、先のさいたまレオーネ戦があまりにも盛り上がったため、やや不足を感じるところもある。刺激に慣れるというのは恐いことだよ。

雷句誠『金色のガッシュ!!』13巻(小学館・少年サンデーコミックス)。石板の魔物篇から、対ビクトリームとウマゴン覚醒。より強い敵を追加して塔を昇るというジャンプ・システムの展開には引き気味だったのだが、いざ読んでみると「みくびってました」と謝るしかない充実度だった。あいかわらずギャグと熱血のバランスが絶妙。特に、ギャグモードで緊迫感のある戦いを演出したビクトリーム戦には脱帽する他ない。

平野耕太『ヘルシング』6巻(少年画報社・ヤングキングコミックス)。これはもう、人間達のかっこよさに尽きる。跳梁する化物どもを震えながらもまっすぐ見つめて目をそらさない彼らの心意気。あまりに彼らがすばらしいんで、主人公のことなど忘れてしまうのが難点だ。

長谷川哲也『ナポレオン ―獅子の時代―』1巻(少年画報社・ヤングキングコミックス)。北斗の拳な絵柄のナポレオン物。いくらなんでもキャラが濃すぎるだろう。

夕方から元ユタ。参加者は大森望、小浜徹也、堺三保、志村弘之、添野知生、タカアキラ ウ、高橋良平、林、三村美衣、山岸真(あいうえお順、敬称略)。仕事の打ち合わせに来ていた方は別勘定という方向で。僕の周囲での主な話題は、京フェスとか、ファンタとか、今年のベストとか、乙女軍曹の元ネタとの一致度とか、体重とか、体脂肪率とか、不健康とか、みーくるSFとか。

終了後、メンバーをがらりと変えて、パセラでカラオケ。B-Karaの無茶なラインナップを堪能した。「チチをもげ!」の出来には自分でも納得できないので練習を積んで再挑戦したい。

11月16日
コミティアに行ってみようという強い意思は、断固たる睡眠欲の前に敢え無く敗北したのだった。そもそも目が覚めたら午後2時では問題外ですな。

やるべきことがなくなったので呆然としていたら再び寝てしまったらしく、気づくと19時過ぎ。休みが一日台無し。恐るべし、徹夜カラオケ。

まったく何もしないでいるのはさすがに悲しいので、借りてきていたカレル・ゼマン「悪魔の発明」を観る。ごぞんじの通りのヴェルヌ原作。ストーリーがちゃんとまとまっていてゼマンの長篇ではないかのようだった。銅版画そのままの背景の中で人物が動くという画面(えづら)は興味深いし、足漕ぎ飛行船などのガジェットも楽しいが、物語展開が窮屈で、そのあたり傑作「盗まれた飛行船」には及ばない。それでも、「盗まれた飛行船」「狂気のクロニクル」と並び、「何はさておき見ておくべきゼマン」ではあります。

この後、さらに寝てしまい起きてから溜まった漫画を一気に読む。

アンソロジー『Hのある風景II』(光彩書房・光彩コミックス)。Iは未見。ほりほねさいぞう、砂、町田ひらく、沙村広明といった参加メンバーに惹かれて買ってみた。けどもなあ。出来のばらつきが激しく、値段に見合ったものかは大いに疑問。同価格でも、同人誌なら許してしまうように思うが、商業出版でこれはちょっと。巻末に売れないという愚痴があるが、それも当然としか。

ユキムラ『エウクロス物語』1巻(ビブロス・ゼロコミックス)。ファンタジー世界を舞台とするボーイズ・ラブ物。前半は純粋に良いと思ったが、本番描写のある後ろ2作はきつかった。どれも切ない恋心を描いているのは同じだし、想いのあり方に貴賎はないと頭じゃわかっているが、生理的な忌避感はいかんともしがたい。残念ながら僕には向かなかったが、その辺に抵抗がない人にはお薦めできそう。

桜場コハル『今日の5の2』(講談社・ヤンマガKC)。小学生の日常が少しエッチなシチュエーションに転じるショートコメディ。絵柄、ネタともに守備範囲外。

上田宏『武神戯曲』1巻(メディアワークス・電撃コミックス)。京劇をモチーフにした格闘or伝奇漫画なのかと思ったら、本当に京劇物だった。スポコンとしては基本に忠実なので、あとは作者がどこまで入り込めるかだろう。ふられたネタを一生懸命消化してますという正直な告白が吉と出るか凶と出るか。

夢路行『あの山越えて』3巻(秋田書店・ALCセレクション)。農家の嫁漫画三巻目。しっかりと地に足のついた幸せの描写が心地良い。実家の家族が訪ねてくる15話が特に良かった。

11月17日
昨日あれだけ寝たはずなのに、目が覚めてみると始業時間を大きく回り絶対に間に合わない時刻。おかしい。1日を犠牲にして体力を回復したはずなのに。

遅れてしまったものは仕方がないので、出社前に阿佐ヶ谷に寄り、先日買い損ねたアニメ・フェスティヴァルのチケットを買……、おうとしたら「それは前売り券なのでもう買えません」という非情の言葉が。そういえば、そんな話もあったような。となると、あれですか。土曜日にだらだらし過ぎたおかげでチケット代が、8000円から1200円×14の16800円に急上昇ですか。急な出費もあったというのに。このところの宇宙の天気のせいで賞与もどうなるかわからないというのに。なぜ僕ばかりこんな目に。< 主に自業自得

冷静になってみると、当日5回券(4500円)×3なら13500円なので、ややダメージが抑えられるのだな。それなら、なんとか。

てなわけで、明後日の水曜日から10プログラム以上鑑賞に向けた戦いがはじまるのだった。戦友随時募集中。

チケットを買い損ねた自分のうかつさを呪いつつ定時であがって、一部で話題の鎧の人を見るために池袋ジュンク堂地下へ。鎧の人は噂どおりのでかさで迫力抜群。「金属製とは言わんがパーツ毎に切り出してくれれば」とか「革パーツは別つくりで(*)」とか「目の処理をもうちょっと」などという感想もわいたが、これは明らかに望みすぎ。店頭フェアのディスプレイとしては圧倒的な衝撃力がありました。このディスプレイから原画展につながる流れは池袋ジュンク堂の「ありあまるスペース」という武器を最大限に活かした、よい企画だと思ったことです。近場の人は一見の価値ありだ。
*:ポシェットは別つくりで中身まで入っていた。小物の処理はかなり良い。

企画といえば。もう終わっていると思うが、渋谷Book 1stの「秋のハヤカワ文庫フェア」も良かった。ブックレットで取り上げられていたタイアップCDがフェア棚で常時流れているという。棚周辺のトータル・イメージという点では過去に見た文庫フェアでも最高の部類。売上に貢献したかどうかは知らないけど。

帰宅後に溜まっていたビデオを消化。

「TRICK 3」4話。解決すべき謎が多すぎる上に、その解法に統一感がないのでごちゃごちゃしているのが難。繰り返しギャグの使い方は完璧なので、ドラマとしては、というかTRICKとしては安心して観ることが出来た。第一エピソードに比べれば調子が上向いていると言える。

「プラネテス」の、えーと、たぶん第6話。本当にテレビ版パトレイバーのようになってきた。話そのものではなく、バリエーションのあり方が。タナベさえいらんことを言い出さなければ、まったりと楽しめそう。

「ふたつのスピカ」の第二話だと思う。話も画も古いけど、それは仕様だからしかたない。古いなりの味が出ていて良いのではないか。反則気味のEDは当然として、OPもなんだか気にいってきたことである。

11月18日
牧野修『乙女軍曹ピュセル・アン・フラジャーイル』(ソノラマ文庫)読了。元ネタに気づかない人もいたので、隠してあるのかと思ったら丸出しだった。「輝王と呼ばれる人型擬人種〈慕頭(ぼず)〉」をスルーできたとしても、主人公のお供の犬と鳥を見過ごしたとしても、106ページから108ページの流れはさすがに無視できない。元番組を観てなくても、主題歌を聞いたことがあればわかるというのは親切すぎでは。いや、ソノラマの主要読者であろう10代〜20代前半はわからないかもだけど。

と思ったら本当にわからないらしいのだな。今日時点では、元ネタ名+乙女軍曹でgoogle検索に引っ掛かるのが2chの牧野スレだけという驚きの事実。〈物語域〉シリーズなんだからアニメ/まんがのパロディなのはわかってるのに。まあ、しかし、検索結果を見るに元ネタ云々は気にせずとも受け入れられているようなので良かったことである。

ところで。以下、元ネタに気づいた人向け同色フォント。

ピュセル(アン・フラジャーイル→あん・華奢(仏語)→きゃしゃ・あん→キャシャーン;この言い換えは気づかなかった、っつーか気づくかこんなもん)のお供のうち、儕輩号がフレンダー(儕輩は仲間(=フレンド)の意。フレンダーは飛行形態、車両形態などに変形する)、告鳥がスワニー(スワニーはキャシャーンにアンドロ軍団の内情を“告げる”ロボット鳥。スワニーにはキャシャーンの母、みどり(→グリーン→グリン)の心が隠されている)、蜜月が上月ルナ(そのまんま)はいいとして、光輝はだれなのか。元の主人、ブライト・タロ・イースタン博士同様、東光太郎博士(光・太郎・東←ブライト・タロ・イースタン)だと考えて良いのかな。

11月19日
朝からラピュタ阿佐ヶ谷に籠もって第4回 ラピュタ アニメーション フェスティバルを一気に鑑賞。今日観たのはA,B,G,Nの4プログラム。

ピーター・フォルデス「飢餓」(線画アニメーションに見えたがコンピュータを使っていたらしい。飢えに憑かれひたすら喰らう男。風刺色強め。描線が壊れて次の物に切り替わっていくのはそれなりに面白い)、プリート・パルン「草上の朝食」(エストニアのアニメ。マネの同題絵画に描かれた人物、それぞれの背後にあるエピソード。共産圏社会の不条理を描く。シュールに過ぎて意味を取り損ねるシーンも多々あった。かなりの知的緊張を要求される)、たむらしげる「クジラの跳躍」(氏のまんが/イラストそのままの幻想風景)が収獲。たま風の歌をバックにおかっぱの少女が踊るミュージック・クリップ、近藤聡乃「電車かもしれない」もなかなか。

「白蛇伝」は良く動いていたが、そこまで。あるとしたら歴史的価値だけですね。今日観た中でのお薦めはBプログラム。「ある一日のはじまり」「頭山」「草上の朝食」「くもとちゅうりっぷ」「結んだハンカチ」はどれも観ておいて損がない。

帰りに池袋ジュンク堂でまんがを一袋。鎧の人を見たお代ということで。

買ってきたのは追っていたSFまんがの最終巻たち。

外薗昌也『琉伽といた夏』4巻(集英社ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)。ループするのだろうなと思っていた構造が、きれいにループが閉じて終了。手堅くまとまった。使わなかった恋愛シュミレーション用シナリオをもとにコインを振ってストーリーを決めたというのが韜晦か、事実か。ちょっと気になる。

矢作俊彦・落合尚之『鉄人』4巻(小学館サンデーGXコミックス)。終盤駆け足かと思ったら、きちんとまとまって終わっていた。ネタふりの壮大さに比べて、えらく小さくまとまってしまったように見えたが、こういう狙いだったのか。上手いとは思うが、もったいなくもある。

小野敏洋『ネコの王』5巻。こちらは本当に駆け足。それでも、修の物語にきちんと決着をつけているのは好感できる。肌色度の高い能天気まんがのように見せかけて(いや、事実そうなんだが)、重い話を逃げずに書き上げる小野敏洋の姿勢は実に正しい。そこに、この脱力落ちをつけてしまう力の抜け具合も含めて。うむ、正しい。

11月20日
中井拓志『アリス Alice in the right hemisphere』(角川ホラー文庫)読了。脳と世界認識を扱うパニックSF。人物描写がやや弱い、メインのネタに説得力を感じないなど欠点も多いが、パニックを盛り上げる技術に確かさでまったく気にならない。パニックの本質が、「感染する世界観」というのも正しく日本SFで好ましい。日本SFの伝統に忠実な佳作。

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