次の文章へ進む
前の文章へ戻る
「古典派からメッセージ・2003年〜2004年」目次へ戻る
表紙へ戻る

 

貴乃花讃

 

 今年の一月場所を最後に、貴乃花が引退しました。最後までプロとしての誇りを持ち続けたこの偉大な横綱を、小生は心から敬愛しています。引退の時の会見で語った、「今でも相撲を愛していることが一番の誇りです」という言葉に、彼の相撲への思い、世間へのメッセージが凝縮しています。一昨年、右膝に大怪我を負いながら、優勝決定戦で武蔵丸を破った大一番、その時のまさに鬼気迫る相撲への執念は忘れられません。低劣な週刊誌に私生活のことでいびられながらも、最後まで土俵で結果を出し続けてきたのは、本当に立派です。

 貴乃花がまだ貴花田と称していた若い頃、小生は「人生の晴れ舞台」(一九九二年)という文章を書き、見る人に強いカタルシスを呼び覚ます彼の相撲の素晴らしさを称え、自分も仕事の上でかくありたいと念じたことがありました。彼の相撲に華があるのは、その頃から最後まで変わりませんでした。それにしても、あの頃からもう十年以上も経つのですね。

 小生、子どもの頃は、毎日のように近所の友達と相撲を取っていましたし、大相撲では大鵬・柏戸の全盛期で、判官びいきの小生は当然柏戸を激しく応援していました。また、小学六年生の時には、市内子ども相撲大会で優勝したこともあります。ですから、けっこう相撲には思い入れがあるのです。最近も、斎藤孝さんが、「身体感覚を取り戻す」(NHKブックス)の中で、相撲のように腰を重視する文化を大切にすべきだ、と説いておられるのには心底同感です。尤も、外人ばかりのさばっている近年の大相撲にはもうあまり関心はありませんが…。

平成一五(二〇〇三)年一月三一日