近代ロシアの隠れた名曲
近代ロシアの音楽家、カリンニコフ(一八六六年〜一九〇一年)の交響曲第一番をご存知ですか?
僕も最近偶然に聴いたのですが、三十四歳という若さで亡くなった薄幸の音楽家が精魂込めて書いた曲です。この曲を聴いて、「永遠の青春」をいう言葉が僕の胸をよぎりました。ここには青春の夢と憧れが、それがかなわぬ苦しみ、悲しみとともに息づいています。何という爽やかさ、凛々しさ、初々しさ、力強さ、そしてほのかな哀愁…。特に、第一楽章の第二主題。初めチェロ群の奏でる旋律の上をフルートが装飾する形で二回現われ、次いで全オーケストラが感動的に歌い上げる瞬間!
こぼれんばかりの叙情に思わず目頭が熱くなります。そして、これもたまたま聴いたアレンスキー(一八六一年〜一九〇六年)のピアノ三重奏曲第一番。ご存知でしょうか?
ロシアの演歌とも言うべく、この曲にも抒情たっぷりの旋律があふれています。特に、第三楽章の、やや虚無的ともいうべき「エレジー」は心に沁みます。こういう「隠れた名曲」を二曲も発見できたのは、最近のちょっとした幸せです。これらの曲は、決して小難しい音楽ではありません。むしろ平易で美しい旋律に満ちています。ロシア音楽のファンでなくても、必ず気に入ってもらえると思います。
平成一四(二〇〇二)年一月一二日
〈参照したCD〉
カリンニコフ 交響曲第一番 ウクライナ国立交響楽団(香港ナクソス)
アレンスキー ピアノ三重奏曲第一番 ボロディン弦楽四重奏団(英国シャンドス)