過去の雑記 98年5月上中下
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- 5月21日
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明日締め切りの仕事は順調に終了。それに気をよくして、久しぶりにラファティで検索に引っかかるページのチェックをする。あいかわらず、早川の短編集のレビューとサンリオのインデックスくらいしか見つからない。
あんなにメジャーな作家なんだから、もっと大きく扱ったページがごろごろあってもおかしくないと思うんだが。個人的なイメージでは、今、ジャンルSFで最もメジャーな作家がラファティで、ベイリー・ラッカーがそれに続くという感じなのに。
そりゃ、マイクル・カンデルの専門サイトとかあったら驚くけど。
そんなこんなで新発見も無かったので、つい、大森望ページの「水鏡子みだれめも」なぞ読みはじめる。むちゃくちゃ面白い。「ラファティ」で検索エンジンに引っかかったのは1993年分だが、当時出たばかりだった『80年代SF傑作選』をたたき台として、70年代傑作選、60年代傑作選、昭和40年代傑作選、昭和30年代傑作選などを選ぶあたりは本当に面白かった。これで、人が読めるような形式に加工してあればいうことはないんだが、まあ、そこまで望むのは行き過ぎだろう。そのうち、続きも読もう。
バクスターの『タイムシップ上』を読了。さまざまに不満が残るが、「しょせんバクスターだし」と思えばさほど腹は立たない。とりあえず、上巻だけで投げ捨てるほどではないようだ。
- 5月22日
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昨日に引き続き、「水鏡子みだれめも」を読む。今度は1992年である。ろくでもない状態の表が多すぎて、一度テキストに落として加工しないと読めたものではないが、その努力の甲斐はあった。
ハヤカワSFシリーズについて、さまざまな表を作成し、その出版状況・戦略などについて読み取るというのがメインのネタなのだが、この表が滅法面白い。これだけ眺めていれば、数時間は平気でつぶせそうだ。
とりあえず表を作ってみるというのは、僕もよくやる遊びだ。最近は表を作るところに力を注ぎ込みすぎて、その表で遊ぶという肝心なところまでいかないことが多かったが、これを読んでちょっとやる気が出てきた。また、そのうち分けのわかんない表を作って遊んでみよう。
しかし、不思議なのが、水鏡子が早川初期の出版戦略を「推測」していることだ。僕から見ると、いわゆる30代SFファン(1960年生まれを中心とする大学SF研全盛期のSFファン)の上は、すべて同世代なのだが、実際は細部構造があるらしいのである。そーか、40代以上は全員、SFの黎明期からの裏事情を肌で知っているもんだと思っていたけど違うのか。
来週の「驚きももの木20世紀」(テレビ朝日・金曜21時)のテーマは星新一らしい。先週、ユタで高橋良平さんから、関口と三宅のどちらかでやるという話は聞いていたが、三宅の方だったようだ。
大変、喜ばしい。
まあ、どうせ、この手の番組だからたいして期待はしていないが、「知ってるつもり!?」の石ノ森章太郎の時のような酷いことにはならないで欲しいものだ。
- 5月23日
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無駄金の使いすぎで、懐がさびしいので一日本を読んで過ごすことにする。そろそろ引越し先を探す予定だったのだが、そんなことをしたらお腹が空くのでまた来週だ。
とりあえず、読書の前にウェブページを巡回していると、大森掲示板で、先週のユタ例会の開始時間の件がこちらの誤解であることがわかった。僕は、掲示板に「6時には行ってるようにしましょう」と大森さんが書き込んでいるのを見て、「(新規参加者は)6時には行ってるようにしましょう」と理解したのだが、実は、「(あなたが6時に行く予定だというのなら、わたしも)6時には行ってるようにしましょう」という意味だったらしい。なるほど。奥が深い。
というわけで読書三昧である。まず、『掌の小説』読了。もちろん、星新一が誉めていたので読みはじめたのだが、実に読みづらかった。確かに、幻想的な作品や、こちらの趣味に合った作品も中にはあるのだが、どうも根本的なところで興味の方向が違うようで、短い作品ばかりの割には一向に読み進まなかった。ヒット率は5%以下というところ。恐らく、もう読まないだろう。
続いて、『タイムシップ下』を読了。大笑い。上巻全部とラスト数10ページは無駄だと思うので、トータルでの評価は低いが、下巻の真ん中あたり200ページ分で何もかも許す気になってしまう。やっぱり馬鹿はいいよなあ。
とはいえ、ウェルズの文体模写や、ウェルズガジェットの総登場なんかは、完全に上滑りしていたので評価は低い。なんといっても「時間航行者」が20代にしか見えないというあたりで全く駄目だろう。他の小ネタも、作品世界をプラスチックで作られたような、浮ついた世界にする役にしか立っていない。中で思い出したように展開される、イギリスSF伝統の議論のシーンも、取ってつけたようで全く機能していない。というわけで、下巻途中までは、かなり諦めて読んでいたのだが、下巻中盤、バクスター独特のお馬鹿なアイデアが炸裂しはじめてからは一気にノることができた。
どうも、ウェルズ-ステープルドンの系譜をたどるつもりで書いたのがよくなかったのではないだろうか。既存の作品を読んでもわかるが、バクスターの本領は、イギリスSF系の哲学的な面白さではなく、アメリカSF系、特にニーヴンあたりとよく似た物理的ビジュアルの面白さにある。この作品でも、壮大なイメージを次々出して、宇宙の構造、人類の進化を書いているわりにはその印象があまりにも軽い。ウェルズの世界がブリキでできているとするなら、バクスターの世界はプラスチックでできている。この軽い世界は明らかに、馬鹿にしながら読むべきものだろう。このような軽さがどこから出てきているかは明白だ。ウェルズが(ステープルドンが、クラークが)描く世界が、当時の物理学の枠を適宜利用しながらも、それを越えて、そうあるべき世界として描かれているのに対して、バクスターの世界は、そうあるべき世界を書こうとしながらも、物理学の枠に囚われありうる世界を書くに留まっているからだ。物理の枠の中で書いているおかげでどんなに新鮮な世界観を出してきても、「なるほど、あれか。」と一瞬で理解できてしまい、異化効果を失う。もちろん、バカSFの文脈ではそれは一概に否定されることではないのだが、物語前半やラストがバカSFを志向していないため、バカさが上手くいかされていない。
この作品が正当に評価されるためには、ウェルズの系譜にはこだわらず、バカSF作家という本領に徹すべきだった。どうせ、小説下手なんだし。
- 5月24日
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ついふらふらと書泉西葛西などに寄ってしまったせいで、マンガを2冊も買ってしまう。だから金が無いんだって。
唐沢なをきの『からまん』は実にいつもの唐沢なをき。テンションは低いので、とくに読むべきものでもない。『怪奇版画男』のパワーも、『ヌルゲリラ』の脱力も無い見るべきところの少ない作品集だ。
八房龍之介の『仙木の果実』(メディアワークス)は大収穫。電撃大王でうちの一編を読んだときから気になっていたのだが、改めて読んで感心した。中世ヨーロッパ的「魔法使い」を、実にうまく物語に定着させている。線が十分に整理されていないので、画面がややうるさいという欠点はあるが、「魔法使い」ものではトップクラスの作品だろう。このシリーズはしばらくお休みらしいので、とりあえず今後に期待。
『影よ、影よ、影の国』を読了。表題作が期待以上の出来だったので、ちょっと油断してよみつづけたら、これだよ(苦笑)。スタージョンの短編に出来不出来があるのは知ってるし、ソノラマの翻訳が評判悪いことも知っているがこれほどとは…。まあ、7作中、1作水準以上で、1作バカバカしかったので、作品集の最低ラインはクリアしているが。主観的には2500円の価値はあるけど、客観的には5冊200円だな。
横浜は佐々木の3連投で、対阪神3連勝。やっと貯金2まで持ってきた。とりあえず、広島・中日と負け越している相手とのカードが続く今週をどう乗り切るかが重要だ。最悪、どちらも1勝2敗で5月貯金0というところか? 最近は、明らかに中継ぎを使いすぎなので、今週は先発を出来るだけ引っ張りたいところだ。
しかし、なんで阿波野を先発にまわしてまで、隆をセットアップに使うんだ?五十嵐・島田がそろったのだから、隆は先発にまわすべきだと思うんだが。
モナコGPはちゃんと見ていない。どうやら、シューマッハはひどかったらしい。ちょっとハッキネンに追いつくのは難しいかも。
- 5月25日
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SFMの7月号を購入。6月の新刊・重版情報を見てびっくりする。
なんと、『スロー・リバー』(未読)が重版である!分厚いは、重そうだは、クラリオン出身者だは、人生を描いてるは、ネビュラ賞受賞作だわと、つまらないSFの条件をことごとくクリアしているこの作品(未読)が発売わずか2ヶ月で重版…。あの昨年のベスト投票のほとんどでトップになった『火星夜想曲』ですら重版がかかってないのに…。『スロー・リバー』(未読)って初刷3000部くらいなんじゃねえの?
注:僕はあくまで、『スロー・リバー』を読んでいない。従って、つまらないなどというつもりはない。誤解無きよう。
#面白いかどうかもわからんが。
『大江戸魔方陣』(加門七海)を読了。あわない。「お前は、栗本薫か!」とでもいいたくなる陶酔しきった文体に耐えられない。ネタ的にはそれなりに面白いのだが…。荒俣宏が書いてれば面白そうなんだけどな。
続編もあって、そちらまで読まないと完結しないらしいんだけど、あの文体ではちょっと読む気はしない。
だいたい、3角形の呪的図形を魔「方」陣なんて呼ぶ奴を信用できるわけが無いよな。方陣は4角形だよ。
#「魔法」陣なら問題無かったのにね。
- 5月26日
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中野サンモール横丁の古本市で『ファンタジーへの誘い』『岡本綺堂巷談集』を購入。『ファンタジー…』は既に持っているのだが、とりあえず保護してみた。
ついでに、今話題の本なのでちょっと悩んだが、『邪馬台国はどこですか?』を購入してみる。面白い。そおかあ、流行の本も買ってみないといけないのかなあ。
- 5月27日
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『邪馬台国はどこですか?』読了。面白かったのだが、前半3作に比べて後半3作のレベルが大きく落ちるのが気になる。次作は大丈夫か?
しかし、ミステリーと名のつくものをこんなに楽しめるとは思わなかった。
- 5月28日
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横浜での仕事が終り、直帰していいということになったのが、午後5時の渋谷。僕に神保町に行かせようという陰謀に違いない。
神保町ではまず、ここ(いつもお世話になっております)で話題となったブックパワーワンダーに行く。噂に違わぬ良心的なお値段に心温まる思い。スタージョンが載った第2期奇天や、SFMのローダン増刊など、雑誌を中心に4千円ほど買い込む。まあ、比較的理性の働いた方である。
つづいて、せっかくなのでYSお茶の水店へ。モンスター・コレクションのシングルを見に来たのだが、極端に品数が減っている。それどころか、どうも新品すら売っていないようだ(僕の見落としかもしれないが)。
どこまで本当だかは知らないが、ユーザーのサイトを読むと、富士見はゲーム屋を大切にしていないらしい。確かにあのカードは、イラストレーターの層の厚さのおかげでキャラカード的な売れかたもしている。キャラカードとしてなら一般客の多い書店売りだけでもいけるだろう。しかし、リピーター数を考えたときに、コレクターとゲーマーのどっちが有利か?コレクターはカードをコンプリートするまで買ってくれる。が、ゲーマーは、コンプリートしても買ってくれるのだ。
SNEがゲーマーに売ろうとしているのはよく分かる。ウェブサイトでプッシュし、イベントを主催し、本当によくプロモートしている。しかし、版元が力を入れないんじゃねえ。
富士見の対応がいいかげんなのは、商品の並びを見ていてもわかる。初版で爆発的に売れた昨年秋に1月近く商品が切れたのを始め、書店売り中心で地方にも行き渡りやすいはずなのに地方に商品が流れない、エクスパンション発売と同時に基本セットが品切れになる、など、とても売る気があるとは思えない対応が多い。1回出たときにコレクションが終り、そこで売れ行きが止まるキャラカードならともかく、常に新規参加者を開拓すべきゲームカードでとるべき対応とは思えない。
D&D、ルーンクエストなどの海外の1級ゲームを駆逐した、「大いなる2級品」ソードワールドの奇蹟は、今回は起きないのかもしれない。
モン・コレの今後を憂いつつ、書泉ブックマートに寄る。ここにもモン・コレの基本セットは置いていない。本当に売る気無いだろ、富士見。
それはともかく、久しぶりにゆっくりまわると、社会思想社のゲームブックのほとんどをまだ売っていることに気づき驚く。『火吹き山の魔法使い』、<ソーサリー>、『送り雛は瑠璃色の』、『モンスターの逆襲』…、数々の名作・迷作ゲームの思い出とともに、中学・高校の思い出がよみがえりちょっと、遠い目になる。
ここで帰ればよかったのだが、つい『邪神ハンター』が山積みになっているのを見つけて買ってしまうあたり修行が足りない。この士郎正宗がイラストを書いているという以外全く魅力の無いポルノ、一時は都内で見かけなくなったらしいのだが、2巻の発売に合わせて増刷でもしたのだろうか。
ところで、買ってしまってから気づいたのだが、僕はクトゥルーにも士郎正宗にも興味はない。どうすりゃいいんだ、これ。
まあでも、ついでに買ってしまった『世界最終美少女戦争』よりはましだろう。これでは、完全に大森日記に踊らされているようではないか。もっと、自分をしっかり持たなくては。
しかし、最近の大森日記の充実度は凄い。読みでのあるSF Online批評を軸にしたハイペースの更新で、読者を飽きさせないことである。この調子なら、『時空ドーナッツ』も夏までには書店に並ぶに違いない。
でも、SF-Online批評のためにレビューリストまで作ってしまうのはどうかと思う。そんな非営利的な活動をプロの文筆業者がやっちゃだめでしょう。素人に取っとかなきゃ(笑)。
寮に帰ってから読んだ今日付朝日新聞・東京版の朝刊は凄かった。30面に載っていた、「TOKYO キャラクター 都市伝説」という記事なのだが、加藤礼次郎(!!)の日常の描写に始まって、東西線沿線に集まるオタク系出版社の紹介、秋葉・神保町のオタクショップの紹介と来て、そのオチはなんと、東西線オタク化計画!!
国土庁と三菱総研が今年4月にまとめた報告書で「東京キャラクターシティ構想」としてまとめられたもので、中野・早稲田・飯田橋・神保町・秋葉というオタク系の町をひとつにまとめ、テント村、アニメ、ゲームの工房、等を作って、キャラクター使用権買い付けの窓口の一元化や、ハリウッドやブロードウェーのような観光客を呼べるメッカを作る(笑)のが目的だそうな。まあ、どんな恥ずかしい計画を立てようとかまやしないが、東京に来てからの生活圏のほとんどがこのエリアに含まれるってのは考えさせられることであるよ。
- 5月29日
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昨日の日記を書き上げた後、「アウトロウスター」を見る。『重力の使命』を始めとした、どこかで見た風景のオンパレードには大笑い。まあ、これはこれでありなんだろうな。
しかし、SF設定に拘る系の見方ではダメダメ。
高重力の惑星上の刑務所という設定がキーなんだけど、緯度によって重力が1G〜10Gまで変わりうるほどの遠心力が働くなら、惑星がバラバラにならないのか?とか、気候なんて絶対に安定しないんじゃねえ?とか、だいたい海が維持できるのか?とか、そもそも呼吸可能な大気が維持できるのか?というような、僕にも正解のわからない疑問は置いておくとしても、番組冒頭では10G環境で座っていることもできなかった主人公がラストでは楽々動き回っていたのはなぜ?とか、10G環境下で二人の人間を引っ張り上げるほどの力で引き上げられたら手がちぎれない?とか、細かな(笑)疑問はいっぱいある。なにより、10Gに抗して二人の人間を引っ張り上げるほど強い磁力を持ったN極モノポールを、一緒に持ち歩いていた、同じ磁力のS極モノポールからどうやったら引き離すことが出来るんだ?
僕は、アニメに理論を求めるのは無意味だと思っているから良いけど、こんな設定書くような非論理的な人はSFの設定を科学的にうんぬんする資格なんてないっすよね、堺三保さん。
「驚き桃の木20世紀 星新一・魂の千夜一夜」を見る。ゲスト、筒井はともかく、かとうかずこは何のためにいるのか分からなかった。戦友として筒井を置くのなら、読者代表はそこらの女優ではなく、「星新一の子供たち」井上雅彦らショートショート作家たちか、せめて新井素子くらいは使ってくれよ。
前半は苛々しながら見続けた。星の運命を変えた1冊は『火星年代記』じゃなくて『火星人記録』だ(ハヤカワNVの『火星年代記』ならともかく、銀背を使うなら元々社版を探してこい!)、とか。はじめて出版されたショートショート集は『ボッコちゃん』じゃなくて『人造美人』だ、とか。作家仲間で飲んでるシーンは飲み屋じゃなくて「キャンティ」にすべきだろう、とか。細かい作りの甘さが随所に見られ本当に気になった。
それ以外にも、「ボッコちゃん」や「おーい でてこーい」を変に要約して紹介するくらいなら、ちゃんと朗読してくれ、とか、星作品の凄さは「落ち」だけにあるんじゃない、とか、気になった点は数多い。
#一番気になったのは小松左京が異様に痩せてたことだけど(笑)。
後半、「星が賞に物に見放されていた」というネタからちょっと面白くなってた。かなりベタな感情に拘ろうとする演出は気になったが、「星家伝記3部作の最後の1作が出なかったのは読者の反応が芳しくなかったこともあった」という元編集者の言葉など、新発見もいくつかある。
ラストの「読者を常に意識し続けた星新一の最後の仕事は、過去の作品のいつ果てるとも知れぬ改稿だった」というネタは文句無し。SFセミナーの「追悼・星新一」でも出た話題だけど、星の晩年を語る上で絶対にはずせないエピソードだと思う。このあたりからの盛り上げかたは見事で、奥さんの「でも、作品は古びていってしまう。もう、書き直すことはできないのだから」という言葉から、主の居ない書斎の風景にいたるあたりでは不覚にも涙が込み上げてきたり。最後の最後を「鍵」で締めくくったのも見事。前半の拙さなんてまったく気にならなくなるくらい感動してしまいました。
何よりも、星作品の象徴として「鳥瞰した東京の夜景」を選んだ製作スタッフのセンスに10点差し上げる。
- 5月30日
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「ダイナ」を見る。すげー。劇作家の妄想が、錬金術的な演劇によって顕在化する話って、お子様にわかるのか?これ。実相時アングルを駆使した画面といい、いきなり怪獣論を語りはじめる脚本といい、対象年齢は少なくとも中学生以上だと思うんだけど。
『邪神ハンター1』と『世界最終美少女戦争』をともに読了。なるほど、最低限の文章力とやる気はあるが決め手にかける小説と、最低限の表現力も無いけど設定だけは大馬鹿な小説のどっちがましか、という問題なわけね。僕としては、いくらなんでもあそこまで文章が酷いとまったく読めないので、『邪神ハンター』の方がちょっとだけマシ。格闘技関係の蘊蓄だけは知らない話もあってちょっとだけ面白かったし。
もちろん、「どちらも読まない」ってのが正解だったとは思う。
ついでに『火星転移』の上巻を読了。全体としての評価は下巻待ちだが、この後どんな展開になろうと、この巻はいらない。
「土曜なんとか」のサスペンスドラマをラストだけ見る。どっかで見たようなストーリーだな、と考えているうちに、山田正紀の『女囮捜査官』だと気づき愕然。こんなわかりやすい人情ドラマだっけ?
メインストーリーをほとんど変えずに、ここまで印象を変えるとは、おそるべし、TVドラマ。山田正紀だろうが、内田康夫だろうが同じような雰囲気になるというお茶の間の魔力は偉大としか言いようが無いな。
- 5月31日
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やけになって、『邪神ハンター』の2を買ってしまう。だって、これ1・2巻じゃなくて、上下巻なんだもん。
別にクズはクズに変わり無いんだけど、ちょっとだけ面白かったのはこの本のスタンス。ポルノシーンは前半に1個所であとの見せ場は格闘シーンなんですよね。このあたりナポレオン文庫とは明らかにスタンスが違う。ナポレオン文庫がポルノのYA化だとすると、青心社はYAのポルノ化。前者は、どこに実用シーンをおくか、という視点を中心に構成されているのに対して、後者は、どこにサービスシーンを置くかは考えていても、それがポルノであることには拘っていないという。なるほど、青心社文庫ってハードコアなあかほりさとるなんだ。
あ、ちなみに『邪神ハンター』の1・2は同時発売のようなので、書店に並んでいたのは、単に増刷されたかららしい。これがそれほど売れてるんなら、『地球礁』とか『アーキペラゴ』とか出ないかな。
#短編集しか知らないラファティファンは騙されて買うと思うんだけど。
書泉西葛西でモン・コレのブースターを発見。再版されたのか?だとすると富士見も少しはやる気があるのかもしれない。
29日の「アウトロースター」ネタについて、堺さんご本人からメールが来てびっくり。あの文章は、「科学考証にうるさいと噂される堺三保先生ならよもやそのような初歩的なミスはなさるまい。」とでも言うような、嫌みネタなんで、ちゃんと対応されると恐縮してしまう。
一応釈明しておくと、僕はアニメは絵的にそれなりの説得力があれば、あるいはその方がカッコよければ、何も気にしないんで、あれを本気で問題視しているわけではない。ただ、せっかく、SF考証をしてるんだから、突っ込めるところは突っ込まないと申し訳ないと思って突っ込んでみた次第。
だいたい、本当は、本家『重力の使命』と同等以上の整合性があるなら、SFとしては合格圏だよね。
というわけで、あの突っ込みはあまり正当なものではないんだけど、せっかく脚本家に説明していただいたんだから、疑問点を解消していきましょう。
まず、
>惑星がバラバラにならないのか?
は大丈夫じゃない?とのこと。そうかも(笑)。そんな角速度を持った惑星は絶対形成できない気もするけど、それは言ったらおしまいだし、惑星がある程度できてから加速されたかもしれないしね。
>気候なんて絶対に安定しないんじゃねえ?
これは、多分そうなるけど説明がめんどくさいのでパス、とのこと。妥当な選択でしょうね。イメージとしては美しいけど、そんなにネタを突っ込めるほど尺はないよね。
>だいたい海が維持できるのか?
>そもそも呼吸可能な大気が維持できるのか?
これも大丈夫じゃない?とのことで、ニュートン力学の枠内では僕も、そうかも、と思うんだけど、もともとこの疑問は力学上の疑問ではなく、そんな惑星環境が地球と極端に違う星で、液相の水を維持できる温度環境だったり、呼吸可能量の酸素を維持できる植物相を持ったり出来るんだろうかっていう、惑星物理・化学・生物レベルの疑問なんですよね。答えはよくわからんのだけど、金星化したり火星化したりするのを防ぐのって、けっこう難しいんじゃないか、と。まあ、メスクリン・レベルの疑問ではないのだが。
>主人公がラストでは楽々動き回っていたのはなぜ?
これはコンテのチェック漏れとのこと。じゃあ、しょうが無いよな。
>引き上げられたら手がちぎれない?
加速度は相殺していてたいしたこと無いから、とのことだけど、それは無理な気が。モノポールの場所では力が相殺しているけど、それを掴んでいる主人公は片手一本で、10G下の二人分の体重を支えてるんだから、そりゃ大変でしょう。
まあ、手がちぎれるこた無いと思うんだけど、耐え切れなくて、手を放してしまうんじゃないかなあ。実は主人公が力持ちだったという設定があるのなら仕方ないけど。
>S極モノポールからどうやったら引き離すことが出来るんだ?
これは磁力が強いのは惑星だから、とのこと…。まあ、いいか。
っつーわけで、1・2個所を除いてメスクリンレベルの考証はクリアしてるんですね。実際、上にも書いたけど、突っ込む気がするほどのアニメってのはめったに無いわけで、これは頑張ってる方だとはわかってる。だいたい科学考証の出来と、アニメとしての面白さは本質的に別のもんだし。
こんなシロウトの嫌みな突っ込みは気にせず、またSF魂を持ったストーリーを作ってくださいね、堺さん。
#で、隙があったら突っ込んで遊ぼう。
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