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「古典派からメッセージ・2003年〜2004年」目次へ戻る
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日本酒の堕落

 

 先日、金沢の老舗酒造会社「福光屋」さんで利き酒をさせていただく機会がありました。福光屋さんは一六二五年にこの地で創業、江戸時代が始まったばかりの頃です。この良心的な造り酒屋は、米以外にいっさい混ぜ物をしない本物の日本酒を作っています。日本酒は米と水で作る発酵酒です。ところが、米の発酵だけによらず、醸造アルコールや糖類を混ぜて作った日本酒が世の中に広く出回っています。醸造アルコールや糖類を混ぜた日本酒はまがい物です。まずいまがい物の酒が世にはばかるから、人々は本当の酒のうまさがわからなくなり、日本酒を敬遠するようになります。清酒の消費量は残念ながら漸減傾向にあります。清酒メーカーは自ら酒をまずくして消費者の日本酒離れを起こしてしまっているのです。まさに「日本酒の堕落」です。アルコールを混ぜるようになったのは、戦時中の昭和一七年からだそうで、コスト削減のために戦後もこの悪習が拡大してしまったとのことです。私たちは酒屋の店頭で純米酒かどうか原料表示を確認して、本物の日本酒をいただきたいものです。

 この日は、酒作りの現場を見学させていただいた後、利き酒でいろいろの種類の酒を少しずつ味わいました。それらの酒は、あっさりしたものから芳醇なものまで、それぞれ個性があり、米と水に象徴される日本の自然の恵みを深く感じる心豊かなひとときでした。

平成一五(二〇〇三)年三月二三日