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「古典派からのメッセージ・2001年〜2002年編」目次へ戻る
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スーパー職人

 

 五月一七日放映のNHK「にんげんドキュメント」に感動。東京・三鷹の従業員二六人の小さな町工場(三鷹工機株式会社)が、世界最先端の技術を次々に開発してゆく。スペースシャトルに掲載された宇宙観測カメラや百万分の1ミリ(1ナノという)を計測できるナノ計測器などがその例である。番組では、ナノ計測器が組み上がるまでを追いながら、スーパー職人たちの意気地を紹介する。

 この会社の創業者である中村会長(年齢は七〇歳くらい)が、筆頭職人ともいうべき三浦課長(年齢四〇歳くらい)はじめ技術者たちを鍛えるやり方は、ヒントだけ教えるが、答えは自分で探させるスタイルである。技術者たちは悪戦苦闘しながら自ら創意工夫して課題を解決してゆく。コンピューターに全てを委ねるのではなく、自ら機械を動かし手で磨いて、いわば「肌で考える」ことが創造的な商品を生み出すための重要な要素であることを教えられた。

 これこそ日本人なり! ねじ一本の締めつけ方の微妙な差で製品の成否が決まるこの人たちの厳格な世界に比べ、我々金融人は何と曖昧な世界に居ることだろう。日本を真に豊かにしてきた原動力は、金融業やサービス業ではなく、こうした有能な理科系技術者や職人であることを思い知らされた。彼らは世界基準で通用する人たちなのである。

平成一三(二〇〇一)年五月二〇日