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「古典派からのメッセージ・2001年〜2002年編」目次へ戻る
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聖徳太子

 

 先日亡くなった歌手の三波春夫さんが「聖徳太子憲法は生きている」という本を出しているのをご存知ですか?小学館文庫から出ているのですが、小室直樹氏が「日本の規範の根源を考えている」と推薦図書に挙げていたのが気になって小生も読んでみたのです。

 大変面白かったです。そもそも聖徳太子の十七条憲法は日本史の知識としては知っているものの、実際に全文を読んだことのある人は少ないのではないでしょうか。小生も三波春夫さんの親切な解説に導かれて初めて読み通しました。「和を以って貴しと為し、忤(いさか)うこと無きを宗とせよ」で始まるこの憲法ですが、小生は聖徳太子の儒教に対する態度が特に興味深かった。太子は、孔孟の原点に立ち帰れ、後儒の言うことに惑わされるなと言っています。これは太子の仏教に対する態度と同様の原典主義で、太子が本物の古典読みであることを示しています。

 また、太子は、日本の伝統と儒教や仏教を調和せしめよ、それは可能であるとも述べていますが、これは、外来文化と土着の伝統との関係はいかにあるべきかという、以降の日本文明の宿命の課題に対する最初の回答でもあります。いずれにせよ、隋との外交関係の巧みなこなし方などを見てもわかるとおり、聖徳太子は国際感覚豊かな大知識人であったことは間違いないようです。

平成一三(二〇〇一)年五月五日

 

(追記)平成一三年一一月一〇日、NHKテレビでドラマ「聖徳太子」を見ました。全体的には、太子はじめ古代日本の変革期のリーダーたちの姿が生き生きと描かれて興味深かったのですが、最重要人物たる蘇我馬子だけが、「大政治家」にも「大悪人」にも描き切れておらず、中途半端な印象だったのは残念でした。馬子の墓とも伝えられる飛鳥の石舞台あたりをまた散策してみたいものです。