新しい平家像
池宮彰一郎氏の日経新聞連載の小説「平家」は、新しい平家像、新しい平清盛像を示そうとしており、大変興味深い。団結と温和こそ平家集団の特色であるとして、一族の内部で骨肉の争いを繰り返す源氏と対比させているのは、とても説得力に富んでいる。また、平清盛を開明的な経世家、政治改革者として描いているのも新鮮だ(三波春夫氏の平家論も同じ視点であった)。
一方、僕は、少年時代から源氏びいきであったが、それは、僕が初めて歴史というものに興味を持つきっかけになった、NHKの大河ドラマ「源義経」や、好んで読んだ吉川英治の小説「新・平家物語」に影響されたためである。大河ドラマや吉川英治の平家観の源泉は、古く「平家物語」に描かれた平清盛悪人観である。「盛者必衰」の題材として悪く描かれてきた平家や平清盛に新しい光を当てた同小説は、大変新鮮で、楽しく読める。僕は、池宮氏が描く平家や平清盛の姿の方が、歴史上の実像に近いのではないかと想像する。
平成一三(二〇〇一)年九月二一日