ふたつの本
最近「文化の経済学―日本的システムは悪くない―」(荒井一博著、文春新書)と「偉大なる衰退―日本文明の次なる設計―」(高橋英之著、三五館)の二冊の新刊本を読み、今後日本の目指すべき方向性について深く考えさせられました。
両書とも良質の保守主義の立場で書かれており、かつ、流行り物を追わず「自分の頭で」考えている良心的な本で、共感するところ大でした。しかし一方で、「流行り物」である米国資本主義のあり方も、「公平性」「透明性」といった点で捨て難く、日本資本主義の弱点をこれら「資本主義の原点」の原理で矯正する必要がある、との思いも小生には強いのです。
破綻後二年弱を経て、幸運にも現れた新たな株主のもとで、新銀行を立ち上げる仕事の一部を担わせていただいている小生の実務生活の中でも、しばしば日本的原理と米国型原理の葛藤が発生します。自らの伝統を自己卑下すること無く、しかし戦略的な改革は大胆に行う―このことを実践する難しさを日夜痛感するこの頃です。天武朝や明治維新といった大変革期の先人たちの偉大さがしのばれます。
平成一二(二〇〇〇)年九月二〇日