人々の元気のなさ
電車の中で見かける人、会社の中で見かける人など、今の人々は、何か悩んでいるような顔をしていたり、苛立っているような顔をしていたりで、全体的に元気がないように思われます。なぜ人々に元気がないように見えるのでしょうか。
ひとつには、現代日本の置かれた難しい状況があります。つまり、ビル・エモットが十年ほど前に「日はまた沈む」で予見した、日本の高齢化、貿易黒字の減少などの構造問題が現実のものとなってきたのです。人々は、変革を要することはわかっていても、その過程における痛みに逡巡したり、一方で変革が遅いことに苛立ったりしているのではないでしょうか。これはマクロでの政治の指導力の問題です。
ふたつめに、会社など自分の勤務先が置かれている厳しい状況にもかかわらず、経営のリーダーシップが充分発揮されないことへの不安、不満があるものと思われます。これはセミマクロでの指導者不足の問題です。
そして最後に、自分の職場の仕事や上司への不満です。ここでもリーダーたちの資質が厳しく問われているのだと思います。これはミクロの指導者の問題です。
戦後日本は指導者育成を疎かにしてきました。民主主義の名のもとに悪しき平等主義が蔓延り、指導者の粗を探し彼(または彼女)を引き摺り降ろすことばかりしてきたのです。しかしどんな民主主義でも優れたリーダーは不可欠です。今こそ、会社、学校から国に至るまで、現代日本にふさわしい優れた指導者像(指導者の備えるべき資質、節操、責任感、その喜びと悲しみの姿など)を構築することが必要であり、また、そうした指導者を育成する高等教育機関を作ることが必要とされているのではないでしょうか。
平成一三(二〇〇一)年一二月八日