過去の雑記 03年11月

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11月21日
今週のタモリ倶楽部はミタカ・シーこと海上技術安全研究所の見学ツアー。全周から波を起こして格子状の波面を作る装置など、面白そうな装置が目白押し。来年4月と7月に予定されているという一般公開が大変気になる。ほんとにデートコースに使えるってこれ。< それはどうか

番組中、案内役の人がいかにもな理系ギャグ(「飲みすぎで胃にエロージョンが起きちゃうよ」みたいな奴)を飛ばしていたのが微笑ましかった。それはふつう退かれる。

ドミンゴ自由契約ってのはどういうことだ。横浜は、今年の勝ち頭を解雇して、どうやって来期のローテを組み立てるつもりなのか。なんかもう、あまりのことに泣くことも出来ません。

晩飯はウォトカとからあげ。40過ぎくらいである日突然ポックリ逝くというのが目標なのだが、その目標を達成しかつ体の不調には悩まされないという難題を達成するためにはどうしたら良いか模索中。基本は塩だろうと思うが、油と酒をどう配置するかだよなあ。

11月22日
一日本を読む。

読み終えたのは『異国伝』『神は沈黙せず』『紙葉の家』は読んでも読んでも終わらない。

佐藤哲也『異国伝』(河出書房新社)。「あ」から「ん」まで、あいうえお順に記述される小さな国を舞台としたショートショート。著名な映画そのままのエピソードも含むなど出来不出来の波は激しいが、そもそもこんなコンセプトで走りきったという暴挙をまずは賞賛したい。

山本弘『神は沈黙せず』(角川書店)。超常現象に合理的な説明をつける豪腕SF。小説としてのバランスを欠いても、超常現象語りを止められない著者の愛が光っている。これだけの愛を見せつけられては、キャラが立っていないだの、暴走したまま帰ってこないだの、ネーミング・センスが恥かしいだのは些細なことだろう。熱量だけで存在価値を認めさせる力を持った力作。

ひとりで本を読み続けるのも寂しくなったので、読書会明けの人々と連絡を取り、有志と池袋で飲む。楽しかった。

いつのまにか22時まで営業となっていた芳林堂で『エマ』3巻、『エマ ヴィクトリアン・ガイド』『クロノアイズ・グランサー』3巻を購入。

長谷川裕一『クロノアイズ・グランサー』(講談社・ZKC)は完結。まだまだ話が十分に膨らまないうちの完結で悲しい。長谷川漫画は膨らむだけ膨らましてなんぼなのに。10巻、20巻と続いていればどれだけ壮大な物語になったことだろう。惜しい。実に惜しい。

そんなこんなで。ここ数日で追っていたSF漫画が一気に完結してしまった。もう読めない悲しさに加え、琉伽夏を除いて天寿を全うしたという印象が無いことが悲しさを一層加速する。『鉄人』は、実際には予定通りだったりするのだろうが、冒頭からの期待はこんなものではなかったのだよなあ。まあ、終わってしまったものはしかたがない。新たに始まる作品が、すばらしいものであることを祈ろう。

11月23日
一日本を読む。

隙を突いて『エマ』もパラパラと。森薫が女性だと知って驚いた。いやサイン会もふつうにやってるし、知ってた人からすれば何をいまさらという話だと思うが。

『ヴィクトリアン・ガイド』のほうは、短篇1本に竹本泉との対談付き。それも嬉しいが、それ以上に本編の充実が嬉しい。「クトゥルフ・バイ・ガスライト」をやろうとしている人は必読。

ストレス解消のため、ダーツ・ボードを買ってみる。しかし、いざ部屋を見渡してみると、公式規定を満たしうる設置場所がないという屈辱が。高さ(板の中央が床面から173cm)を諦めるか、距離(板から237cm離れて投げる)を諦めるか。

「ウルトラマン・クロニクル」を買ってみる。マグマライザーか、ウルトラホーク1号か、ジェットビートルが欲しかったのに出たのはポインター。こんな地面しか走れねえような機械、いるもんか。

平谷美樹『ノルンの永い夢』(早川書房・ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)読了。時間が錯綜してメタ時間がどうたらこうたら。壮大なイメージはいいから、時間線を整理して出直してこい。

マーク・Z・ダニエレブスキー『紙葉の家』(ソニー・マガジンズ)読了。すばらしい。タイポグラフィだの、メタ・フィクショナルな仕掛けだのはどうでも良く。家族の物語としてすばらしかった。まさか、純粋な感動があるなんて思ってなかったので、不意打ちをくらった気分。良かった。

11月24日
一日本を読んでいる途中。行かなきゃいけない映画もいっぱいあるってーのに、はかが行かない。

ダーツは押入れの奥に設置してみた。高さが足りないのが問題、……と思ったら、弾道が制限されることのほうが問題だったり。いや、それが問題になるような弓なりの矢を投げてちゃあかんのですが。

西崎憲『世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ』(新潮社)読了。女性作家の現在を軸に広がる複数のエピソードが断片的に語られていく。どういう趣向かはわかったと思うのだが、全体としてちゃんと読めたという自信が持てない。55章はちゃんと解釈できるのか。できそうな気はするのだよなあ。だれか解釈してくれる人との読書会希望。

SFM12月号の短篇を完結する分だけ読む。

プリースト「ディスチャージ」はさすがの巧さ。ドリーム・アーキペラゴ物の一篇。視覚には原色の塗料を塗った物としか映らないが、触れてみると鑑賞者の感情を浮き上がらせるという触発主義絵画がキー・ガジェット。主人公の感じる性幻想の妖しき美しさが魅力。

スターリング「アウダゴストの正餐」は11世紀西アフリカの都市国家が舞台。この舞台設定だけで勝ったも同然。ただ、この舞台で、しかも作中人物の言葉として「ハンセン氏病」という語が出てきたのは引っ掛かった。ハンセン氏は生まれてすらいないだろう。もちろん、すべての語は翻訳されている(原文の段階で、現地語から英語に翻訳されていると解釈できる)のだから、現代で通用している語を充てるのはありかもしれないが。これは検討しはじめると長くなりそうなのでまた後日。

ケリー・リンク「キャノン」。兄が打ち出されることになったキャノンの生涯。いままで読んだリンクでは、いちばんわからない話でだからこそ一番面白く読めた。変に解釈できてしまうと「それはわかるけど、だからどうしたよ」と言いたくなるのでな。

巧さで魅せる中篇を柱に雰囲気の良い短篇2本と、特集作すべて面白く、今年の中ではベストに近い号。ファンタジー特集なのに「いわゆるファンタジー」色はまるでないのはご愛嬌。

特集外の作品について。菅浩江/藤原ヨウコウ「崩壊期」は僕自身の素養のなさから評価不能。藤田雅矢「月当番」はかわいい童話。もう少し尺があるほうが好み。秋山瑞人「海原の用心棒」は後篇掲載時に。

というわけで間際も間際になったが、「SFマガジン読者賞」投票作を考える。

海外のベストは12月号、プリースト「ディスチャージ」。ドリーム・アーキペラゴ物の短篇。エロチックなイメージとそれを支える架空美術の美しさを買った。次点は3月号、アンディ・ダンカンの「主任設計者」。いわゆるSFでは2月号のバクスター「月その六」が良かった。

国内のベストは6月号の小林泰三(&藤原ヨウコウ)「単純な形」。多次元立体物には弱いので。あんまりな落ちも含めて気にいっている。次点は4月号の飛浩隆「夜と泥の(改稿版)」

イラストレーターは連載完結お疲れ様の意をこめて藤原ヨウコウ。山本ゆり子の扉絵も良かったが、「ことのはの海、カタシロノ庭」完結のインパクトのほうが大きい。

各賞の受賞作予測はまた後日。投票は明日消印有効なので投票してない方はお急ぎを。再チェックの際にはS-Fマガジン考課表を参考にしていただけると嬉しいかな。12月号分はまだなんにもしてないけど。

恩田陸『ねじの回転』(集英社)読了。2.26事件を舞台とした時間SF。さすがは恩田陸。錯綜する時間を描きながら圧倒的な読みやすさ。この可読性はそれだけでも賞賛する価値があると思う。が、錯綜する時間をメインに押し出しておきながらタイムパラドックス関係に穴が開きまくりとなると手放しで褒めるにはつらくなる。SFのベストには入れ難いか。論理の整合性なんて細かいことを気にせず読めば、面白い小説ではある。

11月25日
向井君のVガンに対するアンビバレントな想いを眺めつつ、自分のガンダムは一年戦争で良かったなどと考えてみる。が。

違う。十代で見たのはΖだった。筋の悪い戦争トラウマアニメを観て過ごしたっつー事に関しては、とっても人のことは言えません。全話録画したりしてたもんなあ。

先々週の「プラネテス」を見る。良く出来ている、って原作屈指の名エピソードだし。と原作至上主義丸出しな態度を改めて、アニメ独自の良かった点を探すなら、やはり音ですか。音の響き方の切り替えは毎度のことながら見事でした。これは、このアニメシリーズ最大の美点。ところで、二人でダウトをやるというのは何かの冗談ですか。ああ、5〜10枚ほどカードを抜いて、偶然性を導入すれば可能なのか。

先々週の「ふたつのスピカ」を見る。順当かな。たかが4桁の整数を数時間覚えていたくらい、それも0が二つも入った数字を覚えていたくらいのことで自慢をするのは納得いかんが。だいたい打ち込む前に覚えているものどうしで記憶の確認をすれ。>君たち

持病のあれ。初めて見る症状があったので、微妙に感動を覚えたり。下血というのはこういうものか。痛みも出てきたので久しぶりに薬を買ってきました。治らんものだなあ。

11月26日
仕事帰りにラピュタ阿佐ヶ谷に寄って、CプログラムとMプログラム。

Cプログラムは冒頭の「殺人狂時代」が難関。ふた昔前の出来の悪い四コマのようなネタが続くのは非常に辛い。そこを越えればあとはなんとか。水彩画アニメのやわらかな画で見事に風を表現したロン・チュニス「風」、影絵アニメの幻想的な世界が堪能できる大藤信郎「幽霊船」、ロッキング・チェアの生涯を暖かな描線で綴るフレデリック・パック「クラック!」は観た甲斐があった。特に「幽霊船」は必見。ポヤルの「ぼくらと遊ぼう 第1話」も意外に面白かった。このシリーズを全篇楽しく見たのははじめてだ。だいたい途中で飽きるんだよね。

Mプログラムのユーリ・ノルシュテイン作品集は「外套」サイレント・バージョンがきつすぎる。確かに緻密に書き込まれた線画のアニメーションは凄いけど、それだけで20分は緊張がもたない。どうも、ノルシュテイン・アニメとは根本的にテンポが合わないらしく、途中で退屈してしまう作品が多かった。

会場に、同じ学校の先輩・後輩とおぼしき二人連れがいたのだが、後輩(男)が先輩(女)に話し掛ける際に妙に気負っていたのが印象に残っている。うまくいくといいな、青年。< 勝手にそういう設定にする奴

帰宅後、先週分のTRICK3を観る。これはすごい。「また手品もどきか」などと思っていたら、こんなバカネタをもってくるとは。「あーあ、せっかくバカネタだったのに、犯人がこんな簡単に吐くんじゃだいなしじゃん」と思った後の展開と、その後味の悪さも抜群。さすが、佐伯日菜子篇の脚本を担当した林誠人。どんどんキレが鈍っている蒔田光治のかわりにメインライターになってくれたりはしないものか。ベタギャグが弱いからダメか。

TRICKを観ている間、チョコレートを肴にウォトカを飲んでいたのだが、飲みかけてから、チョコレートとウォトカの相性がイマイチであることと、潰瘍の症状が出ているときに蒸留酒を飲むのは利巧とはいえないことを思い出した。まあ、世の中そんなこともあるさ。

11月27日
仕事して帰ってきて録画してあったTRICK3第四エピソード前篇を見て寝た。

一応、まんがくらいは。山本賢治『カオシックルーン』3巻(少年チャンピオンコミックス)。目玉ぐるぐる血しぶきカードバトル漫画の三巻目。対機界七人衆篇の前半分。これでも、いいかげんブレーキが効いてないが、さらにスロットルを全開にする後ろ半分と比べてしまうとテンションが足りないって、それは嫌なものを期待しすぎですか。埋め草のカオシック四コマがとってもいい味出してます。

TRICK3は脚本が蒔田光治なのに今のところ面白い。べたな手品もないし。次週に期待。

11月28日
仕事して帰ってきて録画してあったR.O.D the TVを見て寝る。予定。

帰りに下北沢で短篇アニメを観ようと思っていたのだが、体力が持たないことに気づいたので諦める。最近、6時間起きていると電池が切れそうになるんですが、どうしたもんでしょうか。

ふとした気の迷いで買った那谷敏郎『「魔」の世界』(講談社学術文庫)を読む。三百頁弱で千円オーバーというのは、さすが講談社学術。早川・創元の文庫ごときで高いとぶーたれている人々は世界というものを知りませんな。いや、値段はともかく。
世界各地の伝承に残る「魔」、すなわち半神、妖怪、魔物、悪魔の類を手当たり次第、思いつくまま気の向くままに紹介する、魔物カタログ。アジアの半神・魔物が多く、嬉しい。各地の魔物同士の関連を語るときなど「それは勇み足では」という記述も見られるが、次への取っ掛かりとしては良い本といえる。

最近のお楽しみは読売の三山球団代表ウォッチング。小役人を絵に描いて額縁に入れて美術館の常設展に展示したような言動がすばらしいです。あげくの果てに、代理人じゃないことにされてしまった上原の代理人に「警告書を提出するぜ」といわれたり。面白いから、どんどんあがいて欲しい。

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