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「古典派からのメッセージ2001年〜2002年編」目次へ戻る
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ワグナーについて

 

 「みづき」さん、「なおか」さん、小生ウェブページ掲示板への書き込みありがとうございます。「みづき」さんも「なおか」さんも、傷ついたり挫折したりの人生を送っておられるようですが、そのコメントからは、お二人の心やさしさも伝わってきて、小生自身も心癒されます。

 さて、「なおか」さんのコメントされたワグナーについては、借金を平気で踏み倒したとか、弟子の女房を寝取ったとかいうような伝記が小生の頭から離れず、正直言ってどうも食わず(聴かず)嫌いです。でも彼が大天才であったことは間違いありません。小生も、ある時、何気なく入ったレコード屋で「ジークフリート牧歌」が耳に入り、その艶やかさ、天国的な至福感、夢見るような情感、そして、はるか遠くを見晴らすような無限性ないし巨大さにゾッと身震いが来たことがあります。この人の音楽は、現代の映画音楽にまで至るロマン的音楽表現の源泉です。

 ワグナーの歌劇については、「さまよえるオランダ人」や「タンホイザー」など初期の作品は、意外に柔らかでメロディが美しいので好きです。ウェーバーの延長線上で味わえますし、マイヤベーヤらフランスのグランド・オペラの系譜として、「古典派」の小生にも楽しめます。ただしそれ以降の「楽劇」はどの曲もたいてい途中で放り出してしまいます。あまりに音楽が重苦しく、歌も重々しくて、小生の感性には合いません。

 でもワグナーには熱狂的なファンも多くて、一度とり憑かれると離れられない強烈な魅力があるようですね。丸山真男もワグナーの歌劇を楽譜と首っ引きで聴いていたそうです(中野雄「丸山真男 音楽の対話」(文春新書)参照)。

平成一四(二〇〇二)年六月三〇日