グリーグのピアノ曲、好きです
最近、ナクソスから出ているグリーグのピアノ曲全集(CD十四枚組、ピアノ演奏はノックレベルグという人)を買ってしまいました。約八千円と格安なのに釣られて、つい衝動買いしてしまったものです。
グリーグ(一八四三年〜一九〇七年)の音楽は、やや少女趣味ですが、叙情的で(でもあまり粘っこくなくて)好きです。ノルウェーの淡白なショパン、といった感じです。「抒情小曲集」はどれも好きですが、「ふたつの悲しき旋律(作品三十四)」なども良いですね。その味わいは、ショパンやメンデルスゾーンやシューマンあたりをベースにしながら、時にシャブリエのような簡素で小粋な音楽が聞こえてきたり、また時にはドビュッシーのような味わいもあります。
僕にはグリーグはあまり「ノルウェー民族派の作曲家」とは聞こえません。確かに彼はノルウェーの自然や風物を写し、その民謡旋律を使っているのですが、すべて上品にサロン風に加工しているので、彼の作品からはドヴォルザークのような剥き出しの民族的音楽は聞こえて来ないのです。その民族派としての不徹底さと、ドイツ風のカッチリした「大形式」を欠いていることから、グリーグはやや軽い作曲家だと見なされているのでしょう。でも、俳句や短歌に慣れた日本人である僕にとっては、彼の小曲たちは、とても素直に耳に入り、心に沁み、魂を慰めてくれるのです。総じて、グリーグの音楽は「慰撫の音楽」だと感じます。
平成一三(二〇〇一)年一〇月一八日