次の文章へ進む
前の文章へ戻る
「古典派からのメッセージ・2001年〜2002年編」目次へ戻る
表紙へ戻る

 

若い人の転職について

 

 若い人の二、三年毎の頻繁な転職やフリーターの増大について、人事屋として一言言いたい。こうした転職なども、本人がしっかりした職業ヴィジョンを持って「起業」に走ったり、本当にやりたい職業を模索してやがて定着するのは良い。されど、頻繁な転職やフリーターから脱却できない理由が、きちんとした組織で働くことを束縛としか感じないモラトリアムであることも多いように思われる。若い人に媚びる愚劣なマスコミが、「組織に縛られずに生きる」などとフリーターを持ち上げるのも彼らに妙な安心感を与えている。

 単なるモラトリアムは本人の甘さを示しているだけではないか。隣の芝生が青く見え、自分の不満足を何でも環境のせいにしてはいないか。会社で行き詰まるとすぐに海外留学に走りたがる女子社員然り、カタカナ生命保険会社の自由実績主義に夢を見ようとして現実には「個人商店」など夢のまた夢であることをいやというほど思い知らされて当行へ中途入社した人たち然りである。きちんとした組織できちんと仕事をすることの大切さを忘れてはいないか。仕事で一人前になるには我慢が必要なのを忘れていないか。

平成一三(二〇〇一)年四月一六日