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「古典派からメッセージ・2003年〜2004年」目次へ戻る
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多忙な単身生活

 

 単身赴任の休日は暇だと先輩から聞かされて、ここ金沢に来て一年、暇どころかけっこう忙しい。宝生流の謡を習い始めたのでその稽古をし、能の面白さに目覚めて県立能楽堂での演能にはたいてい出かけるようになった。一方、前から好きだった西洋古典音楽も、県立音楽堂でオーケストラ・アンサンブル金沢が好演を聞かせてくれる。けっこう優秀な外国オケも来る。さらに、前から続けている我がホームページの更新もしつつ、見所多き北陸の観光地にも足を運ぶ…。こんなふうにしていると、あっと言う間に休日は過ぎて行くのである。

 金沢の良さは、こうした文化施設や観光地が、せいぜい三〇分圏内に集まっていることだ。音楽堂に至っては我がマンションから徒歩一〇分の近さである。地方の中核都市で人口四〇万人規模の街が最も人間的に暮らせる街だ、と、どこかで読んだ記憶があるが、まさしくここは理想的な都市生活を送れる街だ。

 しかも無個性な「リトル・トーキョー」的な街と違って、金沢は都市としての個性、出自も明確だ。加賀百万石の城下町への愛着を更に深めようと企図された旧町名復活などの動きも好感が持てる。前田家が江戸時代に生き残ったことに金沢の人は感謝しなければならないだろう。尤も、歴史を江戸時代以前にさかのぼると、戦国期の加賀は一向一揆共和国が一世紀も続いた地でもある。この地の人たちには、信心深く篤実な開拓農民という城下町住民とは別のアイデンティティも存在するはずだ。

 現に、私が日頃おつきあいしている企業経営者の方々も、大胆なようで意外に慎重、堅実な経営をされているケースが多い。そんな敬愛すべき経営者の方々をバックアップして、北陸発の全国企業を育成するのが私共の銀行の使命だと思っている。

平成一五(二〇〇三)年一〇月六日

 

(注)本文は金沢ロータリークラブの会報に寄稿した文章です。