親日派のための弁明
韓国の評論家、金完燮(キム・ワンソプ)氏の近著「親日派のための弁明」(荒木和博+荒木信子訳、草思社)は、大変衝撃的です。反日に固まった韓国知識人の間にあって、朝鮮近代史における日本の果した役割を高く評価しようという内容なのです。本国では事実上発禁処分になり、金氏も身の危険すら感じるとのことです。韓国における反日教育、反日固定観念の異常さに改めて驚きますが、こうした勇気ある知識人が出て来たことには希望が沸いてきます。
小生より七歳若いこの評論家は、決して日本に媚びているわけではありません。むしろ、大きな視点から世界史を俯瞰し、冷静に朝鮮近代史を見ています。日韓の関係を深めるには、まさにこうした理性的な態度が必要です。巨視的に見れば、金氏の述べておられるとおり、中世におけるモンゴル帝国のユーラシア大陸席捲と近代における日本の発展(とりわけ日露戦争勝利)こそ、白系欧米人の世界支配に強烈な抗議を叩き付けた歴史的記念碑なのです。モンゴル帝国と近代日本の活躍がなければ、アジアやアフリカは欧米に対する劣等意識を払拭できず、今だに欧米の植民地であった可能性さえあります。
金氏の公正な視点と事実に基づく論評、そしてそれらを支える綿密な資料収集の努力に敬服しました。金完燮氏のこの著書が少しでも多くの韓国人、日本人に読まれ、日韓が理性に支えられた信頼しあえる関係になればいい、と心から念じます。
平成一四(二〇〇二)年八月四日