過去の雑記 99年 5月

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5月11日
SFマガジン6月号を読了。
サイバーパンクは体験し損ねたのでポスト・サイバーパンクと言われても何がなんだか。というわけで評論は今一歩わかんなかったんだけど、収録短篇は面白かったっす。特に「フィットネス・クラブの恍惚」の肉体改造の徹底ぶりと、「タクラマカン」の地獄絵図は見事の一言。サイバーパンクでもポスト・サイバーパンクでもなんでもいいから、こういった短篇が次々掲載されて欲しいね。

大熊君が日記で「星ぼし」擁護論を展開している(というよりネタに使っているというべきか)。
でも「星々」が日本語FEPで変換出来ないから「々」を使わないってのはなんだかなあ。例えばMS-IME97だと、

星星 神々 木々 家々 内々 人々 日々 年々 月々 高々 刻々 方々 時々(思いついた順)

MS-IME95でも、

星星 神神 木々 家々 内々 人々 日々 年々 月々 高々 刻々 方々 時々

と、変換出来ない「星々」が例外なんだよね。「々」が嫌いだから使わないというのなら理解出来るんだけどさ。
しかし、「理解出来る」とはいっても、「日び」とか「木ぎ」って表現にはやっぱり違和感が拭えないところではある。

5月12日
<異形コレクション>『グランドホテル』をやっと読みはじめる。
冒頭の新津きよみ「ぶつかった女」を読んだときにはどうなることやらと思ったけど、すぐに持ち直したようで安心。

5月14日
<異形コレクション>『グランドホテル』(廣済堂文庫)を読了。仕掛けが十分に機能しているかという点には若干の疑問もあるが、アンソロジー全体のレベルとしては過去最高だろう。クズもあるにはあるが、最低限仕掛けに奉仕するという役割は果たしているのであまり気にならない。
中から1作をあげるとすればやはり、田中啓文「新鮮なニグ・ジュギペ・グァのソテー。キウイソース掛け」だろうか。オチには不満があるが、中盤までの盛り上げは素晴らしい。特に、ニグ・ジュギペ・グァの描写は凄まじいまでの迫力だ。
他では、大時代な探偵趣味が魅力の芦辺拓「探偵と怪人のいるホテル」、やはりシーンを描くことだけは上手いと再確認にさせてくれた恩田陸「深夜の食欲」、鬼気迫る「おれ」の描写に引き込まれる津原泰水「水牛群」などが印象に残った。

ところで。エピローグ、井上雅彦「チェックアウト」はいくらなんでも遊びすぎだろう。この手の楽屋落ちは書いている方には楽しいかもしれないが、読者にとってはそうではない。せっかく興味深い形式を採用し、わりとうまく展開してきたのに、安易な手法で落としてしまうのは実にもったいない。

5月15日
ふと思い立って借りてきた『空飛ぶモンティ・パイソン6』を見る。
これを借りてきたレンタルビデオ屋の会員になったのは近所で一番『モンティ・パイソン』が多かったからなのだが、いつのまにかTVシリーズは2本だけになっていたらしい。これでは徒歩30秒の店をパスして徒歩7分の店の会員になった価値が9割減ではないか。困ったものだ。
それはともかく。『空飛ぶMP6』は期待通り。それ以上でもそれ以下でもない。素晴らしいことである。レモンカレー。

午後からは高田馬場で次回DASACONスタッフ打ち合わせ。参加者はジョニイ高橋、林、平野まどか、溝口哲郎、森太郎、u-kiの6名(あいうえお順、敬称略)。息抜きも交えつつ、というか息抜きの合間にというか、時期と場所と形態が少々決定した。もう少し詳しく言うと、9月の前半に前回のような場所で前回のようにやるということくらいが決まった内容。あと、企画も少々決まったけど、こちらは公式発表まで口外禁止らしい。とりあえず、やることだけは本決まりなので参加予定者の方におかれましては企画案を出してくれたりすると非常に嬉しいところである。

芳林堂によって『鼻行類』関連書籍を買いあさった後、別件の用事があったu-kiさん以外はユタに移動。なぜか今日は異様に人が少なく、DASACONスタッフ以外の参加者は高橋良平さんと雑破業さんだけだった。
ユタでの主な話題は、世にも希なる『鼻行類』マンガ、柴田昌弘『ミッシング・アイランズ』(白泉社)の鑑賞と、『チグリスとユーフラテス』論など。高橋さん雑破さんと溝口さんはなにやら翻訳がどうこうとか書評がどうこうという話もしていたようだ。
せっかくユタに来たというのに、溝口さん以外はほぼDASACONスタッフ内で会話をしていた辺りちょっとどうかという感じだが、そこに突っ込むと両方に所属する僕が橋渡しをしなかったのが最大の問題ということになって来そうなので見なかったことにする。だいじょうぶ。そんな問題は無い。

5月16日
昨日購入したゲーステ『シュティンプケ氏の鼻行類』(博品社)を読了。訳が気持ち悪くて非常に読みづらかった。一定数の訳書もある翻訳者であるし、技術の巧緻ではなく僕の趣味との相性の問題なのだろうが、こうまで原文に忠実(なのだろう、日本語としてはあまりにもこなれていない)翻訳をする必要はないだろうという感想は否定しがたい。

中身の方は、まあこんなものか。文学的背景や成立過程そのものに焦点を当てる、この形式もありだとは思う。正直に言うと、もう少し架空生物学に偏った内容を期待していたのだが。

5月17日
先日発見した鼻行類サイトに鼻行類音楽(ヒカシュー「ハイアイアイ島」『人間の顔』収録))だけではなく、鼻行類ゲーム情報まで載っていることに気づき驚く(以下詳細)。
        ソフトタイトル デザーテッドアイランド
        発売元     SSK
        対応ハード   プレイステーション
        品番      SLPS00602
        定価      5800円 
そうか、時代は鼻行類なのかも。

5月18日
ラファティ『イースターワインに到着』(サンリオSF文庫)を読了。もちろん再読ですが。初読時にも、ラファティの長編の中で一番わからないという印象を受けたが、今回もやっぱりわからなかった。

「<不純粋科学研究所>が作り上げた機械知性エピクトが、「人間自身には踏み出す事のできない、しかし人間にとって次の発展段階となる次元へと、第一歩を踏み出す」試みのため三つの試練に挑み、ことごとく失敗する」というストーリーはわかる。そして、その全体が神について語っていることもわかる(三つの課題、leader、love、liaisonは恐らく父と子と精霊だろう)。その為の仕掛けも幾つかは読み取れた。だが、だから何?というのがわからない。
短篇とは大きく異なる<研究所>メンバーの描写をはじめとする細部を楽しむことはできたし、仕掛け探しも楽しんだのだからそれで良いという気もするが、すっきりしない感覚が残るのは否めない。また、期間を置いて再読してみよう。

5月19日
『SFバカ本 たいやき篇プラス』(廣済堂文庫)を読了。良くも悪くも方向性に慣れてきてしまったため、最初に『たわし編』を手に取ったときほどの衝撃も脱力感も無い。

作中のベストは岡崎弘明「ぎゅうぎゅう」。異常な世界を淡々と描く筆致が、初期の中井紀夫を思わせて懐かしかった。他では、カジシンもかくやのドタバタ、東野司「攻防、一〇〇キログラム!」、パワー以外に何も無いがパワー以外に何もいらない森奈津子「西城秀樹のおかげです」、どろどろとしたどろどろの話、笹山量子「液体の悪魔」あたりが及第作か。今回、致命的なクズが少なかったので、わりとコストパフォーマンスは良かった。本体571円で、良1可3は十分合格ラインだ。でも、ハードカバーでこの出来だったら腹が立っただろうな。

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